2026年11月2日、防災庁が発足しました。
政府の災害対応で初めて「司令塔」を名乗る省庁です。
SNSでは「ようやく縦割りを超える組織ができた」という期待の声がある一方で、「352人で何ができるのか」「看板の掛け替えでは」という懸念も出ました。
発足初日には国民への「備蓄緊急要請」が出され、不安の声も広がりました。
日本が抱える災害リスクの大きさは統計で確かめられます。
この記事では、防災庁の仕組みと日本の災害リスクを一次データで整理し、防災に仕事で関わる道を紹介します。
※【企業様向け】社会課題への取り組みをPRしませんか?
掲載をご希望の企業様はこちら
災害・防災の企業やキャリアの記事は、特集ページにまとめてあります。
防災庁とは
防災庁とは、2026年11月2日に発足した、政府の災害対応の司令塔となる内閣直属の省庁です。
前身は内閣府防災担当で、定員220人・予算146億円の組織でした。
防災庁設置法は2026年7月13日に成立しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発足日 | 2026年11月2日 |
| 前身 | 内閣府防災担当(定員220人・予算146億円) |
| 定員 | 352人(前身の約1.6倍) |
| 予算 | 202億円(前身から約38%増) |
| 勧告権 | 防災大臣が各省庁に資料提出・勧告・報告を求められる |
| 初日の動き | 国民に水・食料・携帯トイレの備蓄を緊急要請(最低3日分、できれば1週間分) |
最大の変化は「勧告権」です。
これまで内閣府防災担当には各省庁に対する法的な権限がなく、調整は「お願い」にとどまっていました。
防災庁の設置法では、防災大臣は関係省庁に資料の提出を求め、勧告し、報告を求めることができます。
各省庁にはこの勧告を「尊重する義務」が課されました。
SNSの反応は「司令塔への期待」と「352人で足りるのか」に割れた
防災庁の発足をめぐって、SNSやニュースのコメント欄で意見が分かれました。
期待する声では、「ようやく災害対応の司令塔ができた」「勧告権で省庁の壁を越えられるのは大きい」という反応が出ました。
首相官邸の公式Xでも「世界一の防災大国を目指す」と発信されています。
一方で、懸念も目立ちます。
「352人で何ができるのか」「組織を作っただけで終わるのでは」という指摘や、発足初日の「備蓄緊急要請」に対して「不安を煽っている」という批判も出ました。
SNS上では備蓄要請を「第三次世界大戦の前触れ」などと結びつける偽情報も広がり、内閣広報官の公式Xが「激しい見出しに煽られないよう」と注意を呼びかけています。
防災に携わる仕事の全体像は、別の記事で整理しています。
≫防災に携わる仕事がしたい!就活・転職に役立つ業界・業種を解説
なぜ新しい省庁が必要だったのか
防災庁が作られた直接の背景は、2024年1月の能登半島地震です。
この地震では、発災後の初動対応の遅れや、省庁間の連携不足が指摘されました。
能登半島地震で浮かんだ課題
2024年1月1日、石川県能登地方でM7.6・最大震度7の地震が発生しました。
2026年8月31日時点で死者は755人、うち災害関連死は527人です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 死者 | 755人(うち災害関連死527人・約70%) |
| 行方不明 | 2人 |
| 負傷者 | 1,407人 |
| 全壊 | 6,536棟 |
| 半壊 | 23,710棟 |
参考:24年の能登地震死者755人に 石川県で関連死5人認定(共同通信、2026年8月31日)、令和6年能登半島地震による被害状況等について(防災庁)
死者のうち災害関連死が約70%を占めています。
地震そのものによる直接死よりも、避難生活の長期化や医療体制の逼迫で亡くなった人が多い計算です。
半島の道路が寸断され、物資の輸送や医療チームの派遣が遅れたことが関連死の多さにつながったとされています。

内閣府防災担当には各省庁への法的な指揮権がなかったため、自衛隊・消防・警察・DMAT(災害派遣医療チーム)の投入判断が分散し、初動の遅れに対する批判が高まりました。
南海トラフと首都直下、2つの「国難級」リスク
令和8年版防災白書(2026年7月公表)は「国難級の地震・津波」を特集テーマに据えました。
2025年に公表された最新の被害想定は、以下のとおりです。
| 地震 | 死者(最大) | 全壊焼失 | 想定時点 |
|---|---|---|---|
| 南海トラフ巨大地震 | 約29.8万人 | 約235万棟(東日本大震災の約19倍) | 2025年3月 |
| 首都直下地震 | 約1.8万人 | 約40万棟(東日本大震災の約3倍) | 2025年12月 |
参考:地震災害(防災庁)
南海トラフ巨大地震の想定死者数は約29.8万人で、東日本大震災の約15倍にあたります。
これらの被害想定は「最悪のケース」ですが、防災白書はこの規模の地震が「いつ起きてもおかしくない」としています。

こうした想定を踏まえ、縦割りを超えた司令塔を常設する必要があるという議論が防災庁の設置法につながりました。
災害・防災に取り組む企業は、別の記事にまとめています。
≫災害・防災に取り組む企業10選!就職・転職におすすめのベンチャーから大手企業
海外の防災体制と比べると
日本の防災庁352人は、海外の防災機関と比べてどのくらいの規模でしょうか。
代表例として、米国のFEMA(連邦緊急事態管理庁)があります。
| 項目 | 防災庁(日本) | FEMA(米国) |
|---|---|---|
| 設立 | 2026年 | 1979年 |
| 職員数 | 352人 | 約21,000人(2026年4月時点) |
| 予算 | 202億円 | 約362億ドル(約5.4兆円、2026会計年度の予算要求) |
| 権限 | 各省庁への勧告権 | 大統領令にもとづく直接の指揮権 |
参考:FEMA FY2026 Budget(米国国土安全保障省)
FEMAは職員数で防災庁の約60倍の規模です。
ただし比較にはいくつかの条件があります。
FEMAは国防総省管轄の軍の災害支援とは別に、連邦政府として被災者支援や復旧を直接実施する機関です。
日本の防災庁は「調整・勧告」に軸を置いた組織で、実際の救助は自衛隊・消防・警察が担います。
FEMAも2025年以降に17%の人員削減を受け、GAO(米国会計検査院)から「人員削減がミッションに影響する」と指摘されています。
規模の大きさと実効性は必ずしも一致しません。
防災庁の352人が勧告権をどう使うかが、これから問われることになります。
国際機関の一覧や、それぞれの採用情報は別の記事にまとめています。
≫国際機関の一覧|主要な機関の役割・本部・日本との関わりを解説
事前防災への予算は増えている
課題は大きいものの、防災への投資は増えています。
防災庁の予算202億円は前身の146億円から38%の増額です。
さらに政府は2021年度から「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(2021〜2025年度、事業規模15兆円)を進めてきました。
国土強靱化の予算は、2021年度の約1.7兆円から2025年度には約3.7兆円へ増えています。
参考:国土強靱化(内閣官房)
防災庁の発足で、事前防災に軸足を置いた政策がどこまで進むかが今後の焦点です。
気候変動による災害の激甚化については、別の記事で詳しく解説しています。
防災に仕事で関わる4つの道
防災の課題に仕事で関わる道は、行政だけではありません。
行政、民間企業、NPO、国際機関の4つに分けて紹介します。
防災庁・自治体の防災職員
防災庁は各省庁からの出向者と独自採用で構成されます。
自治体では防災危機管理課が住民の避難計画策定や避難所運営訓練を担っています。
入口は国家公務員総合職・一般職の試験、または各自治体の採用試験です。
防災コンサルタント・防災メーカー
企業のBCP(事業継続計画)策定を支援するコンサルティング会社や、防災用品メーカーも専門人材を求めています。
土木・建築・気象・ITの専門知識を活かせる分野です。
防災に携わる企業の全体像は、別の記事で詳しく紹介しています。
≫災害・防災に取り組む企業10選!就職・転職におすすめのベンチャーから大手企業
防災系NPO・NGO
被災地での支援活動や、平常時の防災教育を行うNPOがあります。
日本では全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)や、被災地NGO恊働センターなどが災害時の調整機能を担っています。
社会福祉士やファシリテーターの資格が活きる分野です。
国際機関の防災部門
国連防災機関(UNDRR)は仙台防災枠組(2015〜2030年)の推進を担っており、各国の防災政策を支援しています。
JICAの防災分野の技術協力プロジェクトも、日本の知見を途上国に移転する仕事です。
入口は国連のYPP(ヤング・プロフェッショナル・プログラム)やJPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)の制度です。
社会課題に取り組む企業の求人は、ココキャリアでも探せます。
まとめ
防災庁は、352人の定員と勧告権を持つ日本初の防災専門省庁として2026年11月2日に発足しました。
背景には能登半島地震での課題と、南海トラフ巨大地震(想定死者最大29.8万人)・首都直下地震という2つの「国難級」リスクがあります。
米国FEMAと比べて規模は小さいものの、勧告権という新しい権限でどこまで省庁の壁を越えられるかがこれからの焦点です。
行政・民間企業・NPO・国際機関と、防災に仕事で関わる入口は複数あります。
社会課題に取り組む企業の求人は、ココキャリアでも探せます。
よくある質問
防災庁の発足について、よく検索されている疑問にお答えします。
Q. 防災庁とは何をする組織ですか?
A. 防災庁とは、2026年11月2日に発足した政府の災害対応の司令塔となる省庁です。前身は内閣府防災担当で、定員352人・予算202億円の体制で発足しました。最大の変化は「勧告権」で、防災大臣は各省庁に資料の提出を求め、勧告し、報告を求めることができます。各省庁にはこの勧告を「尊重する義務」があります。これまで災害対応では省庁間の調整に法的な権限がなく、能登半島地震で初動の遅れが指摘されたことが設置の直接のきっかけです。
Q. 防災庁はいつからできましたか?
A. 防災庁は2026年11月2日に発足しました。防災庁設置法は2026年7月13日に参議院本会議で可決・成立しています。前身の内閣府防災担当から移行する形で、定員は220人から352人(約1.6倍)、予算は146億円から202億円(約38%増)に拡充されました。初代の防災大臣には細野豪志氏が就任し、発足初日に国民への備蓄緊急要請を出しています。直接の背景は2024年1月の能登半島地震で、省庁間の連携不足による初動の遅れが指摘されたことです。
Q. 防災庁ができると何が変わりますか?
A. 最大の変化は勧告権です。これまで内閣府防災担当には各省庁に対する法的な権限がなく、調整は「お願い」にとどまっていました。防災庁の設置法では、防災大臣が関係省庁に勧告し、その報告を求める権限が明記されました。各省庁にはこの勧告を尊重する義務があります。能登半島地震では自衛隊・消防・DMAT(災害派遣医療チーム)の投入判断が分散したことが課題になりましたが、勧告権によって平常時から省庁横断の防災計画を主導できるようになります。
Q. 防災に関わる仕事にはどんなものがありますか?
A. 行政・民間・NPO・国際機関の4つの道があります。行政では防災庁や自治体の防災危機管理課が避難計画の策定や訓練を担い、国家公務員試験や自治体採用が入口です。民間では防災コンサルタントやBCP支援、防災メーカーが専門人材を求めています。NPOでは全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)などが災害時の調整を担います。国際機関では国連防災機関(UNDRR)やJICAの防災分野の技術協力があり、JPO制度が入口になります。
【企業様向け】社会課題への取り組みをPRしませんか?

この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
