今回は、次世代につなぐ未来を創るため、人と自然が共繁栄する「リジェネラティブ」なあり方を追求する一般社団法人Earth Companyで働く樋口さんにインタビューさせていただきました。

樋口さんは新卒から11年間、外資系ファッションブランドでマーケティングに従事されていました。

しかし、2018年の西日本豪雨で広島の地元が被災したことをきっかけに、気候変動の重大さに気づき、国際NGOに転身しました。

Earth Companyはインドネシアのバリ島と日本に拠点があり、入職後は日本のマーケティング担当者として活躍されています。

ビジネスセクターからNGOに転職した樋口さんに、学生時代の活動から現在までの経緯と、Earth Companyで働く理由について伺いました。

プロフィール
樋口実沙(ひぐちみさ)

広島市立大学芸術学部デザイン工芸学科卒業。米国のファッションブランドkate spade new yorkでマーケティングに携わったのち、Earth Companyに入職。2021年より並行して日本サステイナブル・レストラン協会のプロジェクト・エキスパートとして関わり、2023年から1年間スパイスのサステナビリティの調査のためインドをはじめとする生産国のフィールドワークを遂行。

Earth Companyとは?

ーーー現在の活動を教えてください。

現在は、一般社団法人Earth Companyでマーケティングを担当しています。

Earth Companyはインドネシアのバリ島と日本を拠点とする2つの団体の総称で、「次世代につなぐ未来」を創るため、以下3つの事業を運営しています。

①「インパクトヒーロー支援事業」(非営利事業)

1年に1人、アジア太平洋地域で様々な社会問題に取り組む、社会起業家を「インパクトヒーロー」として選び、彼らが最大限に活躍できるための後方支援をしています。

②「インパクトアカデミー事業」(収益事業)

企業や学校を対象に、SDGsを心と頭で理解し、行動する人を育成するプログラムです。

研修プログラムの最大の特徴は、「インパクトヒーロー」たちからSDGsの最前線を学び、個人や社会でできることを考え、アクションにつなげることです。

③「Mana Earthly Paradise(エシカルホテル事業)」(収益事業)

バリ島ウブドで、可能な限り全ての点において社会と環境に配慮し、SDGsに配慮した暮らしを体験していただくことができます。


きっかけは〇〇

ーーー社会課題に関心を持ったきっかけを教えてください。

私は広島県の山間にある農村地域で生まれ、幼少期は薪を割り、五右衛門風呂に入るような生活を送っていました。

祖母の畑仕事を手伝うなかで、食材の端材を土に還すコンポストや肥溜めもあったので、全てのものが循環するサーキュラーな暮らしを身近に体験していました。

ゴミ処理も途上国のようにかつては規制が緩かったので、川辺でゴミ焼きなどもしていましたが、プラスチックが土に還らず、有毒ガスが発生することも、その時に学びました。


デザインを軸に地方創生の仕事を

ーーー学生時代はどのようなことを行っていましたか?

大学ではデザイン学科でメディアを専攻していました。

広島という地域性から、デザインや映像制作を通じて原爆や平和を描くという機会もあり、学生時代から社会課題には関心を持っていました。

しかし、当時広島では、デザインや映像で面白いことができる就職先がほとんどありませんでした。

そんななか、大学の先輩の紹介で地元のデザイン会社のインターンをさせていただけることに。

そこでは、地方創生に関わる仕事も多く、著名な建築家の三分一博志さんが、国道沿いの量販店の建物を再生させるプロジェクトに関わることもできました。

ーーー他には何かされていましたか?

また、当時アルバイトは主に「試食販売」の仕事をしていました。

時には、大手企業が多額の費用と時間をかけて開発した商品でも、家族構成や所得の違いで販売エリアや客層によっては全く響かないこともありました。

逆にメーカーの認知度が低くても、本当に美味しいものは試食で購入につなげることができる。

そんなマーケティングの基礎になるような体験をすることができました。


自分にとってのウェルビーイングを大切に

ーーー就職活動についてはどのような軸で行っていましたか?

多くの大学の先輩や同期が、映像制作会社に就職していましたが、当時その業界は睡眠時間が2〜3時間しか取れないというストイックな現場も少なくありませんでした。

今は改善されている企業が多いと思いますが、当時自分のライフスタイルは映像業界に向いていないと感じていました。

周囲の友人たちがそんな過酷な道を選ぶ中で、自分がサボっているのではという後ろめたい感覚もありましたが、今では自分にとってのウェルビーイングを大切にしてよかったと感じています。

また、インターンやアルバイトの経験から、自分が制作したものが、人の暮らしに溶け込んだり、彩る様子を目にすることができる仕事をしたいと考えるようになりました。

そこで、ファッションブランドのマーケティングという道を選びました。

Earth Companyとの出会い

ーーーその後、Earth Companyにはどのような経緯で転職されましたか?

ファッション業界から国際NGOに転職したのは、2018年に地元の広島が西日本豪雨で被災したことがきっかけでした。

それまで「気候変動」や「地球温暖化」について、耳にすることはあっても、どこか遠い未来の出来事のように考えていました。

でも西日本豪雨を機に、気候変動は今まさに起こっていて、自分たちが課題の当事者であることにようやく気がつくことができました。

それまで見てきた世界がどれだけ限定的なものだったか、と。

そこで、ファッション業界をはじめ、ビジネスが成長する裏側で何が起こっているのか、課題を解決できる側になりたいと思い、NGOの就職先を探しました。

ウェブサイトで検索をしていて、Earth Companyを見つけた時には「ここだ!」と直感しました。

アジア太平洋地域において、社会課題の当事者である傑出したチェンジメーカーに伴走支援をするというモデル。

その中には、気候変動による海面上昇で既に国土を失いはじめているマーシャル諸島の気候活動家も含まれていました。


国際NGOで働いてみて

ーーーEarth Companyで働いた事による変化はありましたか?

最初は社会課題に対する専門知識がなかったことや予算が限られていたことから、前職の経験を生かして、事業に貢献することがなかなかできませんでした。

試行錯誤する日々の中で、「専門知識がないからこそ、知らない人にどう伝えたら課題を身近に感じてもらえるのか、自分自身がよくわかっているのではないか」と考えるようになりました。

Earth Companyが支援している活動家にミャンマーの女性がいます。

彼女は軍事クーデターによって弾圧されているミャンマーの人々の民主化のために活動し、同軍に迫害され100万人近くが難民化しているロヒンギャのリーダーとして、世界的に活躍しています。

彼女の一番の課題は、活動を広げていくための資金調達でした。

そこで、クラウドファンディングを実施し、日本から支援を届けることになったのです。

けれども「難民問題は、どこか遠い国の知らない人たちのこと」そんな風に、すぐに関心を持ってくれる人は多くありませんでした。

そうした風潮を少しでも変えることができたらと、日本に暮らすロヒンギャ難民の女性から、カレーの作り方を教わる料理教室を主催しました。

さらに前職の経験から、料理雑誌のコラボレーション企画を実現し、それまでロヒンギャについて知らなかった人たちにも、彼らの状況を伝えることができました。

「リジェネラティブ」なモデルを増やす

ーーー今後のビジョンを教えてください。

これまでEarth Companyでは、アジア太平洋地域で多岐にわたる領域のチェンジメーカーを支援してきました。

これまで1年に1人を「インパクトヒーロー」として選出し、とことん寄り添い伴走支援してきましたが、2022年からは1年に支援するチェンジメーカーを最大10名に増やし、社会的インパクトの拡大を目指しました。

その中には、世界で未使用のまま工場で廃棄される石けんを、経済的に困窮した女性を雇用しリサイクルし、国連機関やNGOと連携し難民や貧困の人々に衛生教育とともに届けるサミール・ラカーニという社会起業家がいます。

彼の取り組みの素晴らしいところは、石けん企業のようなビジネスセクターを巻き込んで、サプライチェーン全体で付加価値を生み出す活動をしているということです。

私たちは彼のような、社会課題を生み出しながら持続させるのではなく、よりポジティブな状態に再生させる「リジェネラティブ」なモデルを増やすため、企業との連携にも力を入れています。

膨大で複雑な社会課題を解決するためには、企業とNGOの連携の重要性は増すばかりでしょう。

そのムーブメントの一翼を担えたらと考えています。


読者へメッセージ

ーーー最後に、読者へメッセージをお願いいたします。

私は学生時代に留学経験もなく、海外にもほとんど行ったことがなかったので、開発途上国での社会課題をリアルに体験する機会はありませんでした。

一方で、ファッション業界に入って、実際に商品を作ってくれていた人たちは、そうした途上国に暮らす人たちでした。

もしも若い頃から、よりグローバルな視点でビジネスを考えることができていたら、ファッション業界にいながらも、社会課題を解決することもできたかもしれません。

今はあらゆる企業が社会課題を解決するための可能性と責任を背負う時代です。

NGOやNPOという道を選ぶことも素晴らしいと思いますし、企業活動を通じて社会的インパクトを生み出すこともできます。

留学をしたり、スタディーツアーやボランティアに参加するなど、ぜひ若いうちからグローバルな視点をたくさん養ってください。

私たちのバリ島のエシカルホテルに滞在することもオススメです!

ぜひ一緒に「次世代につなぐ未来」を創りましょう。