ニュースで「こども家庭庁」という名前を見かけても、そこが何をしている役所なのかまで説明できる人は多くありません。
厚生労働省の人口動態統計(確定数)によると、2024年の出生数は686,173人で、調査が始まった1899年以来もっとも少なくなりました。
合計特殊出生率も1.15で過去最低です。
こどもをめぐる政策をまとめて担っているのが、こども家庭庁です。
名前は知っていても、どこまでがこども家庭庁の仕事で、どこからが文部科学省の仕事なのかは見えにくいところです。
この記事では、設立の経緯、組織、こども基本法との関係、主な政策と予算、文部科学省との役割分担、そして関わる仕事までを解説します。
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こども家庭庁が扱うテーマの多くは、福祉という大きな分野の一部です。
福祉分野の課題と、そこに取り組む企業の情報は以下にまとめています。
こども家庭庁とは
こども家庭庁は、それまで複数の省庁に分かれていたこども政策を、ひとつにまとめて担う役所です。
内閣府の外局として置かれた行政機関
こども家庭庁とは、こどもと家庭の福祉や保健の向上、こどもの権利利益の擁護を担う国の行政機関です。
根拠となるのはこども家庭庁設置法(令和4年法律第75号)で、第2条は内閣府設置法にもとづき内閣府の外局として設置すると定めています。
組織のトップは大臣ではなく、こども家庭庁長官です。
政策の責任者としては、内閣府設置法第11条の3にもとづき、こども政策を担当する内閣府特命担当大臣が必ず置かれることになっています。
参考:こども家庭庁設置法(e-Gov法令検索)/内閣府設置法(e-Gov法令検索)
法律上の「こども」に年齢の区切りはない
こども基本法第2条は、「こども」を「心身の発達の過程にある者」と定義しています。
年齢の上限は書かれていません。
18歳で支援を打ち切らず、若者が社会生活を送れるようになるまで伴走する考え方が、この定義に表れています。
こども家庭庁設置法第3条の「こども」も、同じ言い方の定義です。
「こどもまんなか」が意味すること
こども家庭庁のスローガンは「こどもまんなか」です。
こども家庭庁は自らを、大人が中心になって作ってきた社会を「こどもまんなか」社会へ作り変えるための司令塔だと位置づけています。
福祉全体の課題は、以下の記事で一覧にしています。
こども家庭庁ができた背景と設立の経緯
こども家庭庁は、こどもに関する仕事が複数の府省庁に分かれていた状態を改めるために作られました。
その出発点になったのは、2021年12月に閣議決定された1本の基本方針でした。
こども政策の司令塔は5つの府省庁に分かれていた
2021年12月21日に閣議決定された「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」には、こども政策の総合調整権限が当時どこに置かれていたのかが整理されています。
青少年の健全な育成とこどもの貧困対策は内閣府政策統括官、少子化対策と子ども・子育て支援は内閣府子ども・子育て本部が担っていました。
児童虐待防止対策は厚生労働省、犯罪からこどもを守る取組は内閣官房、児童の性的搾取対策は国家公安委員会と警察庁が受け持っていました。
基本方針は、こどもの困難が本人・家庭・環境の要因が複合的に重なって表れると指摘しています。
制度ごとに担当が切れていると、複数の困難を抱えた家庭ほど支援から抜け落ちやすくなります。
参考:こども政策の新たな推進体制に関する基本方針のポイント(こども家庭庁)
2023年4月1日に発足した
こども家庭庁設置法は令和4年法律第75号として成立し、附則で「この法律は、令和五年四月一日から施行する」と定められました。
この規定のとおり、こども家庭庁は2023年4月1日に発足しています。
同じ日に、こども基本法も施行されました。
3つの府省から仕事が移った
内閣府からは、政策統括官が所掌していた子ども・若者育成支援とこどもの貧困対策、子ども・子育て本部が所掌していた事務が移りました。
厚生労働省からは、子ども家庭局が所掌していた事務と、障害保健福祉部の障害児支援に関する事務が移っています。
文部科学省からも、総合教育政策局が所掌していた災害共済給付に関する事務が移りました。
子どもの貧困は、世帯の収入だけでなく、学びや体験の機会の差としても表れます。
こども家庭庁の組織と所掌事務
こども家庭庁の内部組織は、長官官房、成育局、支援局の1官房2局体制です。
令和8年度末時点の定員は、内部部局458名と施設等機関90名を合わせた548名とされています。
長官官房
長官官房は、こども政策全体の企画立案と総合調整を担う部門です。
こども大綱の策定、少子化対策、こどもの意見聴取と政策への反映などがここに含まれます。
情報発信や広報、データと統計を活用した政策の立案と改善も担当します。
成育局
成育局は、妊娠期から就学前までのこどもの育ちを支える部門です。
妊娠・出産の支援、母子保健、保育所や認定こども園への支援を担当します。
相談対応の充実、全てのこどもの居場所づくり、こどもの安全も所掌に入っています。
支援局
支援局は、困難を抱えるこどもや家庭を支える部門です。
児童虐待防止対策の強化、社会的養護の充実と自立支援、こどもの貧困対策、ひとり親家庭の支援、障害児支援を担当します。
いじめ・不登校対策やこどもの自殺対策、こどもに対する性暴力等の防止もこの局が受け持ちます。
家族の世話を日常的に担うヤングケアラーへの支援も、この局のテーマです。
ヤングケアラーが抱える問題は、以下の記事で解説しています。
≫ヤングケアラーとは?子どもが抱える問題と私たちができることを解説
こども基本法・こども大綱とこども家庭庁の関係
こども家庭庁の仕事は、こども基本法とこども大綱という2つの土台の上に成り立っています。
こども基本法が定める6つの基本理念
こども基本法は令和4年法律第77号として2022年6月22日に公布され、2023年4月1日に施行されました。
第3条が挙げるこども施策の基本理念は、次の6つです。
- 個人として尊重され、基本的人権が保障され、差別的取扱いを受けないこと
- 福祉に係る権利が等しく保障され、教育を受ける機会が等しく与えられること
- 年齢と発達の程度に応じて、意見を表明し社会的活動に参画する機会が確保されること
- 年齢と発達の程度に応じて、その意見が尊重され、最善の利益が優先して考慮されること
- こどもの養育は家庭を基本とし、保護者に十分な支援を行うこと
- 家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境を整備すること
こども大綱は3つの大綱を1つにまとめたもの
こども大綱は、こども基本法第9条にもとづいて政府が定める、こども施策の基本方針です。
最初のこども大綱は2023年12月22日に閣議決定されました。
少子化社会対策基本法、子ども・若者育成支援推進法、こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律にもとづく3つの大綱が、ここで統合されています。
掲げられた目標は、全てのこども・若者が身体的・精神的・社会的に幸せな状態で生活を送れる「こどもまんなか社会」の実現です。
都道府県と市町村も、こども大綱を勘案したこども計画を定めるよう努めることが第10条で求められています。
こども家庭庁の主な取り組み
こども家庭庁が進める政策は、乳幼児期の育ちから困難を抱えるこどもの支援まで幅があります。
近年とくに動きが大きいのは、通園制度、児童手当、児童虐待への対応、こどもの貧困対策の4つです。
こども誰でも通園制度
こども誰でも通園制度は、保護者が働いているかどうかを問わずに、こどもを保育所などへ通わせられる仕組みです。
対象は0歳6か月から満3歳未満で、保育所等に通っていないこどもです。
給付の対象になるのは月10時間までで、これは子ども・子育て支援法にもとづく上限として定められています。
市町村の判断で、この10時間を超えて実施する場合もあります。
2026年度と2027年度は経過措置があり、月10時間での実施が難しい市町村は条例で3時間から10時間未満に設定できます。
制度は2024年度の試行的事業から始まり、2025年度に地域子ども・子育て支援事業として制度化されました。
2026年4月からは新たな給付として本格実施に移り、全国どの自治体でも共通で実施されています。
保育の課題に取り組む企業は、以下の記事で紹介しています。
≫保育の問題に取り組む企業10選!就職・転職におすすめのベンチャーから大手企業
児童手当の拡充
児童手当は、2024年10月分から支給の対象と金額が広がりました。
支給対象は0歳から18歳に達する日以後の最初の3月31日までとなり、高校生年代までが加わっています。
支給額は3歳未満が月15,000円、3歳以上高校生年代までが月10,000円です。
第3子以降は、年齢にかかわらず月30,000円が支給されます。
第3子以降を数えるときは、22歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある兄姉等も人数に含めます。
所得制限も撤廃され、所得制限を定めていた児童手当法第5条は削除されています。
参考:もっと子育て応援!児童手当(こども家庭庁)/児童手当法(e-Gov法令検索)
児童虐待への対応
こども家庭庁が公表した2024年度の集計では、全国236か所の児童相談所が対応した児童虐待相談は223,691件でした。
前年度から1,818件、率にして0.8%減っています。
内訳を見ると、心理的虐待が133,024件で全体の59.5%を占め、もっとも多くなっています。
参考:令和6年度児童相談所における児童虐待相談対応件数(こども家庭庁)
こどもの貧困対策とひとり親家庭の支援
厚生労働省の2025年国民生活基礎調査によると、2024年のこどもの貧困率は11.0%で、2021年の11.5%から0.5ポイント下がりました。
ここでいう貧困率は、手取りの収入から算出した貧困線(2024年は138万円)を下回る世帯で暮らす17歳以下の割合です。
一方、こどもがいる現役世帯のうち大人が一人の世帯員の貧困率は44.7%で、2021年より0.2ポイント上がっています。
こども家庭庁の予算規模
こども家庭庁が動かす予算は、国の役所のなかでも大きな部類に入ります。
2025年12月26日に概算決定された令和8年度こども家庭庁当初予算案の総額は、7兆4,956億円です。
内訳は一般会計が4兆2,795億円、子ども・子育て支援特別会計が3兆2,161億円です。
これは政府が決定した予算案の段階の数字で、国会で成立した金額とは一致しない場合があります。
参考:令和8年度こども家庭庁当初予算案のポイント(こども家庭庁)
この予算は、自治体や民間の事業者を通じて現場へ流れていきます。
児童福祉の領域で事業を展開する企業は、以下の記事で紹介しています。
≫児童福祉に取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大手企業からベンチャー
文部科学省など他省庁との役割分担
こども家庭庁ができても、こどもに関する仕事のすべてが1か所に集まったわけではありません。
教育は文部科学省が担う
基本方針は、こどもにとって必要不可欠な教育は文部科学省の下で充実させ、こども家庭庁と密接に連携するとしています。
文部科学省が担うのは、幼児教育の振興、教育の振興、学校教育の振興です。
その文部科学省の側で起きている課題は、教員の多忙化から見た日本の教育問題で取り上げています。
幼稚園と保育所は所管が分かれている
就学前の施設は、幼稚園が文部科学省、保育所と認定こども園がこども家庭庁の所管です。
ただし、通う施設によってこどもの育ちに差が出ないよう、基準づくりは共同で行われます。
幼稚園教育要領と保育所保育指針は、両者が相互に協議したうえで共同で策定されます。
保育を支える民間企業の動きは、以下の記事でも取り上げています。
いじめと不登校は連携して取り組む
学校におけるいじめ防止と不登校対策は、文部科学省が担当します。
こども家庭庁設置法第4条は、いじめ防止対策推進法にもとづく相談の体制など、地域における体制の整備を所掌と定めています。
学校の外の相談先を整えるのがこども家庭庁、学校のなかの対応が文部科学省という分担です。
学校の外側から、いじめや不登校に取り組む民間企業も増えています。
こども・子育て分野に関わる仕事
制度の話が自分の仕事の話に変わる地点は、どこにあるのでしょうか。
こども家庭庁が決めた政策は、行政だけでなくNPOや民間企業の手を通って、目の前のこどもに届きます。
行政で関わる
国家公務員
国家公務員としてこども家庭庁で働く道があります。
長官官房は政策の企画立案と総合調整、成育局は保育や母子保健、支援局は虐待防止や貧困対策と、担当する領域が分かれています。
設立時の基本方針は地方自治体職員や民間人材の積極登用を掲げており、新卒採用だけが入口ではありません。
地方公務員
地方公務員は、制度を住民に届ける側の仕事です。
こども誰でも通園制度の支給認定も、児童手当の支給も、実際の窓口は市区町村になります。
児童福祉司
児童福祉司は、児童相談所で虐待の相談や調査、保護者への指導にあたる職員です。
2024年度の22万件を超える相談は、こうした職員が受け止めています。
行政で社会課題に関わる働き方の全体像は、以下の記事で整理しています。
≫政府機関で社会課題解決に関わるキャリアとは?民間企業との違い・仕事内容・入り口を解説
NPO・社会福祉法人で関わる
こども分野は、NPOや社会福祉法人が担っている部分が大きい領域です。
基本方針も、NPOをはじめとする市民社会との対話・連携・協働を、こども家庭庁の基本姿勢の一つに挙げています。
現場での支援だけでなく、人事や広報、資金調達といった組織を支える仕事も欠かせません。
認定NPO法人フローレンスの人事スタッフになった古岩井一彦さんは、大和総研にシステムエンジニアとして入社した経歴の持ち主です。
その後は自ら希望して人事部門を中心としたキャリアを歩み、人事課長や人事部長を経験したのち、50歳を目前に退職しました。
2021年6月にフローレンスへ移り、保育園などを運営する団体を人事の側から支える道に進みました。
≫50歳を目前に大企業をやめてソーシャルアクティビストへ~認定NPO法人フローレンス 古岩井一彦~
民間企業で関わる
令和8年度の当初予算案には、民間企業と連携したこども・若者・子育て支援を創設することが盛り込まれています。
事業そのものがこどもに向いている会社を選ぶ方法と、本業の専門性をこども分野へ持ち込む方法があります。
福祉領域の業種や職種、キャリアパスは以下の記事で整理しています。
≫福祉問題のキャリアとは?業種・職種・キャリアパスを徹底解説
こどもや福祉の分野で活動する企業・団体のページは、ココキャリアにも集まっています。
よくある質問
こども家庭庁について、特に多い質問は次の4つです。
Q. こども家庭庁とは何をするところですか?
A. こども家庭庁とは、こどもと家庭の福祉や保健の向上、こどもの権利利益の擁護を担う国の行政機関です。こども家庭庁設置法にもとづき、内閣府の外局として2023年4月1日に発足しました。内部組織は長官官房、成育局、支援局の1官房2局で、政策の企画立案と総合調整、妊娠・出産の支援や保育、児童虐待防止や貧困対策などを担当します。こども基本法にもとづくこども大綱の策定と推進も、こども家庭庁の所掌事務に含まれています。
Q. こども家庭庁はなぜ作られたのですか?
A. こども家庭庁は、こどもに関する政策が複数の府省庁に分かれていた状態を改めるために作られました。2021年12月21日に閣議決定された「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」には、当時の状況が整理されています。青少年の育成とこどもの貧困対策は内閣府、児童虐待防止対策は厚生労働省というように、こども政策の総合調整権限が分散していました。基本方針は、こどもの困難が本人や家庭、環境の要因が重なって表れると指摘しており、司令塔の一本化が必要とされました。
Q. こども家庭庁と文部科学省の違いは何ですか?
A. こども家庭庁が担うのは、こどもと家庭の福祉や保健、こどもの権利利益の擁護です。一方の文部科学省は、幼児教育の振興や学校教育の振興といった教育を担当します。就学前の施設では、幼稚園が文部科学省、保育所と認定こども園がこども家庭庁の所管です。ただし幼稚園教育要領と保育所保育指針は、両者が相互に協議したうえで共同で策定します。学校でのいじめ防止と不登校対策は文部科学省が担当し、こども家庭庁は地域の相談体制の整備を受け持ちます。
Q. こども家庭庁の予算はどのくらいですか?
A. 2025年12月26日に概算決定された令和8年度こども家庭庁当初予算案の総額は、7兆4,956億円です。内訳は一般会計が4兆2,795億円、子ども・子育て支援特別会計が3兆2,161億円で、令和7年度の予算額7兆3,270億円から1,686億円増えました。このうち児童手当には2兆973億円が計上されています。予算案は「こどもまんなか社会」に向けた基本政策の推進を1本目に置いた、5本の柱で整理されています。
まとめ
こども家庭庁は、こどもと家庭の福祉や保健、こどもの権利利益の擁護を担う国の行政機関です。
こども基本法とこども大綱を土台に、乳幼児期の育ちから虐待や貧困への対応まで、政策の司令塔として動いています。
制度の名前を覚えるよりも、気になった政策を一つ選んで公表資料を自分で開くほうが、理解は早く進みます。
どの課題に関わりたいかが少しでも見えてきたら、ココキャリアで企業・団体のページを見比べると、事業内容と募集状況の両方がつかめます。
制度を知ることは、こどもに関わる仕事を「やさしそうだから」ではなく「ここが足りないから」と語れるようになることでもあります。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
