ユニバーサルベーシックインカムの導入で、この世界は本当に良くなるのか?

メンバーコラム
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社会課題を解決する、世界をもっと良くしていくために必要な、お金と経済の話です。

昨今話題にあがる「ベーシックインカム」

その中でも一部の学者の方などが導入を推奨している「ユニバーサルベーシックインカム」について、解説していきます。

ユニバーサルベーシックインカムとは?

ユニバーサルベーシックインカム(UBI)とは、個人が就労中か否かに関わらず、世帯所得を保障する制度です。

「ベーシックインカム」は皆さんも聞いたことがありますよね?

社会保障制度等が議論される際に出てくる政策・制度で、簡単に言うと最低限の所得を保障する仕組みです。

ここに「ユニバーサル」つまり「普遍」という意味がつくことで、どんな人にも生活に必要なだけのお金を支給していこうという意味になります。

ユニバーサルベーシックインカムがなぜ話題になるのか??

「ベーシックインカム」については、以前から多くのメディアで話題になっていますが、UBIは、2020年に出版された山口周さん著「ビジネスの未来」で大きく取り上げられ、話題になっています。曖昧だったベーシックインカムの導入が、より具体的に議論されるようになってきたとも言えます。

このようにUBIが話題になる背景はなんでしょうか。

実は、そこに「経済格差」と「資本主義」が大きく関係しています。

まず、経済格差の拡大については、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

「人口のトップ10%グループの平均収入は、人口の下位10%グループの平均収入の9倍となり、25年前の7倍からさらに上昇した」というのは有名な話で、資本主義が成熟しているにもかかわらず、結局格差は縮まらないままというのが鮮明になっていますね。

「資本主義」の限界??

世界全体のGDP成長率は1950~1990年にかけてピークを迎え、その後減少傾向に入っています。こうした背景から、資本主義による経済成長はもう既に成熟の段階に入っており、これ以上の成長には限界があるという話題が、多く挙がり始めています。

「政府が税金を低額に抑えて、企業の売上や利益を上げることで、経済活動が活発になり、それが国民の幸せに繋がる」という価値観への疑問が生まれてきているということですね。皆さんの身の回りでも、感じ始めているのではないでしょうか。

経済格差だけであれば、生活困窮者への社会保障を手厚くすればいいわけですが、「国民全員」に「生活できるだけの」保障が必要になる意味は、ここにあるのです。

ユニバーサルベーシックインカムの仕組み

最後でも説明しますが、このようにUBIの目的は「経済格差」の是正だけでなく、資本主義の価値観から新しい価値観にシフトするためにあります。

そのために「税金を増やして、みんなに最低限の生活保障を支給しよう」というのがUBIの仕組みです。

UBIの仕組みについて、もう少し具体的に覗いてみましょう。

その仕組みを読み解く上で、切り離せないキーワードが「累進課税」です。

UBIを導入するためには、最低限のお金を国民に配当する(再配分する)お金が必要です。

つまり、税金。

今すでに生活困窮者への社会保障手当や、新型コロナウイルスによる生活手当などは、税金から支給していますよね。既に困った人に税金を支給しているのに、みんなから平等にもらった税金を「全員」に支給してしまったら、意味ないじゃないか。

既にご存知の方もいると思いますが、そこで重要なのが「累進課税制度」です。

累進課税制度とは、所得の大きさに応じて給与から徴収する税金の割合(税率)および金額を変える制度です。

今も高所得者と低所得者では徴収する税率が全く異なるわけですが、高所得者の税率を上げ、最終的には、再配分後の所得の差ができるだけない状態に近づけていこうということです。

こうして高所得者の税率を上げ、徴収できる税金を増やすことで、配分できるUBIの金額を確保していくことができます。

さらに、消費税など、税率を全体的にを上げていくことによって、UBIに十分な資金を確保できます。

ユニバーサルベーシックインカムは、本当により良い世界を作るのか?

先ほどの図のように、全国民が働いて生産した金額に比べて、もらえる金額が少なくなると、「稼ぐ」ことの意味ってなくなりませんか?

UBIで生活に必要なお金がもらえるのだから、仕事をやめてもいいっていう人が出てくるはずです。そうすると、「稼ぐ仕事」から「楽しい活動」に時間の使い方が大きく変わっていくでしょう。

これまで経済的な要因や時間的な要因によって、踏み込めなかった社会的な課題に取り組む人々も出てくると思います。

その一方で「楽しい」いや「幸福」を多くの人に届けられるような「文化的な創造活動」をする人も増えるかもしれません。

UBIには、資本主義を前提に作られていた仕組みを大きく変えてしまうかもしれません。

ユニバーサルベーシックインカムの課題とは?

(1)お金と時間の使い道

今は「稼ぐ仕事」に使われている時間や、「儲かる企業への投資」などに使われているお金が、「未踏の社会課題解決」「文化的な創造活動」に向かうかどうかは、結局やってみなとわからないでしょう。

世の中の価値観がそうした方向に進化するかどうかは、政府、投資家、企業、教育やメディアなどあらゆるセクターの努力にかかっていると思われます。

(2)結局変わらない、機能しない

目的を達成するために累進課税制度を強化しすぎると、皆が働くモチベーションを失い、最低限の生活を担保できるかどうかすら、危うくなるリスクもあります。

こうしたリスクを抑えるために、高所得者の税率増加を抑えようとすると「稼げば稼ぐほどお金をもらえる」構造は変わりませんから、資本主義への依存が変わらず続く、ということもあり得ます。

(3)経済界の支持や政府への信頼

「所得税を増やす」というのは、基本的に聞こえはよくないでしょう。

徴収するのは日本政府になるはずなので、例え政策化されたとしても、自分たちの所得がより多くとられることへの国民、主に経済界の不安・不信を取り除くのは、とても大きな課題でしょう。

 

これらの課題をクリアし、「より良い社会」に進んでいけるかどうか、経済の仕組みを見直すということに、皆さんも是非目を向けてみてはいかがでしょうか。

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