厚生労働省が2025年12月23日に公表した「令和5年所得再分配調査」では、日本のジニ係数が0.5855と0.3825という2つの数字で示されました。

同じ日本のジニ係数なのに、なぜ2つの数字があるのか、授業やニュースで数字を前に戸惑った人もいるかもしれません。

5世帯の例を使い、ジニ係数が何を測る数字なのかをつかんで、計算まで自分の手で追えるようになります。

意味と見方、ローレンツ曲線を使った計算方法、当初所得と再分配所得の違い、日本と世界の最新データ、数字の限界を、数式を使わずに順に解説します。

後半では、格差を縮める制度と、格差・貧困の問題に関わる仕事も紹介します。

※【企業様向け】格差・貧困問題への取り組みをPRしませんか?

  掲載を希望する企業様はこちら

格差や貧困を含む福祉の社会課題は、以下のページにまとめています。

≫福祉に取り組む企業・キャリア情報

 

ジニ係数とは

ジニ係数とは、所得がどれだけ均等に分かれているか、あるいは偏っているかを、0から1までの1つの数字で表す指標です。

厚生労働省の報告書は、0に近いほど所得格差が小さく、1に近いほど所得格差が大きいと説明しています。

0から1で格差の大きさを表す

ジニ係数が0のときは、全員の所得が同じ、完全に平等な状態です。

1のときは、1世帯がすべての所得を独占し、ほかの世帯の所得がゼロという、完全に不平等な状態です。

名前は、この指数を考案したイタリアの統計学者コッラード・ジニに由来します。

数字の見方

ジニ係数は、大きいほど格差が大きいと読みます。

ただし、この記事で参照した資料には、何以上なら格差が大きいと判断する基準線が示されていません。

そのため、同じ調査の過去の値や、同じ定義で作られた他国の値と比べるのが、基本の使い方です。

ローレンツ曲線とは

ローレンツ曲線とは、所得の低い世帯から順に並べ、世帯数の累積割合を横軸、所得の累積割合を縦軸にとって描いた曲線です。

全員の所得が同じなら、曲線は左下から右上への斜め45度の直線(均等分布線)と重なり、偏りが大きいほど曲線は下へたわみます。

令和5年所得再分配調査の、世帯を所得順に10等分したデータで確かめます。

所得の低いほうから数えた世帯の割合 当初所得の累積の取り分 再分配所得の累積の取り分
20% 0.0% 5.2%
40% 2.7% 15.9%
60% 15.1% 32.0%
80% 41.8% 55.8%

参考:令和5年所得再分配調査報告書 表1(厚生労働省)

当初所得では、所得の低いほうから40%の世帯の取り分は合計2.7%にとどまり、曲線は直線から大きく下に離れた形です。

再分配所得では同じ40%の取り分が15.9%まで上がり、曲線は直線に近づきます。

5世帯の数値例で計算する

ジニ係数の求め方を、実在の統計ではなく、5世帯だけの架空の例で追います。

年間所得は低い順に100万円、200万円、300万円、400万円、1,000万円で、合計は2,000万円です。

世帯の累積割合と所得の累積割合を並べると、次の表になります。

世帯の累積割合 所得の累積額 所得の累積割合
20% 100万円 5%
40% 300万円 15%
60% 600万円 30%
80% 1,000万円 50%
100% 2,000万円 100%

表の点をつなぐとローレンツ曲線になり、その下の面積を、幅0.2の帯5本に分けて求めます。

各帯の面積は、幅0.2に左右の高さの平均を掛けた値で、順に0.005、0.020、0.045、0.080、0.150となり、合計は0.30です。

横も縦も1とした正方形の対角線より下には、面積0.5の三角形ができます。

三角形の0.5から0.30を引いた0.20が、ローレンツ曲線と均等分布線に囲まれた弓形の面積です。

厚生労働省の報告書の定義では、この弓形が三角形に占める比率がジニ係数なので、0.20を0.5で割った0.4が、5世帯のジニ係数になります。

相対的貧困率との違い

混同されやすい指標に、相対的貧困率があります。

相対的貧困率とは、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割った所得)の中央値の半分を貧困線とし、その線に満たない人の割合です。

2025年国民生活基礎調査(2026年7月15日公表)では、2024年の貧困線は138万円、相対的貧困率は15.0%でした。

ジニ係数が分布全体の偏りを示すのに対し、貧困率は所得の低い層の割合を示すため、問いが異なります。

貧困の定義や日本の状況は、以下の記事で解説しています。

≫貧困問題とは?定義や日本と世界の関連する問題10選、取り組む企業を紹介

参考:2025(令和7)年国民生活基礎調査の概況(厚生労働省)


当初所得と再分配所得の違い

所得再分配調査では、同じ世帯について2種類のジニ係数が示されます。

違いは、税や社会保障を所得に反映したかどうかです。

当初所得とは

当初所得とは、雇用者所得、事業所得、財産所得などに、仕送りや企業年金といった私的給付を加えた所得で、公的年金などの社会保障給付は含まれません。

再分配所得とは

再分配所得とは、当初所得から税金と社会保険料を引き、社会保障給付を加えた所得です。

社会保障給付には、公的年金などの現金給付のほか、医療・介護・保育の現物給付も含まれます。

参考:「令和5年所得再分配調査」の結果を公表します(厚生労働省)

改善度で再分配の効果を測る

報告書は、再分配によるジニ係数の下がり方を「改善度」として示しています。

改善度は、当初所得のジニ係数から再分配所得のジニ係数を引き、当初所得のジニ係数で割って100を掛けた値です。

令和5年調査では、0.5855が0.3825まで下がり、改善度は34.7%でした。

内訳は、社会保障によるものが31.6%、税によるものが4.4%で、社会保障の影響のほうが大きいと報告書は述べています。

算出式が別々のため、この2つを足しても34.7%にはなりません。

参考:令和5年所得再分配調査報告書 表2(厚生労働省)

日本のジニ係数の推移と現状

日本のジニ係数は、厚生労働省が概ね3年ごとに行う所得再分配調査で公表されます。

2026年9月21日時点の最新は、2025年12月23日に公表された令和5年調査です。

令和5年調査の結果と推移

令和5年調査は昭和37年から続く調査の20回目で、2023年7月13日から8月12日に実施されました。

対象の所得は2022年1月から12月の状況で、集計されたのは3,003世帯(対象7,430世帯の40.4%)です。

調査年 当初所得 再分配所得 改善度
平成17年(2005年) 0.5263 0.3873 26.4%
平成26年(2014年) 0.5704 0.3759 34.1%
令和3年(2021年) 0.5700 0.3813 33.1%
令和5年(2023年) 0.5855 0.3825 34.7%

参考:令和5年所得再分配調査報告書 表2(厚生労働省)

表2に載る平成8年以降の10回の調査で、当初所得の0.5855と改善度の34.7%は、どちらも最も高い値です。

再分配所得は、平成11年調査以降0.38前後で推移していると厚生労働省は説明しています。

当初所得が上がる背景は高齢化

前回調査からの当初所得の増加について、厚生労働省は高齢化等が要因としています。

世帯主が65歳以上の世帯の割合は、前回の55.2%から56.7%に上がりました。

世帯主の年齢構成を前回と同じにそろえた試算でも、報告書は当初所得の上昇に世帯の高齢化の影響があると述べています。

背景には、公的年金が当初所得に含まれない点があります。

高齢者世帯の平均当初所得は107.8万円で、受け取る社会保障給付は平均271.1万円です。

高齢者世帯のジニ係数は、当初所得の0.7358から再分配所得の0.3611へ、50.9%の改善でした。

高齢化の現状は、以下の記事で解説しています。

≫【2026年最新】少子高齢化とは?現状・原因・問題点と若者にできることを解説

世帯員単位(等価所得)で見ると

世帯の人数が違えば生活水準も変わるため、報告書は世帯の所得を世帯人員の平方根で割った「等価所得」で、1人ひとりの所得として集計した結果も示しています。

等価所得のジニ係数は、当初所得が0.5037、再分配所得が0.3163で、改善度は37.2%です。

世帯単位より小さい値になるため、引用するときは、世帯単位か世帯員単位かを添える必要があります。

参考:所得再分配調査報告書 表3・表5・表9(厚生労働省)


世界のジニ係数と、比べるときの注意点

国際比較には、OECDや世界銀行が公表するデータを使えますが、出典ごとに指標の定義や調査年が違うため、数字を単純に並べて順位をつけることはできません。

OECDと世界銀行の最新値

OECDの所得分配データベースにある、税と移転の後の可処分所得のジニ係数(0から1)の最新値です。

国 ジニ係数 時点
日本 0.338 2021年
韓国 0.323 2023年
ドイツ 0.307 2023年
フランス 0.299 2023年
英国 0.367 2023年
米国 0.394 2023年
ノルウェー 0.259 2023年

参考:OECD Data Explorer「所得分配データベース」(2026年9月23日確認)

世界銀行は0から100の数字で示し、南アフリカが54.1(2022年)、ブラジルが50.3(2024年)です。

参考:Gini index(世界銀行、2026年9月21日確認)

単純に比べられない理由

世界銀行は、この指標が所得だけでなく、一部の国では消費支出の分布をもとにすると説明しています。

日本の値だけでも、出典によって違います。

厚生労働省の再分配所得は、世帯単位で0.3825、世帯員単位(等価所得)で0.3163です。

OECDは0.338(2021年)、世界銀行は0から100の尺度で32.3(2020年)、0から1に直すと0.323です。

値が違うのは、もとにしている調査が別だからです。

OECDのメタデータ(2026年6月版)では、日本の値の出典は厚生労働省の「国民生活基礎調査」とされています。

世界銀行の日本のデータは、慶應義塾大学のパネル調査(JHPS-KHPS)をルクセンブルク所得研究(LIS)が整えたものです。

そのため、同じ出典の同じ定義の数字どうしで比べるのが原則です。

SDGsの目標10については、以下の記事で解説しています。

≫【SDGs目標10】人や国の不平等をなくそうとは?現状と私たちにできること

ジニ係数でわかること、わからないこと

ジニ係数は格差の大きさを1つの数字で示せる反面、数字にまとまらない情報もあります。

同じジニ係数でも、ローレンツ曲線の形が同じとは限りません。

所得の低い層が厳しいのか、高い層に集中しているのかは、係数だけでは区別できないため、階層別の取り分もあわせて見ます。

所得再分配調査の調査事項は、所得、税、社会保険料、社会保障給付で、貯蓄や不動産などの資産の残高は挙げられていません。

資産まで含めて見るには、総務省統計局の全国家計構造調査のように、消費・所得・資産・負債を調べる別の統計を使います。

参考:令和6年全国家計構造調査の概要(総務省統計局)

また、令和5年調査は標本調査で、社会福祉施設に入所している人などは対象外のため、報告書は結果を幅をもって見る必要があるとしています。


格差を縮める取り組み

格差を縮める取り組みの中心は、税と社会保障による再分配で、そこに生活の困りごとへの支援や民間の取り組みが加わります。

税と社会保障による再分配

所得税は、課税される所得が高いほど税率が上がる累進課税で、税率は分離課税などを除き5%から45%まで7段階です(2026年4月1日現在)。

社会保障は、年金、医療、介護、保育などの給付で、当初所得の低い世帯の所得を引き上げます。

参考:所得税の税率(国税庁)

生活困窮者を支える制度

生活困窮者自立支援制度は、仕事の支援、家賃相当額の支給などの住まいの支援、家計の立て直しの支援を行う制度です。

参考:生活困窮者自立支援制度(厚生労働省)

民間の取り組み

一般社団法人グラミン日本は、シングルマザーを中心に生活に困窮する方々の起業や就労を応援する団体です。

必要な資金の一部を無担保で融資し、企業や自治体などと協力した就労支援プログラムも提供しています。

参考:グラミン日本(2026年9月21日確認)

少額の融資で自立を支えるしくみは、以下の記事で解説しています。

≫マイクロファイナンスとは?仕組みや意義、日本企業の取り組み方を解説

格差・貧困問題に関わる仕事

ジニ係数の背後には、統計をつくる人、制度を運営する人、困りごとを抱える人に寄り添う人がいます。

統計と政策をつくる仕事

所得再分配調査の集計は、厚生労働省の政策統括官付政策立案・評価担当参事官室が担っています。

この調査は、社会保障や税が所得の分配に与える影響を明らかにし、施策立案の基礎資料を得るための調査です。

統計から制度の効果を確かめ、施策を考える仕事では、数字を正確に読み、わかりやすく伝える力が活きます。

相談に寄り添う仕事

生活困窮者自立支援制度の窓口では、支援員が相談を受け、相談者と一緒に必要な支援を考え、具体的な支援プランをつくります。

相手の話を聴く力と、制度を調べて説明する力が活きる仕事です。

福祉分野の業種や職種は、以下の記事で解説しています。

≫福祉問題のキャリアとは?業種・職種・キャリアパスを徹底解説

企業や協同組合で

2024年2月公開のインタビューで、当時グリーンコープ生活協同組合ふくおかの理事長だった坂本寛子さんは、グリーンコープが生協の配達や共済に加え、生活困窮者支援や子どもの居場所づくりにも取り組んでいると語っています。

配達の仕事から入り、福祉に関心を持って社会福祉法人の部署へ移った職員もいるそうです。

≫くらしの安心安全を追求する生活協同組合、グリーンコープの魅力に迫る!~グリーンコープふくおか理事長 坂本寛子~


よくある質問

ジニ係数について、よく寄せられる疑問にお答えします。

Q. ジニ係数とは何ですか?

A. ジニ係数とは、所得がどれだけ均等に分かれているか、あるいは偏っているかを、0から1までの1つの数字で表す指標です。0のときは全員の所得が同じ完全に平等な状態、1のときは1世帯がすべてを独占する完全に不平等な状態を示します。値が大きいほど格差が大きく、日本の値は厚生労働省の所得再分配調査で公表され、同じ定義の値どうしで比べて読みます。所得のほか、資産や消費支出の分布に使われることもあり、単位や調査年が違う数字は単純に比べられません。

Q. 当初所得と再分配所得の違いは何ですか?

A. 当初所得とは、税や社会保険料を引く前の所得で、公的年金などの社会保障給付は含みません。再分配所得とは、当初所得から税金と社会保険料を引き、現金給付と医療・介護・保育の現物給付を加えた所得です。当初所得のジニ係数は税や社会保障を通す前の格差を、再分配所得のジニ係数は通したあとの格差を映し、差が再分配の効果を表します。税や社会保障による効果の大きさは改善度という割合で示され、令和5年調査では34.7%でした。

Q. 日本の最新のジニ係数はいくつですか?

A. 日本の最新のジニ係数は、厚生労働省が2025年12月23日に公表した令和5年所得再分配調査の値です。世帯単位で、当初所得は0.5855、再分配所得は0.3825、再分配による改善度は34.7%でした。世帯員単位の等価所得では、当初所得が0.5037、再分配所得が0.3163です。世帯単位の前回の令和3年調査は、当初所得が0.5700、再分配所得が0.3813でした。所得は2022年の状況で、標本調査のため結果は幅をもって見る必要があります。

Q. ジニ係数はどのように計算しますか?

A. ジニ係数の計算は、ローレンツ曲線をもとにします。所得の低い世帯から並べて累積割合を求め、均等分布線とローレンツ曲線に囲まれた弓形の面積を、三角形の面積0.5で割った比率がジニ係数です。累積の所得割合が5%、15%、30%、50%、100%と進む5世帯なら、弓形は0.20、ジニ係数は0.4になります。実際の統計でも、世帯を所得の低い順に並べて累積割合を求める考え方は同じで、数式を使わず表と面積で追えます。

まとめ

ジニ係数は、所得の分かれ方を0から1で表す指標で、令和5年調査の日本の値は、当初所得が0.5855、再分配所得が0.3825でした。

数字を見かけたら、当初所得か再分配所得か、世帯単位か世帯員単位か、どの出典のいつの値かを確かめると、読み違いを防げます。

まずは厚生労働省の報告書の表を開き、記事の計算を手で追ってみてください。

格差や貧困の課題に関わる企業の事業内容を知りたいときは、ココキャリアの掲載企業から、関心の近い一社を選んで読んでみてください。

1つの数字の向こうに世帯ごとの暮らしの差があると思って読むと、格差のニュースが少し身近になります。

関連記事

≫貧困問題とは?定義や日本と世界の関連する問題10選、取り組む企業を紹介

≫貧困問題に取り組む企業10選!就職・転職におすすめのベンチャーから大手企業

≫福祉問題のキャリアとは?業種・職種・キャリアパスを徹底解説


【企業様向け】格差・貧困問題への取り組みをPRしませんか?

広告掲載・資料請求はこちら

社会課題に関わるキャリアを考えたい方へ

社会課題×キャリアの教科書

COCOCOLOR EARTH 編集長・吉田宏輝 著

想いを仕事に変えるための考え方を、自己理解・企業選び・キャリア設計まで1冊にまとめました。

Kindleで読む →