WFP日本事務所によると、2024年1月末時点で57人の日本人の正規職員が、アジアやアフリカなど世界各地のWFPの事務所で働いています。
WFP(国連世界食糧計画)は、123の国と地域で活動する、国連で唯一の食料支援機関です。
「飢餓に苦しむ人に食料を届ける仕事がしたい」と思ったとき、WFPは真っ先に浮かぶ組織の一つです。
ただ、どんな職種があり、どの入り口から入れるのか、日本の「国連WFP協会」とは何が違うのかは、分かりにくいところです。
ここでは、WFP職員の仕事と契約の種類、入り口、求められる学歴・経験・語学、日本人職員の実例、最近の採用環境の変化を、WFPの公式情報をもとにまとめました。
WFPに入らなくても飢餓や食料の課題に関われる道もあわせて紹介します。
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WFPとは
WFP(国連世界食糧計画)とは、紛争や災害の現場で食料を届け、飢餓をなくすために活動する国連の人道支援機関です。
本部はイタリアのローマにあり、2020年には飢餓との闘いへの貢献が評価され、ノーベル平和賞を受賞しました。
日本には、1996年10月に横浜市のみなとみらいに開設されたWFP日本事務所があり、日本政府や企業、NGOとの連携や広報を担っています。
WFPが取り組む社会課題
FAOなど国連5機関の報告書によると、2025年に飢餓に直面した人は世界で約6億4,500万人と推計されています。
WFPはこうした人々に、食料の配給や現金の給付、学校給食、栄養不良の予防などの支援を届けています。
WFPの年次報告によると、2025年に支援を届けた人は約1億2,100万人でした。
飢餓が起きる原因や、日本との関わりは飢餓とはの記事で解説しています。
国連WFP協会との違い
日本には、WFPと名前の似た「国連WFP協会」という団体もあります。
求人を探すときに混同しやすいので、違いを整理しておきましょう。
| 項目 | WFP(国連世界食糧計画) | 国連WFP協会 |
|---|---|---|
| 組織の性格 | 国連機関 | 日本の認定NPO法人 |
| 日本の拠点 | WFP日本事務所(横浜市) | 協会の事務所(横浜市) |
| 主な役割 | 世界での食料支援 | 日本の個人・企業からの寄付の公式窓口 |
| 働く人 | 国連の職員など | 協会の職員 |
国連WFP協会は、1999年に任意団体「日本WFP友好協会」として設立され、2005年に認定NPO法人になりました。
協会自身も「国連組織WFPの日本支部ではない」と説明しており、協会の職員になることは、WFPの職員になることとは別です。
WFP職員の仕事と職種
WFPの仕事は、食料を届ける現場の仕事と、それを支える本部や地域事務所の仕事に分かれます。
現場の支援を担う仕事
現地の事務所では、どこにどれだけの食料が必要かを調べる調査・分析、支援物資の調達と輸送、配給の運営などが行われています。
食料を直接配るだけでなく、現金や電子バウチャーを配り、地元の商店で食品を選んでもらう支援も行っています。
栄養、ジェンダー、受益者の保護など、支援が必要な人に安全に届くようにする専門職もあります。
本部や地域事務所の仕事
ローマの本部や地域事務所では、資金調達、財務、人事、IT、広報、政策づくりなどの仕事があります。
物流はWFPの強みの一つで、国連人道支援物資備蓄庫(UNHRD)を通じて、ほかの人道支援団体の物資の保管・輸送も担っています。
WFP職員になるルート
WFPの採用サイトは、職員の契約を大きく「任期付きの契約」「短期の契約」「若手向けのプログラム」に分けています。
任期付きの職員
国際専門職は、国籍に関係なく採用される職員で、P1からD2までの職位があります。
契約は任期付きが一般的で、組織の必要や資金、勤務評価に応じて1年または2年の更新が可能です。
このほか、勤務する国の国籍をもつ人が就くナショナル・プロフェッショナル・オフィサーや、事務などを担う一般職、期間の決まったプロジェクトのための1〜4年の契約もあります。
人材プール(FITプール)
WFPには、将来の国際専門職の候補者をあらかじめ選んでおく「FITプール」という仕組みがあります。
WFPによると、選考を通った人は2年間プールに登録され、合うポストが出たときに声がかかります。
応募には、大学の学位と関連分野での職務経験、英語に加えてもう1つの国連公用語の中級程度の力が求められます。
採用後は、緊急支援の現場を含む勤務地へ2〜4年ごとに異動することが前提です。
2026年10月時点では、掲載されている分野の募集はいずれも締め切られていました。
JPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)
JPOは、各国政府の費用負担で若手を国際機関に送り出す制度です。
WFPでは、修士号(または学士号と追加の職務経験)と、2年以上の関連する職務経験が求められます。
日本の場合は外務省が派遣しており、35歳以下が対象です。
制度の全体像は国際機関で社会課題解決に関わるキャリアの記事で解説しています。
インターンシップ・ボランティア
WFPのインターンは、大学や大学院に在籍中の人や、卒業から6か月以内の人が応募でき、学部で2年以上学んでいることと英語力が条件です。
期間は2〜8か月で、生活費の一部として月1,000ドルを上限とする手当が支給されます。
このほか、18歳以上が応募できるWFPボランティア(無給・最長12か月)や、国連ボランティアとして3〜48か月の任務でWFPに派遣される道もあります。
コンサルタント
特定の専門分野で成果を出すために、国際コンサルタントとして契約する形もあります。
契約は1回あたり最長11か月で、職員としての採用とは異なります。
WFP職員に求められる学歴・経験・語学
WFPの国際専門職を目指すなら、学歴・職務経験・語学の3つを準備しておきましょう。
学歴
学歴は、JPOでは修士号が基本で、学士号の場合は追加の職務経験が求められます。
食料安全保障、栄養、開発学、物流、経済学など、目指す仕事に関連する分野の学位が評価されます。
職務経験
職務経験は、応募するポストの分野に関連していることが大切です。
途上国の現場での経験や、物流・調達・データ分析などの専門的な経験は、WFPの仕事に直接つながります。
語学
語学は、英語が必須です。
FITプールではもう1つの国連公用語の中級程度の力が求められ、JPOでも同様の語学力が強く望まれています。
フランス語、スペイン語、アラビア語などができると、アフリカや中東、中南米の事務所で働く際の強みになります。
開発コンサルタントとして途上国のプロジェクトに関わり、実務経験と語学力を磨いてからWFPを目指す人もいます。
WFPで働く日本人の正規職員は57人
WFP日本事務所によると、2024年1月末時点で57人の日本人の正規職員が世界各地の事務所で働いています。
COCOCOLOR EARTHが2022年に取材した並木愛さんは、大学時代に東日本大震災のボランティアを経験し、人道支援の道を志しました。
ロンドン政治経済学院(LSE)の修士課程を修了後、コンサルティング会社で2年半働き、2017年に国連ボランティアとしてジンバブエのWFPに参加しています。
食糧ニーズの調査・分析官として働く間にJPOに合格し、ルワンダ事務所で3年間勤務したのち、2021年に正規職員の試験に合格しました。
取材当時はスーダン事務所で、女性や子ども、障がいのある人が安全に支援を受けられるようにするジェンダー・受益者保護の仕事を担当していました。
特に力を入れていたのは、支援を受ける人が無料で電話相談できるコールセンターの立ち上げで、現地の言葉を話すスタッフのチームをまとめていました。
民間企業から国際機関に進んだ道のりは、国連WFP並木愛さんのインタビューで詳しく読めます。
新聞記者からUNESCOに転身したUNESCO斎藤珠里さんのインタビューも、別の国連機関に入った例として参考になります。
WFPは人員を約1万6,000人まで減らす方針
WFPを目指すなら、最近の資金と人員の変化も知っておく必要があります。
WFPは2025年3月、2025年の資金が前年に比べて40%減る見込みだと発表しました。
WFPの2026〜2028年の運営計画によると、2025年初めの人員はインターンやボランティアを含めて2万2,000人を少し超えていました。
WFPはこれを約1万6,000人まで減らす方針を示しています。
2026年9月には、ルーク・J・リンドバーグ氏が新しい事務局長に任命されたことも発表されました。
当面は募集が絞られる可能性があるため、WFPだけを目標にせず、関連する分野で経験を積みながら機会を待つ姿勢が大切です。
WFP以外で飢餓や食料の課題に関わる道
飢餓や食料の課題に関わる方法は、WFPで働くことだけではありません。
JICA・政府機関
JICA(国際協力機構)は、途上国の農業や栄養改善、食料安全保障の事業を支援しています。
職員の採用ルートはJICAで働くには?の記事にまとめています。
NGO・開発コンサルタント
国際協力NGOは、WFPなどの国際機関と組んで、現地で食料の配給や栄養改善の事業を担うこともあります。
開発コンサルタントとして、途上国の農業や栄養改善のプロジェクトに関わる道もあります。
国際機関・JICA・NGO・民間企業・起業という5つのルートの入り口は、国際協力を仕事にするとは?の記事にまとめています。
企業
日本企業の中にも、WFPと協力して食料や健康の課題に取り組む会社があります。
株式会社坂ノ途中
株式会社坂ノ途中は、環境負荷の小さい農業を広げることを目指し、日本と東南アジアで農産物の流通に取り組む京都の会社です。
WFPとラオスのコーヒー会社SAFFRON COFFEEと組み、ラオス北部の8つの村でコーヒー生産者を支える「COFFEE-JAPANプロジェクト」を実施しました。
坂ノ途中が栽培技術や加工設備を支え、WFPが各家庭の栄養改善の指導を担うという役割分担で進めました(参考:株式会社坂ノ途中)。
武田薬品工業株式会社
武田薬品工業株式会社は、医薬品の研究開発・製造・販売を行う製薬会社です。
2021年にグローバルCSRプログラムを通じてWFPへの13億円の寄付を発表し、2022年から2026年にかけて西アフリカの保健医療の物流強化に取り組んでいます。
拠点は、WFPが管理するガーナ・アクラの国連人道支援物資備蓄庫です。
温度管理が必要な医療製品の保管・輸送能力を高めることと、地域の物流の専門家を育てる研修拠点をつくることを目指しています(参考:国連WFP)。
飢餓の課題に取り組むほかの会社は飢餓をゼロにに取り組む企業10選で、国際協力に取り組む会社は国際協力に取り組む企業10選で紹介しています。
よくある質問
WFPで働くことについて、よく寄せられる質問にお答えします。
Q. 国連WFP協会で働くことは、WFPで働くことと同じですか?
A. 同じではありません。国連WFP協会は、日本の個人や企業からの寄付を受け付けるWFPの公式窓口となっている、日本の認定NPO法人です。協会自身も、国連組織であるWFPの日本支部ではないと説明しています。協会は日本で情報発信や募金活動、企業・団体との連携を担っており、その職員は国連の職員ではありません。WFPの職員を目指す場合は、WFPの採用サイトや外務省のJPO制度などから応募します。求人情報を見るときは、募集しているのがどちらの組織なのかを最初に確かめると、混同を防げます。
Q. WFPのインターンに給料はありますか?
A. WFPのインターンには、生活費の一部として、月1,000ドルを上限とする手当が支給されます。手当の額は勤務する都市や国によって決まり、期間中は医療・傷害保険も用意されています。期間は2〜8か月で、本部、地域事務所、各国の事務所で募集があります。大学や大学院に在籍中か卒業から6か月以内で、学部で2年以上学んでいる人が対象で、英語力も求められます。応募の前に、勤務地の生活費と手当の額を比べておくと安心です。
Q. 新卒でWFPの職員になれますか?
A. 大学を卒業してすぐWFPの国際専門職になるのは簡単ではありません。若手向けのJPOでも、原則として修士号と2年以上の職務経験が求められるためです。学生のうちはインターンに挑戦し、卒業後は企業や開発コンサルタント、NGO、JICAなどで経験を積むのが現実的な道筋です。並木愛さんも、コンサルティング会社で働いたあと、国連ボランティアを経てWFPに入りました。早い段階から、どの分野の専門性を身につけるかを考えておくと、大学院の専攻や就職先を選びやすくなります。
Q. WFPで働く日本人は何人いますか?
A. WFP日本事務所によると、2024年1月末時点で57人の日本人の正規職員が、アジアやアフリカなど世界各地の事務所で働いています。日本は政府と民間の両方からWFPを支えており、2023年には日本政府から約2億897万ドル、国連WFP協会を通じて民間から約32.1億円の支援が寄せられました。日本の若い世代にとっては、外務省が費用を負担して国際機関に派遣するJPO制度が、WFPを目指す代表的な入り口です。
まとめ
WFPで働くには、食料支援に関わる専門性と現場の経験、そして英語を中心とした語学力が求められます。
入り口には、任期付きの職員、FITプール、JPO、インターン、ボランティア、コンサルタントがあり、日本人の若手にとってはJPOが代表的なルートです。
まずはWFPの採用サイトで、関心のある分野の募集要項を読んでみてください。
足りない経験が見えたら、企業や開発コンサルタント、NGO、JICAで積んでいくのが近道です。
飢餓や食料の課題に取り組む企業は、ココキャリアで探すことができます。
並木さんのように、身近なボランティアの経験から人道支援の道に進んだ人もいます。
あなたの「食べられない人をなくしたい」という思いも、確かなキャリアにつなげていけます。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
