農林水産省が2026年2月にまとめた資料によると、世界の食料需要量は2050年には2010年比1.7倍、58億トンになる見通しです。
畜産物は1.8倍、穀物は1.7倍と、特に増加率が大きいとされています。
限られた資源でこの需要を満たす技術として、フードテックに注目が集まっていますが、具体的にどんな会社が何をしているのかは、名前だけではつかみにくいものです。
代替タンパク質、ゲノム編集食品、スマート農業、食品ロス削減。
この4つの切り口で、10社がそれぞれ何に取り組んでいるのか、そこにどんな仕事があるのかを紹介します。
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食品ロスに関わる企業やキャリア情報は、特集ページにもまとまっています。
フードテックとは
フードテックとは、生産から加工、流通、消費までをつなぐ、食に関する新しい技術やビジネスモデルのことです。
農林水産省の資料は、フードテックを「持続可能な食料供給」「食品産業の生産性向上」「豊かで健康な食生活」という3つの柱で整理しています。
バイオテックとの違い
似た言葉に「バイオテック」があります。
バイオテックは医療や創薬も含む生物由来の技術全般を指し、そのうち食の領域に使われるものがフードテックにあたります。
この記事では、代替タンパク質、ゲノム編集食品、スマート農業に近い食品製造技術、食品ロス削減テックなど、食の領域に絞って企業を紹介します。
フードテックに取り組む企業一覧
代替タンパク質、ゲノム編集食品、スマート農業、食品ロス削減の4分野から、10社を紹介します。
| 企業 | 取り組み分野 | 特徴的な取り組み |
| キリンホールディングス株式会社 | 健康な食生活・ヘルステック | 電気の力で塩味を増強する食器「エレキソルト」 |
| SprouTx株式会社(旧DAIZ株式会社) | 代替タンパク質(植物肉) | 発芽大豆由来の植物肉「ミラクルミート」 |
| リージョナルフィッシュ株式会社 | ゲノム編集食品・スマート養殖 | 「22世紀鯛」「22世紀ふぐ」の品種改良 |
| 株式会社エコロギー | 代替タンパク質(昆虫食) | 食用コオロギの養殖・食品原料化 |
| 株式会社レット | 複合型フードテック | 食品ロス削減アプリ・未来食の特許 |
| ASTRA FOOD PLAN株式会社 | 食品ロス削減(アップサイクル) | 過熱水蒸気技術で食品残さをパウダー化 |
| 株式会社クラダシ | 食品ロス削減(ECプラットフォーム) | ソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」 |
| AGRIST株式会社 | スマート農業(収穫ロボット) | AIによるピーマン・きゅうりの自動収穫 |
| ベジタリア株式会社 | スマート農業(IoT) | IoTセンサーと農業データの解析基盤 |
| 株式会社プランテックス | スマート農業(植物工場) | 閉鎖型栽培装置「Culture Machine」による人工光型植物工場 |
キリンホールディングス株式会社
キリンホールディングス株式会社は、2007年7月1日に麒麟麦酒株式会社から商号を変更した企業です。
減塩でもおいしく食べられるようにする技術として、電気の力で塩味やうま味を増強する減塩サポート食器「エレキソルト」を開発しています。
明治大学の宮下芳明研究室との共同研究から生まれた技術で、スプーン先端の電極から微弱な電流を食品に流す仕組みです。
2025年9月9日には、カップの新発売とスプーンのリニューアルを発表しました。
農林水産省の資料でも、塩味を増強するスプーンの事例として取り上げられています。
SprouTx株式会社(旧DAIZ株式会社)
発芽大豆由来の植物肉「ミラクルミート」は、もとはDAIZ株式会社が開発した製品です。
2025年4月1日にDAIZエンジニアリング株式会社がDAIZ株式会社を吸収合併し、社名をSprouTx株式会社に変更しました。
現在はPlant-basedのEGG・MILK・MEATとエンジニアリングの4事業を手がけています。
農林水産省の資料は、発芽技術で食感や風味を食肉に近づけた代替肉や魚代替の製品を開発・販売していると紹介しています。
ココキャリアの掲載ページは、2026年9月時点では旧社名のままです。
リージョナルフィッシュ株式会社
リージョナルフィッシュ株式会社は、2019年に設立された京都大学発のベンチャー企業です。
新品種の開発と種苗の生産・販売、AI・IoTによるスマート養殖、自社での養殖・販売が事業の柱です。
ゲノム編集技術を利用した品種改良法「ナノジーン育種」で開発したのが、「22世紀鯛」と「22世紀ふぐ」です。
プレスリリースによると、「22世紀鯛」は一般的な品種より約2割少ない餌で育てられます。
「22世紀鯛」は2021年9月、「22世紀ふぐ」は同年10月に厚生労働省と農林水産省への届出を終え、流通が始まりました。
リージョナルフィッシュ株式会社の事業内容や創業理由を詳しく見る
株式会社エコロギー
株式会社エコロギーは、2017年に設立された早稲田大学発のベンチャー企業です。
昆虫コオロギの養殖生産と、コオロギを活用した食品・飼料の開発・製造・販売を手がけています。
160年以上の歴史を持つマルマタしょう油合資会社と共同開発したコオロギ味噌・醤油のほか、コオロギ粉末を95%使った爬虫類用の人工飼料「レオバイト」があります。
2024年1月29日には、宇都宮ブレックスのホームゲーム会場で昆虫食を300食配布しました。
株式会社レット
株式会社レットは、2018年8月に設立され、代表を佐藤航陽さんが務める企業です。
「訳あり品」を購入できるアプリの運営を通じた食品ロス削減と、食とテクノロジーを組み合わせた事業を手がけています。
2023年8月2日には、携帯食・完全食・非常食を兼ねる「NEOFOOD(ネオフード)」の特許を取得しました。
ポケットサイズで持ち運べ、隙間時間に栄養を摂取できるタブレットの特許です。
代替プロテインや培養肉の開発、農家と協力したスマート農園の試験的な運営にも取り組んでいます。
ASTRA FOOD PLAN株式会社
ASTRA FOOD PLAN株式会社は2020年8月に設立され、食品加工機械と食品の開発・製造・販売を手がけています。
過熱水蒸気を使う装置「JOSEN」(旧称:過熱蒸煎機)で、食品残さを食品パウダー「ぐるりこ®」にアップサイクルしています。
同社は、規格外品や食品残さとして数え切れていない「かくれフードロス」が年間およそ2,000万トンあるとしています。
従来のフードロス約472万トンとは別に計上されるものです。
ASTRA FOOD PLAN株式会社の事業内容や創業理由を詳しく見る
株式会社クラダシ
株式会社クラダシは2014年7月に設立され、東京証券取引所グロース市場に上場している企業です。
規格外品や余剰在庫を消費者に届けるソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」を運営しています。
公式サイトのImpactページでは、2026年6月30日時点のフードロス削減量を43,611トン、CO2削減量を115,612t-CO2、経済効果を212億1,851万円としています。
農林水産省の資料も、フードシェアリングの事例として同社を取り上げています。
AGRIST株式会社
AGRIST株式会社は、2019年10月に設立され、宮崎県児湯郡新富町に本社を置く企業です。
AIを活用した農業用ソフトウェアと自動収穫ロボットの開発、スマート農業パッケージの販売を手がけています。
2019年11月のスマート農業サミットでピーマンの5個連続自動収穫を達成し、2020年4月にはピーマン自動収穫ロボット6台で実証を行いました。
2024年4月からは、きゅうりの自動収穫ロボット2台を導入しています。
ベジタリア株式会社
ベジタリア株式会社は、2010年10月に設立された企業です。
IoTセンサ事業、クラウドデータ基盤事業、アプリケーション開発事業、植物病院事業、農業生産事業、オーガニックを中心とした流通販売事業の6つを手がけています。
IoTセンサー事業やクラウドデータ基盤事業を中心に、スマート農業に関連する技術の開発と実装に力を入れています。
株式会社プランテックス
株式会社プランテックスは2014年6月に設立され、人工光型植物工場の企画・設立・運営サポートと、栽培条件の研究を手がけています。
独自開発した栽培装置「Culture Machine」は、光・空気・水を制御するクローズド・ユニット方式で、段ごとに環境条件を設定できます。
2026年7月8日には、本社PLANTORY Tokyo-Bayと同じ東京都江東区東雲に、実証施設「東雲実証拠点」を竣工しました。
農林水産省の中小企業イノベーション創出推進事業に採択され、省人化と資源利用効率の向上に取り組むとしています。
フードテックに関わる仕事・キャリア
フードテックの仕事は、新しい食材や品種を生み出す仕事、加工や栽培の装置をつくる仕事、余っている食品を動かす仕事に分かれます。
同じ「食」でも、求められる専門と入口はそれぞれ違います。
新しい食材・品種を生み出す仕事
代替タンパク質やゲノム編集の品種など、これまでになかった食材を研究から製品まで持っていく仕事です。
リージョナルフィッシュ株式会社は魚の品種改良、SprouTx株式会社は発芽大豆を使った植物肉、株式会社エコロギーは昆虫の養殖と食品化を事業にしています。
実験と試作を繰り返す研究職のほか、届出や表示のルールに沿って製品化を進める品質保証・薬事の役割があります。
農学、生物学、食品科学、水産学などの専攻や、食品メーカーでの商品開発の経験が活きます。
大学発ベンチャーが多く、研究室での経験をそのまま持ち込める入口があります。
装置や設備をつくり、現場に入れる仕事
食材そのものではなく、育てる・加工する仕組みの側をつくる仕事です。
AGRIST株式会社は自動収穫ロボット、株式会社プランテックスは人工光型植物工場の栽培装置、ASTRA FOOD PLAN株式会社は食品残さをパウダーにする加工機械を手がけています。
機械設計、制御・ソフトウェア開発、AIによる画像認識、導入後の保守やフィールドエンジニアが主な職種です。
農業や食品の知識がなくても、製造業やIT業界でのものづくりの経験から入れます。
現場に何度も足を運んで調整する仕事なので、生産者と話せることが強みになります。
余っている食品を動かす仕事
規格外品や余剰在庫を、必要な人に届く形に変えて流通させる仕事です。
規格に合わず畑ではねられる野菜も、おいしさに問題がなければ届けていると、オイシックス・ラ・大地株式会社の上田ゆうなさんはインタビューで話しています。
株式会社クラダシと株式会社レットは、それぞれECサイトとアプリで、行き場のない食品を消費者につなぐ事業を運営しています。
メーカーや小売と交渉する法人営業、サービスの企画、Webサービスの開発と運用、物流の設計が必要になります。
小売やEC、食品商社での経験がそのまま活きる領域です。
食品ロスに関わる仕事の全体像は、次の記事で解説しています。
≫フードロスに携わる仕事がしたい!就活・転職に役立つ業界・業種を解説
ココキャリアで探す
フードテックに取り組む企業を一覧で探したいときは、ココキャリアで掲載企業の情報を見られます。
募集の有無や条件は時期で変わるため、応募を考えるときは各社の採用ページで最新の情報を確認してください。
よくある質問
フードテックに取り組む企業について、よくある疑問にお答えします。
Q. フードテックとは何ですか?
A. フードテックとは、生産から加工、流通、消費までをつなぐ、食に関する新しい技術やビジネスモデルのことです。農林水産省の資料は、フードテックを「持続可能な食料供給」「食品産業の生産性向上」「豊かで健康な食生活」の3つの柱で整理しています。代替タンパク質、ゲノム編集食品、スマート農業に近い食品製造技術、食品ロス削減テックなど、扱う技術の幅は広い分野です。この記事では、食の領域に絞って10社の取り組みを紹介しています。
Q. フードテックとバイオテックはどう違いますか?
A. 明確に線引きされた定義があるわけではありません。COCOCOLOR EARTHでは、医療や創薬などいのちに関わる技術に取り組む企業を、バイオテックとして別記事で紹介しています。この記事は、代替タンパク質やゲノム編集食品、スマート農業に近い食品製造技術、食品ロス削減テックなど、食の領域に絞って企業を紹介しています。掲載企業も重複しないように選んでいます。両方の分野にまたがる技術もあるため、気になる企業は公式サイトで事業内容を確認してください。
Q. ゲノム編集食品に取り組む企業はありますか?
A. この記事では、リージョナルフィッシュ株式会社を紹介しています。同社は、ゲノム編集技術を利用した品種改良法「ナノジーン育種」で、「22世紀鯛」と「22世紀ふぐ」を開発しています。プレスリリースによると、「22世紀鯛」は2021年9月、「22世紀ふぐ」は同年10月に、厚生労働省と農林水産省への届出を完了し、流通を始めています。ゲノム編集食品は、遺伝子組み換え食品とは扱いが異なる技術として国の制度上区別されています。
Q. この記事の企業は、就職・転職の募集をしていますか?
A. 各社の現在の募集状況は、この記事では確認していません。公式サイトで確認できた範囲では、AGRIST株式会社の採用ページにフィールドエンジニアやプロジェクトマネージャーなどの職種が、リージョナルフィッシュ株式会社の採用ページに研究職や養殖の生産技術職、知的財産の担当者などが案内されていました。ベジタリア株式会社にも採用のページがあります。募集職種や条件は時期によって変わるため、応募を考えるときは、気になる企業の公式サイトや採用ページで、最新の情報を直接確認してください。
まとめ
10社の公式サイトには、コオロギや植物由来のタンパク質を開発する会社、魚の品種をゲノム編集で改良する会社がありました。
ロボットとAIで農作業を担う会社、閉鎖型の設備で野菜を育てる会社、余った食品を届ける仕組みをつくる会社もありました。
同じ「フードテック」でも、扱う技術も、解決しようとしている課題も、会社によってかなり違います。
気になる会社が見つかったら、まず公式サイトで事業内容と採用ページを開き、いま何をしているのかを自分の目で確かめてみてください。
フードテック以外の分野も含めて、社会課題に取り組む企業を比べながら探したいときは、ココキャリアで企業ごとの情報を見られます。
食の未来をつくる仕事は、研究室の中だけでなく、農場やキッチン、物流の現場にも広がっています。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
