FAOの人事報告によると、2025年末時点でFAOで働いていた人は1万5,080人でした。

そのうち職員は3,376人で、残りの約8割はコンサルタントやプロジェクトごとに雇われる人たちです。

日本はFAOで「職員が少ない国」に分類されており、日本からの応募が歓迎される立場にあります。

「農業や漁業の知識を生かして、世界の飢餓を減らす仕事がしたい」。

そう考えたとき、候補に挙がるのがFAOです。

ただ、同じローマに本部を置くWFPとの違いや、自分の専門性がどの仕事につながるのかは、わかりにくいですよね。

ここでは、FAO職員の仕事と職種、採用の入り口、求められる学歴・経験・語学、日本人職員の現状、最近の予算と人員の変化を、FAOの公式資料をもとに紹介します。

FAOに入らなくても農林水産業の課題に関われる道もあわせて紹介します。

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FAOとは

FAO(国連食糧農業機関)とは、飢餓をなくし、農業・林業・水産業を持続可能なものにするために、各国に知識と技術を提供する国連の専門機関です。

1945年10月16日に設立され、毎年10月16日は設立日にちなんだ「世界食料デー」になっています。

本部はイタリアのローマにあり、130以上の国で活動しています。

FAOの加盟国の一覧によると、2026年2月4日時点の加盟国は193か国で、これにEUと2つの準加盟国(フェロー諸島・トケラウ)が加わります。

日本は1951年に加盟しました。

FAOが取り組む社会課題

FAOなど国連5機関が2026年7月に発表した報告書によると、2025年に飢餓に直面した人は約6億4,500万人で、世界人口の7.8%にあたります。

前年より約1,400万人減ったものの、アフリカでは人口の20.0%が飢餓に直面しています。

健康的な食事をとるお金がない人は、世界で約26億9,000万人いると推計されています。

FAOは、こうした飢餓や栄養不良の背景にある農業の生産性、農村の貧困、気候変動、病害虫や家畜の感染症といった問題に、技術と政策の両面から取り組んでいます。

飢餓が起きる原因や、日本との関わりは飢餓とはの記事で解説しています。

ローマにある3つの国連機関の違い

ローマには、食料と農業を扱う国連機関がFAOのほかに2つあります。

役割が重なって見えるため、違いを押さえておきましょう。

項目 FAO WFP IFAD
日本語の名称 国連食糧農業機関 国連世界食糧計画 国際農業開発基金
主な役割 農林水産業の知識・技術の提供、統計、国際的なルールづくり 紛争や災害の現場での食料支援 途上国の農村開発への融資・贈与
生かせる専門性 農学・畜産・水産・林学・農業経済 物流・調達・緊急支援 開発金融・農村開発

WFPが「いま食べられない人」に食料を届けるのに対し、FAOは「食料をつくる力」そのものを各国と一緒に高める機関です。

IFADは、お金を貸したり贈ったりして、途上国の小規模農家の暮らしを支えています。

農業や水産の専門知識を仕事の中心に置きたいなら、3機関の中ではFAOがいちばん近い職場です。

FAO駐日連絡事務所

国連広報センターによると、FAO駐日連絡事務所は1997年に横浜に設立されました。

所在地は、横浜市西区みなとみらいのパシフィコ横浜 国際協力センター5階です。

事務所は、日本政府との連絡調整や、世界の食料安全保障・栄養・飢餓の課題を日本に伝える広報、大学や企業との連携を担っています。

2026年7月にも、「OECD-FAO農業見通し2026-2035」の発表イベントや、大学などと開く合同セミナーを開催しました(参考:FAO駐日連絡事務所)。

FAO駐日連絡事務所の採用情報のページでは、インターン・ボランティア・フェローズの説明会の録画も公開されています。

FAOの仕事に日本で最初に触れるなら、この事務所の発信やイベントが入り口になります。


FAO職員の仕事と職種

FAOの仕事は、農林水産業の専門分野ごとに分かれています。

自分が学んできた分野から、どんな仕事につながるのかを見ていきましょう。

専門分野から見るFAOの仕事

農学・植物防疫

農学・植物防疫の専門家は、作物の生産性を高める技術の普及や、病害虫への対策を担います。

植物の病害虫が国境を越えて広がるのを防ぐ国際植物防疫条約(IPPC)の事務局も、FAOに置かれています。

畜産・獣医学

畜産・獣医学の専門家は、家畜の生産と、国境を越えて広がる家畜の感染症への対策を担います。

FAOは2004年に、国境を越える家畜の感染症に対応する緊急センター(ECTAD)を立ち上げました(参考:FAO財政委員会の資料)。

水産学

水産学の専門家は、魚の資源管理や養殖の技術、漁業で暮らす人の生活改善に関わります。

林学

林学の専門家は、世界の森林資源の調査や、森林を守りながら使う方法の普及を担います。

農業経済・統計

農業経済・統計の専門家は、食料の価格や生産量のデータを集めて分析し、各国の政策づくりを支えます。

飢餓人口を推計する報告書の作成も、この分野の仕事です。

食品安全・栄養

食品安全・栄養の専門家は、安全な食品の基準づくりや、栄養改善の事業に関わります。

食品の国際規格をつくるコーデックス委員会は、FAOとWHOが設置した政府間機関です。

このほか、財務、人事、IT、広報、法務など、組織を動かすための専門職もあります。

農業の分野でどんな仕事があるかの全体像は、持続可能な農業のキャリアの記事で紹介しています。

職員の区分と人数

FAOの人事報告によると、2025年末の職員3,376人のうち、1,838人がローマの本部、1,538人が世界各地の事務所で働いています。

職員の区分と人数は、次のとおりです。

区分 人数 内容
幹部(D以上) 136人 部局や事務所を率いる
国際専門職 1,650人 世界中から採用される専門職
JPO 27人 各国政府の費用で派遣される若手
ナショナル・プロフェッショナル・オフィサー 282人 自国の事務所で働く専門職
一般職 1,281人 事務などで業務を支える

職員とは別に、コンサルタントが2,576人、現地で雇われるプロジェクト要員が5,623人います。

FAOの仕事の多くは、こうした任期付きの契約で支えられています。

FAOで働くための5つの入り口

FAOには、職員の空席公募のほかに、「ヤング・タレント・プログラム」と呼ばれる若手向けの入り口があります。

国際機関全般の採用ルートや、民間・NGOから目指すキャリアの組み立て方は、国際機関で社会課題解決に関わるキャリアの記事で解説しています。

空席公募

空席公募は、空いたポストごとに職員を募集する、FAOの基本的な採用方法です。

募集はFAOの採用サイトで公開され、ポストごとに必要な学位・経験年数・語学が決まっています。

FAOは、女性と、職員が少ない国の人からの応募を特に歓迎すると採用ページに明記しています。

JPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)

JPOは、外務省が費用を負担し、35歳以下で修士号と2年以上の職歴をもつ日本人を、2年間国際機関に派遣する制度です。

FAOの人事報告によると、2025年にFAOで働いたJPO44人のうち9人が日本の派遣で、国別で最も多い人数でした。

ヤング・プロフェッショナル・プログラム

ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)は、職員が少ない国や職員がいない国の若手を、正規の専門職として採用するFAO独自の制度です。

対象は、応募する年の12月31日時点で32歳以下、修士号以上の学位と、FAOの分野で1年以上の職務経験をもつ人です。

採用されるとP1の職位で2年の任期付き契約を結び、1年目は試用期間になります。

FAOの一覧では、2026年9月1日時点で日本は「職員が少ない国」に入っているため、日本人も対象です。

ただし、小島嶼開発途上国や後発開発途上国などの出身者が優先されます。

2025年の参加者は9人で、狭き門です。

インターン・ボランティア・フェローズ

学生や若手、研究者が短い期間FAOの仕事に関わる制度として、インターン、ボランティア、フェローズの3つがあります。

制度 主な対象 期間・待遇
インターン 21〜30歳の学生・大学卒業直後の人 3〜11か月、定額の手当あり
ボランティア 18歳以上 無給、経費は本人負担
フェローズ 修士号以上で研究・実務経験2年以上の人(年齢制限なし) 無給、経費は派遣元の大学・研究機関と本人が負担

どの制度も、FAOの公用語のうち少なくとも1つを実務で使えることが条件です(参考:FAO駐日連絡事務所の採用情報、FAOインターンシップ・プログラム)。

2025年の参加者は、インターン270人、ボランティア90人、フェローズ14人でした。

3つの制度への応募は5万7,939件で、前年より13%増えています。

コンサルタント

FAOは、特定の分野の専門家とコンサルタント契約を結び、期限のある仕事を任せることもあります。

2025年末には2,576人がコンサルタントとして働いており、職員になる前に専門家としてFAOに関わる人もいます。

国連機関の職員の区分や給与の仕組み、YPPとJPOの違いは、国連職員になるには?の記事で解説しています。


FAO職員に求められる学歴・経験・語学

FAOの国際専門職を目指すなら、学歴・職務経験・語学の3つを準備しておきましょう。

学歴

学歴では、応募するポストの仕事に関連する分野の学位が求められます。

YPPやフェローズでは修士号以上が条件になっているように、専門職では修士号をもつ人が目立ちます。

農学、畜産学、水産学、林学、農業経済学、栄養学などの専攻は、FAOの仕事に直接つながります。

職務経験

職務経験は、応募するポストの分野に関連していることが大切です。

途上国の農村での経験や、政府・研究機関での農林水産業の仕事は、FAOの仕事に近い経験になります。

途上国の農業や栄養改善のプロジェクトに関わる開発コンサルタントとして、実務経験を積む人もいます。

語学

語学で基準になるのは、英語・フランス語・スペイン語・アラビア語・中国語・ロシア語の6つのFAO公用語です。

YPPでは、英語を仕事で使える力に加えて、ほかの公用語1つの基礎的な知識が求められます。

アフリカや中南米の事務所で働くなら、フランス語やスペイン語ができると活躍の場が広がります。

日本はFAOで「職員が少ない国」

FAOは、加盟国であること、人口、FAOの予算への分担金の3つをもとに、国ごとに望ましい職員数の範囲を計算しています。

通常予算で賄われる専門職のポストで働く自国民がこの範囲の下限に届かない国が、「職員が少ない国」です。

FAOの一覧によると、2026年9月1日時点で「職員が少ない国」とされているのは、日本を含む15か国です。

一方で、2025年にFAOで働いたJPOは日本の派遣が国別で最も多く、若手の日本人がFAOに入る道は開かれています。

YPPでも日本人が応募できる状態にあり、32歳以下で修士号と1年以上の経験があれば、専門職の職員を目指すこともできます。

政府機関の立場から国際協力に関わる道も含めて考えたい人は、政府機関で社会課題解決に関わるキャリアの記事も参考にしてください。


2026〜27年は空席ポスト177を廃止

FAOを目指すなら、最近の予算と人員の変化も知っておく必要があります。

FAO財政委員会の資料によると、2025年初めに米国の資金による108のプロジェクトが打ち切られました。

その影響で、職員やコンサルタントなど358人がFAOを離れています。

家畜の感染症に対応するECTADは、資金の86%を米国に頼っていたため、特に大きな影響を受けました。

2026〜27年の2年間の通常予算は、2025年の総会で約10億790万ドルと決まりました。

この額に収めるため、総会はFAOに約1,380万ドルの節約を求めました(参考:FAO理事会の資料)。

物価の上昇分を上乗せしない、名目で横ばいの予算になったため、FAOは2026〜27年に、空席になっている177のポストを廃止します。

各国からの任意の拠出金も、2022年の21億ドルから、2025年には15億ドルまで減る見込みです。

2025年末にFAOで働く人は1万5,080人で、前年の1万5,840人から約5%減りました。

当面は募集が絞られる可能性があるため、FAOだけを目標にせず、次に紹介する道で経験を積みながら機会を待つ姿勢が大切です。

FAOに入らずに農林水産業の課題に関わる道

世界の食料や農林水産業の課題に関わる方法は、FAOで働くことだけではありません。

ここで積んだ経験は、将来FAOに応募するときの実務経験にもなります。

農林水産省などの政府機関

農林水産省は、農林水産業の国際交渉や、途上国への国際協力も担っています。

COCOCOLOR EARTHが2019年に取材した西村はじめさんは、取材当時、農林水産省国際部でTICAD7(第7回アフリカ開発会議)の担当をしていました。

2009年から2012年には在チュニジア日本大使館に出向し、JICAの事務所と相談しながら新しい協力の内容を考えていたそうです。

政府の立場からアフリカの農業と向き合ってきた経験は、農林水産省 西村はじめさんのインタビューで読めます。

JICA・海外協力隊

JICA(国際協力機構)は、途上国の農業や水産業、栄養改善の事業を支援しています。

COCOCOLOR EARTHが2026年6月に公開したインタビューで話を聞いた小林義則さんは、新卒で入った食品メーカーを辞めて海外協力隊に参加しました。

派遣先はザンビアで、農業省の出先機関に配属されて栄養改善の活動をしました。

現地の人が少しでも収入を得られるように、米づくりやキノコづくりを提案した2年間だったそうです。

JICA職員の採用ルートや求められるスキルは、JICAで働くには?の記事にまとめています。

開発コンサルタント

開発コンサルタントは、JICAや国際機関から依頼を受けて、途上国のプロジェクトの計画や運営を担う専門職です。

小林さんは帰国後、開発コンサルタントの道を選びました。

取材当時は大手の開発コンサルタント会社で、JICAの事業の技術移転やプロジェクトの運営を担当していました。

協力隊から開発コンサルタントへ進んだ道のりは、開発コンサル 小林義則さんのインタビューで詳しく読めます。

仕事内容やなり方は開発コンサルタントの記事で紹介しています。

農業・水産の企業

日本企業の中にも、世界の農業や水産業の課題に事業として取り組む会社があります。

株式会社クボタ

株式会社クボタは、トラクターやコンバインなどの農業機械を手がけるメーカーです。

世界の食料・水・環境の課題の解決を掲げ、製品は150か国以上で使われています。

2025年12月期の売上高の約79%は、海外での売上です。

稲作の機械化で培った技術を、アジアをはじめとする世界の農業の現場に届けています(参考:株式会社クボタ)。

株式会社サカタのタネ

株式会社サカタのタネは、花や野菜の種子を開発・販売する横浜の種苗会社です。

2026年7月時点で世界23か国で事業を展開し、170か国以上に向けてタネを販売しています。

世界各地の気候風土や生活文化に合う品種や、病気に強い品種の開発に取り組んでいます(参考:株式会社サカタのタネ)。

リージョナルフィッシュ株式会社

リージョナルフィッシュ株式会社は、ゲノム編集による魚の品種改良と、スマート養殖に取り組む京都のスタートアップです。

2022年には、インドネシアの水産スタートアップARUNA社と組んだゲノム編集育種の実証事業が、JETROの事業に採択されました。

国内で「可食部増量マダイ」などを開発した技術を生かし、インドネシアで役立つ品種を短い期間で開発することを目指しています(参考:リージョナルフィッシュ株式会社)。

ほかの会社は、農業問題に取り組む企業10選と漁業の課題に取り組む企業10選で紹介しています。

緊急の食料支援を担うWFPについてはWFPで働くには?の記事で、ほかの国際機関の役割は国際機関一覧の記事で紹介しています。


よくある質問

FAOで働くことについて、よく寄せられる質問にお答えします。

Q. 農学部の出身でないとFAOで働けませんか?

A. 農学部の出身でなくても働けます。FAOには、畜産・獣医学、水産学、林学、農業経済、統計、栄養、食品安全など、農林水産業に関わる幅広い専門職があります。財務、人事、IT、広報、法務など、組織を動かすための専門職もあります。ただし技術系のポストでは、その分野の学位と、途上国の農村や政府機関などでの実務経験が重視されます。大学院でどの分野を専攻するかを、目指す仕事から逆算して決めておくと、応募できるポストの見通しが立てやすくなります。

Q. 学生でもFAOのインターンに応募できますか?

A. 応募できます。FAOのインターンは、21〜30歳で、大学や大学院に在籍中の学生か、卒業して間もない人が対象です。期間は3〜11か月で、定額の手当が支給されます。英語、フランス語、スペイン語などFAOの公用語のうち、少なくとも1つを実務で使えることが条件です。2025年には270人がインターンとして働きました。応募は多く、インターン・ボランティア・フェローズの3制度で5万件を超えるため、専攻とFAOの仕事のつながりを志望動機で具体的に示しましょう。

Q. 日本でFAOの仕事に触れる方法はありますか?

A. 横浜のパシフィコ横浜にあるFAO駐日連絡事務所の発信やイベントが入り口になります。この事務所は1997年に設立され、日本政府との連絡調整や、世界の食料問題を日本に伝える広報を担っています。報告書の発表イベントや、大学などと開く合同セミナーが定期的に開かれており、2026年7月にも開催されました。日本語の採用情報のページでは、インターン・ボランティア・フェローズの説明会の録画も見られます。まずはこうした場で、FAOの仕事を具体的に知ることから始めましょう。

Q. FAOで働く日本人は少ないのですか?

A. 少ないといえます。FAOは、加盟国であること、人口、予算への分担金をもとに、国ごとの望ましい職員数を計算しています。2026年9月1日時点で、日本はこの範囲に届かない「職員が少ない国」に入っています。一方で、2025年にFAOで働いたJPO44人のうち9人が日本の派遣で、国別で最も多い人数でした。職員が少ない国の若手を採用するYPPにも、日本人は応募できます。日本人の応募は、FAOにとっても国籍のバランスを整えるうえで意味があります。

まとめ

FAOで働くには、農学・畜産・水産・林学・農業経済などの専門性と、途上国や政府機関での実務経験、そして英語を中心とした語学力が求められます。

入り口には、空席公募、JPO、YPP、インターン・ボランティア・フェローズ、コンサルタントがあり、日本は応募が歓迎される側の国です。

まずはFAO駐日連絡事務所のイベントや説明会の録画で、FAOの仕事を具体的に知ってみてください。

足りない経験が見えたら、農林水産省やJICA、開発コンサルタント、企業で積んでいくのが近道です。

農業や水産業の課題に取り組む企業は、ココキャリアで探すことができます。

あなたが学んできた農業や漁業の知識は、世界の食卓を支える仕事につながっています。

一歩ずつ経験を重ねて、飢餓のない世界をつくる仕事に近づいていきましょう。

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