2023年12月13日、パリ協定の締約国は、初めての「世界全体の点検」の結論をまとめました。
その中で、世界の温室効果ガス排出量を、2019年比で2030年までに43%、2035年までに60%減らす必要があると認めています。
この点検が、グローバル・ストックテイク(GST)です。
ニュースでは「COP28で化石燃料からの移行に合意」とよく報じられます。
ただ、その合意がどんな仕組みから生まれ、各国の目標や企業の仕事にどうつながるのかまでは、見えにくいままです。
点検がいつ、どの順番で進み、次は2028年に何が決まるのか。
ここでは、仕組みと3段階の日程、第1回(COP28)の結果、各国の新しい目標への反映を、条文と一次資料で確かめます。
そのうえで、2028年の次回、罰則がないのに意味はあるのか、GSTに関わる仕事の順に見ていきましょう。
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グローバル・ストックテイクとは
グローバル・ストックテイクとは、パリ協定の目的と長期目標に向けて、世界全体がどこまで進んだかを、5年ごとに点検する仕組みです。
「ストックテイク(stocktake)」は、もともと英語で在庫の棚卸しを意味します。
パリ協定は、2015年に採択された、世界の平均気温の上昇を2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力を追求する国際的な協定です。
採択の経緯や長期目標、日本の削減目標といった全体像は、パリ協定の意味や目標、日本の現状を解説した記事にまとめています。
なお、「GST」は、消費税にあたる物品・サービス税(Goods and Services Tax)の略称としても使われます。
この記事で扱うGSTは、税ではなく、パリ協定の点検の仕組みのことです。
パリ協定第14条に定められた仕組み
GSTの根拠は、パリ協定の第14条です。
日本語の公定訳では、「世界全体の実施状況の検討」と呼ばれます。
第14条1によると、検討の目的は、協定の目的と長期的な目標の達成に向けた「全体としての進捗状況」を評価することです。
検討は、包括的かつ促進的な方法で、緩和、適応、実施と支援の手段を考え、衡平と利用可能な最良の科学に照らして行われます。
第14条2により、最初の検討は2023年、その後は、別段の決定がない限り5年ごとです。
第14条3は、検討の結果が、各国が自国で決める形で行動と支援を更新・強化するときの情報になると定めています。
なぜ5年ごとの点検が必要なのか
パリ協定では、各国が削減目標を自ら決めます。
そのため、全部の国の目標を足し合わせても、1.5度に届くとは限りません。
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の事務局は、2025年11月10日付の更新で、新しい目標を出した113の締約国を分析しました。
その国々は、2019年の世界の排出量の69%を占めます。
全体を推計した世界の2035年の排出量は、土地利用などを含めて、2019年比で約12%減る見込みです。
一方、第1回GSTの結論が示した1.5度の道筋は、2035年に2019年比60%減です。
算定の範囲は同じではありませんが、2つの数字の間には大きな開きがあります。
各国の目標を足し合わせた値と、必要な水準との差を定期的に確かめ、次の目標の引き上げにつなげること。
これが、GSTが5年ごとに置かれている理由です。
気温が上がると何が起きるのかは、気候変動の原因・影響・対策をまとめた記事で確かめられます。
参考:UNFCCC事務局のNDC統合報告の更新(2025年11月10日)
GSTの進め方
GSTは、1回の会議で決まるものではなく、約2年をかけて3つの段階で進みます。
3つの段階
進め方は、2018年に採択された決定19/CMA.1で決まりました。
| 段階 | 何をするか | 第1回の時期 |
|---|---|---|
| ① 情報収集と準備 | 各国の報告やIPCCの評価報告書などを集め、整理する | 2021年11月(COP26)から |
| ② 技術的評価 | 集めた情報をもとに、世界全体の進み具合と、対策を強められる余地を評価する | 2022年6月〜2023年6月の技術的対話(全3回) |
| ③ 成果の検討 | 評価の意味を話し合い、各国の行動と国際協力に生かす結論をまとめる | 2023年11月30日〜12月13日(COP28) |
技術的評価は、政府の代表だけでなく、専門家や研究機関、NGOなどの非国家主体も参加する「技術的対話」の場で進みました。
決定19/CMA.1は、GSTを締約国主導で、透明に、締約国以外の関係者も参加して進めると定めています。
参考:決定19/CMA.1(UNFCCC、英文)、WWFジャパン「パリ協定第1回グローバルストックテイク:これまでの議論と日本への示唆」(2023年9月)
第1回の日程
第1回のGSTは、2021年11月のCOP26から少しずつ始まりました。
続く2022年6月から2023年6月までの1年間に、技術的対話を3回開催。
その内容は、2023年9月8日付の統合報告書にまとめられ、緩和、適応、資金などについて17の重要な評価結果が示されました。
1つ目の評価結果は、パリ協定が世界にほぼ全面的な気候対策を促してきた一方で、今すぐあらゆる面でさらに多くの対策が必要だ、というものです。
この報告書を材料に、COP28で結論が交渉されました。
技術的対話のように、研究の成果を政策の議論に届ける仕事は、研究・政策の分野で社会課題に関わるキャリアで詳しく紹介しています。
参考:第1回GST技術的対話の統合報告書(UNFCCC、2023年9月8日、英文)
第1回GST(COP28)で決まったこと
第1回の結論は、2023年12月13日に、アラブ首長国連邦のドバイで開かれたCOP28で、決定1/CMA.5として採択されました。
世界は1.5度の道筋に乗っていない
決定1/CMA.5は、進歩はあるものの、世界の温室効果ガスの排出経路は、パリ協定の気温目標とまだ整合していないと、重大な懸念をもって記しています。
当時の各国の目標をすべて実施しても、2030年の排出量は2019年比で平均2%しか減らないという分析も、懸念とともに引用しました。
条件付きの目標まで含めて完全に実施した場合でも、減少は5.3%にとどまります。
1.5度に50%の確率で抑えるための炭素予算(今後排出できるCO2の総量)は、過去の累積排出だけで約5分の4を使ってしまったとも書かれています。
そのうえで、1.5度に抑えるには、2019年比で2030年までに43%、2035年までに60%の削減と、2050年のCO2排出の実質ゼロが必要だと認めました。
何が決まり、誰の仕事に効くか
決定1/CMA.5の第28段落は、各国に対し、それぞれの事情を考えながら、自国で決める形で、世界全体の取り組みに貢献するよう呼びかけています。
主な項目と、影響が及ぶ仕事を並べます。
| 決まったこと(決定1/CMA.5) | 影響が及ぶ主な仕事 |
|---|---|
| 2030年までに、世界の再生可能エネルギー設備容量を3倍にし、省エネの改善率を世界平均で2倍にする(第28段落a) | 発電事業者、再エネ開発、設備メーカー、電力の調達担当 |
| 排出削減対策のとられていない石炭火力発電の段階的削減を加速する(第28段落b) | 電力会社、商社、金融機関の投融資審査 |
| エネルギー部門で、公正で秩序だった衡平な方法により、化石燃料から移行する(第28段落d) | 製造業、エネルギー企業、金融、政策担当 |
| 原子力、CCUS(CO2の回収・利用・貯留)、低炭素水素などの技術を加速する(第28段落e) | 研究開発、エンジニア、プラント事業 |
| 2030年までに森林減少と劣化を止め、反転させる努力を強める(第33段落) | 農林業、食品・日用品の原料調達、NGO |
| 2030年に向けて、水、食料、健康など7分野で適応の目標を掲げる(第63段落) | 開発コンサルタント、国際協力、自治体の防災 |
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、2025年末の世界の再生可能エネルギー発電容量は5,149GWで、2025年の1年間に692GWが増えました。
IRENAは、1.5度のシナリオで2030年に必要な容量を11.17TWとし、2025年末時点で6.02TWの差が残っていると示しています。
発電所の計画から電力の販売まで、再エネの現場の仕事は、再生可能エネルギー業界の仕事内容とキャリアパスで紹介しています。
たとえば太陽光発電所の建設では、プロジェクトマネージャーが、全体の計画や予算の管理、電力会社との交渉、地域の協力会社への発注までを担います(juwi自然電力の北俊宏さんへのインタビュー)。
参考:決定1/CMA.5(UNFCCC、英文)、IRENA「Renewable capacity highlights」(2026年3月31日)
「化石燃料からの移行」が初めて書かれた
第28段落dは、エネルギー部門での「化石燃料からの移行(transitioning away from fossil fuels)」を呼びかけています。
公正で秩序だった衡平な方法で、この重要な10年間に行動を加速し、科学に沿って2050年に実質ゼロを達成するための移行です。
OECDの報告書は、この呼びかけを、UNFCCCの歴史で前例のないものと位置づけています。
環境省は、決定文書に、再エネ発電容量3倍・省エネ改善率2倍のほか、化石燃料、ゼロ・低排出技術、道路部門などの分野別の貢献が明記されたと整理しています。
一方で、決定文書は、移行期の燃料がエネルギー安全保障を確保しながら移行を助ける役割を果たし得るとも認めています(第29段落)。
「すぐにやめる」ではなく「移行する」という表現になった点に、化石燃料への依存度が異なる各国の事情がうかがえます。
参考:環境省 脱炭素ポータル「気候変動の国際会議COP28の結果概要とその成果」(2024年1月17日)、OECD「Preparing the ground for the second global stocktake (GST) of the Paris Agreement」(2026年5月、英文)
適応と資金
GSTは排出削減だけでなく、気候変動の影響に備える「適応」と、途上国を支える「資金」も点検します。
決定1/CMA.5は、途上国が自国の目標を実施するために必要な資金を、2030年までの期間で5.8兆〜5.9兆米ドルと見積もった報告を取り上げました。
途上国の適応に必要な資金は、2030年まで年に2,150億〜3,870億米ドルと見積もられています。
2050年の実質ゼロに向けては、2030年まで年に約4.3兆米ドルのクリーンエネルギー投資が必要だという見積もりも、あわせて記されました。
排出の少ない国ほど被害を受けやすいという不公平をどう正すかは、気候正義が生まれた背景と具体的な運動の考え方とも重なります。
ロス&ダメージ基金は別の決定
COP28では、気候変動による「損失と損害(ロス&ダメージ)」に対応する基金の運用も決まりました。
ただし、これはGSTの決定1/CMA.5とは別の決定(決定5/CMA.5)です。
環境省によると、この決定はCOP28の開会全体会合で採択され、COPの開会初日に手続き以外の実質的な決定が採択されたのは、きわめて異例のことでした。
日本は、基金の立ち上げ経費として、1,000万米ドルの拠出(プレッジ)を表明しました。
GSTの結論と基金の運用化は、同じCOP28の成果として並べて報じられることが多いため、混同しないよう注意が必要です。
参考:環境省 脱炭素ポータル「気候変動の国際会議COP28の結果概要とその成果」
GSTの結果はどう使われるのか
GSTは、点検して終わりではなく、各国が次に出す目標(NDC)の材料になります。
第14条3と次のNDC
NDC(国が決定する貢献)とは、各国がパリ協定のもとで5年ごとに提出する、温室効果ガスの削減目標です。
パリ協定第4条9は、各国がNDCを5年ごとに通報し、その際にGSTの結果について情報が提供されると定めています。
決定1/CMA.5は、次のNDCを、2025年11月のCMA7(COP30)の少なくとも9〜12か月前までに出すよう改めて求めました。
あわせて、次のNDCで、すべての温室効果ガス、部門、分類を対象にした経済全体の削減目標を掲げ、1.5度に沿ったものにするよう促しています(第39段落)。
各国は、NDCの準備にGSTの結果をどう生かしたかを、説明する決まりです。
新しいNDCはどこまで反映したか
経済協力開発機構(OECD)が2026年5月に公表した報告書は、第1回GSTの呼びかけが、新しいNDCにどこまで反映されたかを整理しています。
この報告書が引用しているのが、UNFCCC事務局の2025年のNDC統合報告書です。
対象は、2024年1月1日から2025年9月30日までに出された64の新しいNDCです。
そのうち75%が、エネルギーに関する世界の取り組みの少なくとも1つに、数値目標を結びつけていました。
最も多く数値化されていたのは再エネ3倍で、44%でした。
OECDの報告書自身は、2023年12月13日から2026年4月29日までに出された144の新しいNDCを分析しています。
第28段落の呼びかけに明示的に触れたNDCは、項目の平均で37%でした。
再エネ3倍に明示的に触れたNDCは、半数近くにのぼります。
一方、石炭火力の段階的削減や、非効率な化石燃料補助金の廃止は、関係する国の半数以上が、NDCで触れていませんでした。
2つの分析は、対象の期間や分類の方法が異なるため、数字をそのまま比べることはできません。
参考:OECD「Preparing the ground for the second global stocktake (GST) of the Paris Agreement」(2026年5月、英文)
日本のNDCとGST
日本は、2025年2月18日に、2013年度比で2035年度に60%、2040年度に73%削減する新しいNDCを提出しました。
そのNDCには、第1回GSTの結果(決定1/CMA.5)をどう踏まえたかを説明する項目があります。
1.5度目標のための緊急的な行動の必要性、全部門・全温室効果ガスを対象にした削減目標の策定、再エネ3倍・省エネ2倍、化石燃料からの移行などが、その項目に挙げられた内容です。
この目標の達成に向けて、日本は、GX(グリーン・トランスフォーメーション)と呼ぶ産業政策を進めています。
参考:日本のNDC(国が決定する貢献)(環境省、2025年2月18日)
企業への波及
GSTは国に向けた仕組みですが、国の目標が上がれば、企業の電力の選び方や投資の判断も変わります。
企業が自社の削減目標をパリ協定の水準に合わせる「SBT(科学的根拠に基づく目標)」も、1.5度の道筋を基準にした取り組みです。
事業で使う電力を100%再エネにする国際的な取り組みは、RE100の加盟条件と日本企業の動きで詳しく扱っています。
次回(第2回)GSTは2028年
第2回のGSTは、2026年11月に始まり、2028年11月に結論を出す予定です。
第1回から第2回までの流れを、1つの表にまとめます。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2023年12月(COP28・CMA5) | 第1回GSTの結論(決定1/CMA.5)を採択 |
| 2025年(CMA7の9〜12か月前が期限) | 各国が2035年目標の新しいNDC(NDC 3.0)を提出 |
| 2025年11月(COP30・ブラジルのベレン) | 第1回の経験をもとに、GSTの進め方の見直しを決定 |
| 2026年6月 | GSTの結果の実施について話し合う「UAE対話」の初回 |
| 2026年11月9〜20日(COP31・トルコ、CMA8) | 第2回GSTの情報収集と準備が始まる |
| 2028年11月6〜17日(COP33・CMA10) | 第2回GSTの結論をまとめる |
| 2030年 | 第2回の結果を踏まえた、次のNDCの提出 |
第2回の日程を決めたのは、決定1/CMA.5の第194段落です。
情報収集と準備をCMA8(2026年11月)に始め、成果の検討をCMA10で終えるとしています。
2028年のCOP33は、国連の地域の持ち回りにより、アジア太平洋地域の国が議長を務めます。
開催国は、2027年のCOP32で決める予定です。
OECDによると、COP30で合意された見直しは、GSTに使う情報をオンラインで見やすくすることや、科学界に時宜を得た情報提供を促すことなどが中心です。
第2回の結果は、2030年に予定される次のNDCに生かされます。
UAE対話は、GSTの結果を実施するうえでの経験や課題を共有する場で、焦点は資金の提供、能力の開発、技術の開発と移転です。
COP30の決定により、UAE対話の報告は、第2回GSTの材料としても使われます。
途上国への資金の流れをどう増やすかは、先進国と途上国の立場が分かれやすい論点で、排出の責任と被害の偏りをめぐる気候正義の議論とも深く関わります。
参考:決定1/CMA.5(UNFCCC、英文)、今後の会議の日程と開催地に関する決定(UNFCCC、英文)、OECD(2026年5月)
罰則がないのに意味はあるのか
GSTの結論に従わなくても、罰則はありません。
決定19/CMA.1は、GSTの成果を、個々の国に焦点を当てず、政策を指図しない形で、世界全体の進み具合を点検するものと定めています。
パリ協定第15条の遵守の仕組みも、専門家による、促進的で、対立的でも懲罰的でもない形で運営されます。
罰則の扱いや条文の全体は、パリ協定の目標と仕組みを解説した記事でも確かめられるので、あわせて読んでみてください。
それでもGSTには、次の3つの効き方があります。
数字の共有
数字の共有とは、1.5度に必要な削減量や再エネの目標を、全締約国が合意した文書に書き込むことです。
各国政府や企業、投資家が、同じ数字を基準に計画を立てられるようになります。
次の目標への組み込み
次の目標への組み込みとは、各国がNDCの準備で、GSTの結果をどう生かしたかを説明する流れのことです。
日本のNDCにも、その説明の項目がありました。
進み具合の見える化
進み具合の見える化とは、5年後の次の点検で、呼びかけにどこまで応えたかが確かめられることです。
OECDの分析のように、国ごとの反映の度合いは、研究機関やNGOによっても検証されています。
強制力ではなく、同じ数字を共有して、定期的に確かめ合うことで引き上げを促すのが、パリ協定らしい仕組みです。
GSTに関わる仕事
GSTは国際交渉の話ですが、その結論は、政策、国際機関、研究、企業の実務に形を変えて届きます。
環境分野の仕事を、業界や職種ごとに見渡したいときは、環境問題に携わる業界・業種をまとめた記事が入口になります。
政府・省庁(交渉・NDCの策定)
政府・省庁の仕事は、COPでの交渉や、GSTを踏まえた国の削減目標づくりを担うことです。
日本では、環境省、外務省、経済産業省などが気候変動の交渉や政策に関わっています。
法律や国際関係を学んだ文系の人にとっても、政策の立案や調整は力を発揮しやすい分野です。
民間企業との違いや入り口は、政府機関で社会課題の解決に関わるキャリアで解説しています。
国際機関(UNFCCC事務局など)
国際機関の仕事は、GSTの会議の運営や、各国の報告の取りまとめ、途上国の能力開発を支えることです。
英語での文書作成や、利害の異なる国どうしの調整力が求められます。
必要なスキルや入り口は、国際機関で社会課題の解決に関わるキャリアで詳しく紹介しています。
研究機関・シンクタンク・NGO
研究機関・シンクタンク・NGOの仕事は、GSTに使われる分析を出したり、各国の目標が1.5度に届いているかを検証したりすることです。
決定1/CMA.5は、科学界に対し、第2回以降のGSTに向けて、適切な時期に情報を出すよう促しています(第183段落)。
企業のサステナビリティ部門・コンサルティング
企業のサステナビリティ部門やコンサルティングの仕事は、GSTや国の目標の動きを読み、自社や顧客の削減目標、再エネの調達、情報開示に落とし込むことです。
国際ルールを読み解く力と、社内外に分かりやすく説明する力が活きるため、文系の人の入り口にもなります。
仕事内容や必要なスキルは、サステナビリティコンサルタントの業務内容と資格の記事にまとめました。
実際に気候変動に取り組んでいる会社を知りたいときは、気候変動に取り組む企業10選も参考になります。
よくある質問
グローバル・ストックテイクについて、よく出てくる疑問を4つ取り上げます。
Q. グローバル・ストックテイク(GST)とは何ですか?
A. グローバル・ストックテイクとは、パリ協定第14条にもとづき、協定の目的と長期目標に向けた世界全体の進み具合を点検する仕組みです。日本語の公定訳では「世界全体の実施状況の検討」と呼ばれます。最初の点検は2023年に行われ、その後は5年ごとに行われます。排出削減だけでなく、気候変動への適応や、途上国への資金などの支援も対象です。結果は、各国が次の削減目標(NDC)や対策を見直し、引き上げるときの材料になります。
Q. COP28の第1回グローバル・ストックテイクでは何が決まりましたか?
A. 2023年12月13日にCOP28で採択された決定1/CMA.5は、世界の排出がまだパリ協定の気温目標と整合していないと認めました。1.5度に抑えるには、世界の温室効果ガス排出量を2019年比で2030年までに43%、2035年までに60%減らす必要があるとしています。そのうえで、2030年までの再エネ設備容量3倍と省エネ改善率2倍、エネルギー部門での化石燃料からの移行などへの貢献を、各国に呼びかけました。
Q. 次回のグローバル・ストックテイクはいつですか?
A. 第2回のグローバル・ストックテイクは、2026年11月のCOP31(CMA8)で情報収集と準備が始まり、2028年のCOP33(CMA10)で結論をまとめる予定です。日程は、第1回の結論である決定1/CMA.5で決まりました。COP33の会期は2028年11月6日から17日までとされ、アジア太平洋地域から議長が出ます。第2回の結果は、2030年に予定される次の各国の削減目標(NDC)に生かされる見込みです。
Q. グローバル・ストックテイクの結果に従わないと罰則はありますか?
A. 結果に従わなかった場合の罰則はありません。グローバル・ストックテイクは、個々の国に焦点を当てず、政策を指図しない形で、世界全体の進み具合を点検する仕組みです。パリ協定の遵守の委員会も、対立的でも懲罰的でもない形で運営されます。その代わりに、各国は次の削減目標(NDC)を準備するとき、点検の結果をどう生かしたかを説明することになっています。日本が2025年2月に出した新しいNDCにも、その説明の項目があります。
まとめ
グローバル・ストックテイクとは、パリ協定の目標に向けた世界全体の進み具合を5年ごとに点検し、各国の次の目標の引き上げにつなげる仕組みです。
2023年の第1回では、世界が1.5度の道筋に乗っていないことが確認され、再エネ3倍や化石燃料からの移行が呼びかけられました。
第2回は2026年11月に始まり、2028年に結論が出る予定です。
次にニュースでCOPやNDCの話題を見かけたら、それが点検、目標の提出、次の点検という5年の流れのどこにあたるのかを考えてみてください。
気候変動の対策に仕事として関わりたいと感じたら、ココキャリアで、脱炭素や再エネに取り組む企業の事業内容を読んでみてください。
その会社が削減目標を公表しているかを確かめるところから始められます。
国際交渉の結論は、数年かけて企業の計画や職場の仕事に届くものです。
その流れを知っておくと、あなたが進路を考えるときの手がかりの1つになります。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
