人工肉は、従来の肉の味や食感を再現した人工的に作った加工品です。

人工肉は、将来的な食糧不足の解決策や、畜産業の生産方法の改善策、動物倫理に関わる問題解決のためなど、さまざまな問題解消のために必要性が高まっています。

本記事では、人工肉の種類、メリット・デメリット、生産における課題等を解説します。

人工肉とは?

人工肉とは、従来の肉の味や食感を再現した人工的に作った加工品です。

人工肉は、将来的な食糧不足の解決策や、畜産業の生産方法の改善策、アニマルライツに関わる問題解決のためなど、さまざまな問題解消のために必要性が高まっています。


何からできてる?人工肉の種類

人工肉の種類について、代替肉と培養肉の2つを解説します。

代替肉

代替肉とは、大豆や小麦などの植物性タンパク質を使用した植物由来の加工食です。

代替肉は、アニマルライツや家畜飼養に使われるエネルギー負荷を抑える方法として需要があります。

特に植物由来の代替肉は、世界的に商品化が進んでおり、ベジタリアンやヴィーガン志向の方に愛用されています。

また、もともとはベジタリアンやヴィーガン志向の方のための食品でしたが、近年では一般的な消費者にも広まっています。

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培養肉

培養肉は、動物の細胞を培養した加工食品です。

培養肉は、動物の細胞を培養して作るため、動物の肉であることが、植物由来の代替肉と大きく異なる点です。

また、培養肉は、まだ植物由来の代替肉のように商品化されて流通していないため、まだ開発途上の状況にあります。

動物から採取した少量の細胞を体外で増やして作るため、家畜を屠殺する必要がないことや、家畜飼育に関わる環境負荷の低減など、従来型の畜産業の課題解決に繋がる可能性があります。


人工肉のメリット3選

人工肉のメリットを3つ解説します。

環境負荷を抑えられる

畜産業の課題には、二酸化炭素排出量の問題があげられます。

一方、人工肉であれば、植物由来の原料を使用するため、畜産業と比較すると環境にやさしい生産プロセスを踏むことが可能になります。

また、培養肉については、家畜を長期的に育てることなく2か月程度の短期間で製造できるようになります。

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動物倫理に配慮ができる

人工肉は、動物搾取をしないという視点から、動物愛護に配慮がある生産活動が可能になります

動物を屠殺するという行為が倫理的に不快感を感じる消費者に、植物由来の人工肉は注目されています。

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食糧危機の解決につながる

世界の肉の全体消費量は、2050年には現在の2倍になると言われています。

タンパク質の供給不足は、将来的に深刻な食糧危機の課題です。

そこで、人工肉の流通が高まることによって食料不足の問題解決につながる取り組みとなります。

例えば、アメリカのベンチャー企業「ビヨンドミート」は、植物由来の人工肉の先駆けとなる生産活動を行っています。

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人工肉のデメリット2選

人工肉のデメリットについて解説します。

価格が高い

人工肉の製造においては、大量生産ができないことや、原料価格が変動する等の理由から、価格が高く設定される傾向です。

ただし、人工肉の生産については、まだ歴史が浅いこともあり、将来的に低価格で消費者が求められるように改善されていくことが期待されています。

畜産業の低迷に繋がってしまう

人工肉の生産性の向上と需要が高まることによって、畜産肉の需要が減る可能性があります。

人工肉が消費者の食卓や飲食業界に浸透することで、畜産業のイメージの変化や畜産業界で働く方々にも影響を及ぼします。

人工肉普及の課題

培養肉の実用化に向けて、世界が急速に生産活動を促進しています。

日本国内においては、日清食品やインテグリカルチャー等の企業が、人工肉の開発を進めています。

人工肉の開発の課題については、家畜肉に寄せた味や食感の実現や、安全性や衛生面を確保し消費者に浸透させること、生産コストをいかに抑えることができるか等があげられています。

また、日本国内で培養肉の流通が実現した場合に、培養肉のカテゴリーは食品表示基準では何に該当するのか、国が定める表示のあり方についても法整備の必要性も求められています。


人工肉に取り組む企業を紹介|代替肉編

ネクストミーツ株式会社

https://www.nextmeats.co.jp

ネクストミーツ株式会社は2020年に設立されたベンチャーで、「肉よりもおいしい」代替肉食品の開発、販売を行っています。

創業7ヶ月でアメリカのSPACに上場しているほか、大手を含めたスーパーなどで商品が扱われています。

日本ハム株式会社

https://www.nipponham.co.jp

食肉業界最大手ですが、大豆ミート「ナチュミート」を販売しています。

また、グループ全体で「タンパク質をもっと自由に」というビジョンを掲げ、ハムから麻婆豆腐まで幅広い商品をカバーしています。

西本Wismettacホールディングス株式会社

https://www.wismettac.com/ja/index.html

西本Wismettacホールディングス株式会社は1912年に設立された老舗の商社です。

この企業では、海外の日本食レストラン向けの食品輸出を扱っており、2018年からビーガン向けにトマトなどから作られたマグロの代替肉やナスから作られたうなぎの代替肉の取り扱いを始めたそうです。

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人工肉に取り組む企業を紹介|培養肉編

日清食品ホールディングス株式会社

日清食品ホールディングス株式会社は、インスタントラーメンを発明し、世界的に展開する日本の食品会社です。

食肉の供給不足などの課題解決に向けて「培養ステーキ肉」の研究を進めています。

HP:研究室からステーキ肉をつくる。 | 日清食品グループ

ダイバースファーム株式会社

ダイバースファームはミシュラン星を8年連続で獲得した日本料理の名店と、人工臓器作製の医療用技術を応用した培養肉ベンチャーです。

遺伝子組み換えや安全性が確立していない手法は用いずに、食品の範囲で培養する技術を開発しています。

HP:ダイバースファーム株式会社

インテグリカルチャー株式会社

インテグリカルチャーは、コスメから食材まで様々な利用範囲をもった汎用大規模細胞培養技術、CulNet Systemを用いて、食文化であふれる、持続可能な世界を目指す企業です。

CulNet systemは、汎用性の高い低コスト細胞培養プラットフォーム技術で、動物細胞で構成される食品、皮革をはじめ、様々な分野で活用されることを目指しています。

HP:インテグリカルチャー株式会社


まとめ

人工肉が新しい食料加工品として将来的に消費者の食卓に気軽に届く日も近いでしょう。

人工的に作った食品というだけでは、なかなか興味を持ちにくいかもしれません。

しかし、人工肉が生産される背景や、最新の食品技術について知ることで、代替肉や培養肉について理解が深まると良いでしょう。