2026年10月31日、特別支援学校の教員不足が深刻化しているという報道がYahoo!ニュース トピックスに掲載されました。

少子化が進む日本で、特別支援学校に通う子どもの数は過去最多を更新し続けています。

SNSでは「現場はもう限界」という声と「診断基準が広がっただけでは」という声に割れました。

どちらの見方にも根拠はあるのか、文部科学省の統計で確かめます。

この記事では、教員不足の現状と背景を一次データで整理し、特別支援教育に仕事で関わる道を紹介します。

※【企業様向け】社会課題への取り組みをPRしませんか?

  掲載をご希望の企業様はこちら

福祉の企業やキャリアの記事は、特集ページにまとめてあります。

≫福祉に取り組む企業・キャリアの特集ページを見る

 

「特別支援学校の教員不足」とは

特別支援学校の教員不足とは、障害のある子どもが通う学校で、配置されるべき教員の数に対して実際の人数が足りていない状態です。

2026年10月31日の読売新聞の報道をきっかけに、改めて注目されました。

項目内容
報道日2026年10月31日
出典文部科学省「教師不足に関する実態調査」(2025年5月1日時点)
教員不足数589人(不足率0.71%)
4年前との比較2021年度は205人・不足率0.26%。約3倍に増加
在籍者数約16万3000人(2026年5月時点・過去最多)
発達障害の推計18歳未満で約34万人(2022年推計・2011年の約2.5倍)

参考:読売新聞オンライン(Yahoo!ニュース経由)

2026年6月には石川県の特別支援学校で、授業中に行方不明になった児童が翌日に死亡しているのが見つかる事故も起きました。

石川県教育長は「突発的な事態に対応できる人員が十分ではない」と述べています。


SNSの反応は「現場の限界」と「診断の拡大」に割れた

報道を受けて、SNSやニュースのコメント欄で意見が分かれました。

現場の深刻さを訴える声が目立ちます。

「教室が足りず間仕切りで分割している」「見守りに専任の人員がいない」という指摘が出ました。

一方で、増加の原因をめぐる議論もあります。

「早期診断が普及して、以前は普通学級にいた子どもが振り分けられるようになった」という見方や、「発達障害の概念が広がりすぎではないか」という声もあります。

教員不足が慢性化すると、教育の質だけでなく子どもの安全にも影響が及びます。

教員の多忙化が教育現場に起こしている問題は、別の記事で整理しています。

≫教員の多忙化から考える、日本の教育問題の原因と解決法

なぜ少子化なのに支援学校の教員が足りないのか

少子化で子どもの総数は減っているのに、特別支援教育を受ける子どもは増え続けています。

教員の供給が追いつかない背景には、3つの要因があります。

在籍者数は19年で1.6倍に増えた

特別支援学校の在籍者数は、2007年度の108,173人から2026年度の約16万3000人へ増えました。

特別支援学校の在籍者数の推移(2007年〜2026年)を示す棒グラフ

19年間で約1.6倍です。

年度特別支援学校の在籍者数
2007年度108,173人
2020年度約14万5000人
2023年度151,358人
2026年度約16万3000人(過去最多)

参考:特別支援教育の現状(文部科学省)

同じ期間に義務教育段階の全児童生徒数は約1600万人から約1400万人へ減りました。

少子化と逆行する形で、支援を必要とする子どもの数だけが増えています。

特別支援学級の在籍者数も2015年度の約20万1000人から2025年度の約42万人へ倍増しました。

参考:障害者白書(内閣府)

通常学級でも支援が必要な子どもは増えている

通級による指導を受けている児童生徒は、2024年度に230,405人と過去最多になりました。

1993年度の制度開始時の12,259人から、約19倍です。

年度通級指導を受ける児童生徒数
1993年度12,259人
2015年度約9万人
2020年度164,697人
2024年度230,405人(過去最多)

参考:通級指導を受ける小中高生、過去最多23万人(リシード)

2022年の文部科学省の調査では、通常学級にいる児童生徒のうち8.8%が「特別な教育的支援を必要とする可能性がある」と判断されました。

2012年の同じ調査では6.5%で、10年で2.3ポイント上がっています。

参考:通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(文部科学省)

背景には、2013年の診断基準(DSM-5)の改訂で発達障害をスペクトラムとして連続的に捉えるようになったこと、社会的な認知の拡大、早期診断の普及があります。

児童福祉の分野で社会課題に取り組む企業も増えています。

≫児童福祉に取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大手企業からベンチャー

教員の不足率は全学校種で最も高い

2026年11月1日時点で公表されている最新の調査(2025年5月1日時点)によると、特別支援学校の教員不足は589人です。

学校種別の教員不足率を比較した横棒グラフ

不足率は0.71%で、全学校種で最も高い数字です。

学校種不足数不足率
特別支援学校589人0.71%
中学校1,031人0.47%
小学校1,699人0.44%
高等学校508人0.33%

参考:教師不足に関する実態調査(文部科学省・令和7年度)

4年前の2021年度は205人・0.26%で、不足率は約3倍に増えました。

神奈川県では32校中31校で不足が発生している一方、東京都では不足ゼロと地域差も大きい状況です。

産休・育休取得者の増加に対して臨時講師のなり手が減っていることが構造的な原因です。

教員採用試験の既卒受験者が47.1%減少し、かつて臨時講師を担っていた人材が正規採用に吸収されました。

参考:教師不足に関する実態調査(文部科学省・令和7年度)


国際的にはどう見られているか

2022年、国連の障害者権利委員会は日本に対して「分離された特別支援教育を中止すること」を勧告しました。

日本では障害のある子どもの多くが特別支援学校や特別支援学級に通っており、通常学級で学ぶ割合が低いことが指摘されています。

OECDの調査では、加盟国の中学校教員の45.9%が「クラスの10%以上が特別な教育的ニーズのある生徒」を担当しています。

教員の24.5%が特別支援教育に関する研修を「強く必要」と回答しており、教員の専門性は国際的にも課題です。

参考:The inclusion of students with SEN(OECD)

イタリアは1970年代に特殊学校を原則廃止し、支援教員を通常学級に配置するモデルを取っています。

フィンランドでは3段階の支援モデルを採用し、通常学級内での支援を基本としています。

日本の教員不足は、こうした国際的なインクルーシブ教育の流れとも関わっています。

教育問題に取り組む企業の一覧は、別の記事にまとめています。

≫教育問題に取り組む企業10選!就職・転職におすすめのベンチャーから大手企業

教員の専門免許の保有率は着実に上がっている

一方で、改善が進んでいる指標もあります。

特別支援学校教諭免許状の保有率は、2014年度の72.7%から2023年度の87.2%へ、9年間で14.5ポイント上がりました。

年度免許保有率
2014年度72.7%
2019年度83.0%
2021年度86.5%
2023年度87.2%

参考:特別支援学校教員の免許状保有状況等調査(文部科学省・令和5年度)

知的障害教育の教員では90.3%に到達しています。

ただし視覚障害教育は65.3%、聴覚障害教育は60.3%と、障害種によるばらつきは残っています。

法令上は特別支援学校教諭免許が必要ですが、「当分の間」免許なしでも勤務できる経過措置が続いています。

2026年4月に文部科学省が免許制度の見直し案を公表しました。

障害者雇用に積極的な企業は、教育の出口としても重要です。

≫もにす認定企業一覧!障害者雇用に積極的な中小企業623社【2026年最新】


特別支援教育に仕事で関わる4つの道

特別支援教育の課題に仕事で関わる道は、教員だけではありません。

教員、福祉職、心理職、企業の4つに分けて紹介します。

特別支援学校教諭

視覚・聴覚・知的・肢体不自由・病弱の障害に応じた教科指導と自立活動の指導を行います。

個別の教育支援計画の作成や、保護者・関係機関との連携も担います。

入口は、幼・小・中・高いずれかの教諭免許に加えて特別支援学校教諭免許を取得し、教員採用試験に合格する方法です。

大学の教育学部や特別支援教育を専攻するコースで免許を取得できます。

児童発達支援管理責任者(児発管)

放課後等デイサービスや児童発達支援事業所で、子ども一人ひとりの支援計画を作成し、支援全体を管理します。

保護者との面談やスタッフへの指導・助言、関係機関との連携が主な業務です。

入口は、福祉・医療・教育分野での実務経験(保育士なら3年)と基礎研修・実践研修の修了です。

スクールカウンセラー

学校で児童生徒・保護者・教職員への心理的な支援を行います。

発達障害のある子どものアセスメントや教職員へのコンサルテーションも担います。

入口は公認心理師または臨床心理士の資格で、大学院で臨床心理学を修了するルートが主流です。

企業の障害者雇用支援

企業の人事部門で障害のある人の採用計画や職場環境の整備、定着支援を担います。

ジョブコーチとして現場に入るケースもあり、厚生労働省指定の養成研修で資格を取得します。

社会福祉士や精神保健福祉士の資格が活きる分野です。

福祉の分野で社会課題に取り組む企業の求人は、別の記事で紹介しています。

≫福祉問題に取り組む企業10選!就職・転職におすすめのベンチャーから大手企業

まとめ

特別支援学校の教員不足は、4年間で約3倍に増えました。

背景には発達障害の診断の広がりと、在籍者数の増加があります。

教員の専門免許の保有率は着実に上がっていますが、人数の不足は構造的な問題です。

教員以外にも、児童発達支援管理責任者やスクールカウンセラー、企業の障害者雇用支援など、この課題に関わる仕事の入口は複数あります。

社会課題に取り組む企業の求人は、ココキャリアでも探せます。

≫ココキャリアで社会課題に取り組む企業の求人を見る


よくある質問

特別支援学校の教員不足について、よく検索されている疑問にお答えします。

Q. 特別支援学校の教員不足はどのくらい深刻ですか?

A. 文部科学省が2026年3月に公表した調査(2025年5月1日時点)によると、特別支援学校の教員不足は589人、不足率は0.71%で全学校種で最も高い数字です。小学校0.44%、中学校0.47%、高校0.33%を上回ります。4年前の2021年度は205人・0.26%で、約3倍に増えました。神奈川県では32校中31校で不足が発生する一方、東京都ではゼロと地域差も大きい状況です。在籍者数の増加に臨時講師の確保が追いついていないことが構造的な原因です。

Q. 発達障害の子どもはなぜ増えているのですか?

A. 増加には複数の要因が重なっています。2013年に国際的な診断基準(DSM-5)が改訂され、発達障害をスペクトラムとして連続的に捉えるようになりました。以前は診断がつかなかった軽度の特性も、発達障害として認識されるようになっています。早期診断の普及や、保護者・教職員の認知が広がったことも件数の増加につながりました。厚生労働省の調査では、発達障害のある人は2011年の約31万8000人から2022年の約87万2000人へ増えています。

Q. 特別支援学校の教員になるにはどうすればいいですか?

A. 幼稚園・小学校・中学校・高等学校のいずれかの教諭普通免許状に加えて、特別支援学校教諭免許状を取得し、都道府県の教員採用試験に合格する方法が一般的です。免許は大学の教育学部や特別支援教育を専攻するコースで取得できます。現職の教員が追加で免許を取得する認定講習もあります。2023年度時点で免許保有率は87.2%まで上がっていますが、法令上は「当分の間」免許なしでも勤務できる経過措置が続いており、免許を持たずに勤務している教員も12.8%います。

Q. 教員以外で特別支援教育に関わる仕事はありますか?

A. あります。放課後等デイサービスや児童発達支援事業所で子どもの支援計画を管理する児童発達支援管理責任者は、福祉・医療・教育分野の実務経験と研修修了で就ける資格です。学校に配置されて心理的な支援を行うスクールカウンセラーは公認心理師や臨床心理士の資格が入口になります。企業の人事部門で障害者雇用の計画や定着支援を担う仕事もあります。ジョブコーチとして職場適応の支援に入るルートもあり、厚労省指定の養成研修を受講して資格を取得します。

【企業様向け】社会課題への取り組みをPRしませんか?

広告掲載・資料請求はこちら

社会課題に関わるキャリアを考えたい方へ

社会課題×キャリアの教科書

COCOCOLOR EARTH 編集長・吉田宏輝 著

想いを仕事に変えるための考え方を、自己理解・企業選び・キャリア設計まで1冊にまとめました。

Kindleで読む →