ソーシャルビジネスって、結局どの定義を使えばいいの?

そんな悩みに答えるため、本記事では代表的な5つの定義(①経産省の3要件/②ユヌスの定義/③内閣府の表現/④英国の“社会的企業”定義/⑤英国・中小企業局の実務的基準)を整理しました。

同じ社会課題を解決するビジネスでも、利益配分の方針や公共性の扱い、制度面の位置づけが微妙に異なります。

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ソーシャルビジネスとは

ソーシャルビジネスとは、利益の追求だけではなく社会的な問題解決を目指す企業のことです。

社会的企業とも呼ばれることがありますが、厳密には少し意味合いが異なります。

その領域は、国際協力や教育、環境福祉など、多岐に渡ります。

最大の特徴は、寄付金などの外部資金に頼らず自社で事業収益を上げることで持続可能な社会課題の解決を目的としている点です。

一般的な企業は利益を上げることを最優先としています。

しかし、ソーシャルビジネスは利益だけではなく社会課題を解決することの両立を目的としています。

ソーシャルビジネスとビジネスの違い

ソーシャルビジネスとビジネスの大きな違いは「目的」にあります。

どんなビジネスも、基本的には社会課題を解決しています。

しかし、一般的な企業は利益を上げることを最優先の目的としていますが、ソーシャルビジネスは利益だけではなくビジネスで社会課題を解決することの両立を目的としています。


様々なソーシャルビジネスの定義

ソーシャルビジネスには、様々な定義があります。

この章では、5つの定義を解説します。

経済産業省のソーシャルビジネス研究会の定義

経済産業省のソーシャルビジネス研究会の定義を解説します。

・社会性
現在解決がもとめられる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとすること

・事業性
ミッションをビジネスの形に表し、継続的に事業活動を進めていくこと

・革新性
新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること。また、その活動が社会に広がることを通して、新しい社会的価値を創出すること

引用:ソーシャルビジネス研究会 報 告 書 – 経済産業省

ユヌスの定義

グラミン銀行創設者で2006年ノーベル平和賞受賞者である、ムハマド・ユヌス博士が提唱するソーシャルビジネスの定義を紹介します。

・ユヌスソーシャルビジネスの目的は、利益の最大化ではなく、貧困、教育、環境等の社会問題を解決すること。

・ 経済的な持続可能性を実現すること。

・ 投資家は投資額までは回収し、それを上回る配当は受けないこと。

・ 投資の元本回収以降に生じた利益は、社員の福利厚生の充実やさらなるソーシャルビジネス、自社に再投資されること。

・ ジェンダーと環境へ配慮すること。

・ 雇用する社員にとってよい労働環境を保つこと。

引用:ユヌス・ソーシャル・ビジネスとは

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内閣府の定義

内閣府のソーシャルビジネスの定義

・社会的目的をもった企業。株主、オーナーのために利益の最大化を追求するのではなく、コミュニティや活動に利益を再投資する。

・深く根ざした社会的・環境的課題に革新的な方法で取り組む。

・規模や形態は様々であるが、経済的成功と社会・環境課題に対して責任を持つ。

・革新的な考えを持ち、公共サービスや政府の手法の改善を支援する。また政府のサービスが行き届かない場所でも活動する。

・企業倫理、企業の社会的責任の水準をあげる。

引用:新しい公共とソーシャルビジネス、コミュニティビジネス

ロンドンの社会的企業の定義

ロンドンの社会的企業の定義を紹介します。

・営業上の利益を生み出していくことを追求する。

・雇用創出や職業訓練、あるいは地域サービスの提供等明確な社会的目的を有す

・地域住民の能力向上への貢献を含む倫理的な価値を有す

・社会的、環境的、経済的影響について社内外に説明責任を有す

・組織として自立している

・利益は、配当として関係者に分配される、もしくは社会の利益のために使用

引用:5.1.3 主な社会的企業支援組織の概要 – 内閣府

貿易産業省中小企業局の定義

貿易産業省中小企業局のソーシャルビジネスの定義を解説します。

・日々の活動が製品、サービスの提供し、その対価として金銭を受取っている

・25%以上の資金を企業活動から獲得

・社会的・環境的な課題解決を追求することを目的とした企業

・企業活動で得た利益を社会的・環境的な課題解決のために再投資

引用:ソーシャルビジネス研究会 報 告 書 – 経済産業省


まとめ

本記事で取り上げた5つの定義は、いずれも“社会課題をビジネスで解く”という点で一致しつつ、適用の文脈が異なります。

日本の実務で迷ったら、まずは政策・制度に強い経産省の3要件を基本線に据えるのが最短です。思想や配当方針まで踏み込み、事業の「何のために」「どこまで利益を分配するか」を突き詰めたいならユヌスの定義が有効で、行政説明や国際比較、投資家や自治体との対話では英国の社会的企業や中小企業局の基準が説明力を高めてくれます。

ずは自分(または組織)が重視する軸――社会目的の強度、利益配分、スケール志向――を明確にし、その軸に合う定義で志望動機や事業計画を言語化してみましょう。

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