今回は、カンボジアの教育支援を行う、NPO法人Follow Your HEART代表理事の齊藤力さんにインタビューをしました。
Follow Your HEARTは、「生まれた環境や場所に限らず、誰もが挑戦できる社会」をビジョンに掲げ、カンボジアの教育支援を行う団体です。
新卒で、カンボジアで働ける日系企業に現地就職・NPO法人の立ち上げ、社会人2年目にはJICAの草の根プロジェクトへの参加など、齊藤さんのキャリアを取材しました。
目次
現在の活動について
ーーー現在はどのような活動をされていますか?
現在は、NPO法人Follow Your HEARTの代表理事として、また、都内の中小企業で業務委託の社員として働いています。
NPO法人Follow Your HEARTでは現在、カンボジア・プノンペンにある愛センターというフリースクールでの情操教育の支援を行っています。
2022年度は、アートのワークショップを行い、絵の具を使って絵を描くことの楽しさを感じてもらう体験を提供しました。(*詳細はこちら)
また、日本では、国際交流イベントへの出展を通してカンボジアを知るきっかけになるようなコンテンツを提供しています。
ーーーなぜ情操教育の支援を行っているのでしょうか?
カンボジアでは、体育や芸術、図工などの授業がほとんど行われていないからです。
1970~80年代の内戦やポルポト政権時代の影響で、教師や専門家といった多くの知識層の方々が粛清されました。
教育の立て直しが進められていますが、算数や語学などの教科が優先される傾向にあります。
そのため、人間性の発達の根幹を担う情操教育は後回しになりがちです。
そこで、弊団体は情操教育の支援を行っています。
先日開催したアートのワークショップでは、30人ほどの小学生に参加いただきましたが、半分以上が初めて絵の具を使う状況でした。
ワークショップが、1つの可能性を広げるきっかけになればと思い活動しています。
きっかけは教科書のコラム
ーーー齊藤さんが、社会課題に関心を持った原体験やきっかけを教えてください。
高校の時、政治経済の授業で発展途上国に興味を持ったことが一番最初のきっかけです。
教科書にあった先進国と発展途上国の違いというコラムを読み、「金銭的には貧しいと言われているが幸福度は途上国のほうが高い」という文章に好奇心をくすぐられました。
そして、本格的にカンボジアの支援をしたいと志すきっかけになったのは、国際協力の学生団体に入りカンボジアを訪れた時です。
大学3年生の春に、初めて農村部への現地調査を行う中で、「もっと勉強をしたいけど仕事があるからできない」という子どもたちの声を直接聞き、生まれた環境や場所によってやりたいことが制限される世の中に違和感を抱くようになりました。
しかし、違和感を感じつつも就活が始まってしまいました。
カンボジアへの想いを抱えながらの就活
ーーー違和感を抱えながらの就活はどのように進めていましたか?
実は、就活を2回行っています。
1回目の就活では、日本の教育に軸を置き、日本のベンチャー企業を中心に面接を受けていました。
また、教育に関するNPOにも関心があり、新卒で入れないかと教育系NPO法人でインターンもしていましたね。
しかし、心の中には、カンボジアの教育問題に貢献したいという気持ちが強く、どこかモヤモヤを抱えていました。
ーーーモヤモヤ感を乗り越えたきっかけなどはありましたか?
教育系NPO法人が主催のイベントに参加したときに、ロールモデルに出会えたのがきっかけです。
もともと、困ったときや悩んだときは、色々な人に話を聞きに行くことをしていました。
ロールモデルになる方とお話しをさせていただく中で、いったん自分がやりたいと思うことをやっていこうと気持ちが固まり、大学4年生の4月頃からNPOを立ち上げて就活をいったん中断しました。
就活中断⁉NPOを立ち上げた経緯とは?
ーーー就活を中断するのはかなり勇気のあることだと思いますが、不安などはありましたか?
もちろん不安はありました。
ですが、団体の仲間たちと本気で取り組むことで不安を消し飛ばそうとしていたかもしれません。笑
あとは、内定をいただいていた人事の方が親身に相談を聞いてくださり、「いつでももう一回面接受けていいよ」と言っていただいてたことも大きかったですね。
ーーーその後NPOの立ち上げから2回目の就活をすることになった背景を教えてください。
NPOを立ち上げてすぐコロナ禍に入り、思うように渡航もできず活動が制限されていました。
また、NPOを自分でやってみて、社会人としての力不足も痛感しましたね。
そのような状況で、もう一度就活をする選択肢を考え始めました。
というのも、カンボジアの現地で働ける企業に就職すれば、確実に渡航ができ金銭面でも安定した収入を得たうえで、活動を続けられるのではないかと。
そこで、カンボジアで働ける企業を求めて、大学4年生の10月頃から就活を再開しました。
一転、カンボジアでの就職
ーーーカンボジアで働ける企業探しは大変ではなかったでしょうか?
運よくご紹介をいただけたので、そこまで大変ではなかったです。
Twitterでカンボジアの人材会社をしている方にDMをして、会社を紹介していただきました。。
日ごろから情報をキャッチアップしていたことが大きかったと思います。
ーーー入社後は、現地で働きながらもNPOの運営もされていたのですか?
そうですね。
最初の半年は、かなりきつかったです。
初めての海外長期生活で新卒一年目ということもあり、、、
ただ、半年ほど経つと生活にも慣れ、大変でしたが何とか両立していました。
ーーー社会人2年目では、JICAの草の根プロジェクトに携わっていたとお聞きしましたがどのようなことをされていたのでしょうか?
カンボジアの日系企業で働く中で、JICAの草の根プロジェクトの現地調整員として働かないかとお声かけをいただき、会社を辞めて参画しました。
活動としては、カンボジアの農村部の小学校教員を養成する学校で、探求学習の推進を現地の指導教員と進めるプロジェクトです。
現地の先生たちの探求学習に対する考え方を丁寧にヒアリングしてプロジェクトに活かしたり、(体育の教員免許を持っているので)先生役として短距離走の探求を意図した授業をやったりしていました。
現地の先生たちと一緒に飛行機に乗って日本に来て、日本の小学校や大学に視察に行くなど、調整役として色んな仕事をさせていただきました。
これまでの活動の中での失敗談と必要なスキル
ーーー社会課題解決において、「これは失敗だった」と思う体験や経験はありますか?
オンライン教育プロジェクトでの失敗ですね。
大きく考えて、大きく動かそうとしすぎてしまい、、、
具体的には、色々な方々を巻き込んでコンテンツを作成していたのですが、エンドユーザーである子どもたちの声をなかなか拾えないまま進めてしまいました。
もっと、ユーザーとの距離を近くして、小さなPDCAを高速で回し続けることが大切だと実感した経験です。
ーーー今の活動をしていて必要だと感じたスキルや知識を教えてください。
1つは、ビジネスモデルを考え抜く力ですね。
ソーシャルな活動だと、お金を度外視してしまいがちです。
初めは良いかもしれませんが、だんだんと持続していくことが難しくなってしまいます。
もし可能であれば、休学をして学生起業などで自分ひとりで生活してみるのも良いのではないかなと思います。
あとは、ロジカルシンキングなどの社会人基礎力や、英語・現地語ができた方がスムーズだなと感じました。
今後のキャリアと学生への応援メッセージ
ーーー社会課題解決における今後のキャリアを考えていれば、教えてください。
具体的にこんなキャリアを歩みたいみたいなものは決めていないです。
NPO法人Follow Your HEARTで仲間と頑張り続けることが一番ですね。
『どんな社会(=2人以上存在する空間)になってほしいかを常に定義づけて、楽しみながらその社会に向かう人を増やす』という個人的な理念に沿って仕事していきたいと思います。
ーーー最後に社会課題解決のキャリアを志す学生へメッセージをお願いします。
社会ってなんだろう、を常に考え続けて、常に答えを出して、行動し続けてみてください。
Wikipediaには、”社会(しゃかい、英: Society)は、ある共通項によってくくられ、他から区別される人々の集まり。 また、仲間意識をもって、自らを他と区別する人々の集まり。 社会の範囲は非常に幅広く、単一の組織や結社などの部分社会から国民を包括する全体社会まで様々である。”と書いてあります。
なので、極端な話、身近な人と楽しく機嫌よく過ごす、これも立派な社会貢献だと思います。
その上で、ソーシャルビジネスや社会課題解決など、自分に興味のあるテーマに対して好奇心を持ち続けながらアクションを取り続けることが大切です。
また、ソーシャルビジネスや社会課題解決を掲げて本気で生きてる人はカッコいいと感じます。
ぜひ、たくさんの人に出会って、本気で質問や相談をしてみてください。
そんな時間は絶対に財産になると思います。
この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。