WHOの人事統計によると、2025年末時点のWHO職員は8,569人でした。
そのうち、国ごとの職員数の目安が決められている専門職ポストで働く日本人は44人です。
WHOが日本について「望ましい」としている人数は85〜116人で、実際の人数は下限の半分ほどにとどまっています。
「医療や公衆衛生の仕事で、世界の健康課題に関わりたい」。
そう考えたとき、真っ先に思い浮かぶ職場の一つがWHOです。
ただ、WHOにどんな職種があり、どの入り口から入れるのかは、日本語では情報が少なく、わかりにくいですよね。
ここでは、WHO職員の仕事と職種、4つの採用ルート、求められる学歴・経験・語学、日本人職員の現状、最近の採用環境の変化を、WHOの公式データをもとに紹介します。
WHOに入らなくてもグローバルヘルスに関われる道もあわせて紹介します。
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WHOとは
WHO(世界保健機関)とは、すべての人ができる限り高い水準の健康を得られるよう、各国の協力をまとめる国連の専門機関です。
厚生労働省によると、WHOは1948年4月7日に設立され、現在の加盟国は194か国です。
日本は1951年に加盟しました。
WHOが取り組む社会課題
WHOが扱うのは、感染症だけではありません。
がんや糖尿病などの生活習慣病、母子保健、メンタルヘルス、医薬品の品質、たばこ対策など、健康に関わるテーマを幅広く担当しています。
柱の一つが、すべての人が必要な保健医療サービスを、お金の心配なく受けられる状態を目指す「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」です。
UHCはSDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」のターゲットにも含まれており、その背景はSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」の記事で解説しています。
WHOの拠点と日本との関わり
WHOは、スイスのジュネーブにある本部と、世界6つの地域事務局、各国の事務所で構成されています。
日本を担当しているのは、フィリピンのマニラにある西太平洋地域事務局です。
神戸市には、1995年に設立されたWHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)があり、UHCや高齢化、災害・健康危機管理の研究を行ってきました。
ただし、地元の支援が終わることを受けて、WHO神戸センターは2026年3月31日に閉鎖されました。
国際保健を志す学生向けに開いていた「WKCサマースクール」は、今後は大阪大学の研究ユニットなどが共催する予定です。
WHO職員の仕事と職種
WHO職員というと医師を思い浮かべるかもしれませんが、実際には幅広い職種の人が働いています。
職員の区分は、大きく3つに分かれます(参考:WHO採用サイト)。
国際専門職
国際専門職は、世界中から採用され、各国の拠点を異動しながら保健の技術や運営、管理の仕事を担う職員です。
一般に「国際公務員」と呼ばれるのは、この区分の職員です。
ナショナル・プロフェッショナル・オフィサー
ナショナル・プロフェッショナル・オフィサーは、自分の国籍のある国で、その国の事情に通じた専門職として働く職員です。
一般職
一般職は、事務などで専門職の仕事を支える職員で、勤務地に住む人やその国の国籍をもつ人から採用されます。
医療・公衆衛生の専門職
WHOの中心にいるのは、医師や看護師、疫学者、保健政策の専門家など、保健医療の専門性をもつ職員です。
感染症の流行を監視して各国に助言したり、治療のガイドラインをつくったり、途上国の保健省と一緒に保健制度を整えたりします。
臨床の経験に加えて、データを分析する力や、政策として形にする力が求められる仕事です。
医療職以外の職種
WHOには、医療の資格をもたない専門職も多く働いています。
財務、人事、調達、IT、広報、法務、データ分析など、国際機関を動かすための仕事はどれも欠かせません。
WHOのインターン募集でも、公衆衛生や医療だけでなく、経営・事務・広報・渉外の分野を学ぶ学生を対象にしています。
医療職以外の立場から健康課題に関わるキャリアの全体像は、ヘルスケア領域のキャリアの記事で紹介しています。
WHO職員になる4つのルート
WHOで働くための入り口は、大きく4つあります。
それぞれ、対象となる人と条件が異なります。
空席公募
空席公募は、空いたポストごとに職員を募集する、WHOの基本的な採用方法です。
募集はWHOの採用サイトで随時公開され、ポストごとに求められる専門分野・学歴・経験年数が決まっています。
契約は1〜2年の任期付きが中心で、業務の必要性と本人の実績によって更新されます。
短期のニーズに対応する臨時の契約もあり、こちらは最長24か月まで更新できます(参考:WHO採用サイト)。
JPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)
JPOは、各国政府が費用を負担して、自国の若手を国際機関に送り出す制度です。
外務省のJPOは、35歳以下で、修士号と2年以上の職歴をもつ日本国籍の人が対象で、派遣期間は2年間です(参考:外務省国際機関人事センター)。
WHOの人事統計によると、2025年にWHOで働いたJPOは61人で、そのうち日本が支援したJPOは11人と、国別で最も多い人数でした。
JPOの任期が終わっても自動的に正規職員になれるわけではなく、派遣中に実績を積み、空席ポストに応募して採用される必要があります。
在ジュネーブ国際機関日本政府代表部が2019年に紹介した渡部明人さんは、臨床医として3年働いたあと、青年海外協力隊でバヌアツの保健省に勤めました。
その後、イギリスの大学院で医療経済学と保健財政学を学び、外務省の任期付職員としてUHCの仕事に就きます。
そこで働いているときにJPO試験に合格してWHOに入り、新しくできたポストに応募して正規職員になりました。
WHOではありませんが、COCOCOLOR EARTHがインタビューした並木愛さんも、JPOから国連機関の正規職員になった一人です。
コンサルティング会社で働いたあと、国連ボランティアとして国連WFPに参加し、JPOとして3年間ルワンダで勤務して、2021年に正規職員になっています。
1度目のJPO応募は書類審査で不合格となり、2度目はJPO合格者20人ほどに話を聞いて準備を重ねたそうです。
JPOに合格するまでの準備や、正規職員になるまでの流れは、国連WFP並木愛さんのインタビューで読めます。
インターンシップ
WHOのインターンシップは、20歳以上で、大学で3年以上の学業を終えた学生や、卒業後18か月以内の人が応募できます。
期間は6〜24週間のフルタイムで、経済的な支援が必要な人には生活手当が支給され、医療・傷害保険も付きます。
応募の窓口は、WHOの採用システム「Stellis」だけです。
WHOの人事統計によると、2025年のインターンの応募者は4,022人で、実際にインターンとして働いたのは36人でした。
日本国籍の応募者は12人で、そのうち1人がインターンとして働いています。
コンサルタント・短期の業務契約
WHOは、調査や翻訳など期限のある仕事のために、専門家とコンサルタント契約を結ぶこともあります。
雇用契約ではなく、期間は最長24か月です(参考:WHO)。
職員としての採用ではありませんが、専門分野での実績があれば、WHOの仕事に関わり、組織の中を知るきっかけになります。
なお、WHOにも若手向けのヤング・プロフェッショナル・プログラムがあります。
ただし対象は後発開発途上国の国籍をもつ人に限られ、日本人は応募できません(参考:WHO)。
国際機関全般の採用ルートや、民間・NGOから目指すキャリアの組み立て方は、国際機関で社会課題解決に関わるキャリアの記事で解説しています。
WHO職員に求められる学歴・経験・語学
WHOの国際専門職には、職位ごとに必要な学歴と経験年数が決まっています。
WHOの採用サイトが示す最低条件は、次のとおりです。
| 職位 | 必要な職務経験 | 必要な学歴 |
|---|---|---|
| P1 | 1年 | 学士 |
| P2 | 2年 | 学士 |
| P3 | 5年 | 学士 |
| P4 | 7年 | 修士 |
| P5 | 10年 | 修士 |
| P6・D1・D2 | 15年 | 修士 |
学歴
表の上では学士で応募できる職位もありますが、実際の募集では修士号が求められることが多くあります。
保健分野では、公衆衛生学修士(MPH)や疫学、保健政策、保健経済学などの修士号をもつ人が目立ちます。
海外の大学院で学ぶ場合の準備の進め方は、海外大学院に強い正規留学エージェント5選も参考になります。
職務経験
経験年数は、そのポストの仕事に関連する経験として数えられます。
WHOは、途上国での経験をプラスになる経験として挙げています。
政府の保健政策や研究機関での経験も、保健分野のポストでは関連する経験です。
語学
国際専門職の多くのポストでは、英語かフランス語に堪能であることに加えて、ほかの国連公用語の1つを実務で使える力が求められます。
国連公用語は、英語・フランス語・スペイン語・ロシア語・中国語・アラビア語の6つです。
WHOの日本人職員は目安を下回る44人
WHOは、分担金の額、加盟国であること、人口をもとにした計算式で、国ごとに「望ましい職員数」の範囲を決めています(参考:世界保健総会決議WHA56.35)。
この計算の対象は、語学職や出向者などを除いた専門職ポストです。
日本の望ましい範囲は85〜116人ですが、2025年末時点で、対象のポストで働く日本人は44人でした(参考:WHO)。
WHOは日本を、職員が目安より少ない国に分類しています。
44人のうち28人が女性で、女性が6割以上を占めています。
職位で見ると、P3が18人、P4が15人と、中堅の職位が全体の約4分の3です。
WHOは採用サイトで、職員が少ない国の人や若い応募者からの応募を歓迎すると明記しています。
修士号と数年の実務経験を積むまでには時間がかかりますが、日本は応募が歓迎される側の国です。
2026〜27年の予算は22%縮小
WHOを目指すなら、最近の採用環境の変化も知っておく必要があります。
WHOは財政の厳しさを理由に、2026〜27年の予算を当初の53億ドルから42億ドルへと22%縮小しました(参考:WHO)。
その後、米国政府は2026年1月22日に、WHOからの脱退の完了を発表しました。
WHOは2026年1月24日の声明で、この決定を遺憾としています。
人員も減っており、2024年末に9,463人だった職員数は、2025年末には8,569人に減りました(参考:WHO)。
一方で、加盟国は2025年5月の世界保健総会で分担金を20%引き上げることに合意しています。
当面は募集のポスト数が絞られる可能性があるため、WHOだけを目標にせず、次に紹介する道で経験を積みながら機会を待つ姿勢が大切です。
WHO以外でグローバルヘルスに関わる道
世界の健康課題に関わる方法は、WHOで働くことだけではありません。
WHOと一緒に動く組織や企業で経験を積むことは、将来WHOに応募するときの実務経験にもなります。
JICA・政府機関
JICA(国際協力機構)は、途上国の保健省に専門家を派遣したり、病院の建設や医療人材の育成を支援したりしています。
渡部さんのように、青年海外協力隊で途上国の保健医療を経験してから国際機関に進む人もいて、青年海外協力隊(JICA海外協力隊)はその入り口の一つです。
JICA職員の採用ルートや求められるスキルは、JICAで働くには?の記事にまとめています。
NGO・開発コンサルタント
国際保健のNGOは、WHOやUNICEFの資金を受けて、ワクチン接種や母子保健の事業を現地で実施することもあります。
開発コンサルタントは、JICAや国際機関から依頼を受けて、途上国の保健医療プロジェクトの計画や運営を担う専門職です。
仕事内容やなり方は開発コンサルタントとはの記事で紹介しています。
国際機関・JICA・NGO・民間企業・起業という5つのルートの入り口は、国際協力を仕事にするとは?の記事にまとめています。
企業
日本企業の中にも、WHOと協力して世界の健康課題に取り組んでいる会社があります。
エーザイ株式会社
エーザイ株式会社は、医薬品の研究開発・製造を行う製薬会社です。
2010年にWHOと協力を始め、リンパ系フィラリア症という熱帯病の治療薬「DEC錠」を自社で製造し、WHOを通じて流行国に無償で提供しています。
2026年6月時点で33か国に28.6億錠を提供し、8か国で制圧が達成されました(参考:エーザイ株式会社)。
住友化学株式会社
住友化学株式会社は、農業・医療・生活に関わる化学製品を手がける総合化学メーカーです。
マラリアを防ぐ防虫剤処理の蚊帳「オリセット®ネット」を開発し、2001年にWHOから世界で初めて長期残効型の蚊帳として効果を認められました。
蚊帳は、UNICEFなどの国際機関を通じて、約100か国に届けられています(参考:住友化学株式会社)。
保健医療分野で事業を展開するほかの会社はすべての人に健康と福祉をに取り組む企業10選で、途上国で事業を行う会社は途上国支援に取り組む企業10選で紹介しています。
よくある質問
WHOで働くことについて、よく寄せられる質問にお答えします。
Q. WHO職員の年収はどのくらいですか?
A. WHOの国際専門職の給与は、国連共通制度に沿って決まります。給与表は国際人事委員会(ICSC)の勧告をもとに国連総会が定めたもので、世界共通で使われています。ナショナル・プロフェッショナル・オフィサーと一般職は、勤務地の給与水準を調べてつくる現地の給与表で支払われます。年30日の年次休暇や国連の年金、医療保険があり、扶養手当や教育手当、家賃補助なども契約の種類や職位に応じて支給されます。具体的な条件は、募集要項で確認しましょう。
Q. 医師や看護師でなくてもWHOで働けますか?
A. 働けます。WHOには、財務・人事・調達・IT・広報・法務・データ分析など、医療の資格を必要としない職種も多くあります。インターンの募集でも、公衆衛生や医療に加えて、経営・事務・広報・渉外の分野を学ぶ学生を対象にしています。ただし保健分野の技術職を目指す場合は、公衆衛生学修士(MPH)などの専門性と、保健医療の現場での経験が重視されます。医療職以外の職種でも、保健分野への関心や知識があると、仕事の理解が早くなります。
Q. 新卒でWHOに入ることはできますか?
A. 大学を卒業してすぐWHOの正規職員になるのは、簡単ではありません。国際専門職はいちばん下のP1でも1年、P2では2年の職務経験が必要で、実際の募集では修士号が求められることも多いためです。学生のうちにできることとしては、6〜24週間のインターンへの応募があります。卒業後は病院や保健行政、JICA、NGOなどで経験を積み、35歳以下が対象のJPO試験や空席公募に挑戦するのが現実的な道筋です。大学院への進学時期も、早めに計画しておきましょう。
Q. WHOで働く日本人は何人いますか?
A. WHOの人事統計によると、2025年末時点で、国ごとの職員数の目安が決められている専門職ポストで働く日本人は44人です。日本の望ましい範囲は85〜116人なので、実際は下限の半分ほどで、WHOは日本を職員が少ない国に分類しています。一方で、2025年にWHOで働いたJPO61人のうち、日本が支援したJPOは11人と国別で最も多く、若手の日本人がWHOに入る道は開かれています。日本人の採用は、WHOにとっても国籍のバランスを整えるうえで意味があります。
まとめ
WHOで働くには、保健医療の専門性と実務経験、そして英語またはフランス語を中心とした語学力が求められます。
入り口は、空席公募、JPO、インターン、コンサルタントの4つで、日本人の場合はJPOが若手にとって現実的なルートです。
まずはWHOの採用サイトで、関心のある分野の募集要項を一度読んでみてください。
求められる学歴や経験が具体的にわかると、大学院への進学や、病院・JICA・NGOでどんな経験を積むべきかが見えてきます。
保健医療や途上国支援に取り組む企業は、ココキャリアで探すことができます。
国際協力に関わる企業やキャリアの情報は、国際協力に取り組む企業・キャリア情報のページにもまとめています。
WHOの日本人職員は目安より少なく、日本からの応募が歓迎されている職場です。
一歩ずつ経験を重ねて、世界の人々の健康を支える仕事に近づいていきましょう。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
