外務省によると、国連関係機関で働く日本人の専門職以上の職員は、2024年末時点で979名でした。
そのうち63.1%にあたる618名が女性で、94名が部長級以上の幹部職員です。
ただし日本は、国連事務局で職員が少ない国として、若手向け採用試験YPPの対象国に入っています。
「国連職員になって、世界の課題に関わる仕事がしたい」。
そう思っても、どんな採用ルートがあり、何歳までに何を準備すればいいのかは、なかなか見えにくいものです。
ここでは、国連職員の種類と5つのルート、求められる学歴・経験・語学、年収の仕組み、最近の採用環境の変化を、公式データをもとにまとめました。
国連に入る前に経験を積む場所や、関心のある社会課題から目指す機関の選び方もあわせて紹介します。
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国連職員とは
国連職員とは、国連事務局やUNICEF・UNDP・WFPなどの国連機関に雇われ、特定の国ではなく国際社会のために働く職員です。
国際公務員とも呼ばれ、出身国の政府から指示を受けずに、中立の立場で仕事をすることが求められます。
世界銀行やアジア開発銀行など、国連以外も含めた国際機関で働くキャリアの全体像は、国際機関で社会課題解決に関わるキャリアの記事で解説しています。
国連職員の種類
国連職員は、採用のされ方と仕事の内容によって、大きく4つに分かれます。
外務省国際機関人事センターによると、2024年末時点の国連関係機関の職員は130,948名で、区分ごとの人数は次のとおりです。
| 区分 | 職員数 |
|---|---|
| 国際専門職 | 46,585名 |
| 国内採用専門職 | 18,656名 |
| フィールドサービス職 | 2,597名 |
| 一般職 | 63,110名 |
国際専門職
国際専門職は、国籍に関係なく世界中から採用され、本部や世界各地の事務所で働く職員です。
職位はP1からP5までの専門職と、部長級以上のD1・D2などに分かれ、日本人が国連職員を目指すときは、多くの場合この国際専門職が目標になります。
国内採用専門職(NO)
国内採用専門職は、勤務する国の国籍をもつ専門職として、その国の事務所で働く職員です。
フィールドサービス職
フィールドサービス職は、主に平和維持活動などの現地ミッションで、運営や後方支援を担う職員です。
一般職
一般職は、事務や経理などの業務を担う職員で、多くは勤務地の周辺で採用されます。
働く場所
国連職員の勤務地は、ニューヨークやジュネーブなどの本部と、フィールドと呼ばれる世界各地の事務所に分かれます。
採用はポストごとに行われるため、本部で働くか現地事務所で働くかは、どのポストに応募するかで決まります。
国連職員になる5つのルート
国連職員になるための入り口は、主に5つあります。
このうち国連ボランティアとインターンは、職員として採用されるのではなく、国連の現場で経験を積むための方法です。
それぞれの条件を比べると、次のとおりです。
| ルート | 年齢 | 学歴 | 職務経験 | 費用の負担 |
|---|---|---|---|---|
| YPP | 32歳以下 | 学士 | 不要 | 国連 |
| JPO | 35歳以下 | 修士 | 2年以上 | 日本政府 |
| 空席公募 | 定めなし | ポストによる | ポストによる | 国連 |
| 国連ボランティア | 原則18歳以上 | 学士または修士 | 一般に3年程度 | 国連など |
| インターン | 定めなし | 在学中または卒業1年以内 | 不要 | 本人など |
YPP(ヤング・プロフェッショナル・プログラム)
YPPは、国連事務局が若手を専門職として採用するための試験です。
国連のYPP案内によると、2025年の試験は32歳以下で、試験分野に関連する学士号をもち、英語かフランス語に堪能な人が対象です。
職務経験は求められません。
ただし受験できるのは、国連事務局で職員が少ない国の国籍をもつ人だけで、日本は2025年の対象国に入っています。
試験分野は毎年変わり、2025年はグローバル・コミュニケーションの分野で募集されました。
合格すると合格者名簿(ロスター)に3年間掲載され、ポストに空きが出たときに名簿の中から選考を経て採用されます(外務省国際機関人事センター)。
JPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)
JPOは、日本政府が費用を負担して、若手を国際機関に2年間派遣する制度です。
外務省国際機関人事センターによると、応募には35歳以下であること、修士号と2年以上の職務経験、職務を行える英語力などが必要です。
2024年末時点の国連関係機関の日本人職員979名のうち、476名がJPOの出身で、日本人が国連職員になるときの代表的なルートになっています。
ただし、派遣が終われば自動的に正規職員になれるわけではありません。
派遣期間中に経験と人脈をつくり、空席ポストに応募して採用される必要があります。
COCOCOLOR EARTHがインタビューした並木愛さんは、コンサルティング会社で2年半働いたあと、国連ボランティアとしてジンバブエのWFPに参加しました。
その後、JPO試験に合格してルワンダ事務所で3年間勤務し、2021年に正規職員の試験に合格しています。
国連ボランティアからJPO、正規職員へと進んだ道のりは、国連WFP並木愛さんのインタビューで詳しく読めます。
空席公募
空席公募は、ポストの新設や職員の退職・異動で空きが出るたびに職員を募集する、国際機関の基本的な採用方法です。
募集は1年を通して随時行われ、書類選考と面接を経て採用が決まります(外務省国際機関人事センター)。
ポストごとに求められる専門分野・学歴・経験年数が決まっており、経験を積んだ社会人が中途で応募するのはこのルートです。
COCOCOLOR EARTHがインタビューした斎藤珠里さんは、朝日新聞社で16年間記者として働きました。
その後、46歳でパリに渡って大学院に通い、UNESCOのポストに採用されました。
UNESCOでは、持続可能な開発のための教育(ESD)のプログラムを担当し、若者の育成に取り組んできました。
記者として培った経験を教育分野の国際協力に生かしたキャリアは、UNESCO斎藤珠里さんのインタビューで紹介しています。
国連ボランティア
国連ボランティアは、国連ボランティア計画(UNV)が募集し、国連機関の現場に派遣する仕組みです。
国際公務員ではありませんが、活動中は生活手当や着任・離任の手当、医療保険などが支給されます。
UNVの年次報告によると、2025年には過去最多の17,169人が172の国と地域で活動しました。
応募には原則18歳以上で、学士号か修士号、関連分野での実務経験(一般に3年程度)が求められます(外務省国際機関人事センター)。
国連ボランティアとしての活動経験は、JPOに応募するときの職務経歴として認められます。
日本人の国連ボランティア経験者のおよそ46%が、活動を終えたあとも国連機関で働き続けています。
インターンシップ
国連事務局のインターンは、大学院生や学部の最終学年の学生、卒業から1年以内の人が応募できます(国連事務局の案内)。
期間は2〜6か月で、給与は支払われず、渡航費や滞在費は自己負担です(外務省国際機関人事センター)。
一方で、UNDPやUN Womenのように、有給のインターンを設けている機関もあります。
インターンの経験は、国際機関の採用では通常、職務経験として数えられません。
それでも、国連の仕事を内側から知り、職員とのつながりをつくれる機会になります。
国連職員に求められる学歴・経験・語学
国連の専門職を目指すうえで、多くの人が準備するのが修士号・職務経験・語学の3つです。
学歴
YPPのように学士で受験できる試験もありますが、JPOや空席公募の多くでは修士号が求められます。
外務省国際機関人事センターは、国際機関の職員に最低限求められる要件として、応募するポストと関連する分野での修士号以上の学位を挙げています。
開発学、公衆衛生、国際関係、経済学、法律など、目指す仕事に合った分野を選ぶことが大切です。
海外の大学院への進学を考えるなら、海外大学院に強い正規留学エージェント5選も準備の参考になります。
職務経験
空席公募では、職位が上がるほど長い職務経験が求められます。
途上国での現場経験や、政府・NGO・企業での専門的な経験も、ポストの仕事に関連していると認められれば評価の対象です。
語学
国連の仕事では、英語かフランス語を使いこなせることが基本です。
国連公用語は、英語・フランス語・スペイン語・ロシア語・中国語・アラビア語の6つで、2つ目の公用語ができると応募できるポストが広がります。
斎藤珠里さんもインタビューで、国連で働くために必要なスキルとして語学力を挙げ、「自分が思っていることを、100%伝えられるレベルでないとダメ」と話しています。
国連職員の年収と待遇
国連職員の給与は、国連の国際人事委員会(ICSC)が定める共通の給与表に基づいて決まります。
給与の仕組み
専門職の給与は、職位と勤続年数ごとの「基本給」と、勤務地の生計費や為替に応じた「地域調整給」の2つで構成されます。
ICSCの給与表によると、2026年1月時点の基本給は次のとおりで、いずれも国連内部の「職員課税」を差し引いたあとの額です。
| 職位 | 基本給(年額・初号) |
|---|---|
| P2 | 56,046ドル |
| P3 | 71,335ドル |
| P4 | 86,027ドル |
| P5 | 103,165ドル |
実際の支給額には、ここに地域調整給が加わるため、同じ職位でも勤務地によって年収が変わります。
手当と休暇
外務省国際機関人事センターによると、給与のほかに扶養手当や子どもの教育補助金、赴任手当、困難地手当などが、条件に応じて支給されます。
休暇は年30日の年次有給休暇があり、自国の外で働く職員は、原則2年に1回、機関の費用で家族と帰国できる帰国休暇の制度も使えます。
2026年に国連は2,900ポストを廃止
国連職員を目指すなら、最近の採用環境の変化も知っておく必要があります。
国連ニュースによると、国連総会は2025年12月30日に、2026年の通常予算34億5,000万ドルを承認しました。
承認された予算は、事務総長が「UN80」という改革のもとで示した、予算を15%、人員を約19%減らす案をおおむね反映したものです。
予算の承認にあわせて、国連の会計責任者は、2026年1月1日付で2,900のポストが廃止されると説明しました。
通常予算は、政治・人権・人道などの国連の中心的な活動を支える予算で、UNICEFやWFPなどの機関はこれとは別の資金で運営されています。
それでも当面は募集の数が絞られる可能性があるため、国連だけを目標にせず、関連する分野で経験を積みながら機会を待つ姿勢が大切です。
国連に入る前に経験を積む場所
国連の専門職には、修士号に加えて数年の職務経験が求められることが多くあります。
その経験をどこで積むかが、国連職員への近道を左右します。
JICA・青年海外協力隊
JICA(国際協力機構)は、日本のODAを通じて途上国の開発を支える組織で、国連機関と一緒に事業を進めることも多くあります。
JICA職員の採用ルートはJICAで働くには?の記事にまとめています。
途上国の現場を2年間経験できる青年海外協力隊(JICA海外協力隊)も、国連を目指す人がよく選ぶ道です。
開発コンサルタント
開発コンサルタントは、JICAや国際機関から依頼を受けて、途上国の開発プロジェクトの計画や運営を担う専門職です。
アイ・シー・ネット株式会社
アイ・シー・ネット株式会社は、途上国の開発プロジェクトを担う国際開発コンサルティング会社です。
外務省やJICAに加え、世界銀行やアジア開発銀行などの国際機関、現地の政府機関が実施する事業に関わっています。
農業・保健・教育など分野ごとの専門家が現地で働いており、国際機関の仕事の進め方を間近で学べる職場です(参考:アイ・シー・ネット株式会社)。
仕事内容やなり方は開発コンサルタントとはの記事で、国際協力に取り組む会社は国際協力に取り組む企業10選で紹介しています。
NGO・社会的企業
国際協力NGOは、国連機関の資金を受けて現地の事業を実施することも多く、国連と近い場所で現場の経験を積めます。
途上国でビジネスを通じて課題に取り組む社会的企業で、事業づくりの経験を積む人もいます。
株式会社坂ノ途中
株式会社坂ノ途中は、環境負荷の小さい農業を広げることを目指し、日本と東南アジアで農産物の流通に取り組む京都の会社です。
国連WFPと現地のコーヒー会社と組み、ラオス北部の8つの村でコーヒー生産者を支える「COFFEE-JAPANプロジェクト」を実施しました。
坂ノ途中が栽培技術や加工設備を支え、WFPが各家庭の栄養改善の指導を担うという役割分担で、企業と国連機関が一つの事業を進めた例です(参考:株式会社坂ノ途中)。
国際機関・JICA・NGO・民間企業・起業という5つのルートの入り口は、国際協力を仕事にするとは?の記事にまとめています。
社会課題から目指す国連機関を選ぶ
国連職員を目指すときは、「国連」という一つの組織ではなく、関心のある課題を担当する機関から考えるのがおすすめです。
| 関心のある社会課題 | 主な国連機関 |
|---|---|
| 子ども・教育 | UNICEF、UNESCO |
| 飢餓・食料 | WFP、FAO |
| 難民・人道支援 | UNHCR、OCHA |
| 貧困・開発 | UNDP |
| 健康・医療 | WHO |
| 労働・人権 | ILO、OHCHR |
| 環境・気候変動 | UNEP |
| ジェンダー | UN Women |
機関ごとに、求められる専門分野や現場の仕事の内容は大きく異なります。
自分がどの課題に関わりたいかを先に決めると、選ぶべき大学院の専攻や、積むべき職務経験も見えてきます。
国連以外も含めて、課題ごとにどんな国際機関があるのかは、国際機関で社会課題解決に関わるキャリアの記事でも紹介しています。
よくある質問
国連職員になることについて、よく寄せられる質問にお答えします。
Q. 国連職員の年収はどのくらいですか?
A. 国連職員の給与は、国際人事委員会(ICSC)の給与表に基づいて決まります。2026年1月時点の専門職の基本給(初号)は、職員課税を差し引いた額で、P2が年56,046ドル、P4が年86,027ドルです。実際の支給額には、勤務地の生計費に応じた地域調整給が加わるため、同じ職位でも勤務地によって年収は変わります。このほか、扶養手当や子どもの教育補助金なども、条件に応じて支給されます。応募先を考えるときは、勤務地ごとの生活費もあわせて確認しておくと安心です。
Q. 国連職員に新卒でなれますか?
A. 新卒から国連職員を目指せるルートの一つが、国連事務局のYPPです。2025年の試験は32歳以下で学士号をもつ人が対象で、職務経験は求められず、日本人も受験できました。ただしJPOや空席公募では、修士号と数年の職務経験が求められることが多くあります。そのため、卒業後に企業やJICA、NGOなどで経験を積み、大学院で学んでから国連を目指す人もいます。学生のうちは、インターンで国連の仕事を内側から知っておくと役立ちます。
Q. 国連職員になるには、英語はどのくらい必要ですか?
A. 国連の仕事では、英語かフランス語を使いこなせることが基本です。会議での発言や報告書の作成、各国の職員とのやり取りを、その言語でこなせる水準が求められます。JPOの応募条件も「職務を遂行できる英語力」です。国連公用語は英語・フランス語・スペイン語・ロシア語・中国語・アラビア語の6つで、2つ目の公用語ができると、応募できるポストが広がります。現地事務所では、その国で使われる言語が役立つ場面もあります。
Q. 日本人の国連職員が少ないのはなぜですか?
A. 国際機関の採用は、日本の新卒一括採用のように決まった時期に一斉に行われるものではなく、ポストに空きが出るたびに募集されます。また専門職には、修士号と関連分野での職務経験が求められることが多くあります。2024年末時点で国連関係機関の日本人職員は979名で、日本は職員が少ない国としてYPPの対象国に入っています。一方で、日本人職員の半数近くはJPOの出身で、若手が国連に入る道は制度として整えられています。
まとめ
国連職員になるには、YPP・JPO・空席公募・国連ボランティア・インターンという5つのルートがあります。
32歳以下ならYPP、35歳以下で修士号と職務経験があればJPOというように、年齢と経歴によって狙えるルートが変わります。
まずは自分の年齢と学歴から、どのルートを目指すかを決め、関心のある社会課題を担当する国連機関の募集要項を読んでみてください。
足りない経験が見えたら、JICAや開発コンサルタント、NGO、社会的企業で積んでいくのが近道です。
国際協力に取り組む企業は、ココキャリアで探すことができます。
国連で働く日本人の多くも、最初は一つの課題への関心と、目の前の仕事での経験から歩き始めています。
あなたの経験は、きっと世界のどこかで生かせるはずです。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
