国際社会における経済や社会的な問題に焦点を当てるとき、しばしば「南南問題」という用語が取り上げられます。
南南問題とは何か、それは南北問題とどう異なるのか、そしてこの問題が生まれた背景や現状、さらにはSDGsの目標における「南南協力」とは何でしょうか?
この記事では、これらのテーマについて詳しく解説していきます。
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目次
南南問題とは
南南問題とは、「南北問題」とは異なる新たな経済格差で、「南」と言われる発展途上国で生じる経済格差に焦点を当てた概念です。
そのため、より南に位置する国が貧しい訳ではなく、総称として使われている言葉です。
発展途上国の中でも、新興工業経済地域(NIEs)など工業化の進んだ国、または石油輸出国機構(OPEC)など資源を保有する国は、経済発展に成功しています。
例:タイ、インド、マレーシア、イラク、イラン、クウェート 、サウジアラビア等
その一方、発展途上国の中でも特に経済発展が遅れている国は、後発発展途上国と呼ばれ、経済的課題を多く抱えています。
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南南問題の国一覧
南南問題において経済発展が遅れている国は、後発発展途上国です。
後発発展途上国とは、国連開発計画委員会(CDP)が認定した基準に基づき、国連経済社会理事会の審議を経て、国連総会の決議により認定された特に開発の遅れた国々です。
後発発展途上国は以下の46か国になります。
アフリカ(33)
アンゴラ(2024年に卒業予定)、ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、中央アフリカ、チャド、コモロ、コンゴ民主共和国、ジブチ、エリトリア、エチオピア、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、レソト、リベリア、マダガスカル、マラウイ、マリ、モーリタニア、モザンビーク、ニジェール、ルワンダ、サントメ・プリンシペ(2024年に卒業予定)、セネガル、シエラレオネ、ソマリア、南スーダン、スーダン、トーゴ、ウガンダ、タンザニア、ザンビア
アジア(9)
アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン(2023年に卒業予定)、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ネパール、イエメン、東ティモール
大洋州(3)
キリバス、ソロモン諸島(2024年に卒業予定)、ツバル
中南米(1)
ハイチ
※2022年8月時点
※参照:後発開発途上国/外務省
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南南問題と南北問題の違い
南南問題と似た言葉に、南北問題があります。
南北問題とは、一言で言うと先進国と開発途上国の間で経済格差が生じている問題です。
地図上で見た際に途上国は南側、先進国は北側に多く位置していることからこのように呼ばれています。
実際に、経済的格差を見てみると、先進国と呼ばれる欧米などは北の方に位置し,アジアやアフリカ・南米などの発展途上国南に位置しています。
一方、南南問題とは、南北問題において「南」といわれる発展途上国の中に生じてきた、「南北問題」とは違う新たな経済格差の問題です。
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なぜ南南問題が生まれたのか
なぜ南南問題が生まれたのか解説します。
産業革命時代から、安価で原料や燃料を輸出する国とそれを加工・販売し大きな利益を得る国で経済格差が生まれたのが南北問題の始まりです。
その後、1960年代に石油輸出国機構の成立など南北問題に対する対策が世界的に起こりました。
1973年に起きたオイルショックにより、原油価格が世界経済への大きな影響を与えることが証明され、産油国の国際的地位が上昇しました。
また、石油以外にも金属や天然ゴムなどの資源輸出国も国際的地位を上げることに成功しました。
これが南南問題の始まりです。
1980年代に入ると、人件費の安さと工業技術力の発展をもとに経済成長をする国がアジアを中心に現れ始めました。
その一方で、政情不安のある国や人的資源に乏しい国は経済成長ができず、南南問題の格差はいまだ開いたままです。
南南問題の現状と課題
南南問題の現状と課題について解説します。
南南問題の現状
南南問題の現状について解説します。
近年では、後発開発途上国を卒業する国も多くあります。
(2011年モルディブ、2014年サモア、2017年赤道ギニア、2020年バヌアツ卒業)
さらに、2016年のUNCTAD(国際連合貿易開発会議)の報告書によると、後発開発途上国は、2025年までに48か国から32か国まで減少する見通しである。
アジアではカンボジア以外が、オセアニアについては全域から卒業が予定されています。
その一方アフリカでは、30の国が後発開発途上国からの卒業が見込めていません。
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南南問題の解決が難しい国の例
南南問題の中でも解決が難しい国が存在します。
それは、内陸国と小島嶼開発途上国です。
それぞれについて解説します。
内陸国
後発開発途上国には、内陸国が多いです。
内陸国は、港湾のある隣国の情勢に左右されることが多く、経済活動が不安定であるため後発開発途上国が難しいです。
小島嶼開発途上国
小島嶼開発途上国は、小さな島で国土が構成されるため、人口が少なかったり、自然災害が起こりやすかったりするため、持続可能な開発が困難です。
SDGs目標17のターゲットにある「南南協力」とは
SDGs目標17のターゲットの1つである南南協力について見ていきましょう。
SDGsでは、南南協力について以下の記載があります。
すべての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、南北協力、南南協力及び三角協力などを通じて、開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する。
南北協力は、先進国が発展途上国と協力して経済格差を是正するというものです。
一方の南南協力は、発展途上国の中でも、ある分野において先進した国が、他の途上国を支援する取り組みです。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
南南問題は、徐々に解消されつつあります。
しかし、一部の地域では、いまだに解決の兆しが見えていないのも事実です。
SDGs達成のためには、南南問題の解決は必須と言えるでしょう。
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COCOCOLOR EARTH代表 吉田 宏輝(よしだ こうき)
「ボランティアを職業にする」というビジョンをもとに活動中
個人ブログ:ボランティアを職業にする人.com
Twitter:ボランティアを職業にする人
この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。