職場でLGBTQ+であることを言えずにいる人は、今も少なくありません。
認定NPO法人虹色ダイバーシティの調査によると、2024年時点で「施策が全く行われていない職場」は54.9%でした。
2018年の69.9%からは減ったものの、半数を超える職場が、まだ何の対応もしていないことになります。
この記事では、LGBTQ+支援に取り組む企業10社の制度や事業を紹介します。
基礎用語、10社の取り組み、関わる仕事の順にまとめました。
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LGBTQ+支援とは
LGBTQ+支援とは、性的指向や性自認などの性のあり方にかかわらず、誰もが安心して働き、暮らせる環境をつくる取り組みです。
企業の場合、大きく3つの形があります。
1つ目は、制度を整えることです。
就業規則に差別の禁止を書き込み、同性パートナーを配偶者と同じように扱って慶弔休暇や祝金の対象にする。
通称名で働けるようにしたり、性別で分かれた設備の使い方を本人と相談して決めたりする対応も、ここに含まれます。
2つ目は、職場の理解を広げることです。
社員向けの研修や、当事者とアライ(支援する人)が集まる社内ネットワークの運営がこれにあたります。
制度があっても、本人の同意なく性のあり方を第三者に伝えるアウティングのような言動があれば、安心して働けなくなるためです。
誰にカミングアウトするかを本人が選べる状態を保つことも、制度と同じくらい大切になります。
3つ目は、事業として当事者を支えることです。
就職や転職の支援、住まい探し、結婚式やライフイベントのサービスなど、当事者が困りやすい場面に特化した事業が生まれています。
取り組みの水準を測る物差しとして、work with Prideが2016年に策定した「PRIDE指標」があります。
Policy(行動宣言)、Representation(当事者コミュニティ)など5つの視点で評価し、ゴールド・シルバー・ブロンズの認定が与えられます。
企業の取り組みを外から比べるとき、この認定は参考になります。
LGBTQ+支援に取り組む企業一覧
LGBTQ+支援に取り組む10社の概要は、次のとおりです。
| 企業 | 取り組み分野 | 主な取り組み |
| ANAホールディングス株式会社 | 同性パートナー制度・PRIDE指標 | グループ37社がPRIDE指標2025でゴールドを受賞 |
| KDDI株式会社 | 同性パートナーシップ・ファミリーシップ | PRIDE指標を2016年度から10年連続でゴールド受賞 |
| 楽天グループ株式会社 | パートナーシップ制度・PRIDE指標 | PRIDE指標で10年連続ゴールド、同性パートナーを配偶者と定義 |
| 株式会社JobRainbow | LGBTQ+向け求人サイト | ダイバーシティ求人サイトの運営と採用支援・研修 |
| 株式会社アカルク | LGBTQ+研修・人事コンサルティング | 有職者1万人規模のLGBTQ+職場調査を実施 |
| 株式会社IRIS | LGBTフレンドリー不動産仲介 | 当事者スタッフが部屋探しをサポート |
| 株式会社Letibee | 企業向けLGBT研修 | 研修満足度92%以上のワークショップを提供 |
| 株式会社ニューキャンバス | LGBTQ+講演・場づくり | 杉山文野さんが多様性をテーマに講演・研修 |
| 株式会社Luna | LGBTQ+コミュニティサイト運営 | Kinky・フェティッシュ領域のコミュニティを運営 |
| 株式会社TENGA | LGBTQ+向けオンラインスクール | 「PRIDE SCHOOL」を開講 |
ANAホールディングス株式会社
ANAホールディングス株式会社は、航空事業を中心とするANAグループの持株会社です。
ANAグループは「多様な性(LGBTQ+)の尊重」に関するグループ共通の基本ポリシーを定めています。
同性パートナーを配偶者とみなす認定を行い、性的指向や性自認を理由にした差別の禁止を就業規則に明記しています。
work with Prideの「PRIDE指標2025」では、ANAグループ37社が最高評価のゴールドを受賞しました。
KDDI株式会社
KDDI株式会社は、通信事業を中核とする企業です。
2017年4月に「同性パートナーシップ申請」を開始し、社内規程の配偶者の定義に同性パートナーを含めました。
祝い金や休暇、各種手当など、配偶者に適用される社内制度を同性パートナーにも適用しています。
2020年6月には、同性パートナーとの子を「子」として扱う「ファミリーシップ申請」も始めました。
PRIDE指標では、2016年度から10年連続でゴールドを受賞しています。
楽天グループ株式会社
楽天グループの公式ブログ「Rakuten Today」の記事
楽天グループ株式会社は、楽天市場をはじめ、金融や通信など幅広い事業を展開する企業です。
LGBTQ+当事者が働きやすい職場づくりとして「PRIDE指標」の認定取得に取り組み、10年連続でゴールド認定を受けています。
同性パートナーも配偶者として定義したパートナーシップ制度を導入し、通称名の使用も認めています。
配偶者の定義の改定は2016年7月22日に発表され、同性パートナーが慶弔休暇や見舞金の対象になりました。
株式会社JobRainbow
株式会社JobRainbowは、ダイバーシティ求人サイト「ジョブレインボー」を運営する企業です。
求人サイトの運営による採用支援に加えて、ダイバーシティ研修やコンサルティングも手がけています。
求人サイトでは、カミングアウトの判断や自己分析、面接対策をステップ形式で解説しています。
株式会社JobRainbowの事業内容や創業理由を詳しく見る
株式会社アカルク
株式会社アカルクは、2020年1月6日に設立された大阪市中央区の企業です。
LGBTQ+をテーマにした研修・講演のほか、人事コンサルティングやキャリア支援、eラーニングを行っています。
代表取締役社長の堀川歩さんは、2018年に性別適合手術を受けて戸籍上も男性になったと公式サイトで明かしています。
2025年4月には、職場のLGBTQ+やSOGIハラスメントに特化した社外相談窓口を始めました。
株式会社IRIS
株式会社IRISは、東京都新宿区に本社を置くLGBTフレンドリーな不動産仲介会社です。
2014年に任意団体として創業し、2016年4月1日に法人化しました。
LGBTs当事者に向けた部屋探しや物件購入の仲介を、不動産のプロフェッショナルでもある当事者スタッフが担当します。
一人親家庭やフリーランス、高齢者、外国籍、障害がある人など、住まい探しで困りやすい人にも対応しています。
株式会社Letibee
株式会社Letibeeは、セクシュアリティにかかわらず自分の幸せを自由に追求できる社会を目指すソーシャルベンチャーです。
LGBTウェブメディア「レティビーライフ」の運営と、企業向けLGBT研修の提供が主な事業です。
研修は当事者へのインタビューをもとにつくられており、満足度は92%以上です。
代表取締役のYuta Toyamaさんは、高校時代の失恋やカミングアウトを原体験に、大学在学中に創業しました。
株式会社ニューキャンバス
株式会社ニューキャンバスは、2014年1月に設立され、「違いを知り、違いを楽しむ場をつくる」ことを掲げる企業です。
代表を務める杉山文野さんのもと、LGBTQ+やDEI、キャリア形成をテーマにした講演・研修と、場づくりの2つの事業を行っています。
講演・研修メニューには、「LGBTQ+にカミングアウトされたら、あなたはどうする?」やセーフスポーツなどのテーマがあります。
株式会社Luna
株式会社Lunaは、東京都港区に本社を置き、LGBTQ+コミュニティサイトを運営する企業です。
手がけているのは、日本最大級のKinky・フェティッシュ領域のコミュニティサイト「Luna」です。
代表取締役の後藤慶士さんは、この領域が長らく「人には言えないこと」として社会の外側に置かれてきたとしています。
その部分を否定せず、向き合える場所をつくり続けるとメッセージを寄せています。
株式会社TENGA
株式会社TENGAは、2005年3月25日設立の東京都中央区晴海の企業です。
会社概要には、セクシャルウェルネス商品の研究開発・販売や障がい者向け就労支援事業が挙げられています。
「多様性を認める社会へ」のページでは、LGBTQ+向けのオンラインキャンパス「PRIDE SCHOOL」を紹介しています。
第3回は2022年10月に開講し、約2ヶ月のバーチャルキャンパスを経て同年11月19日に卒業式を行いました。
LGBTQ+支援に関わる仕事・キャリア
LGBTQ+支援に関わる仕事は、当事者に届くサービスをつくる仕事、企業の研修や制度づくりを外から支える仕事、自社の中で環境を整える仕事に分かれます。
同じ社会課題でも、求められる経験と入口はそれぞれ違います。
当事者に届くサービスをつくる仕事
求人サイトや不動産仲介、コミュニティサイトのように、当事者が困りやすい場面を事業で引き受ける仕事です。
株式会社JobRainbowはダイバーシティ求人サイトの運営、株式会社IRISは住まい探しの仲介、株式会社Lunaはコミュニティサイトの運営を事業にしています。
サービス企画やWebサービスの開発・運用、法人向けの営業、利用者と直接向き合う接客・仲介の実務が、それぞれの現場にあります。
不動産や人材紹介のように資格や業界経験が効く領域もあり、前職のスキルをそのまま持ち込めます。
規模の小さい会社が多いため、入口は中途採用が中心になります。
企業の研修・制度づくりを外から支える仕事
他社の職場環境を変えることを仕事にする立場です。
株式会社アカルクは研修・講演とあわせて人事コンサルティングや社外相談窓口を、株式会社Letibeeは当事者への取材をもとにした企業向け研修を、株式会社ニューキャンバスは講演・研修と場づくりを手がけています。
研修の設計と登壇、教材やeラーニングの制作、導入企業への提案営業が主な業務です。
人事や人材開発の実務経験、研修の企画経験、人前で話した経験が活きます。
当事者としての経験を語る役割もありますが、それが前提の仕事ばかりではありません。
自社の中でD&Iを進める仕事
事業会社の人事やサステナビリティの部門で、社内の制度と風土を変えていく仕事です。
KDDI株式会社の同性パートナーシップ申請や、ANAホールディングス株式会社の就業規則への差別禁止の明記のように、就業規則・福利厚生・呼称の扱いを一つずつ設計し直します。
楽天グループ株式会社のように、当事者とアライが参加する社内ネットワークの運営を担当する役割もあります。
労務や人事制度の知識、社内広報の経験が土台になります。
新卒で入社して人事部門に配属される道と、人事経験者として転職する道の両方があります。
ココキャリアで探す
LGBTQ+支援に取り組む企業を一覧で探したいときは、ココキャリアのLGBTQ+支援カテゴリで、この記事の7社をはじめ掲載企業の情報を見られます。
募集の有無や条件は時期で変わるため、応募を考えるときは各社の採用ページで最新の情報を確認してください。
ジェンダー課題全体のキャリアの選び方は、次の記事で整理しています。
≫ジェンダー課題のキャリアとは?D&I推進・政策・NPOなどキャリアの全体像を解説
よくある質問
LGBTQ+支援に取り組む企業について、よくある疑問にお答えします。
Q. LGBTQ+支援とは何ですか?
A. LGBTQ+支援とは、性的指向や性自認などの性のあり方にかかわらず、誰もが安心して働き、暮らせる環境をつくる取り組みです。企業では、就業規則への差別禁止の明記や、同性パートナーを配偶者とみなす福利厚生の整備、社員向けの研修などのかたちで進められています。取り組みを評価する仕組みとして、work with Prideが2016年に策定した「PRIDE指標」があり、5つの視点で職場を評価します。電通グループの2023年の調査では、LGBTQ+当事者層の割合は9.7%でした。
Q. SOGIハラ・アウティングとは何ですか?
A. SOGIハラとは、性的指向や性自認を理由にした差別的な言動やハラスメントのことです。SOGIは、Sexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認)の頭文字です。アウティングとは、本人の同意なく、性的指向や性自認を第三者に暴露する行為です。認定NPO法人虹色ダイバーシティの調査によると、学校や職場で「性別を変更して生きることに関する否定的な言動」を見聞きした割合が増えています。2022年の37.4%から、2024年には47.4%になりました。
Q. この記事の企業に、同性パートナーシップの制度はありますか?
A. 公式サイトで確認できた範囲では、ANAホールディングス株式会社が同性パートナーを配偶者とみなす認定を行っています。KDDI株式会社は2017年4月に同性パートナーシップ申請を、2020年6月にはファミリーシップ申請を始めました。楽天グループ株式会社も2016年に社内規定の配偶者の定義を改定し、同性パートナーを含めています。3社とも、work with Prideが策定するPRIDE指標でゴールドを受賞しています。ほかの企業の同性パートナー制度の有無は、この記事では確認していません。
Q. この記事の企業は、就職・転職の募集をしていますか?
A. 各社の現在の募集状況は、確認していません。公式サイトで確認できた範囲では、株式会社JobRainbowが求人サイトを運営し、LGBTの就職・転職を支援するコンテンツを公開していました。株式会社アカルクは、研修や人事コンサルティングにかかわる事業内容を紹介していました。ほかの企業については、募集の有無をこの記事では判断できません。募集職種や条件は変わるため、応募前に各社の採用ページで確認してください。
まとめ
LGBTQ+支援は、就業規則の見直しや同性パートナー制度の整備、研修など、企業によって取り組み方が異なります。
10社の公式サイトには、大手企業がグループ全体で制度を整える例もあれば、当事者の経験をもとに研修やコミュニティをつくる専門企業もありました。
気になる企業が見つかったら、取り組みのページを読んだあと、同じサイト内の採用ページものぞいてみましょう。
LGBTQ+支援以外も含めて、社会課題に取り組む企業を比べながら探したいときは、ココキャリアに企業ごとの情報がまとまっています。
それぞれの企業の言葉の背景には、当事者自身が歩んできた経験があります。
株式会社はぐくむの平山裕三さんも、学生時代はゲイであることを隠していたと、カミングアウトを決めるまでを振り返るインタビューで語っています。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
