2024年度から、市区町村が個人住民税の均等割とあわせて、1人年額1,000円の森林環境税を集めています。
払っていることに気づかないまま、名前だけをニュースで見かけた方も多いはずです。
似た名前の「森林環境譲与税」もあり、調べるほど分かりにくくなります。
この記事では、あなたが払う1,000円がどこを通り、どんな森の仕事に変わるのかを解説します。
自分が住む自治体がいくら受け取り、何に使ったのかを調べる方法も紹介します。
取り上げるのは、仕組み、使い道、背景、指摘されている課題、自治体独自の税との違い、そして森林の仕事です。
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森林環境税とは
森林環境税とは、森林の整備などに使う財源を確保するために、国内に住所がある個人へ1人年額1,000円を課す国税です。
根拠は、2019年3月に成立した「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」です。
総務省によると、市区町村が個人住民税の均等割と併せて賦課徴収します。
参考:総務省「森林環境税及び森林環境譲与税について」、林野庁「森林環境税及び森林環境譲与税」
いくら払うのか、払わない人はいるのか
税率は法律の第5条で「千円とする」と定められ、総務省はこれを1人年額千円と説明しています。
納税義務者は、第3条により、法律の施行地に住所を有する個人です。
一方で、第4条は次の人には課さないと定めています。
- 生活保護法による生活扶助などを受けている人
- 障害者、未成年者、寡婦、ひとり親(前年の合計所得金額が135万円を超える場合を除く)
- 前年の合計所得金額が、政令で定める金額以下の人
個人住民税の均等割がかからない収入の方は、森林環境税もかかりません。
参考:e-Gov法令検索「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」
いつから、どうやって徴収されるのか
法律の附則第2条は、森林環境税の規定を「令和六年度以後の年度分」について適用すると定めています。
令和6年度は、西暦の2024年度にあたります。
賦課期日は第6条で、その年度の初日が属する年の1月1日です。
2024年度分なら、2024年1月1日に住んでいた市区町村が納税先になります。
徴収は第7条により、市区町村が個人住民税の均等割の賦課徴収と併せて行います。
会社員なら毎月の給与から、自営業なら納付書で、住民税と一体で引かれています。
負担が増えたと感じた方もいるかもしれません。
個人住民税の均等割には、震災復興のための臨時の上乗せもありました。
根拠は、東日本大震災からの復興に関し地方公共団体が実施する防災のための施策に必要な財源の確保に係る地方税の臨時特例に関する法律です。
同法の第2条により、道府県民税と市町村民税の均等割の標準税率に500円ずつが、2014年度から2023年度まで加算されていました。
制度設計を議論した総務省の検討会でも、この上乗せを考えて制度設計する必要があるという意見が出ています。
参考:e-Gov法令検索「地方税の臨時特例に関する法律(平成23年法律第118号)」、総務省 森林吸収源対策税制に関する検討会資料(PDF)
集まったお金は都道府県を経由して国の特別会計へ払い込まれ、全額が森林環境譲与税の原資になります。
森林環境譲与税との関係
森林環境譲与税とは、森林環境税の収入額に相当する額を、国が市区町村と都道府県へ配る地方譲与税です。
払う側から見た税が森林環境税、受け取る側から見たお金が森林環境譲与税で、別々の制度です。
課税より5年早く配付が始まった理由
法律の附則第2条は、森林環境譲与税を「令和元年度以後の年度分」について適用すると定めています。
つまり2019年度から、税金を集めるより先に自治体への配付が始まりました。
総務省は、森林整備が喫緊の課題であることを踏まえた措置だと説明しています。
当初の財源は国の特別会計での借入れで、2020年度からは地方公共団体金融機構の準備金2,300億円を活用しています。
何を基準に、どこへ配られるのか
会計検査院によると、市町村と都道府県の配分割合は2019年度の80対20から段階的に変わり、2024年度は90対10です。
それぞれの団体への配分は、次の3つの指標で按分されます。
| 指標 | 2019〜2023年度 | 2024年度以降 |
|---|---|---|
| 私有林人工林面積 | 10分の5 | 100分の55 |
| 林業就業者数 | 10分の2 | 100分の20 |
| 人口 | 10分の3 | 100分の25 |
2024年3月の法改正で、私有林人工林面積の割合が上がり、人口の割合が下がりました。
背景にあったのは、主に山間部の市町村から森林整備を推進する観点で出された要望です。
私有林人工林面積には補正もかかり、林野率85%以上の市町村は1.5倍、75%以上85%未満は1.3倍に割り増されます。
林野庁によると、2024年度の配付額は総額629億円で、市町村が566億円、都道府県が63億円でした。
参考:会計検査院「令和6年度決算検査報告」(PDF)、林野庁「森林環境税及び森林環境譲与税」
森林環境税の使い道
法律の第34条は、市町村の使い道を「森林の整備に関する施策」と「森林の整備の促進に関する施策」の2つに限っています。
自治体が自由に使えるわけではなく、使ったあとは公表する義務もあります。
実務では4つの施策に整理されている
会計検査院は、市町村の施策を次の4つに分類しています。
- 森林整備施策:間伐、再造林、下刈り、路網整備、獣害対策など
- 人材育成・確保施策:就労支援、専門員の雇用、労働安全の推進
- 普及啓発施策:森林に関するイベント、学生への森林教育など
- 木材利用施策:木製品の配布、公共施設の内装木質化など
都道府県は、市町村への支援と、市町村の森林整備が円滑に進むようにする取り組みが中心です。
参考:e-Gov法令検索「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」第34条
森林が世界で直面している課題は、以下の記事で扱っています。
≫【SDGs目標15】陸の豊かさも守ろうとは?現状と私たちにできること
2024年度に何がどれだけ行われたか
総務省と林野庁が2025年12月にまとめた取組状況によると、2024年度の活用額は520億円でした。
内訳は、森林整備関係が317億円、木材利用・普及啓発が126億円、人材の育成・担い手の確保が78億円です。
取り組んだ市町村の割合は、森林整備関係が82%、木材利用・普及啓発が63%、人材育成が41%でした。
2024年度の森林整備面積は約6.4万haで、うち間伐面積が約2.6万haです。
林野庁によると、森林整備面積は2019年度の10倍以上になりました。
イベントや講習会は約3,600回開かれ、参加者は約30.4万人にのぼります。
参考:総務省・林野庁「令和6年度における森林環境譲与税の取組状況について」(PDF)
自治体の取り組み例
群馬県中之条町は、森林の手入れを担える人を確保するため「林業実践学校」を開きました。
刈払機の講習会に64名、チェーンソーの講習会に7名が参加しています。
福岡県福岡市は、公民館の建築に県産材約88立方メートルと市産材約35立方メートルを使いました。
滋賀県高島市は、航空レーザ測量などのデータで森林の境界を182.61ha確定し、うち112.87haに譲与税を充てました。
使い道は公表される
法律は、自治体が決算のあとに、インターネットなどで使い道を公表するよう義務づけています。
市区町村名と「森林環境譲与税 使途」で検索すれば、その公表ページにたどり着けます。
森林環境税が導入された背景
この税の目的は、森林整備に必要な地方財源を安定的に確保することです。
林野庁は、パリ協定の下での温室効果ガス排出削減目標の達成や、災害防止をその背景に挙げています。
森林が果たしている役割
森林の公益的機能には、生物多様性保全、地球環境保全、土砂災害防止、水源かん養などがあります。
林野庁と総務省によると、日本の森林は国土の約7割を占め、CO2吸収量の9割以上を森林が占めています。
国際的な枠組みは、次の記事で整理しています。
≫【2026年最新】気候変動とは?原因・影響・対策をわかりやすく解説
手入れが届かない人工林
会計検査院によると、日本の私有林人工林面積は約670万haで、その約3分の2は経営管理が不十分な状態です。
さらに9割が小規模・零細な所有構造で、施業をまとめる集約化が進みにくくなっています。
世界で起きている森林減少との違いは、以下の記事が詳しいです。
誰の山か分からなくなっていく
集約化が進まない理由は、森林所有者の高齢化、相続による世代交代、不在村化などです。
人口が減り、地域から人がいなくなる流れとも重なる話です。
≫過疎化とは?わかりやすく解説!現状・原因・問題点・対策まとめ【2026年】
森林経営管理法という受け皿
2018年5月に森林経営管理法が制定され、2019年4月に施行されました。
これにより始まったのが森林経営管理制度です。
森林所有者が自ら経営管理できない場合に、市町村が委託を受け、林業経営に適した森林は地域の林業経営者へ再委託します。
適さない森林は市町村が管理します。
森林環境譲与税の配付が2019年度に始まったのは、この制度の創設が契機でした。
森林環境税に向けられている指摘と課題
この税には、使われ方をめぐる指摘も出ています。
会計検査院は2025年11月に内閣へ送った令和6年度決算検査報告で、この譲与税を取り上げました。
検査対象は総務省、林野庁、21都道府県と、その区域の972市町村から統計的な手法で抽出した324市町村です。
配られた額のうち、使われたのは6割
324市町村の2023年度末時点の配付額の累計は、342億3657万余円でした。
実際に使われた額の累計は213億0549万余円で、執行率は62.2%です。
この執行率は、2019年度末の38.7%から年々上がってきた数字でもあります。
未執行の主な理由は、各年度末とも「後年度に執行予定の事務・事業に充てるため」が市町村の8割前後を占めます。
一方、2023年4月1日時点で、324市町村のうち282市町村が執行計画を策定していませんでした。
割合にすると87.0%です。
基金への積み立てをどう見るか
未執行額は、地方自治法に規定される基金に積み立てられるなどしていました。
324市町村のうち260市町村が、この譲与税だけを管理する基金を設けています。
基金そのものは、複数年度にまたがる森林整備の財源を確保する手段でもあります。
総務省と林野庁によると、配付額を全額基金に積み立てるなどした市町村は、2019年度の666から2024年度の122へ減りました。
割合では38%から7%です。
都市部に多く配られているという指摘
会計検査院は、使い道ごとの執行額と3つの指標の相関も調べています。
森林整備施策と私有林人工林面積の相関係数は0.84で、強い正の相関が見られました。
人材育成・確保施策と林業就業者数は0.59です。
一方、普及啓発施策・木材利用施策と人口は0.25で、弱い正の相関にとどまりました。
この分析が公表されたのは、人口の割合を下げた2024年度の譲与基準の見直しよりも後になります。
森林を持たない自治体が、上流の森林整備に回す例もあります。
東京都足立区は私有林人工林面積が0haですが、2024年10月の荒川放水路通水100周年を契機に、埼玉県の秩父地域1市4町と協定を結びました。
譲与税で荒川上流域の森林管理費用の一部を負担し、秩父地域は間伐材の鉛筆を区内の小学5年生へ配っています。
森林保全に取り組む企業は、次の記事にまとめました。
≫森林保全に取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大手企業からベンチャー
自治体が独自に集める森林環境税との違い
国の森林環境税とは別に、都道府県が独自に集めている「森林環境税」もあります。
名前が似ているため、二重取りではないかと受け取られることがあります。
高知県が全国で最初に導入した
2003年度に高知県が導入したのを皮切りに、同様の取り組みが広がりました。
高知県の森林環境税は、個人も法人も年額500円です。
県民税の均等割に上乗せする、県民税均等割超過課税という方式をとっています。
上乗せ分は「森林環境保全基金」に積み立てられ、森林環境を保全する事業に充てられます。
現在は第5期にあたり、期間は2023年度から2027年度までです。
高知県の地域課題は、以下の記事で取り上げています。
参考:高知県「森林環境税の仕組みや徴収の方法など」、高知県の「森林環境税」
国の税と県の税は置き換わらない
総務省によると、2017年時点で37府県と横浜市が同種の超過課税を実施していました。
税収の規模は、2015年度の決算額で319.0億円でした。
制度設計の段階で総務省は、国の森林環境税は府県の超過課税に取って代わるものではなく、両方の財源を活用して森林整備を進めるという方向性を示しました。
該当する県に住んでいれば、国の1,000円と県の数百円の両方を負担します。
森林・林業に関わる仕事
森林環境税は、森の手入れを担う人を増やすための財源でもあります。
会計検査院は、市町村の林務担当職員が少ない状況を課題として繰り返し挙げています。
市町村の林務担当職員
市町村の林務担当職員は、森林所有者への意向調査、計画の策定、事業の発注と検査を担います。
地域林政アドバイザー
地域林政アドバイザーは、森林や林業の知識と経験を持つ技術者が市町村の森林行政を支える仕組みです。
個人として委嘱される形と、所属する法人が事務を受託する形があります。
林業経営者・森林組合
林業経営者や森林組合は、市町村から再委託を受けて実際の間伐や再造林を行います。
現場の技術に加えて、安全管理や機械の扱いが仕事の核になります。
木材利用・普及啓発
木材利用や普及啓発は、建築、設計、教育、広報に近い領域です。
森に入らなくても、木を使う側から関われます。
環境分野の仕事を業界と職種から見渡すなら、次の記事が入口です。
≫環境問題に携わる仕事がしたい!就活・転職に役立つ業界・業種を解説
地域から山に関わるという選び方
COCOCOLOR EARTHで取材した藤江開生さんは、大学卒業後に宮崎県椎葉村の地域おこし協力隊になり、図書館司書として村の記憶を記録してきました。
藤江さんは、村のハザードマップを見ると、ほとんどのエリアが土砂災害の危険を示す赤で埋め尽くされていると語っています。
山が荒れることは、そのまま麓に住む人間の命に直結する。
それが、椎葉村で過ごした3年間の実感でした。
≫新卒で「日本三大秘境」へ。地域おこし協力隊として見えた“山の社会課題”とキャリアの選択~藤江開生さん~
地域おこし協力隊の制度は、以下の記事で整理しています。
≫地域おこし協力隊とは?制度の仕組み・活動内容・任期後のキャリアを解説
よくある質問
最後に、納税者からよく出る4つの疑問をまとめました。
Q. 森林環境税とはどんな税金ですか?
A. 森林環境税とは、森林の整備などに使う財源を確保するために、国内に住所がある個人へ1人年額1,000円を課す国税です。2019年3月に成立した「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」にもとづき、法律の附則により2024年度分から課税が始まりました。徴収するのは国ではなく、その年の1月1日に住んでいた市区町村で、個人住民税の均等割とあわせて集められます。集まった税収は全額が森林環境譲与税として、市区町村と都道府県へ配られます。
Q. 森林環境税と森林環境譲与税は何が違うのですか?
A. 森林環境税は、個人が国に納める税金です。森林環境譲与税は、その税収に相当する額を、国が市区町村と都道府県へ配る地方譲与税を指します。払う側から見た制度と、受け取る側から見た制度という関係です。配付は課税より早く2019年度に始まりました。当初は国の特別会計の借入れを財源とする予定でしたが、2020年度からは地方公共団体金融機構の準備金2,300億円を活用する形に改められています。林野庁によると、2024年度の配付額は総額629億円です。
Q. 森林環境税は何に使われているのですか?
A. 法律の第34条は、市町村の使い道を森林の整備に関する施策と、その促進に関する施策の2つに限っています。後者には人材の育成と確保、普及啓発、木材利用が含まれ、実務では4つの施策に分けて集計されています。都道府県は市町村への支援などが中心です。総務省と林野庁によると、2024年度の活用額は520億円でした。間伐などの森林整備関係に317億円、木材利用・普及啓発に126億円、人材の育成・担い手の確保に78億円が使われています。自治体は決算後に使い道を公表する義務を負っています。
Q. 森林環境税がかからない人はいますか?
A. 法律の第4条は、生活保護法による生活扶助などを受けている人には課さないと定めています。障害者、未成年者、寡婦、ひとり親も対象で、前年の合計所得金額が135万円を超える場合だけが除かれます。前年の合計所得金額が政令で定める金額以下の人にもかかりません。また第11条により、災害で生命や身体、財産に甚大な被害を受けた人や、失業や廃業で収入が著しく減った人などは、市町村長が免除します。個人住民税の均等割がかからない方は、森林環境税もかかりません。
まとめ
森林環境税は、2024年度から1人年額1,000円が住民税とあわせて集められる国税で、全額が自治体へ配られます。
2024年度に配られた額は629億円、間伐や人材育成、木材利用に使われた額は520億円でした。
同時に、執行率や執行計画の不足という課題も、会計検査院の検査で数字として示されています。
まずは自分の市区町村が公表している使い道のページを開き、いくら受け取り、いくら使い、何が残っているかを見てください。
あなたの1,000円がどの森に届いたのかは、そこに書かれています。
ココキャリアには、環境分野の企業も並んでいます。
事業内容を一つずつ読んでいくと、森とのつながりが見えてくる会社が出てきます。
税の行き先を追う目は、企業の取り組みを見極めるときにも同じように働きます。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
