SDGs(持続可能な開発目標)は、私たち一人ひとりがより良い社会を作るための国際的な指針です。

その中でも「すべての人に健康と福祉を」は、人間の基本的な権利として非常に重要な目標です。

本記事では、「すべての人に健康と福祉を」の基本情報から、私たちにできる具体的な行動までを分かりやすく解説します。

すべての人に健康と福祉をとは

「すべての人に健康と福祉を」は、SDGsの17の目標のうち第3の目標です。

この目標は、あらゆる年齢のすべての人々が健康的な生活を送り、福祉を享受できるようにすることを目指しています。

特に、新生児や母親の死亡率の削減、感染症の予防と治療、精神的健康の向上、医療へのアクセス改善などが重要な要素として挙げられています。

福祉とは?10の種類の具体的な福祉問題や企業の取り組みを解説
ヘルスケアとは?定義や関連する問題、人気のアプリ、取り組む企業を解説

SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年の国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき17の目標です。

貧困、教育、環境など幅広い分野の課題に対応し、持続可能な社会を構築するための国際的な取り組みです。

「すべての人に健康と福祉を」は、人間の基本的な権利としての健康を保障し、より平等で安心して暮らせる社会を目指すものです。


すべての人に健康と福祉をを構成するターゲット

すべての人に健康と福祉をの目標には、具体的な13のターゲットが設定されています。それぞれを以下に解説します。

3.1 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。
3.2 すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児および5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する。
3.4 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健および福祉を促進する。
3.5 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。
3.6 2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
3.7 2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする。
3.8 すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセスおよび安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
3.9 2030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡および疾病の件数を大幅に減少させる。
3.a すべての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。
3.b 主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチンおよび医薬品の研究開発を支援する。
また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)および公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品およびワクチンへのアクセスを提供する。
同宣言は公衆衛生保護および、特にすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
3.c 開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国において保健財政および保健人材の採用、能力開発・訓練および定着を大幅に拡大させる。
3.d すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和および危険因子管理のための能力を強化する。

すべての人に健康と福祉をが生まれた背景

この目標が設定された背景には、過去の国際的な取り組みの成果と課題が挙げられます。

2000年に採択されたミレニアム開発目標(MDGs)では、HIV/AIDSやマラリアなどの感染症対策が進展しましたが、依然として多くの地域で基本的な医療サービスへのアクセスが不十分でした。

これらの課題を引き継ぎ、より包括的かつ具体的な取り組みとして「すべての人に健康と福祉を」が掲げられました。


すべての人に健康と福祉をの現状

2025年現在、世界中で以下のような健康と福祉に関する課題が残っています。

地域格差

医療へのアクセスに関して、地域格差は依然として深刻です。

低所得国や地方の住民は、医療施設の不足や長距離移動を余儀なくされることが多く、基本的な医療サービスさえ受けることが難しい状況があります。

一方で、高所得国では高度な医療技術が普及しているものの、都市部に集中し、地方ではサービスが限られることがあります。

これにより、健康と福祉の達成が地域間で大きく異なる現状です。

南北問題とは?歴史や現状、南南問題との違い、私たちができることを解説
南南問題とは?どこの国?背景や現状、南北問題との違いをわかりやすく解説

感染症の再流行

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、多くの国で医療資源を圧迫し、他の感染症対策が遅れる原因となりました。

その結果、結核やマラリアなどの感染症が再び流行し始めている地域があります。

また、ワクチンの不均等な分配が、新しい感染症の蔓延を助長しているケースも指摘されています。

精神的健康の低下

現代社会において、ストレスや孤独感が原因で精神的な健康問題が増加しています。

世界保健機関(WHO)によると、うつ病や不安障害は、世界的に主要な健康問題の一つです。

特に若者や高齢者がこの問題の影響を受けやすく、メンタルヘルス支援のニーズは年々高まっています。

参考:世界保健機関(WHO)職場のメンタルヘルス対策ガイドライン

非感染性疾患(NCDs)の増加

心疾患、糖尿病、がんなどの非感染性疾患は、生活習慣の変化や都市化が進む中で増加しています。

これらの疾患は特に中低所得国で急増しており、医療制度の負担が大きくなっています。

予防のための教育や政策が進められているものの、進捗は地域によってまちまちです。

医療制度の脆弱性

紛争地域や自然災害が頻発する地域では、医療施設が破壊されるなど、医療制度そのものが機能しなくなるケースが多々あります。

これにより、住民が基本的な医療サービスを受けられなくなるだけでなく、命に関わる緊急時の対応も困難になります。

すべての人に健康と福祉をの課題

この目標を達成するためには、以下のような課題に取り組む必要があります。

【2024年最新】日本の社会問題一覧!30の社会課題とランキングを解説!

医療資源の不均衡の是正

医療施設や専門人材が都市部に集中し、地方や農村地域では適切な医療を受けられないことが課題です。

例えば、発展途上国では医師や看護師の数が人口に対して圧倒的に不足しており、診療や手術を受けるために長時間待つことが日常的です。

また、医療機器や薬品が不足しているために、治療が限定的になるケースもあります。

これに加え、都市と地方の医療格差は、高所得国でも重要な問題となっています。医療リソースをより公平に分配することが必要です。

医療費の負担軽減

世界中で医療費の負担が家庭の財政を圧迫しており、特に低所得国では医療費が原因で貧困に陥る人々が多く存在します。

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現は、この問題を解決する重要な鍵です。

保険制度の普及や医療費補助プログラムの導入が急務ですが、資金不足や政策的な問題で多くの国で実現が進んでいません。

特に災害時や緊急医療が必要な場合に、患者が費用を心配せずに治療を受けられる仕組みが必要です。

感染症対策の強化

感染症は、特定の地域や国だけでなく、グローバルな問題です。

例えば、結核やマラリア、HIV/AIDSなどは依然として多くの命を脅かしています。

さらに、新型コロナウイルスのパンデミックが示したように、新興感染症への備えが十分ではない国が多い現状です。

ワクチンや抗ウイルス薬の開発・供給体制の強化、感染症の早期検出と対応のための国際的な協力が求められています。

精神的健康への支援拡大

世界保健機関(WHO)によると、うつ病や不安障害は世界的な主要な健康問題であり、特に若年層と高齢者が影響を受けやすいです。

しかし、多くの国ではメンタルヘルスの問題に対する理解や支援が不十分です。

例えば、メンタルヘルスの治療施設や専門家の数が不足しており、偏見や社会的なスティグマによって問題が隠されていることもあります。

学校や職場、地域社会での啓発活動やカウンセリングの充実が不可欠です。

持続可能な医療体制の構築

紛争地域や自然災害が多発する地域では、医療インフラが破壊され、医療サービスが提供できない状況が続いています。

また、気候変動による災害の増加は、医療体制にさらに大きな負担を与えています。

持続可能で柔軟な医療システムを構築するためには、緊急時対応のための資金とリソースの確保、地域ごとに適応した医療プランニングが必要です。

これにより、災害や危機的状況下でも医療サービスを安定して提供することが可能になります。


すべての人に健康と福祉をに取り組む企業3選

すべての人に健康と福祉をに取り組む企業を紹介します。

【SDGs目標3】すべての人に健康と福祉をに取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大企業からベンチャー
福祉問題に取り組む企業10選!就職・転職におすすめのベンチャーから大企業
児童福祉に取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大企業からベンチャー

コージンバイオ株式会社

コージンバイオ株式会社は、再生医療や免疫療法といった最先端の医療分野で欠かせない培地の開発・製造・販売を主力とする企業です。

臨床分野での病原菌検査をはじめ、食の安全を担保する食品検査にも微生物培地が使われています。

社名の「コージン」は「考える人(考人)」を表しており、バイオテクノロジーの技術を活かし、再生医療や免疫療法といった最先端の医療分野を支える重要な役割を担っています。

HP:https://kohjin-bio.jp/

コージンバイオ株式会社の事業内容や創業理由を詳しく見る

株式会社ペルセウスプロテオミク

株式会社ペルセウスプロテオミクスは、独自の抗体技術を駆使して新しい抗体医薬品の創薬を目指すバイオベンチャー企業です。

抗体医薬品は、人間の免疫機能をつかさどる抗体と呼ばれる物質を活用した医薬品で、ヒトの抗体に近い構造の抗体をつくることで、ヒトの体内でも安全に機能します。

同社は先進の抗体技術を駆使して、優れた抗体作製技術を追求し、新しい医療を力強く生み出していくことを目指しています。

HP:https://www.ppmx.com/

株式会社ペルセウスプロテオミクの事業内容や創業理由を詳しく見る

株式会社ファーメンステーション

株式会社ファーメンステーションは、「発酵で楽しい社会を!」をビジョンに掲げ、発酵技術を駆使して循環型社会の実現を目指す研究開発型スタートアップです。

規格外の農産物や食品製造の残渣など、従来捨てられてしまうような未利用資源を活用し、独自の発酵技術で新たな価値を生み出すことに取り組んでいます。

経済産業省の「J-Startup」「J-Startup Impact」に認定されているほか、数々の受賞歴があります。

HP:https://fermenstation.co.jp/

株式会社ファーメンステーションの事業内容や創業理由を詳しく見る

すべての人に健康と福祉をに対して私たちができること5選

すべての人に健康と福祉をに対して私たちができることを紹介します。

SDGsとは 生まれた背景と私たちができること

健康的な生活習慣を心がける

健康を維持するために、日々の生活習慣を見直すことは非常に重要です。

例えば、野菜や果物を中心としたバランスの良い食事を取ること、毎日30分以上の運動を取り入れることが効果的です。

また、喫煙や過度な飲酒を避けることも健康的な生活には欠かせません。

個々の意識が健康の維持・向上に繋がり、社会全体の医療負担を軽減することにも繋がります。

地域のボランティア活動に参加する

地域社会で行われている福祉や医療関連のボランティア活動に参加することは、周囲の人々を支える大きな一歩です。

例えば、地域の高齢者や障がい者を支援するプログラム、子どもたちの健康教育、清掃活動や献血キャンペーンに積極的に参加することで、地域全体の福祉環境を向上させることができます。

こうした活動を通じて、身近な社会課題への意識が高まります。

医療支援団体への寄付

世界中で医療支援を行っている団体、例えば国境なき医師団赤十字ユニセフなどに寄付をすることで、医療サービスが不足している地域や災害被災地の支援が可能になります。

わずかな金額でも、ワクチン接種や医薬品提供など、多くの命を救う具体的な成果に繋がります。

また、定期的な寄付を行うことで、団体の長期的な活動を安定的にサポートすることができます。

メンタルヘルスの啓発活動を行う

心の健康についての意識を高めることは、現代社会において特に重要です。

例えば、メンタルヘルスに関するセミナーを主催したり、職場や学校でストレスマネジメントのトレーニングを導入することが考えられます。

また、SNSを通じて正しい情報を共有し、精神的健康に対する偏見をなくす活動を行うことも有効です。

個々がメンタルヘルスについて話しやすい環境を作ることが、支援の第一歩となります。

情報を発信する

健康や福祉に関する正確な情報を広めることは、より多くの人々に行動を促す大きなきっかけになります。

例えば、健康的な生活のヒントや、福祉活動の体験談をブログやSNSで発信することで、読者に具体的な行動を促すことができます。

また、情報発信を通じて同じ志を持つ人々とつながり、コミュニティを形成することも可能です。

影響力を持つ個々人が発信する情報は、社会全体の意識を変える力を持っています。

あなたが感じているのは「SDGs疲れ」かも知れません。
レポートで書きやすいSDGsのテーマ10選!テーマの選び方や参考になる調査を解説


まとめ

「すべての人に健康と福祉を」は、私たちの生活に密接に関わる重要な目標です。

一人ひとりの意識と行動が、健康的で持続可能な社会を実現する第一歩となります。

本記事を通じて、ぜひ自分にできることから始めてみてください。

【その他のSDGsの目標を詳しく知りたい】
【SDGs目標1】貧困をなくそうとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標2】飢餓をゼロにとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標3】すべての人に健康と福祉をとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標4】質の高い教育をみんなにとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標5】ジェンダー平等を実現しようとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標6】安全な水とトイレを世界中にとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標7】エネルギーをみんなに そしてクリーンにとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標8】働きがいも経済成長もとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標9】産業と技術革新の基盤を作ろうとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標10】人や国の不平等をなくそうとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標11】住み続けられるまちづくりをとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標12】つくる責任つかう責任とは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標13】気候変動に具体的な対策をとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標14】海の豊かさを守ろうとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標15】陸の豊かさも守ろうとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標16】平和と公正をすべての人にとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説
【SDGs目標17】パートナーシップで目標を達成しようとは?背景や現状、企業の取り組み、私たちにできることを解説