日本国内の都市部で多く見られるようになった外国人のアルバイト。

コンビニではよく見られるようになった光景ではありますが、実は私たちの目に入らない環境でも、毎日深夜に何時間も働く外国人が多くいます。

実はその約2割が「留学生」なのです。

留学が目的であるはずの人々が、なぜ働かなければならないのでしょうか。その実態をすべて伝えることは難しいですが、その問題性に目を向けるきっかけに、ぜひご一読ください!

日本で働く外国人労働者の2割は「留学生」

最近、コンビニや飲食店で外国人の店員さんを見かけることが当たり前になってきましたよね。これまでは学生や主婦層が多かったアルバイトの人々も、今やほとんど外国人といったお店も増えてきています。

実は彼らのうち約2割が途上国からの「出稼ぎ留学生」であることを、皆さんはご存知でしょうか。

厚生労働省のデータによると、令和4年(2022年)に日本で働いていた外国人労働者約182万人のうち、「資格外活動」の区分にあたる外国人留学生は約48万人を超え、26.3%を占めています。

つまり、昼は学校、夜は働く、という生活を送っている留学生が多いわけですね。

技能実習生の問題については少しずつ報道がされているものの、留学生の実態についてはそこまで知られていないと思います。

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なぜ留学生アルバイトが増えたのか?

なぜ留学生アルバイトが増えたのでしょうか?

2つの理由を解説します。

政府による「留学生30万人計画」

外国人留学生のアルバイトが増えた背景には、2008年に日本政府によって策定された「留学生30万人計画」があります。その名の通り、2020年までに30万人の留学生受け入れを目指した政策です。

この政策では、グローバル化や受け入れ環境作りなどといった目的が掲げられています。

しかし実態はアベノミクス(経済政策)の一貫で、少子高齢化が進み、人口減少が始まる日本社会に「労働者人口を補充したい」というのが本来の目的であったとも、報道されています。

結果的に、「留学中」に働くアルバイトの人々が多く来日したことによって、在日留学生の数は2020年に31万人を突破しました。

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外国人留学生の出身地や目的は?

外国人留学生の出身地や目的について解説します。

東南アジアの発展途上国が多い

この31万人の留学生の中には、ベトナム(2位)、ネパール(3位)、スリランカ(6位)、インドネシア(7位)、ミャンマー(8位)といった東南アジアの発展途上国が、中国(1位)、韓国(4位)、台湾(5位)といった近隣諸国の間に割り込んで上位を占めています。(出典:日本学生支援機構

実は、先進国の留学生から見て、日本留学はそこまで魅力的ではありません。

大学など専門性の高い学問では、日本は留学生を獲得できないことが最初からわかっていました。

そこで産業界と協力して進められたのは「途上国からの出稼ぎ」でした。

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目的は「出稼ぎ」?

なぜ発展途上国からの留学生が多いかは、彼らの目的を聞くとわかります。

政府関係機関はデータを公表しませんが、留学生の中には「出稼ぎ」を目的として来日する人が多いのです。

「自らの国よりも、日本で日本語を学びながらお金を稼ぐ方が、学費や生活費を差し引いても、より多くのお金を稼げる」

そう信じて日本にやってくる留学生が多くいます。

そのため「大学」や「専門学校」だけでなく、「日本語学校」に通うことで「資格外活動(留学など)」の資格を得て来日する人々が多くいます。


いわゆる「出稼ぎ留学生」を取り巻く問題とは?

外国人留学生として入国しながら、日中は日本語学校、夜はアルバイトをして働く彼ら彼女らを取り巻く環境にはいくつか問題が指摘されています。

  • 「週28時間の壁」
  • 壁を超えれば、疲弊、退学、帰国のリスクに

「週28時間の壁」

実は、日本に留学する外国人のアルバイトは、週28時間までと法律により定められています。そのため、週28時間以上働いたら、犯罪になってしまいます。

これにより、稼げると思って来日した留学生の中は、学費と生活費を賄えるかどうかも危うくなるレベルしか稼ぐことができない留学生が多くいます。

壁を超えれば、疲弊、退学、帰国のリスクに

週28時間の制限を打ち破るために、週28時間以内で働くアルバイトを2つ3つと掛け持ち、実際は週28時間をはるかに超える時間働く留学生も、中にはいるようです。

しかしそうした留学生も、学校がない時間のほとんどを労働に費やし寝る間もなく、環境も劣悪、そしていつ通報されて退学や帰国を命じられるかわからない、と言う過酷な状況で暮らしています。

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日本の移民問題を正しく知るためには?

「一次情報」を手に入れよう

こうした外国人留学生の労働について、私たちが見えている範囲はほんの一部でしかありません。それは社会から見えないところで起きており、生の声を知るために「一次情報」を手に入れることが重要だと思います。

参考になるサイトや書籍を紹介します。

ニッポン複雑紀行は、NPO法人難民支援協会によるウェブマガジンで、日本の移民文化・移民事情を伝えています。

書籍で言えば、ニッポン複雑紀行の編集長である望月優太さん著「ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実 (講談社現代新書)」

福岡を中心に取材を重ね見聞きした事実を記録した「新 移民時代――外国人労働者と共に生きる社会へ(西日本新聞社編)」

などがオススメです。

日本の移民や外国人労働者に関わる問題は、企業、NPOなど、各地で少しずつ解決への取り組みが生まれてきています。今後も是非注目してみてください!