今回は、株式会社エル・ティー・エスでコンサルタントとして働く池本悠香さんにインタビューしました。

池本さんは、筑波大学大学院で国際公共政策を専攻しながらも、最初のキャリアとして「民間のコンサルティングファーム」という道を選びました。

現在は静岡を拠点に、企業の業務改善やDX支援といったビジネスの最前線で活動されています。

本記事では、支援の「王道」から一歩離れ、あえて民間企業で「武器」を磨く道を選んだ理由を伺いました。

また、理想と現実の狭間で葛藤した過去や、その先に見据える「複数セクターの協働」という新しい社会課題解決の形についてもひも解きます。

 

「仕組み」で理不尽を減らす、コンサルタントの仕事

ーーー現在は、株式会社エル・ティー・エスでコンサルタントとして活動されているとのことですが、具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか。

現在は、主に民間企業や自治体のお客様の「業務改善」や「DX」を支援するプロジェクトに携わっています。

具体的には、企業の古い慣習や非効率な業務プロセスを洗い出し、ITツールの導入やルール改定を通じて、社員がより価値のある仕事に集中できる環境づくりを支援しています。

入社してまだ2年ほどですが、現場の方々と対話を重ねながら、どうすれば組織がより良く変わっていくのかを日々模索しています。

加えて、私が所属しているのは東京本社ではなく静岡の拠点で、この環境がとてもユニークです。

拠点長との距離が近いため、コンサルタント業務だけでなく、採用活動や部門会議の資料作成、オフィスの引っ越し調整など、組織づくりに関わるさまざまな業務にも携わっています。

いわば、コンサルタントとしてお客様の組織変革を支援しながら、自分自身もベンチャーのような環境の中で組織をつくる経験をしている感覚があります。

さらに、地域社会との距離も近く、プライベートでも地域のイベントに参加するなどして、静岡の企業の方々との親交も深めています。

ーーー「コンサルタント」という職業は、一見すると社会課題とは少し距離があるようにも感じられますが、池本さんの中ではどのようにつながっているのでしょうか。

「業務改善」や「DX」は組織の中にある非効率な部分を取り除き、企業の生産性を高めていく重要な役割を担っています。

特に昨今は人手不足が深刻になってきており、企業の生き残りには業務改善やDXが必要不可欠です。

そして、特に地方では大手企業が地域経済を支えているため、こうした企業が元気でいられるように支援することは、間接的に地域社会に貢献できているとも言えます。

また、私には将来的に、国際協力や地方創生の現場で「持続可能な仕組み」をつくりたいという目標があります。

その際、異なるセクター(行政、民間、アカデミアなど)が持つ資源や能力を組み合わせて大きなインパクトを生み出すためには、ビジネスの現場で培われる「課題解決の筋力」や「多角的な調整能力」が不可欠です。

そうした力を身につけるために、私は今の仕事を選びました。

「理不尽な構造」を放置できない理由

ーーー池本さんが関心を持っている社会課題として「国際協力」と「地方創生」を挙げていらっしゃいますね。なぜ、これらの課題に注目されているのでしょうか。

私の中にある共通のテーマは、「生まれた場所や環境によって、選択肢が奪われる理不尽をなくしたい」ということです。

国際協力の文脈で言えば、途上国で適切な教育や医療を受けられない子どもたちがいる現状。地方創生の文脈で言えば、自分が生まれ育った町に仕事やチャンスがないために、望まない選択を余儀なくされる人々がいる現状です。

私は、こうした状況に共通しているのは、個人の努力だけではどうにもならない「構造的な問題」だと考えています。

だからこそ、誰かの善意による一時的な支援だけで終わらせるのではなく、自走できる仕組みによって解決したいと思っています。

ーーー池本さんが社会課題に関心を持った、具体的な原体験について教えてください。

きっかけは、中学生の頃にまで遡ります。

当時、ニュース番組などで紛争地帯や途上国の過酷な状況を目の当たりにしました。

同じ年齢の子どもたちが、生まれた場所が違うという、ただそれだけの理由で命すら脅かされている。

その事実に、言葉にならないほどの強い憤りを感じたんです。

「なぜ、同じ人間なのにこれほどまでに違うのか」と。

その日を境に、自分がいかに恵まれているかに気づかされると同時に、社会の中にある理不尽な構造に対する問題意識が、自分の中に残り続けるようになりました。

憧れが揺らいだ先に見えてきたこと

ーーー大学、大学院と進む中で、その思いはどのように変化していったのでしょうか。

学生時代は、まさに「国際協力のプロ」になって、直接的に世界を救う人になりたいと憧れていました。

「国境なき医師団」のような活動に憧れを抱いた時期もあり、とにかく最前線で精力的に活躍する支援者が「かっこいい」と思っていたんです。

しかし、実際に専門的な学びを深め、アフリカの国々にも足を運んで現場のリアルを知るにつれて、自分の理想像と現状の自分自身とのギャップに気づき深い落ち込みを経験しました。

ーーーそれは、どのような葛藤だったのですか。

憧れの対象であった支援者たちは、高い専門性を身に付け、過酷な環境に身を置き、私には、ある種の自己犠牲とも思えるものを払いながら活動していました。

それに対して現実の自分を見つめたとき、高い専門性や経験を得るための苦労をする覚悟や途上国に飛び込む覚悟が、自分には備わっていないことに気づいてしまったんです。

国際協力は素晴らしい。
でも、私は自分の生活をすべて投げ打ってまで、そこに身を投じられる人間なのだろうか。

そんな自問自答を繰り返す中で、「私は国際協力の世界には進めない、理想の自分にはなれない」と思い、自分に対して失望してしまいました。

ーーーそのどん底の状態から、どのようにして立ち直ることができたのでしょうか。

「最前線で戦う人たちだけが解決の主役ではない」と、自分を認めてあげることでした。

自分ができないことを無理にやろうとして苦しむよりも、まずは自分の価値観を認め、今の自分にできる形での貢献を探そうと考えるようになりました。

「直接的な行動」ではなく、自分なりの「論理的な解決」へのアプローチを見つける必要性に気づいたことが、私にとって大きな転換点となりました。

ーーーなぜ今、私たちがこれらの課題に向き合う必要があるのだと思いますか。

世界がこれだけ密接につながっている現代において、遠くの国の貧困も、日本の社会課題も、決して他人事ではないからです。

特に地方の衰退は、日本の国力の低下に直結するとともに、その地域の人々が本来得られるはずだった機会や、地域そのものの可能性を失うことにもつながります。

何より、そうした負の連鎖を放置し続けることは、次の世代にさらなる理不尽を押し付けることにもなります。

今、私たちが持っている技術や知恵、そしてビジネスの力を結集して、新しい解決のモデルをつくっていかなければならない時期に来ているのだと感じます。

なぜ「王道」ではなく民間コンサルを選んだのか

ーーー大学院では国際公共政策を専攻され、まさにJICAなどの支援機関を目指す「王道」の道にいらっしゃいました。なぜ、あえて民間企業を選んだのでしょうか。

私は、社会課題の解決には、民間企業、行政、研究機関など、多様なセクターの協働が不可欠だと考えています。

就職活動を通じて、異なるセクター間の協働を実現するには、利害の異なるステークホルダーをつなぎ、目的をすり合わせながら物事を前に進める「架け橋」のような存在が必要であり、民間のコンサルタントがその役割を担う場合があると知りました。

私は特定の課題を主導するよりも、課題解決を支える「調整役」や「架け橋」のほうが、自分には合っているのではないかと感じたんです。

JICAなどの支援機関は、国際協力に直接携われる素晴らしい組織ですし、周囲にもそうした道を選ぶ友人が多く、自分もその道に進むべきだと思っていました。

実際、その選択肢を最初から外してしまったことには、今でも少し後悔があります。

ですが、多様なセクターの架け橋になるために、まずは民間のコンサルタントとして働き、課題解決力や多様なセクターを巻き込みプロジェクトを進める推進力を得ようと考えました。

ーーー最終的に、株式会社エル・ティー・エス(LTS)を選んだ決め手は何でしたか。

決め手は3つあります。

1つ目は、顧客に向き合う姿勢です。

ただ机上の空論を並べるのではなく、お客様と同じ目標に向かって一緒に悩みながら進む、そんな姿勢に強く惹かれました。

2つ目は、社会課題に対して、将来的に社内で事業として取り組んでいける可能性を感じたことです。

今すぐに実現できるわけではなくても、その思いを否定されることなく、中長期的に育てていける環境だと感じました。

そして3つ目は、「人」です。

面接でお会いした社員の方々は、温かさがありながらも、内側に強い思いや熱量を持っている方ばかりでした。

自分は決してロジカルなタイプではないという自覚があったからこそ、こうした人たちとなら、自分らしく働きながら成長していけると感じたんです。

理想と現実の狭間で語る「満足度40%」の真意

ーーー実際に働いてみて、入社前の想像と違ったことや、難しさを感じる部分はありますか。

想像していた以上に、地味で忍耐強さが求められる仕事だと感じています。

華やかなプレゼンの場よりも、お客様の業務フローを一つひとつ確認したり、マニュアルを作成したりと、泥臭い作業に向き合う時間のほうが圧倒的に多いです。

自分が本当にやりたい社会課題解決と、今目の前で取り組んでいる業務改善。その距離をどう埋めていくかという点では、今でも日々試行錯誤しています。

だからこそ、今の自分のキャリア満足度は「40%」ですね。

ーーー「40%」というのは、少し低い数字にも聞こえますが……。

そうですね。

でも、これは「今の仕事に不満がある」という意味ではないんです。

むしろ、自分への「伸びしろ」と「期待」を込めた数字です。

今の仕事を通じて学んでいる業務効率化の手法や、プロジェクトマネジメントやステークホルダーマネジメントのスキルは、間違いなく将来の目標につながっていると感じています。

ただ、まだそのスキルを社会課題解決というフィールドで、直接的な成果として発揮できているわけではありません。

今の仕事を続ける中で、新しく自分にできることや、本当にやりたいことを見つけながら、少しずつ理想に近づいていければいいと思っています。

そんな希望を込めた、40%という現在地です。

ローカルから社会課題解決のモデルをつくる

ーーー今後の展望や、挑戦したいことについて教えてください。

まずは、現在拠点としている静岡で、より深く地域の課題解決に関わっていきたいと考えています。

具体的には、行政と民間企業が連携して新しい事業を生み出すプロジェクトに、コンサルタントという立場で参画することを目指しています。

地方には、素晴らしい資源や技術がありながらも、人手不足や仕組みの不備によって十分に活かされていないケースが多くあります。

そこで、私が今学んでいるプロジェクトマネジメントやステークホルダーマネジメントのスキル、課題解決力を活かすことで、ステークホルダーを動かし、より大きな社会的インパクトを生み出したいと思っています。

単一のセクターだけでは解決できない課題に対して、複数のリソースを組み合わせながら向き合う。そうしたアプローチを、まずはここ静岡で実装していきたいです。

ーーー国際協力の夢については、どのようにお考えですか。

決して諦めてはいません。

むしろ、地方創生での経験は国際協力にも直結すると考えています。

日本の地域で培った「持続可能な開発」のモデルや、複数のセクターを動かした調整の知見は、将来的に世界の途上国でも必ず活かせるはずです。

「静岡」というローカルな現場と、「世界」というグローバルな視点を行き来しながら、両者の課題に向き合っていく。

そんなスケールの大きな仕事ができるようになるまで、今は目の前の仕事を通じて着実に「戦闘力」を高めていきたいです。

「王道」だけが正解ではない

ーーー最後に社会課題の道を志す学生へメッセージをお願いします。

「王道」と見えるキャリアだけが正解ではない、ということをまず伝えたいです。

今、社会課題に関心はあるけれど、自分には何のスキルも覚悟もないと感じているなら、それは決して悪いことではありません。

むしろ、真剣に向き合っているからこそ生まれる感覚だと思います。

最初から完璧なキャリアを選ぶ必要はありませんし、いきなり正解にたどり着こうとしなくてもいいんです。

学生時代、私自身も自分の無力さに打ちひしがれました。

それでも、民間企業という一見遠回りに見える道で揉まれる中で、少しずつ「変えるための武器」を手にできている実感があります。

興味のある分野でのインターンシップなどを通じて、まずは「自分に何が向いていないか」を知ることから始めてもいいと思います。

さまざまな経験の掛け合わせが、あなただけのキャリアと、あなたなりの社会への貢献の形をつくっていきます。

自分の「違和感」を信じて、まずは目の前の一歩を踏み出してみてください。

私自身も、40%の満足度を100%に近づけていけるよう、これからも泥臭く走り続けます。

一緒に、より良い未来をつくっていきましょう。

 

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