賞味期限が近いというだけで、棚から下げられていく食品があります。

その同じ地域に、今日の食事を用意できずにいる家庭もあります。

この二つを結び直そうとしているのが、フードバンクという仕組みです。

環境省が2026年6月30日に公表した推計では、2024年度の食品ロスは461万トンでした。

一方、農林水産省のリストに載るフードバンクは、2026年8月時点で343団体です。

この記事では、定義と仕組みからフードドライブとの違い、寄贈の注意点、2026年に始まった認証制度、仕事として関わる道筋までを解説します。

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食品ロスに取り組む企業やキャリアの情報は、以下のページにまとめています。

≫フードロスに取り組む企業・キャリア情報

 

フードバンクとは

フードバンクという言葉は、余った食品を必要な人へ届ける活動と、それを担う団体の両方を指して使われます。

農林水産省が示す定義

フードバンクとは、まだ食べられるのに流通できない食品を企業などから受け取り、必要としている人や団体へ無償で届ける活動を行う団体です。

農林水産省は、フードバンクを次のように説明しています。

「主として、食品関連事業者その他の者から未利用食品の寄附を受けて、こども食堂、こども宅食、生活困窮者、福祉施設等に未利用食品を無償で提供するための活動を行う団体(名称のいかんを問わない。)」

参考:円滑な食品アクセスの確保(農林水産省)

名称を問わないとされ、別の名前で同じ役割を果たす団体もあります。

日本でのはじまりと広がり方

日本のフードバンクの草分けとされるのが、2002年7月25日に設立されたセカンドハーベスト・ジャパンです。

消費者庁によると、2023年9月30日時点で報告のあった252団体のうち114団体は、食品ロス削減推進法が施行された2019年以後の発足でした。

食品を配るだけの活動ではない

受け取った食品の状態や期限、アレルゲンの情報を記録し、届け先と合意を取りながら渡すのが実務です。

この管理があるからこそ、企業は在庫を安心して託せます。

食品ロスという課題の全体像は、以下の記事で解説しています。

≫フードロスとは?削減するために私たちができること


フードバンクの仕組み|食品が届くまでの流れ

仕組みは、「寄贈元」「間に立つ団体」「受け取り先」の三層に分かれます。

寄贈元は食品企業や農家、そして国

最も多い寄贈元は、食品メーカーや卸、小売といった食品関連事業者です。

製造工程で出た規格外品、包装の印字ミス、賞味期限が近づいた在庫などが持ち込まれます。

農家から、形や大きさが出荷基準に合わない農産物が届くこともあります。

国も寄贈元のひとつで、農林水産省は役割を終えた災害用備蓄食品をフードバンク団体等へ提供しています。

受け取り先は福祉施設やこども食堂、生活困窮世帯

届け先として想定されているのは、福祉施設、こども食堂、こども宅食、生活に困っている世帯です。

農林水産省の令和6年度食料・農業・農村白書は、むすびえの調査をもとに、2024年8〜10月時点で全国に10,867か所のこども食堂があると記しています。

参考:食料・農業・農村白書 令和6年度(農林水産省)

食の格差そのものは、以下の記事で掘り下げています。

≫飢餓とは?世界と日本の現状やSDGsとの関係、私たちができること

間に立つ団体の運び方は四つに分かれる

消費者庁は、提供方法を「在庫型」「クロスドッキング型」「引取・配送型」「仲介型」の四つに分類しています。

在庫型は倉庫に保管して必要に応じて配送する方式、クロスドッキング型は拠点に集約して仕分けてから出荷する方式です。

引取・配送型はスタッフが寄贈元から届け先へ直接運び、仲介型は運搬を任せて調整に特化します。

ただし、仲介に特化した団体は通常フードバンクとは扱われません。

2019年時点の調査では、8割弱の団体が在庫型を採っていました。

参考:食品寄附等の現状(消費者庁)

フードバンクとフードドライブの違い

混同されやすい二つですが、食品を集める相手が違います。

違いを押さえれば、自分がどちらに関われるのかも見えてきます。

集める相手が企業か、家庭か

環境省の「フードドライブ実施の手引き」は、フードドライブを次のように定義しています。

「家庭で余っている食品を集めて、食品を必要としている地域のフードバンク等の生活困窮者支援団体、子ども食堂、福祉施設等に寄付する活動」

参考:フードドライブ実施の手引き(環境省)

フードバンクが主に企業から受け取るのに対し、フードドライブは家庭から集めます。

集まった食品がフードバンクへ渡されることもあり、入口の違う二つの流れです。

環境省は、フードドライブを実施する団体が増えるほど、寄付先のフードバンク側で検品や集計の負担が増えると見込んでいます。

「フードロス」と「食品ロス」という言葉の使い分けは、以下の記事で整理しています。

≫食品ロスとは?フードロスとの違いや日本の現状、取り組む企業を解説


日本でフードバンクはどこまで広がったか

団体数は増える一方、扱う量は食品ロス全体から見ればまだ小さいのが実情です。

団体数はこの数年でも増えている

農林水産省のフードバンクオープンリストに載る団体は、2023年9月30日時点の252団体から2026年8月時点の343団体へ増えました。

どちらも掲載を希望した団体に限られるため、実際の活動団体数はこれより多い可能性があります。

取扱量は食品ロス全体のごく一部

消費者庁によると、全国のフードバンクの食品取扱量は、他のフードバンクからの受入量を除いた集計で2022年に10,449トンでした。

一方、2024年度の食品ロス発生量は461万トンで、家庭系が約224万トン、事業系が約237万トンと推計されています。

参考:食品ロスの発生量の推計値 令和6年度(環境省)

時点が異なるため単純な比較はできませんが、フードバンクが受け止めているのは食品ロス全体のごく一部です。

フードバンクと法律|寄贈するときの責任と衛生管理

食品を無償で渡す行為にも、法律は及びます。

食品ロス削減推進法が土台にある

食品ロス削減推進法は令和元年法律第19号として2019年5月31日に公布され、同年10月1日に施行されました。

国や地方公共団体の責務を定めた法律で、これにもとづく第2次の基本方針が2025年3月25日に閣議決定されています。

参考:食品ロス削減推進法について(消費者庁)

無償提供にも食品衛生法・食品表示法が適用される

無償だから規制の外側にある、というわけではありません。

消費者庁は、食品衛生法第6条の対象行為に「不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合」が含まれ、無償提供活動も対象になると整理しています。

食品表示法第5条が禁じる「販売」にも、不特定または多数の者に対する販売以外の譲渡が含まれます。

異物混入などの違法行為に故意や過失があった場合は、民法第709条の不法行為責任が問われる可能性があります。

寄贈する側が製造物責任法上の「製造業者等」にあたる場合は、引き渡した時点にあった欠陥について同法第3条の責任を問われることもあります。

これは寄贈をやめる理由ではなく、記録と合意を丁寧に残す理由になります。

2024年に食品寄附ガイドラインが公表された

食品寄附等に関する官民協議会は「食品寄附ガイドライン〜食品寄附の信頼性向上に向けて〜」を策定し、2024年12月25日に公表しました。

長く実務の拠りどころだった農林水産省の「フードバンク活動における食品の取扱い等に関する手引き」は、これに伴い2025年2月5日付けで廃止されています。

参考:食品寄附(農林水産省)

2026年4月にフードバンク認証制度が始まった

消費者庁と農林水産省は、食品寄附ガイドラインの遵守事項を満たすフードバンクを認証する制度を、2026年4月1日から連携して始めました。

認証の対象は、フードバンクオープンリストに掲載された団体です。

審査基準の主な項目は、入庫時の確認、保管時の確認、提供時の確認、体制・ガバナンスに関する確認の四つです。

参考:フードバンク認証制度の運用開始(消費者庁)

消費者庁は2026年7月28日、初めての認証フードバンクとして次の4団体を公表しました。

  • 特定非営利活動法人フードバンク福岡
  • 認定特定非営利活動法人フードバンク関西
  • 認定NPO法人フードバンク山梨
  • 特定非営利活動法人セカンドハーベスト・ジャパン

参考:「認証フードバンク」の初認証について(消費者庁)

食品ロスに取り組む営利企業の顔ぶれは、以下の記事で紹介しています。

≫フードロスに取り組む企業10選!就職・転職におすすめのベンチャーを中心に紹介


フードバンクが抱える四つの課題

活動が広がる一方、現場には共通した壁があります。

人手が足りない

農林水産省が2019年度に実施したフードバンク実態調査では、1団体あたりのスタッフ数は平均11.7人でした。

最も多い団体で90人、最も少ない団体では1人でした。

保管する場所と設備が足りない

保管の壁は、届け先の側にもあります。

食支援活動を対象にした2021年の調査では、こども食堂の約5割が「冷蔵・冷凍設備がない」「保管スペースがない」ことを課題に挙げました。

受け取る側に設備がなければ、フードバンクは生鮮品や冷凍品を渡せません。

運ぶ手段とコストが重い

2021年の調査でこども食堂に聞くと、「受け取る場所が遠い」「運搬手段がない」という運搬面の課題が1〜2割の回答率で挙がりました。

一般社団法人全国食支援活動協力会は、寄贈における課題として「各種調整の手間」と「配送コスト」を指摘しています。

資金の見通しが立てにくい

食品は無償で受け取れても、倉庫代や車両費、人件費はかかります。

フードバンクの多くはNPO法人などの非営利組織で、助成金や寄付が資金の中心になります。

非営利組織の財源や働き方は、以下の記事で説明しています。

≫NPOとは?意味・種類・会社との違い・働き方をわかりやすく解説

フードバンク活動に取り組む団体の例

規模も役割も異なる3つの団体を取り上げます。

セカンドハーベスト・ジャパン

2002年に設立された日本の草分けで、2018年4月11日からは認定NPO法人として活動しています。

フードバンク活動に加え、フードパントリーやキッチン事業、政策提言にも取り組んでいます。

参考:セカンドハーベスト・ジャパン

フードバンク関西

兵庫県神戸市に拠点を置く認定NPO法人で、活動を「あつめる」「とどける」「つなぐ」の三つで整理しています。

企業や市場から食品を集め、福祉施設や団体への配布、食のセーフティネット事業、困窮子育て世帯への支援を行っています。

参考:フードバンク関西

全国フードバンク推進協議会

2015年11月13日に設立された、フードバンクを支えるネットワーク型の一般社団法人です。

食品のマッチング事業、政策提言や調査研究、フードバンク団体への支援を手がけています。

参考:全国フードバンク推進協議会


フードバンク・食支援に関わる仕事

食を届ける活動は、ボランティアだけで回っているわけではありません。

給与を得て関わる道もあります。

フードバンクの運営スタッフ

団体の中では、寄贈元の開拓、在庫と期限の管理、届け先との調整、助成金の申請、広報といった仕事が発生します。

一人が複数の役割を兼ねやすく、倉庫管理や食品衛生、資金調達の経験がそのまま強みになります。

各団体の公式サイトには活動報告やスタッフ募集が載るため、まず読むところから始められます。

食品企業のサステナビリティ・CSR担当

どの在庫をどの団体にどう渡すか設計するのは、食品メーカーや小売のサステナビリティ部門です。

食品衛生法や食品表示法の適用関係を理解し、記録と合意の仕組みを整える力が求められます。

物流・在庫管理、そして行政

保管と配送は調査でも課題に挙がる部分で、倉庫の設計や配送ルートの最適化、温度管理といった専門性が効いてきます。

自治体の側にも、フードドライブの企画運営や地域の団体をつなぐ仕事があります。

倉庫や物流、広報といった職種ごとに社会課題との関わり方を見比べるなら、社会課題解決を仕事にする10職種まとめが手がかりになります。

フードバンクが食品を届ける先は、生活協同組合の活動領域とも重なります。

グリーンコープふくおか理事長の坂本寛子さんは、西日本の16生協でつくるグリーンコープが、生活困窮者支援や子どもの居場所づくりにも取り組んでいると話しています。

≫くらしの安心安全を追求する生活協同組合、グリーンコープの魅力に迫る!~グリーンコープふくおか理事長 坂本寛子~

フードロス分野の業界構造や未経験からの入り方は、以下にまとめています。

≫フードロスに携わる仕事がしたい!就活・転職に役立つ業界・業種を解説

今日からフードバンクに関われること

仕事にしなくても関われる余地はあります。

負担の小さいものから紹介します。

家庭の食品を寄贈する

社会福祉協議会や自治体施設、スーパーマーケットの店頭に、回収ボックスが常設されていることがあります。

受け付けられるのは、未開封で常温保存ができ、賞味期限まで余裕のある食品が中心です。

種類ごとに分けたうえで、賞味期限でもまとめてあると、受け取る側の手間が減ります。

ボランティアや寄付で支える

仕分けや検品、袋詰め、配送の補助は、経験がなくても参加できます。

資金の寄付は、倉庫代や配送費といった見えにくい部分を支えます。


よくある質問

フードバンクについて、特に多い4つの疑問に答えます。

Q. フードバンクとは何をしている団体ですか?

A. フードバンクとは、まだ食べられるのに流通できない食品を企業などから受け取り、必要とする人や団体へ無償で届ける活動を行う団体です。農林水産省は、主として食品関連事業者その他の者から未利用食品の寄附を受けて、こども食堂、こども宅食、生活困窮者、福祉施設等に無償で提供する活動を行う団体と説明しています。名称のいかんを問わないとされ、別の名前で同じ役割を果たす団体もあります。受け取った食品の状態や期限、アレルゲン情報を記録し、届け先と合意を取りながら渡す管理も担っています。

Q. フードバンクとフードドライブの違いは何ですか?

A. 食品を集める相手が違います。フードバンクは主に食品関連事業者から未利用食品の寄附を受け取り、福祉施設やこども食堂へ届けます。フードドライブは、環境省の実施の手引きによると、家庭で余っている食品を集めて、地域のフードバンク等の生活困窮者支援団体、子ども食堂、福祉施設等に寄付する活動を指します。企業が入口か、家庭が入口かという違いです。フードドライブで集まった食品がフードバンクへ渡されることも多く、二つはつながった流れとして機能しています。

Q. 食品を寄贈するとき、どんな責任がありますか?

A. 無償の提供であっても法律の対象になります。消費者庁は、食品衛生法第6条の対象に販売以外の授与が、食品表示法第5条の「販売」に販売以外の譲渡が含まれると整理しています。異物混入などに故意や過失があれば、民法第709条の不法行為責任が問われる可能性もあります。製造業者等にあたる場合は、製造物責任法第3条の責任が及ぶこともあります。だからこそ、2024年12月25日に公表された食品寄附ガイドラインに沿って、記録と合意を残すことが求められます。

Q. フードバンクの仕事に就くことはできますか?

A. できます。団体の中には、寄贈元の開拓、在庫と期限の管理、届け先との調整、助成金の申請、広報といった仕事があります。農林水産省の2019年度調査では1団体あたりのスタッフ数が平均11.7人で、一人が複数の役割を兼ねる働き方が一般的です。倉庫管理や物流、食品衛生、資金調達の経験は強みになります。食品メーカーのサステナビリティ部門で寄贈する側を設計する仕事、自治体でフードドライブを企画する仕事など、外から関わる道もあります。

まとめ

フードバンクは、捨てられる手前の食品と、食べるものに困っている人との間に立つ仕組みです。

扱われている量は食品ロス全体のごく一部にとどまり、人手も保管場所も資金も足りていません。

それでも団体数は増え続け、2026年には国による認証制度も動き始めました。

まずは住んでいる自治体名とフードバンクで検索し、近くにどんな団体があるのかを確かめてみてください。

食の分野で働くことが選択肢に入ってきたら、ココキャリアで食品や福祉に関わる団体を一覧し、事業内容と採用情報を見比べてみてください。

棚から下げられた食品の行き先を変えるのは、制度だけではありません。

その流れに手を貸す人が増えるほど、食べ物は必要な場所へ動きやすくなります。

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