「レイシスト」という言葉を見聞きしたとき、その正確な意味を説明できる人は多くありません。
レイシストとは人種差別主義者のことですが、対象は「人種」だけにとどまらず、民族・宗教・文化に基づく差別行為を行う人全般を指す場合もあります。
この記事では、レイシストの意味・対義語・レイシズムとの違い・なぜ生まれるのか・世界と日本の事例・おすすめ書籍をわかりやすく解説します。
レイシストとは?
レイシストとは、特定の人種・民族・文化に対して偏見や差別意識を持ち、差別的な言動をとる人のことです。
英語では「racist」と表記し、日本語では「人種差別主義者」と訳されます。
ただし、差別の対象は人種に限定されません。
民族・宗教・出身国に基づく差別を行う人も、広い意味でレイシストと呼ばれることがあります。
また、意識的に差別行為をする人だけでなく、無意識のうちに偏見ある行動をとる場合もレイシストと指摘されることがあります。
この言葉は、差別的な考え方や行動を指摘・批判する文脈で使われることが多いです。
レイシストが差別対象とする人種と民族
人種とは、肌の色・髪の色・目の色・身長などの先天的・遺伝的な特質によって人間をグループに分類したものです。
ただし、一見先天的に見える特徴も、地理的環境や食事・生活様式といった文化的要因が影響していることが多く、人種間に本質的な優劣はありません。
一方、民族とは歴史・宗教・言語・伝統などの後天的・文化的な特質によって分類されます。
同一民族において容姿など遺伝的に見える共通点が見られることもありますが、人種と民族は異なる概念です。
レイシストはこれらの違いに基づき、特定のグループを劣ったものとして扱います。
関連記事:マイノリティとは?マジョリティとの違いや具体例を解説
レイシストの対義語
レイシストの対義語は、「アンチレイシスト(anti-racist)」です。
アンチレイシストとは、人種差別を積極的に否定し、差別のない社会を目指して行動する人を指します。
単に「差別しない」という消極的な立場ではなく、差別の構造を理解し、それに反対する意思を行動で示すことが求められます。
英語圏では、アンチレイシストのほかに以下の言葉がレイシストの対義語として挙げられます。
- ヒューマニスト(Humanist): 人道主義者。人間の尊厳・理性・自由を最重視する立場
- 博愛主義者(Altruist): 他者の幸福を優先して行動する人
- 平等主義者(Egalitarian): すべての人間は平等であるという思想を持つ人
- 民主主義者(Democrat): 民主的な価値観のもと平等・自由を重んじる人
アンチレイシストになることは、レイシズムと戦う最も直接的な方法とされています。
レイシズムとは?
レイシズムとは、人種に基づく思想・差別・偏見の体系のことです。
日本語では「人種主義」または「人種差別」と訳されます。
「人種間に根本的な優劣の差異があり、優等人種が劣等人種を支配するのは当然」という思想がその根底にあります。
戦後の国際社会では、世界人権宣言(1948年)や人種差別撤廃条約(1965年)などの国際人権法によって、人種差別に対して人々が連帯して取り組むことが求められています。
近年では黒人差別・アジア系差別・ユダヤ人差別などが世界各地で問題となっており、SNSを通じてヘイトスピーチが拡散されるケースも増えています。
関連記事:レイシズムとは?歴史や現在の問題、日本のレイシズムを解説
なぜレイシストになるのか
レイシストは特別な人物だけでなく、ごく普通の人が特定の条件下でレイシスト的な言動をとることがあります。
心理学や社会学の知見をもとに、4つの背景を解説します。
認知バイアスとステレオタイプ
人間の脳は、情報を素早く処理するために物事をカテゴリ化する傾向があります。
「〇〇人はこういう人だ」というステレオタイプが形成されると、個人を見ずにグループ全体を一括りに判断するようになります。
これは意識的な悪意とは別に、無意識のうちに起こる認知バイアスの一種です。
社会・文化的な環境
差別的な価値観が「当然のこと」として扱われる環境で育つと、本人が気づかないままその価値観が内面化されることがあります。
歴史的・文化的に特定の集団を下に見る慣習が残っている社会では、意識的な教育がなければ差別意識が次世代に受け継がれます。
恐怖・不安感
自分にとって未知の文化・言語・習慣を持つ人々に対する恐怖や不安が、排除・差別の感情につながる場合があります。
経済的な不安が高まる社会では、外国人・移民が「脅威」として位置づけられ、レイシズムが広がりやすくなる傾向が指摘されています。
「自分はレイシストではない」という思い込み
phụ.php.co.jpが指摘するように、「わたしはレイシストではない」という確信が、無意識の差別行為を見えにくくすることがあります。
リベラルな立場を持つ人が、善意のつもりで行う差別的な言動(「ナイス・レイシズム」)の問題は、近年注目されています。
レイシストの世界の事例
レイシストによる差別は今も世界各地で深刻な問題となっています。
ここでは特に国際的な影響が大きかった2つの事例を取り上げます。
アメリカ合衆国:フロイドさん殺害事件
2020年5月25日、ミネアポリスで白人警察官によって、黒人男性ジョージ・フロイドさんが頸部を9分間路上で膝で押さえつけられ亡くなりました。
フロイドさんが偽札を使用したとの通報で駆けつけた警察官が、使用を知って行ったかどうかを確認することなく拘束し死亡させた事件です。
映像は世界中に拡散し、アメリカ社会に根深く存在する黒人差別・レイシズムを世界に露呈させました。
後にこの警察官には禁錮21年半の判決が下されています。
中国:新疆ウイグル自治区の人権問題
中国人口の大部分を占める漢民族に対し、少数民族であるウイグル族はイスラム教を信仰し独自の文化を持ちます。
2014年の爆破テロを契機に弾圧が強まったとされており、収容所での洗脳教育・強制労働・不妊手術・拷問などが国際社会から問題視されています。
習近平主席は視察に訪れたバチェレ国連人権高等弁務官に「他国を説教するな」と言い放ったと報じられており、国際的な批判が続いています。
レイシストの日本の事例
日本にもレイシスト的な構造が存在します。
特に外国人労働者をめぐる問題は、制度的なレイシズムの一面を表しています。
外国人技能実習生問題
技能実習制度は、外国人に日本の技能を教えて母国の発展に生かすことを目的とした制度です。
しかし実態として低賃金・長時間労働が常態化しており、令和4年度時点で32万4940人が在留しています。
一例として、岡山県の建設会社でベトナム人技能実習生が2年間にわたり従業員4人から暴行を受け、肋骨3本を折られた事件が報告されています。
2022年8月に4人は不起訴処分となり、制度の抜け穴が問われました。
参考:令和4年末現在における在留外国人数(出入国在留管理庁)
関連記事:外国人労働者問題とは?日本の現状や問題点、原因を解説
入管問題
入管施設とは、在留資格を持たないとされる人々を強制収容する場所です。
スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(33歳)が2021年に名古屋の入管施設で亡くなった事件は、収容環境の問題を広く社会に問いかけました。
体調不良を訴えて病院受診を求めても「権限がない」と断られ続けたとの証言が、裁判資料として提出されています。
関連記事:入管問題とは?日本で起きている非正規滞在者への人権侵害
レイシストについて学べる本4選
レイシズムを理解し、アンチレイシストとして行動するための書籍を4冊紹介します。
アンチレイシストであるためには
全米で130万部を超えるベストセラーです。
著者のイブラム・X・ケンディは「2020年最も影響力のある100人」に選ばれた歴史学者で、人種・民族・階級・ジェンダー・セクシュアリティを平等に扱うアンチレイシストとしての態度を提唱しています。
レイシズムの根源を「権力」と「政策」に見ることで、個人の意識改革だけでなく社会制度の変革が必要だと訴えています。
遺伝学者、レイシストに反論する
遺伝学の視点からレイシストの主張を科学的に論駁する一冊です。
肌の色・純血性・スポーツ能力・知能という4つの領域について、遺伝学的な分析を通じて差別的な誤解を解き明かしています。
人種概念が科学的に無効であることを明示しており、レイシストの論理に対して正確な知識で反論するための基礎を与えてくれます。
レイシズムとはなにか
フランスの哲学者ミシェル・フーコーの権力論を軸に、近代レイシズムの歴史と日本における差別を深く掘り下げた一冊です。
在日コリアンへの差別や、ブラック・ライブズ・マター運動などの現代的な反レイシズム闘争についても論じており、日本社会のレイシズムを考えるうえで欠かせない視点を提供しています。
ナイス・レイシズム
「わたしは差別していない」と信じているリベラルな人々が、いかに無意識の差別を行っているかを批判的に分析した一冊です。
善意から行われる差別的な言動が、どのようにして少数民族を日常的に傷つけているかを具体的に示しており、自己満足的な反差別姿勢を問い直すきっかけになります。
よくある質問
Q. レイシストとはどういう意味ですか?
A. レイシストとは、特定の人種・民族・文化に対して偏見や差別意識を持ち、差別的な言動をとる人のことです。英語では「racist」と表記し、日本語では「人種差別主義者」と訳されます。差別の対象は人種だけでなく、民族・宗教・出身国に基づくケースも含まれます。また、意図的な差別行為だけでなく、無意識のうちに偏見ある行動をとる場合もレイシストと指摘されることがあります。レイシズムという思想を持ち、それを言動で示す人をレイシストと呼びます。
Q. レイシストの対義語は何ですか?
A. レイシストの対義語は「アンチレイシスト(anti-racist)」です。単に差別しないという消極的な立場ではなく、差別の構造を理解したうえで積極的に反対する意思を行動で示す人を指します。英語圏ではほかにも、ヒューマニスト(人道主義者)・博愛主義者(Altruist)・平等主義者(Egalitarian)・民主主義者(Democrat)などがレイシストの対義語として挙げられます。差別のない社会を目指すうえで、アンチレイシストとしての姿勢を持つことが重要とされています。
Q. レイシズムとレイシストの違いは何ですか?
A. レイシズムは「人種差別の思想・イデオロギー・制度的な体系」全体を指す言葉で、レイシストはそのレイシズムを信奉し実際に差別的な言動をとる「個人」を指します。レイシズムは個人の意識だけでなく、社会制度・法律・組織のルールなど構造的な差別も含む広い概念です。一方、レイシストは個人レベルでの差別行為者を指すため、より具体的な人物・言動を批判する文脈で使われます。両者は密接に関係しており、レイシズムが根付く社会ではレイシストが生まれやすくなります。
Q. なぜレイシストになるのですか?
A. レイシストになる背景には複数の要因があります。第一に、人間の脳が情報を素早く処理するために物事をカテゴリ化する「認知バイアス」があり、これがステレオタイプを形成します。第二に、差別的な価値観が当然とされる社会・文化的環境で育つと、本人が気づかないまま差別意識が内面化されます。第三に、未知の文化や移民に対する恐怖・不安が排除感情につながることがあります。第四に、「自分はレイシストではない」という思い込みが無意識の差別を見えにくくします。

この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
