日本には35の国立公園があり、面積を合わせると244万7,855haになります(2025年3月時点、令和7年版環境白書)。

国定公園や都道府県立自然公園を含めた自然公園は、国土の15.2%を占めています。

この広い自然を現場で守っているのが、環境省の自然保護官、通称「レンジャー」です。

ただ、その入り口は広くありません。

環境省が2026年度に採用した自然系の職員は、総合職と一般職を合わせて37人でした。

「自然を守る仕事がしたい。でも、どうすればレンジャーになれるのかわからない」。

そう思っていても、試験の区分や採用の流れは、なかなか調べにくいですよね。

ここでは、自然保護官の仕事と、国家公務員試験・経験者採用・アクティブ・レンジャーという3つのルートを紹介します。

求められる学歴や適性、採用人数も、環境省の公式情報をもとにまとめました。

自然保護官以外で、自然を守る仕事に就く道も取り上げます。

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自然保護官(レンジャー)とは

自然保護官とは、環境省の職員として、国立公園の管理や野生動植物の保護に取り組む国家公務員です。

環境省は、国立公園管理官や自然保護官などをまとめて「レンジャー」と呼んでいます(参考:環境省)。

自然保護官として働く職員は、「自然系」という区分で採用されます。

自然系の職員は、全国の地方環境局や、国立公園の現地にある自然保護官事務所などで働きます。

地方環境局は、2026年7月1日に「地方環境事務所」から名前が変わった環境省の出先機関です(参考:環境省)。

北海道、東北、福島、関東、中部、近畿、中国四国、九州の8つの局があります。

国立公園と自然保護官の関係

日本の国立公園は、国が持つ土地だけでなく、自治体や個人の土地も含めて指定されています。

2019年の環境省の資料では、国立公園の土地のうち国有地は60%で、公有地が13%、民有地が26%でした(参考:環境省)。

公園の中には集落や田畑、旅館もあり、人の暮らしや産業と折り合いをつけながら自然を守る必要があります。

そのため自然保護官は、規制をかけるだけでなく、地元の人や事業者と話し合いながら公園を管理していきます。

アクティブ・レンジャーとの違い

名前が似ている「アクティブ・レンジャー」は、自然保護官の補佐役として働く非常勤の国家公務員です。

パトロールや調査、自然観察など、主に野外の現場業務を担います(参考:環境省)。

2026年に出された募集要項などをもとに、両者の違いを表にまとめました。

項目 自然保護官 アクティブ・レンジャー
身分 常勤の国家公務員(環境省職員) 非常勤の国家公務員(期間業務職員)
採用の方法 国家公務員試験の合格と官庁訪問、または選考採用 地方環境局などが勤務地ごとに公募
任期 定めなし 年度末まで。勤務成績が良好なら連続2回まで再雇用の可能性あり
勤務地 全国転勤(1か所2〜3年程度) 募集した事務所
主な応募条件 自然系の試験区分に合格すること 普通自動車運転免許、パソコン操作、野外調査ができる体力など

自然保護官の仕事

自然保護官の仕事は、事務所でのデスクワークと野外の仕事の両方にまたがります。

環境省が挙げる主な仕事は、自然公園法に基づく許認可、公園の保護と利用の計画づくり、パトロール、自然の調査、利用施設の整備と情報提供、環境省の土地の管理です(参考:環境省)。

ここでは、現場の仕事を4つに分けて紹介します。

国立公園の保護と利用の管理

国立公園の中で建物を建てたり木を切ったりするには、自然公園法に基づく許可や届出が必要です。

自然保護官は、こうした申請を審査し、景観や生態系への影響が小さくなるよう事業者と調整します。

同時に、登山道や展望台、ビジターセンターなどの整備を進め、多くの人が自然を楽しめるようにするのも仕事です。

国立公園の管理では、守ることと使うことの両方に目を配ります。

希少種・外来種対策

野生生物の保護も、自然保護官の大切な仕事です。

環境省の選考採用の案内では、自然系職員の業務として、鳥獣の保護管理、希少種の保護増殖、外来種対策が挙げられています(参考:環境省)。

絶滅のおそれがある生き物は、環境省のレッドリストで評価され、保護の優先度を考える手がかりになります。

現場では、研究者や地元の団体と協力して生息状況を調べたり、外来種を駆除したりします。

自然再生・30by30

傷んだ自然を取り戻す「自然再生」も、自然保護官が関わる仕事です。

環境省がいま力を入れているのが、2030年までに陸と海の30%以上を保全する「30by30」という目標です。

30by30は、生物多様性条約の会議で2022年に合意された世界目標にも盛り込まれています。

2025年8月時点で、日本の保護地域は陸地の約20.8%、海洋の約13.3%でした(参考:令和8年版環境白書)。

環境省は2022年に、国立公園や国定公園を新しく指定したり大きく広げたりする候補地を全国で14か所選びました。

まだ拡張などが済んでいない候補地は、2030年までに順次、公園の区域に加えることを目指しています。

公園をどう保護し利用していくかの計画づくりは、自然保護官の仕事のひとつです。

保護地域に加えて、企業の森や里山のように、民間の取り組みで生物多様性が守られている場所を国が認定する「自然共生サイト」という制度もあります。

2026年6月30日の発表で、自然共生サイトは合計610か所になりました(参考:環境省)。

地域・関係者との調整

自然保護官の仕事の多くは、人との調整です。

国立公園には、自治体、観光事業者、地元の住民、研究者など、立場の違う多くの人が関わっています。

2025年3月時点で、29の国立公園に、関係者が集まって公園の運営を話し合う協議会が45設けられています(参考:令和8年版環境白書)。

自然を守りたい人と地域を元気にしたい人の間に立ち、両方が納得できる答えを探すのも、自然保護官の役割です。

自然観察会での解説や清掃を担うパークボランティアなど、ボランティアとして公園を支える人たちとの連携も欠かせません。

自然保護官になるルート

自然保護官になる主な入り口は、国家公務員試験、経験者向けの選考採用、アクティブ・レンジャーの経験を生かして挑戦する道の3つです。

それぞれ、対象となる人と条件が異なります。

国家公務員試験(総合職・一般職)

自然保護官になる基本のルートは、人事院の国家公務員試験に合格し、環境省の「自然系」職員として採用されることです。

環境省が自然系で採用している試験区分は、次のとおりです(参考:環境省)。

総合職(院卒者・大卒程度)

総合職は、試験区分「森林・自然環境」または「化学・生物・薬学」の合格者から採用されます。

一般職(大卒程度)

一般職は、試験区分「林学」「農学」「建築」「土木」「農業農村工学」の合格者から採用されます。

一般職のうち、林学・農学の区分で入った職員は、主に国立公園や鳥獣保護区の管理を担当します。

建築・土木・農業農村工学の区分で入った職員は、ビジターセンターや自然歩道など、自然を守り楽しむための施設の整備を担当することが多くなります(参考:環境省)。

試験に合格したあとは、官庁訪問で環境省から内定を得る必要があります。

官庁訪問の日程は年度ごとに変わるため、受験する年の環境省の採用ページで確認しましょう。

官公庁で働くキャリアの全体像は、政府機関で社会課題解決に関わるキャリアの記事で紹介しています。

経験者採用

社会人として経験を積んでから、自然保護官を目指すこともできます。

環境省は、自然系の係長級・課長補佐級の職員を選考採用で募集することがあります。

2025年11月に公表された2025年度の選考採用では、大学卒の場合は7年以上の職務経験が必要でした(参考:環境省)。

あわせて、野生生物や国立公園に関わる業務経験が5年以上あることなど、選んだ業務ごとの要件もありました。

応募時には、野生生物の保護管理、国立公園の保護と利用、自然環境を守る施設の整備のいずれかの業務を選びます。

採用予定は「若干名」で、選考は書類審査と面接でした。

また環境省は、国家公務員試験を経て採用される自然系職員にも、既卒者や社会人経験者が多くいると説明しています(参考:環境省)。

アクティブ・レンジャーから目指す

アクティブ・レンジャーとして現場を経験してから、自然保護官を目指す道もあります。

アクティブ・レンジャーの募集は、勤務地ごとに出されています。

2026年3月に九州地方環境事務所(当時)が出した屋久島の募集を例に見てみます。

要件は、普通自動車運転免許、パソコンの技術、登山を含む野外の仕事ができる体力などでした(参考:環境省九州地方環境事務所)。

任期は年度末までで、勤務成績が良ければ、公募によらず最大で連続2回(3年度)まで再雇用される可能性があります。

応募書類の小論文では、アクティブ・レンジャーの経験を将来のキャリアプランにどう生かすかも書くよう求められています。

ただし、アクティブ・レンジャーは期間業務職員のため、自然保護官として働くには、国家公務員試験などで改めて採用される必要があります。


求められる学歴・経験・適性

自然保護官に特別な資格は必要ありませんが、試験区分に合った専門知識と、現場で働く力が求められます。

専攻

試験区分は、林学、農学、生物、土木、建築など、理系の専攻に沿って分かれています。

環境省の採用実績では一般職の「林学」区分からの採用がとくに多く、2026年度は一般職26人のうち19人が林学でした(参考:環境省)。

ただし環境省は、林学からの採用が多いのは官庁訪問に来る人が多いためで、試験区分による有利・不利はないとしています。

文系出身の場合

環境省は、文系出身の自然系職員も活躍していると説明しています。

ただし、出身にかかわらず、上の試験区分のいずれかに合格する必要があります。

文系から目指す場合は、専門試験の科目を学ぶ準備期間を見込んでおきましょう。

現場経験と運転免許

国立公園の現場では、山道を歩いて調査をしたり、車で事務所から離れた場所に向かったりします。

環境省は、現地の事務所では公用車を運転する機会が多いため、採用までに普通自動車運転免許(AT限定可)を取っておくよう強く勧めています(参考:環境省)。

アクティブ・レンジャーの募集要項でも、運転免許と、登山を含む野外の仕事ができる体力が要件になっています。

学生のうちに自然観察会や生き物調査のボランティアに参加しておくと、仕事のイメージがつかみやすくなります。

ボランティアやインターンの経験を就職活動でどう伝えるかは、社会課題解決キャリアに活かせる経験の作り方と伝え方の記事が参考になります。

転勤への適応

自然系の職員は、総合職・一般職とも全国転勤があり、1か所に勤務するのは2〜3年程度です。

総合職は1年目を東京の本省で過ごし、2年目以降は地方の事務所で働きます。

一般職は1年目から地方環境局で働き、その後、より現場に近い事務所や本省、自治体での勤務も経験します。

離島や山あいの事務所に赴任することもあるため、新しい土地での暮らしを楽しめるかどうかも、この仕事との相性を左右するポイントです。

自然系職員の採用は2026年度に37人

自然保護官は、毎年の採用人数が限られた職種です。

環境省が公表している自然系職員の採用数は、次のとおりです(参考:環境省)。

年度 総合職 一般職 合計
2020年度 8人 11人 19人
2021年度 8人 12人 20人
2022年度 8人 16人 24人
2023年度 8人 14人 22人
2024年度 8人 20人 28人
2025年度 9人 15人 24人
2026年度 11人 26人 37人

2026年度の37人は7年間で最も多く、そのうち13人が女性でした。

職員全体の人数は、少し古い数字ですが、2019年4月時点で全国106の事務所に346人の自然系職員(レンジャー)が配置されていました(参考:環境省)。

環境省は2025年度も、自然保護官やアクティブ・レンジャーなどを増員して、現地の管理体制を強めています(参考:令和8年版環境白書)。

現場では、アクティブ・レンジャーやパークボランティアなど、多くの人と協力しながら公園を管理しています。


自然保護官以外で自然を守る道

自然を守る仕事は、環境省の中だけにあるわけではありません。

働く場所ごとに、4つのパターンを紹介します。

自治体の自然保護担当

自治体の自然保護担当は、都道府県や市町村で、自然公園の管理や鳥獣の保護、希少な生き物の保全を担う仕事です。

国定公園は都道府県が管理しており、国立公園の現場でも、自治体は自然保護官の大切なパートナーです。

入り口は各自治体の職員採用試験で、試験区分の名前や内容は自治体ごとに異なります。

自然保護NGO・財団

自然保護NGO・財団は、生き物の調査、保護区の管理、環境教育、政策提言などに取り組む民間の団体です。

NGOは政府から独立した立場で活動するため、行政とは違う角度から自然保護に関われます。

国立公園では、民間の団体を「公園管理団体」として指定する制度もあり、7つの団体が指定されています(参考:令和8年版環境白書)。

生き物の調査や環境教育の経験は、団体の職員として働くときにも、自然保護官を目指すときにも生かせます。

企業

企業は、本業を通じて生き物のデータを集めたり、森や野生動物の資源を生かしたりして、自然を守る仕事をつくっています。

株式会社バイオームは、京都大学で培った生態学の知見をもとに、生き物の分布データの収集や分析を行う会社です。

生き物の名前を調べて記録できるアプリ「Biome」は、2026年8月時点で累計130万ダウンロードを超え、1,160万件以上の投稿が集まっています。

自治体や企業と組んだ生き物調査も手がけ、東京都とは「東京いきもの調査団」を実施しています(参考:株式会社バイオーム)。

株式会社うぃるこは、新潟県長岡市に拠点を置く、野生鳥獣による被害対策のコンサルティング会社です。

2018年に設立され、野生動物の生態調査や、被害対策に関するデータ分析を手がけています。

自治体の担当者向けの指導者育成研修や、防護柵の設置・捕獲の技術研修を通じて、野生動物と人が共存できる地域づくりを支えています(参考:株式会社うぃるこ 会社情報、事業紹介)。

株式会社トビムシは、森林を地域の資産として生かすため、各地で林業や木材の事業を行う会社を立ち上げ、運営しています。

2009年に設立され、岡山県西粟倉村や東京都奥多摩町、岐阜県飛騨市など、北海道から九州までの森のある地域で事業を展開しています。

奥多摩町の「株式会社東京・森と市庭」では、都内の子どもたちに木育の商品や体験を届けています(参考:株式会社トビムシ 会社概要、事業内容)。

ほかの会社は、生物多様性保護に取り組む企業10選や森林保全に取り組む企業10選で紹介しています。

ビジネスで自然を守る

ビジネスで自然を守るのは、自分で事業を起こし、経済の力で環境の課題に取り組む働き方です。

COCOCOLOR EARTHがインタビューした斉藤優也さんは、北海道の農家に生まれました。

小学4年生のとき、高速道路の開通で実家の農地が半分なくなったことが、自然と経済の関係を考えるきっかけになったそうです。

大学では生態系や環境問題を学び、自然保護の分野で研究職を目指して大学院に進みます。

しかし学ぶほど、「経済活動をないがしろにしては、自然や生態系が守れない」とわかってきたといいます。

そう考えるようになったのは、よく経済の話をしていた大学の教授の影響でした。

たとえば魚の漁獲量を減らしてもらうときは、このままでは漁師の年収がどれだけ下がるかを示して、漁港と交渉するという考え方です。

斉藤さんは大学院に通いながら農業系のベンチャー企業で働きました。

取材当時は、廃棄されそうなパンを全国に届けるECサイト「rebake」を運営する合同会社クアッガの代表を務めていました。

自然を守る仕事を、研究ではなく経済の側から選んだ経緯は、合同会社クアッガ斉藤優也さんのインタビューで読めます。

環境分野の業界や職種の全体像は環境問題に携わる仕事の記事で、現場で人や自然と向き合う働き方は現場職のキャリアの記事で紹介しています。

よくある質問

自然保護官を目指すうえで、よく寄せられる質問にお答えします。

Q. 自然保護官の年収はどのくらいですか?

A. 自然保護官は環境省の国家公務員なので、給与は法律で定められた俸給表に沿って決まり、経験年数や勤務地の手当などで変わります。環境省の2025年度の経験者採用の案内では、一般職(大卒)で採用後7年程度にあたる本省係長級のモデル年収が約560万円(残業代や住居手当などは含まない)でした。補佐役のアクティブ・レンジャーは日額制で、2026年3月の屋久島の募集では日額9,330円(大学卒は11,050円)の見込みでした。具体的な額は、各募集要項で確認しましょう。

Q. 文系でも自然保護官になれますか?

A. なれます。環境省は、文系出身の自然系職員も活躍していると説明しています。ただし出身にかかわらず、総合職なら「森林・自然環境」か「化学・生物・薬学」、一般職なら「林学」「農学」「建築」「土木」「農業農村工学」のいずれかの試験区分に合格する必要があります。専門試験では専攻分野の知識が問われるため、文系から目指す場合は、勉強の時間を計画的に確保しましょう。自然観察会や生き物調査などの現場経験も、仕事の理解に役立ちます。

Q. アクティブ・レンジャーから自然保護官になれますか?

A. アクティブ・レンジャーは非常勤の期間業務職員なので、そのまま自然保護官に切り替わるわけではありません。自然保護官として働くには、国家公務員試験に合格して官庁訪問で内定を得るか、経験者向けの選考採用に合格する必要があります。一方で、パトロールや調査、地域との調整を自然保護官の近くで経験できるため、仕事の理解は深まります。募集要項の小論文でも、経験を将来のキャリアにどう生かすかを書くよう求められています。

Q. 自然保護官は転勤が多いですか?

A. 多い仕事です。環境省によると、自然系の職員は総合職・一般職とも全国転勤があり、1か所の勤務は2〜3年程度です。総合職は1年目を本省で過ごし、2年目以降は地方の事務所で働きます。一般職は1年目から地方環境局で働き、その後、より現場に近い事務所や本省、自治体での勤務も経験します。勤務地の希望は毎年出せますが、希望どおりになるとは限りません。育児や介護などの事情には配慮があるとされているので、早めに相談しておくと安心です。


まとめ

自然保護官になるには、国家公務員試験の自然系の区分に合格して環境省に採用されるか、社会人として経験を積んで選考採用に挑戦するのが主な道です。

2020年度以降の採用は年19〜37人と多くはなく、全国転勤もありますが、国立公園や野生生物を守る仕事に正面から関われます。

まずは、近くの国立公園のパークボランティアに参加したり、アクティブ・レンジャーの募集要項を読んだりして、現場の仕事に触れてみてください。

あわせて、人事院の受験案内で、自分が受けられる試験区分を確認しておきましょう。

自然保護や森林保全に取り組む企業は、ococキャリアで探すことができます。

自然を守る仕事は、自然保護官だけではありません。

あなたに合った関わり方を見つけて、自然を守る仕事に一歩ずつ近づいていきましょう。

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