日本では誰も住まなくなった家がどんどん増えています。放置された家は、さまざまな問題を抱えて、今や国が取り組む問題へと拡大しています。
本記事では、空き家問題の現状や増加している原因、私たちができることについて解説します。
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目次
空き家問題とは
空き家問題とは、居住者が何らかの理由で住まなくなり、長く放置された家によって起こる問題です。
現代では、核家族化が一般的となっているため、親世代との同居をせずに別世帯を持つ子ども世代が増えており、親世代が不在となった際に持ち家が空き家になるケースが多くなっています。
空き家の問題は、所有者だけの問題ではなく、景観や衛生上の問題、倒壊や犯罪に関わる安全面での問題などが、地域住民や管轄の行政機関にまで及んでいます。
放置された空き家は、所有者以外の者が勝手に取り壊したりすることはできないため、様々な事情が関係して問題を拡大させています。
日本の空き家問題の現状
国土交通省が公表している「空き家等の現状について」によりますと、空き家の総数は、この30年で448万戸から900万戸へと約2倍に増加しています。
総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%と毎年過去最高を更新しています。
空き家の種類については、「賃貸用又は売却用の住宅」等を除く空き家が、ここ30年で149万戸から385万戸へと2.5倍に増加しています。
これは長期に渡り誰も住んでいない、使われていない空き家が年々増加していることを示しています。
また、空き家の中で最も多いのが「一戸建(木造)」で220万戸となっています。
総務省が特に問題としてあげているのは、「賃貸用又は売却用の住宅」として資産価値がなく老朽化した空き家です。
家の維持管理ができなくなったり、設備が古くなったり、再利用するにも立地条件が適切でなかったりで売却せずそのまま放置された家は、風通しが悪く老朽化を加速させる原因となっています。
空き家は特に地方での増加が顕著であり、空き家率は和歌山県及び徳島県が21.2%と最も高い。
加えて賃貸や売却ができない空き家は、鹿児島県が13.6%と最も高く、全体的に西日本で高い傾向にあります。
また、空き家にしておく理由についてのアンケートでは、「解体費用をかけたくないから」が2番目の多い回答になっており、費用負担の問題が空き家を増やしている理由の1つとなっています。
参考:国土交通省 空き家等の現状について
総務省 令和5年住宅・土地統計調査
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空き家問題が生まれる原因
では、なぜ空き家が増加しているのでしょうか?
その主な原因について以下のポイントがあげられます。
少子高齢化
少子高齢化に伴い、子どもの数が減っていることと、団塊の世代を含めた高齢者は、今後、高齢者住宅や老人ホームなどに転居する傾向があります。
つまり、現在ある総住宅数が総世帯数より多くなっていく傾向にあるため、空き家が増える現象が起きています。
総住宅数は年々増加しており、2023年には総住宅数は過去最多の6502万戸になりました。
総世帯数は緩やかに減少していくと予想されているため、この乖離は大きくなると考えられます。
参考:国土交通省 我が国の住生活をめぐる状況
総務省 令和5年住宅・土地統計調査
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集落に人が移住しない
人口流出が多くても、人口流入がそれを上回る集落であれば、空き家問題にはなりません。
しかし、人口流出が人口流入よりも多い集落であれば、産業が衰退してしまい、限界集落になってしまいます。
近年、都会から田舎へ引っ越す方も増えています。しかし、集落の方が移住者を受け入れる制度や環境が整っていないことが多いです。
都会に住んでいるが、地方の実家を相続したという方もいます。
思い入れのある実家を解体したり売却したりはできないが、かといって地方への移住は検討していないというケースはそのまま物件が放置され空き家になってしまいます。
集落には強いコミュニティが形成されていることもあるので、入りにくい雰囲気などがあれば移住者は増えないでしょう。
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空き家問題に取り組む企業3選
空き家問題に取り組む企業を3社紹介します。
株式会社LIFULL
LIFULLは「あらゆるLIFEを、FULLに。」をコーポレートメッセージに掲げ、個人が抱える課題から、その先にある世の中の課題まで、安心と喜びをさまたげる社会課題を、事業を通して解決していくことを目指すソーシャルエンタープライズです。
現在は、グループとして世界63ヶ国でサービスを提供しており、主要サービスである不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」をはじめ、空き家の再生を軸とした「LIFULL 地方創生」、シニアの暮らしに寄り添う「LIFULL 介護」などの事業を展開しています。
空き家活用株式会社
空き家活用株式会社は、日本の空き家問題を解決するために様々な事業に取り組んでいる企業です。
防犯・防災から、街づくり、移住定住促進など、多岐にわたる政策分野、部署に関連するのが「空き家問題」です。
空き家を有効活用することでまちづくりに取り組んでいます。
リノベる株式会社
リノベる株式会社は、個人向け住宅デザイン・中古マンションのリノベーション事業や不動産再生を軸とした法人向け都市創造事業を行う企業です。
「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」というミッションを掲げ、誰もが自分らしいライフスタイルを実現できる世の中を目指し、「顧客」「社会」「産業」のあらゆる課題をテクノロジーの力で「価値」へ変える挑戦をしています。
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空き家問題に対して私たちにできること
空き家を所有している方、または空き家を再利用したい方は、できることからはじめてみましょう。
空き家を再利用して問題解決に繋げるために、私たちにできることを2つ紹介します。
空き家バンクに登録する
空き家バンクとは、空き家を貸したい人と借りたい人を、繋げるマッチングサービスです。
空き家バンクの取り組みは、各自治体が主体となって利用条件などを設定して広く募集しています。
空き家バンクに登録の方法については、自治体に申請手続きをすると物件調査が行われて担当の不動産業者を選定し登録完了となります。
空き家対策に注力している自治体は、写真の撮影や掲載について、また掲載物件の宣伝などサポートをしてくれるところも多くあります。
また、空き家を借りたい場合は、空き家専門サイトや自治体のホームページ等を参考に探すことができます。
地域活性化の施策と連携している自治体もあり、空き家の使用用途は様々です。
空き家をリフォームする
空き家をリフォームした後、シェアハウスや民泊施設などに再利用することもできます。
古くなった住宅は、手を入れないで放置しておくと資産価値は下がる一方です。また、リフォームしておいた方が賃貸人も借りやすくなります。
そのまま放置しておくと、倒壊や犯罪の温床となりやすいため危険リスクが高まります。
接道義務を満たしていない再建築不可物件でも、リフォームによって再利用が可能になります。
再建築不可物件はその名の通り再建築ができないため、取り壊しができず、不動産会社への売却も難しく放置されていることが多いです。
ただし、費用負担が発生するため、事前に空き家リフォームに長けている業者に相談することから始めると良いでしょう。
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まとめ
空き家問題に対して、国が取り組む対策や空き家に関わる法改正等を踏まえて、私たちができることから始めてみましょう。
自治体が管轄している空き家バンクや各種相談などを利用して問題解消へと進んでいきましょう。
長年放置された空き家は長らく登記がされていなかったり、実は所有者が複数人いた、再建築ができない物件だった、建物だけの所有で地主は別だったなどの問題が発生する場合があります。
2024年4月の登記法改正により相続登記が義務化になったことで、実は不動産を相続していて空き家になっているという方も今後増えていくでしょう。
専門的な知識が必要な場合もあるので、空き家に特化した不動産会社に一度相談することもおすすめです。
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株式会社ネクスウィル 代表取締役 丸岡 智幸
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地といった訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。