2015年11月、東京都の渋谷区と世田谷区が、性的マイノリティのカップルを自治体が登録する「パートナーシップ制度」を、全国で初めて始めました。

制度の開始から約10年がたった2025年5月末には、導入した自治体が530、人口カバー率が92.5%に広がっています。

参考:10年間で人口カバー率9割を突破。全国に広がるパートナーシップ制度を渋谷区とNPOが共同調査(認定NPO法人虹色ダイバーシティ、2025年6月27日)

LGBTQ+の「Q」は何を指すのか、気になったことはありませんか。

自分の性のことがまだよくわからず、誰にも聞けないまま戸惑っている人もいるかもしれません。

友人や同僚から打ち明けられて、どう返せばよいか迷うこともあるでしょう。

この記事では、クエスチョニングの意味とクィアとの違い、そして周りの人にできることを、公的な資料の記述に沿って確かめます。

SOGIの基本、当事者の困りごと、法制度や企業の動き、関わる仕事の入り口まで、内閣府や新宿区などの資料をもとに順に見ていきます。

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ジェンダーに関する記事、企業、キャリアの情報は、以下のページにまとめています。

≫ジェンダー問題に取り組む企業・キャリア情報をまとめて見る

 

クエスチョニングとは

クエスチョニングとは、自分の性のあり方が定まっていない、または、あえて定めていない状態を指す言葉です。

英語ではQuestioningと書き、「問う」を意味するquestionに由来します。

内閣府のパンフレットは、LGBTQ+のQにあたる言葉としてクエスチョニングを挙げ、「性のあり方が定まっていない人又は定めていない人」と紹介しています。

新宿区の職員向けハンドブックは、「性のあり方がわからない、決められない、又はあえて決めない人」と説明しています。

参考:SOGIの多様性が尊重される社会を目指して(内閣府)

参考:新宿区性自認・性的指向に関する職員のためのハンドブック(新宿区)

「探している途中」と「あえて決めない」

2つの資料の書き方から、クエスチョニングには少なくとも2つの状態が含まれると読み取れます。

探している途中の人

探している途中の人とは、自分の性のあり方が定まっていない、わからない、決められない、といった状態にある人です。

あえて決めない人

あえて決めない人とは、性のあり方を、自分の意思で決めないでいる人です。

なお、茨城県利根町の広報は、セクシュアリティは元来流動的で、変化することもあると考えられていると述べています。

そのうえで、セクシュアリティの転換期も、クエスチョニングと呼べるとしています。

参考:男女共同参画ってなあに?「LGBTQ+」の「Q+」って知っていますか?(利根町広報、2020年8月号)

性自認と性的指向、SOGIとは

SOGI(ソジ)とは、性的指向(Sexual Orientation)とジェンダーアイデンティティ(Gender Identity)の頭文字をとった略称です。

内閣府のパンフレットによると、理解増進法は、性的指向を「恋愛感情又は性的感情の対象となる性別についての指向」と定義しています。

ジェンダーアイデンティティは「自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無又は程度に係る意識」と定義され、日本語では性自認と呼ばれます。

内閣府によると、SOGIは誰もが有しているものです。

ジェンダーそのものの意味や、日本の課題は、以下の記事で解説しています。

≫ジェンダーとは?10種類のジェンダー問題を例を用いてわかりやすく解説!


LGBTQ+の「Q」と「+」、クィアとの違い

「Q」がクエスチョニングとクィアのどちらを指すのかは、資料によって説明が分かれます。

まず各文字の意味を確認し、そのうえで似た言葉との違いを整理します。

LGBTQ+の各文字の意味

内閣府のパンフレットの表をもとに、各文字の一般的な意味を並べます。

  • L(レズビアン):同性に惹かれる女性
  • G(ゲイ):同性に惹かれる男性
  • B(バイセクシュアル):両性に惹かれる人
  • T(トランスジェンダー):出生時に判断された性別とジェンダーアイデンティティが一致しない人
  • Q(クエスチョニング):性のあり方が定まっていない人又は定めていない人

内閣府によると、「+」は、L・G・B・Tに限らず多様なSOGIがあることを示しています。

新宿区のハンドブックには、アロマンティック、アセクシュアル、パンセクシュアル、Xジェンダーなどの言葉も載っています。

「Q」が指すもの

内閣府と新宿区の資料は、LGBTQのQをクエスチョニングとして説明しています。

一方、利根町の広報では、Qはクエスチョニングとクィアの2つの言葉の頭文字です。

COCOCOLOR EARTHの過去記事にも、Qを「クィア」と「クエスチョニング」の2つの言葉の頭文字とする説明があります。

内閣府のパンフレットの表には、「異なる説明の仕方がなされることもあります」との注記が付いています。

クィアとの違い

利根町の広報によると、クィアは性的マイノリティを包括してとらえる語です。

かつては侮蔑的な言葉として使われていましたが、現在は多様なマイノリティをつなぐ語として、肯定的に用いられているとされています。

クエスチョニングは、自分の性のあり方が定まっていない、または定めていない、いまの状態を指します。

2つの説明を並べると、クィアは「どんな人たちを含む言葉か」、クエスチョニングは「いまどんな状態か」を表し、指している軸が異なると整理できます。

クィアの成り立ちは、以下の記事で解説しています。

≫クィア(Queer)とは?意味やクエスチョニングとの違いを解説

よくある誤解

「いずれどれかに決まる」とは限りません

内閣府の定義には、「定まっていない人」だけでなく「定めていない人」も含まれます。

そのため、いつか必ずどれかに決まるとは限りません。

「気持ち次第で選べる」わけではありません

内閣府は、SOGIのあり方は自分で好きなように決めたり、急に変えたりすることはできないと説明しています。

一方で、国の基本計画は、SOGIは成長の過程で変動があり得るものとされていると記しています。

当事者が抱えやすい困りごと

クエスチョニングの人に限った公的な調査は、COCOCOLOR EARTHが確認した範囲では見つかりませんでした。

ここでは、性的マイノリティ全般について、国や自治体の資料が挙げている困りごとを紹介します。

打ち明けられない孤独

国の基本計画は、SOGIに関するいじめやハラスメントを経験している人がいると記しています。

自分のSOGIを打ち明けたときに否定的な反応をされるのではないかと不安で、家族にすら打ち明けられず、孤独や孤立を抱える人もいると、同じ資料は述べています。

保護者への普及啓発が十分でないことで、子どもが悩みを家庭で打ち明けられず、孤独や孤立を招いているという指摘も、同じ資料に載っています。

参考:基本計画(概要)(内閣府)

職場や学校での場面

新宿区のハンドブックは、性的マイノリティの方々が不安に感じることや困っていることの主な内容として、次のような項目を挙げています。

  • 自分が異常であると感じて悩んでしまうこと
  • 制服やトイレなどが性別で分けられることが多いこと
  • 書類などで不必要な性別欄が設けられていること
  • パートナーが異性と決めつけて会話されること

学校については、文部科学省が2015年の通知で、悩みや不安を受け止める必要性は、性的マイノリティとされる児童生徒全般に共通すると記しています。

参考:性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について(文部科学省)

アウティングの危険

内閣府は、SOGIはプライバシー情報だと述べています。

本人の同意なく、その人のSOGIを第三者に暴露することは、アウティングと呼ばれます。

たとえ善意であっても、アウティングは、その人の生命に関わる重大な結果を引き起こすことがあると、内閣府は注意を促しています。

カミングアウトをするかどうかは本人が決めることで、強要してはならないとも記されています。

言葉の意味や事件の例は、以下の記事で解説しています。

≫アウティングとは?カミングアウトとの違いや事件・事例を用いてわかりやすく解説


周囲の人ができること、アライとしての向き合い方

アライ(Ally)とは、新宿区のハンドブックによると、性的マイノリティの方々に寄り添う人、理解者、支援者のことです。

決めつけず、急がせない

新宿区のハンドブックは、対応の心がけの一つとして、「性のあり方を決めつけない」ことを挙げています。

クエスチョニングの定義に「定めていない人」が含まれることも踏まえ、この記事では、「結局どっちなの」と二択を迫る聞き方は避けたいと考えます。

言い換えの例として、同じハンドブックは「夫、妻」を「配偶者、パートナー」にする例を挙げています。

打ち明けられたとき

新宿区のハンドブックは、子どもから相談を受けた際の対応ポイントとして、次の5点を挙げています。

  • 「話してくれてありがとう」と伝える
  • 何に困っているかを聞く
  • 誰かに話しているか、話してよいかを確認する
  • 「ひとりじゃない」というメッセージを伝える
  • 性のあり方を決めつけない

打ち明けられたときの受け止め方は、以下の記事にもまとめています。

≫カミングアウトとは?意味や使い方、LGBTとの関係をわかりやすく解説

クエスチョニングの体験談ではありませんが、打ち明ける側の声として、COCOCOLOR EARTHのインタビューに株式会社はぐくむの平山裕三さんが登場しています。

平山さんは、学生時代にゲイであることを秘密にして悩んだ経験を語っています。

自分と向き合う中でカミングアウトを決め、仲間に打ち明けたとき受け止めてもらえたことが、親に伝えるときの支えになったそうです。

≫【株式会社はぐくむ】僕がゲイだとカミングアウトした理由~平山裕三~

相談できる窓口

自分の性のことで悩んでいるときも、身近な人のことで迷っているときも、相談できる窓口があります。

ガイダンスの後に「4」を押すと、セクシュアルマイノリティ専門ラインにつながると、公式ページは案内しています。

福島県からかける場合は、専用の番号(0120-279-226)があります。

運営団体は、2026年4月1日にガイダンスを一部変更したとして、音声ガイダンスを確認して利用するよう案内しています。

同じ公式ページには、自分が当事者なのかどうか、気持ちに揺らぎがある、まだよくわからないという場合でも、電話してよいと書かれています。

法制度と自治体の現状

同性婚をめぐる制度は、この記事では扱いません。

理解増進法と基本計画

理解増進法(令和5年法律第68号)は、2023年6月23日に公布・施行されました。

法務省は、法の基本理念を次のように紹介しています。

「全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものである」という内容です。

内閣府は、この法律には、一人ひとりの行動を制限したり、特定の誰かに新しい権利を与えたりする規定はないと説明しています。

2026年6月16日には、法第8条に基づく基本計画が閣議決定されました。

参考:性的マイノリティに関する偏見や差別をなくしましょう(法務省)

参考:基本計画等(内閣府)

自治体のパートナーシップ制度

渋谷区は、2015年11月5日から、パートナーシップ証明書の交付を始めました。

渋谷区は、この証明を、法律上の婚姻とは異なるものとして、二者の関係を証明する制度だと説明しています。

利用を考える場合は、住んでいる自治体の窓口や公式ページで、対象や手続きを確認してください。

各国の法制度との比較は、以下の記事で紹介しています。

≫日本を含む世界15か国のLGBT関連法の現状を比較!トレンドも分析

参考:渋谷区パートナーシップ証明(渋谷区)


企業・職場の取り組み

企業には、LGBTQ+などの性的マイノリティが働きやすい職場づくりを評価する指標があります。

PRIDE指標

一般社団法人work with Prideは、2016年に、職場でのLGBTQ+への取り組みを評価する「PRIDE指標」を策定しました。

10回目となる2025年は、437の企業・団体・自治体が応募し、グループ内の複数社連名を含めると応募は931社でした。

参考:PRIDE指標とは(work with Pride)

参考:PRIDE指標2025の結果発表(work with Pride)

三井不動産の例

三井不動産株式会社は、2025年11月に、PRIDE指標2025で最高評価のゴールド認定を受けたと発表しました。

同社は、LGBTQ+についての社内相談窓口の設置、全社員必修のe-learning、基礎知識をまとめたハンドブックの社内公開などを実施しています。

参考:PRIDE指標2025でゴールド認定を受賞(三井不動産株式会社)

ジェンダー課題に取り組む企業は、以下の記事で紹介しています。

≫ジェンダーの問題に取り組む企業10選!就職・転職におすすめのベンチャーから大手企業

LGBTQ+・ジェンダーに関わる仕事・キャリア

ここまで見てきた困りごとや取り組みは、いくつかの仕事につながっています。

D&I推進・ダイバーシティ担当

D&I推進・ダイバーシティ担当は、企業のD&Iの取り組みを進める仕事です。

三井不動産の例に挙げた研修や相談窓口の整備なども、その取り組みにあたります。

人事・採用

人事・採用は、採用面接での対応など、採用の現場にかかわる仕事です。

厚生労働省の委託事業の報告書には、認定NPO法人ReBitの指摘が載っています。

採用では面接官の理解促進が重要で、カミングアウトをしていなくても当事者の就活生がいるという前提を持つことが求められる、という内容です。

NPO・支援団体

NPO・支援団体では、たとえば認定NPO法人虹色ダイバーシティが、企業向けのコンサルティングなどを行っていると、同じ報告書に記されています。

参考:職場と性的指向・性自認をめぐる現状(厚生労働省委託事業報告書)

行政・教育

行政・教育は、国の基本計画が、相談員への研修や、スクールカウンセラー等を活用した児童生徒の相談体制の充実を挙げている分野です。

研修・求人サービスの運営

COCOCOLOR EARTHの企業紹介では、次の2社を取り上げています。

株式会社アカルクはLGBTQ+の研修やeラーニングを提供し、株式会社JobRainbowはLGBTフレンドリーな求人サイトを運営しています。

働き方や必要なスキルの全体像は、以下の記事で解説しています。

≫ジェンダー課題のキャリアとは?D&I推進・政策・NPOなどキャリアの全体像を解説

ジェンダー課題に取り組む企業の情報は、ジェンダーに取り組む企業一覧でも見られます。


よくある質問

クエスチョニングについて、よく寄せられる疑問に答えます。

Q. クエスチョニングとは何ですか?

A. クエスチョニングとは、自分の性のあり方が定まっていない、または、あえて定めていない状態を指す言葉です。内閣府のパンフレットは、LGBTQ+のQにあたる言葉として、性のあり方が定まっていない人又は定めていない人と紹介しています。新宿区のハンドブックは、わからない、決められない、又はあえて決めない人と説明しています。探している途中の人も、あえて決めない人も含まれます。英語ではQuestioningと書き、「問う」を意味するquestionに由来します。

Q. クエスチョニングとクィアの違いは何ですか?

A. クィアは、性的マイノリティを包括してとらえる語です。かつては侮蔑的に用いられましたが、現在は多様なマイノリティをつなぐ語として肯定的に用いられていると、利根町の広報は説明しています。クエスチョニングは、性のあり方が定まっていない、または定めていない状態を指し、答えが出ていない状態も含まれます。2つの説明を並べると、前者は「どんな人たちを含むか」、後者は「いまどんな状態か」を表し、指す軸が異なると整理できます。

Q. LGBTQ+の「Q」と「+」はどんな意味ですか?

A. Qは、内閣府や新宿区の資料ではクエスチョニングを指します。利根町の広報のように、クエスチョニングとクィアの2つの言葉の頭文字とする説明もあり、資料によって異なります。内閣府のパンフレットの表にも、異なる説明の仕方がなされることもあるという注記があります。Qを見かけたら、その資料の説明を確認すると混乱しにくくなります。「+」は、L・G・B・Tに限らず多様な性的指向やジェンダーアイデンティティがあることを示すと、内閣府は説明しています。

Q. 性のことで悩んだときの相談先はありますか?

A. よりそいホットラインは、24時間のフリーダイヤル(0120-279-338)です。ガイダンスの後に「4」を押すと、セクシュアルマイノリティ専門ラインにつながります。福島県からは0120-279-226です。自分が当事者かどうかまだわからない場合でも電話してよいと、公式ページに書かれています。法務省の「みんなの人権110番」(0570-003-110)は、平日午前8時30分から午後5時15分まで受け付けています。

まとめ

クエスチョニングとは、自分の性のあり方が定まっていない、または、あえて定めていない状態を指す言葉です。

探している途中の人も、あえて決めない人も含まれます。

職場や学校で誰かから打ち明けられたときは、「話してくれてありがとう」と伝え、共有してよい範囲を本人に確認してみてください。

自分の性のことで迷ったときは、答えが出ていない段階でも、よりそいホットラインに電話できます。

仕事として関わる道を考えたい方には、ジェンダー課題に取り組む企業の紹介を載せたココキャリアもあります。

誰かの「まだわからない」を、そのまま受け止められる人が増えていくことを願っています。

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