道路や発電所、ダムなど、大きな開発事業をつくる前には、環境への影響を調べる「環境アセスメント」が行われます。

環境影響評価法にもとづいて手続が行われた事業は、2024年9月末時点で、これまでに865件あります。

そのうち555件は、2012年から手続の対象になった風力発電の事業です。

こうした調査や評価を、事業者の依頼を受けて担っているのが環境コンサルタントです。

「環境を守る仕事がしたい。でも、環境コンサルタントが実際に何をしているのかわからない」。

「理系でないと無理なのか、資格はいるのか」と迷う人も多いですよね。

ここでは、環境コンサルタントの4つの仕事と、新卒・転職での入り方を紹介します。

役立つ資格や年収の考え方、働ける企業の例もまとめました。

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環境コンサルタントとは

環境コンサルタントとは、企業や国、自治体から依頼を受けて、環境の調査や評価、保全の計画づくりを専門家として支える仕事です。

依頼主は、道路や発電所をつくる事業者、工場を持つメーカー、環境行政を担う国や自治体などです。

自分で事業を行うのではなく、専門知識を使って依頼主の判断を支えるのが、コンサルタントという立場の特徴になります。

環境コンサルタントという資格や、決まった職種名があるわけではありません。

建設コンサルタントや環境調査会社、シンクタンク、サステナビリティ系のコンサルティング会社などで働く人を、まとめてこう呼んでいます。

同じ「環境の仕事」でも、自然保護団体や役所とは立場が違います。

たとえば国立公園を守る自然保護官(レンジャー)は環境省の職員で、国の立場から自然の保護と利用を管理する役割です。

環境コンサルタントは民間の会社に所属し、依頼主との契約にもとづいて、調査の結果や提案を成果物として納めるのが基本の働き方です。

環境分野の業界や職種の全体像は、環境問題に携わる仕事の記事で紹介しています。

国や国際機関、NGOなど、民間企業以外で環境に関わる組織は、環境分野で働ける組織一覧にまとめました。


環境コンサルタントの4つの仕事

環境コンサルタントの仕事は、扱うテーマと依頼主によって、大きく4つに分けられます。

それぞれの特徴を表にまとめました。

仕事 主な仕事内容 生かせる学部・経験 役立つ資格 主な勤め先
環境アセスメント 開発事業の環境影響を調査・予測・評価する 生物学、生態学、土木、環境工学 技術士(環境部門・建設部門) 建設コンサルタント、環境調査会社
環境調査・分析 水や大気、土壌、騒音を測り、分析する 化学、生物学、薬学、農学 環境計量士、公害防止管理者 環境調査会社、計量証明事業所
建設コンサルタントの環境部門 公共事業の計画に環境保全の視点を入れる 土木、河川工学、都市計画 技術士(建設部門「建設環境」) 建設コンサルタント
ESG・脱炭素コンサルティング 企業の温室効果ガス算定や情報開示を支える 経済、経営、環境政策、金融 特に必須のものはない サステナビリティ系コンサル、シンクタンク

ここからは、4つの仕事を1つずつ紹介します。

環境アセスメント

環境アセスメントは、大きな開発事業を行う前に、事業者が自ら環境への影響を調査・予測・評価し、その結果をもとに事業計画をよりよくしていく手続です。

環境影響評価法では、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、廃棄物最終処分場など13種類の事業が対象になっています。

規模が大きい「第1種事業」は、必ず手続を行います。

それに準じる規模の「第2種事業」は、手続が必要かどうかを個別に判断します(参考:環境省 環境影響評価情報支援ネットワーク)。

環境コンサルタントの主な仕事は、事業者の依頼を受けて動植物や水質、騒音などを調べ、影響を予測し、図書(報告書)にまとめることです。

住民説明会の準備や、国や自治体から出された意見への対応を支えることもあります。

手続が行われた865件のうち、最も多いのは風力発電の555件で、道路の96件、火力発電の81件が続きます(2024年9月末時点)。

2023年度に環境大臣が出した意見48件のうち、約7割も風力発電に関するものでした(参考:環境省「環境影響評価制度の現状等について」2024年11月)。

再生可能エネルギーの発電所づくりと、そこにすむ鳥や生き物を守ることを両立させるのも、環境アセスメントの大切な役割です。

環境調査・分析

環境調査・分析は、川や海の水、大気、土壌、騒音・振動などを実際に測り、数値で状態を明らかにする仕事です。

工場の排水や排ガスが基準を守っているか、開発の前後で水質が変わっていないかなどを確かめるために行われます。

現場で試料を採る仕事と、分析室で測定する仕事に分かれることが多く、化学や生物の知識が生きます。

測った結果を、取引先に証明書として出す事業を「計量証明事業」といい、都道府県への登録が必要です。

物質の濃度や騒音・振動のレベルを証明する事業では、登録の際に区分に応じた環境計量士を置くことが求められます(参考:千葉県 計量証明事業)。

大気汚染や水質汚濁、騒音といった公害は、日本では典型7公害として整理されています。

環境調査・分析は、こうした公害の状態を数字でつかむ仕事です。

建設コンサルタントの環境部門

建設コンサルタントは、道路や河川、港湾などの公共事業について、国や自治体から依頼を受けて調査や計画、設計を行う会社です。

環境を専門に扱う部署を持つ会社もあり、事業が自然や生活環境に与える影響を調べ、保全策を考えます。

たとえば河川の工事では、魚や水辺の植物の調査をもとに、生き物がすみやすい川の形を提案することもあります。

希少な動植物が見つかった場合は、移植などの保全策を立て、工事のあとも生き物が定着しているかを調べ続けるのも大切な役割です。

土木の技術者と同じチームで働くため、環境の知識に加えて、工事や設計の考え方を学べるのが特徴です。

建設コンサルタントの中には、海外で途上国のインフラ整備に関わる会社もあります。

国内外で活躍する会社は、開発コンサルに取り組む企業10選で紹介しています。

ESG・脱炭素コンサルティング

ESG・脱炭素コンサルティングは、企業の温室効果ガス排出量の算定や削減計画、投資家に向けた情報開示を支える仕事です。

ほかの3つが現場の環境を調べる仕事なのに対し、こちらは企業の経営や情報開示の側から環境に関わります。

自社の工場だけでなく、取引先も含めたサプライチェーン全体の排出量(Scope3)の算定や削減の支援も、この分野の仕事です。

環境の知識に加えて、経営や会計、金融の知識が求められるため、文系の専攻も生かしやすい分野です。

この分野の仕事内容や求められるスキルは、サステナビリティコンサルタントの記事で詳しく紹介しています。

取り組む会社は、サステナビリティコンサルに取り組む企業10選で探せます。

環境コンサルタントになるには

環境コンサルタントになるための決まったルートはなく、入る時期やそれまでの経験によって道が分かれます。

ここでは、3つのパターンを紹介します。

新卒で入る

新卒で入る道は、建設コンサルタントや環境調査会社に技術職として採用される働き方です。

環境アセスメントや環境調査・分析の仕事では、生物学、化学、土木、環境工学など、理系の専攻が生かせます。

大学で生き物の調査や水質分析を経験していると、入社後の現場の仕事をイメージしやすいでしょう。

技術士の受験には実務経験が必要なため、入社後に調査や報告書づくりを経験しながら資格を目指していくことになります。

転職で入る

転職で入る道は、別の業界で身につけた専門性を、環境の仕事に生かす働き方です。

COCOCOLOR EARTHがインタビューした宮澤大喜さんは、京都大学の大学院で環境政策を学びました。

在学中には、WWFジャパンや環境エネルギー政策研究所でインターンを経験しています。

「良い」経済活動を広げる一助になりたいと考え、2016年に経営コンサルティング会社の船井総合研究所に入社します。

再エネや産業廃棄物、建設業のクライアントを担当したあと、ESG投資に深く関わりたいと、CSRデザイン環境投資顧問株式会社に転職しました。

2021年の取材当時は、不動産会社やJ-REIT向けに、投資家が求めるサステナビリティ調査「GRESB」の評価を高めるコンサルティングを担当していました。

学生時代に官公庁、NPO・NGO、企業の3つの立場を経験し、進路を選んだ経緯は、CSRデザイン環境投資顧問の宮澤大喜さんのインタビューで読めます。

海外の案件へ広げる

海外の案件へ広げる道は、途上国のインフラ整備や環境保全を支える開発コンサルタントとして働く選択肢です。

途上国の事業では、国際協力機構(JICA)や世界銀行の環境社会配慮の考え方にもとづいて、環境への影響を調べることが求められます。

開発コンサルのプロジェクトには、各分野の専門家がチームで参加します。

COCOCOLOR EARTHがインタビューした小林義則さんは、新卒で大手食品メーカーに入社し、スーパーマーケットを回る営業を担当しました。

その後、JICA海外協力隊としてザンビアに2年間派遣され、農村で栄養改善の活動に取り組みます。

帰国後は、ビジネスとして途上国を支えたいと開発コンサルタントの道を選びました。

2026年の取材当時は、大手開発コンサルの海外事業部で、地図づくりの技術を途上国に伝えるJICAのプロジェクトを運営していました。

小林さんの担当は環境分野ではありませんが、異業種から開発コンサルに移った道筋は、海外の仕事を目指す人の参考になります。

今後は、人工衛星の画像を分析するリモートセンシングの専門性を高めたいそうです。

協力隊での葛藤から開発コンサルにたどり着くまでは、開発コンサル・小林義則さんのインタビューで読めます。

開発コンサルタントの仕事内容やなり方は、開発コンサルタントとはの記事で紹介しています。


環境コンサルタントに役立つ資格

必須の資格はありませんが、仕事の幅を広げ、専門性を示すのに役立つ国家資格があります。

ここでは、代表的な3つを紹介します。

技術士(環境部門)

技術士は、科学技術の高度な専門知識と応用能力を持つ技術者であることを、国が認める資格です。

21の技術部門があり、環境部門には「環境保全計画」「環境測定」「自然環境保全」「環境影響評価」の4つの選択科目があります。

2025年度の第二次試験では、環境部門の受験者406人のうち48人が合格し、合格率は11.8%でした。

建設部門の選択科目「建設環境」も、環境の仕事と関わりの深い科目です。

2025年度は、受験者714人のうち74人が合格しています(参考:日本技術士会「令和7年度技術士第二次試験統計」)。

第二次試験を受けるには、第一次試験に合格するなどしたうえで、原則として4年または7年を超える実務経験が必要です(参考:日本技術士会)。

学生のうちに取るものではなく、働きながら目指す資格だと考えておきましょう。

環境計量士

環境計量士は、計量法にもとづく国家資格で、「濃度関係」と「騒音・振動関係」の2つの区分があります。

2025年12月14日に行われた第76回計量士国家試験では、濃度関係の受験者1,789人のうち300人が合格し、合格率は16.8%でした。

騒音・振動関係は、受験者590人のうち111人が合格し、合格率は18.8%です(参考:経済産業省「第76回計量士国家試験(令和7年12月14日実施)の結果等について」)。

環境調査・分析の会社では、計量証明事業の登録に欠かせない資格なので、分析の仕事を続けたい人には特に役立ちます。

公害防止管理者

公害防止管理者は、工場で公害を防ぐための管理を担う国家資格です。

制度のもとになっているのは、1971年に制定された「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」です。

ばい煙や汚水などを出す施設を持つ製造業などの工場では、施設の区分ごとに有資格者を選ぶ必要があります。

公害防止管理者の資格は、大気関係、水質関係、騒音・振動関係など13種類に分かれています(参考:産業環境管理協会)。

工場の排水や排ガスの規制の仕組みを体系的に学べるため、環境調査・分析の仕事や、工場向けの環境コンサルティングで知識の土台になります。

環境コンサルタントの年収

環境コンサルタントの年収は、勤め先の業種や担う役割、資格によって大きく変わるため、ひとくくりの平均額で語るのが難しい仕事です。

ここでは、年収を左右する要素を紹介します。

勤め先の業種

勤め先の業種は、最初に確かめたい要素です。

公共事業を中心に請け負う建設コンサルタントや環境調査会社と、企業の経営課題を扱うサステナビリティ系のコンサルティング会社では、依頼主も仕事の進め方も違います。

年収を比べるときは、同じ業種の会社どうしで見比べると実態に近づけます。

資格と役割

資格と役割も、年収に関わる要素です。

技術士などの資格や、業務全体をまとめる役割を給与にどう反映するかは、会社ごとに決まっています。

募集要項に資格手当や等級の説明があれば、あわせて確認しておきましょう。

会社ごとの開示情報

会社ごとの開示情報は、年収を調べるときの手がかりです。

上場している会社は、有価証券報告書で従業員の平均年間給与を公開しています。

求人票に載っている給与と合わせて見ると、目指す仕事の待遇をつかみやすくなります。


環境コンサルタントとして働ける企業

建設コンサルタント、環境調査、ESGの分野から、環境コンサルタントとして働ける企業を1社ずつ紹介します。

日本工営株式会社

日本工営株式会社は、国内外で社会インフラの調査や計画、設計を行う建設コンサルタントです。

道路やダムなどの事業では、日本の環境影響評価法やJICA・世界銀行のガイドラインに沿って、環境への影響の調査・予測・評価から保全対策までを手がけています。

2022年に開通した新東名高速道路の秦野〜山北間では、2011年から2021年にかけて一連の自然環境調査と保全対策の検討を担当しました。

工事前の調査から、重要な種の移植や道路照明の検討、工事中から供用後までのモニタリングまでを行っています(参考:日本工営株式会社 地球環境)。

いであ株式会社

いであ株式会社は、1968年に日本初の民間気象予報会社として設立され、翌1969年から環境調査の業務を始めた会社です。

2006年に日本建設コンサルタント株式会社と合併して現在の社名になり、社会基盤の形成と環境保全の両方を扱うコンサルタントとして事業を行っています。

水質や大気、土壌の分析から、環境の現況調査、予測、影響評価、保全対策までを手がけています。

2026年4月1日時点の従業員数は、嘱託・顧問を含めて1,112人です(参考:いであ株式会社 会社概要、沿革)。

リクロマ株式会社

リクロマ株式会社は、2018年4月に設立された、気候変動とサステナビリティの対応を支援する会社です。

企業向けのコンサルティングに加え、取引先を含めた排出量(Scope3)の削減を支えるサービスや、気候変動を学ぶEラーニングが事業の柱です。

サステナビリティ評価機関のEcoVadis(エコバディス)の認定トレーニングパートナーとして、評価の改善支援も行っています(参考:リクロマ株式会社、会社概要)。

環境に取り組むほかの企業は、環境問題に取り組む企業一覧10選で紹介しています。

よくある質問

環境コンサルタントを目指すうえで、よく寄せられる質問にお答えします。

Q. 文系でも環境コンサルタントになれますか?

A. なれます。企業の温室効果ガス算定や情報開示を支えるESG・脱炭素コンサルティングは、経済や経営、金融の知識が生きるため、文系の専攻も生かしやすい分野です。サステナビリティ系のコンサルティング会社やシンクタンクが主な入口になります。一方で、環境アセスメントや環境調査・分析は、生物学や化学、土木などの理系の知識が求められる場面が多い仕事です。文系から現場寄りの仕事を目指す場合は、環境系の資格の勉強や、生き物調査のボランティアなどで経験を積んでおくと役立ちます。

Q. 環境コンサルタントに資格は必須ですか?

A. 必須ではありません。資格がなくても、建設コンサルタントや環境調査会社に入社して働き始めることができます。ただし、働きながら技術士や環境計量士を取ることで、任される仕事の幅が広がります。技術士の第二次試験は原則として4年または7年を超える実務経験が必要で、2025年度の環境部門の合格率は11.8%でした。環境計量士は、計量証明事業の登録に欠かせない資格です。まずは入社後に、自分の仕事に合う資格を選ぶとよいでしょう。

Q. 環境コンサルタントの年収はどのくらいですか?

A. 環境コンサルタントの年収は、勤め先の業種や役割、資格によって大きく変わるため、ひとくくりの平均額で示すのは難しいのが実情です。公共事業を中心に請け負う建設コンサルタントや環境調査会社と、企業の経営課題を扱うサステナビリティ系のコンサルティング会社では、依頼主も仕事の進め方も異なります。上場企業であれば、有価証券報告書で従業員の平均年間給与を確かめられます。志望する会社の開示情報と求人票の両方を見て、待遇をつかんでおきましょう。

Q. サステナビリティコンサルタントとの違いは何ですか?

A. 環境コンサルタントは、環境の調査や評価、保全の計画づくりを専門に支える仕事の総称です。環境アセスメントや水質・大気の分析など、現場で環境を調べる仕事が中心になります。サステナビリティコンサルタントは、環境に加えて人権やガバナンスも含めた企業のサステナビリティ戦略や情報開示を支える仕事です。環境コンサルタントの4つの仕事のうち、ESG・脱炭素コンサルティングは、サステナビリティコンサルタントと重なる部分が大きい分野です。


まとめ

環境コンサルタントの仕事は、環境アセスメント、環境調査・分析、建設コンサルタントの環境部門、ESG・脱炭素コンサルティングの4つに分かれます。

どの仕事も、開発や企業活動と環境の両立を、専門知識で支える役割です。

理系の専攻を生かして新卒で入る道もあれば、別の業界の経験を生かして転職する道、海外の案件へ広げる道もあります。

まずは、気になる会社の事業紹介を読み、どの仕事が自分の関心に近いかを確かめてみてください。

大学で学んでいる分野と、技術士や環境計量士の試験科目を見比べておくと、入社後の道筋も描きやすくなるはずです。

環境問題に取り組む企業は、ココキャリアで探すことができます。

コンサルタントとして社会課題に関わる働き方は、社会課題解決×コンサルタントのキャリアの記事でも紹介しています。

あなたの得意なことを生かして、環境を守る仕事に一歩ずつ近づいていきましょう。

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