ガザで、14歳や15歳の少女が結婚するケースが急増しています。

国連人口基金(UNFPA)の報告では、ガザにおける児童婚の報告件数は2026年上半期で前年同期比123%増えました。

SNSでは「生き延びるための手段になっている」という受け止めと、「結婚が暴力の入口になっている」という指摘が並んでいます。

紛争前のパレスチナでは、児童婚の割合は2009年の26%から2022年の11%まで減っていました。

なぜ、減り続けていた数字が逆転したのか。

この記事では、UNFPAとUNICEFの統計でガザの児童婚の背景を確かめ、この課題に仕事で関わる道を紹介します。

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ガザの児童婚の現状とは

児童婚とは、18歳未満の子どもが結婚することです。

UNFPAが2026年9月に公表した報告によると、ガザでは紛争が始まった2023年10月以降、児童婚が急増しています。

2026年11月5日時点で確認できる主な数字をまとめます。

指標数字出典・時期
児童婚の報告件数(2026年1〜6月)前年同期比123%増UNFPA(2026年9月)
14〜16歳への婚姻許可(2025年)4か月間で400人以上UNFPA
思春期の出産率紛争前と比べ2倍以上UNFPA
新規登録妊娠のうち思春期の割合(2025年)約10%UNFPA
ジェンダーに基づく暴力の報告件数(2026年上半期)前年同期比60%増UNFPA
紛争前のパレスチナの児童婚率2009年26% → 2022年11%UNFPA

登録システムが崩壊しているため、非公式に行われた婚姻は含まれていません。

実際の件数は、この数字より多いとUNFPAは指摘しています。

パレスチナの児童婚率が2009年の26%から2022年の11%に減少し、紛争後に逆転したことを示す棒グラフ

参考:Surge in child marriage and adolescent pregnancy threatens a generation of girls in Gaza(UNFPA)/Child marriage in Gaza rises 123%(Khaleej Times、2026年9月29日)

≫人権問題とは?日本と世界の人権問題を一覧で解説


SNSの反応は「生存のため」と「暴力の入口」に割れた

報道を受けて、主に2つの見方が出ました。

ひとつは「食料も住む場所もない家族にとって、娘を嫁がせることが唯一の生存手段になっている」という理解です。

もうひとつは「結婚がかえって性暴力や支配の入口になっている」という指摘です。

UNFPAが2024年に実施した調査では、ガザで18歳前の結婚への圧力が高まっていると報告されています。

家族が婚姻を決める理由として挙がったのは、飢餓、貧困、避難、学校の閉鎖、収入の喪失、治安の悪化です。

UNFPAはこの傾向を「選択ではなく生存に追い込まれた結果」と評価しています。

参考:UNFPA: Surge in child marriage and adolescent pregnancy threatens a generation of girls in Gaza(国連)

なぜ紛争下で児童婚が増えるのか

紛争が長引くほど、児童婚は増える傾向があります。

UNICEFの2023年の報告書によると、紛争の激しさが10倍になると児童婚は7%増加し、紛争が1年続くごとに児童婚廃絶の進捗は4年分後退します。

経済の崩壊が婚姻を「取引」に変える

避難が長期化すると、家族は収入も蓄えも失います。

娘を嫁がせることで、嫁入り支度金を受け取ったり、養う人数を減らしたりする例が各地の紛争で報告されています。

ガザでは住民210万人のほぼ全員が避難を経験し、生活基盤が失われました。

学校の閉鎖が選択肢を奪う

通学できなくなると、教育を続ける見通しが立たなくなります。

「学校に戻れないなら、結婚させたほうがよい」という判断が家族の中で起きやすくなります。

治安の悪化が「保護」としての婚姻を生む

性暴力のリスクが高い環境では、「結婚させれば夫の保護下に入れる」という考えが広がります。

実際には、早すぎる結婚が家庭内暴力のリスクを高めることがデータで示されています。

UNICEFは、児童婚率が最も高い国の10か国中9か国が脆弱国家だとしています。

参考:Is an End to Child Marriage Within Reach?(UNICEF、2023年)

≫紛争とは?戦争、内戦は何が違う?現在起こっている事例をもとに解説


世界ではどのくらい児童婚があるのか

UNICEFの推計では、18歳未満で結婚した女性・少女は世界で6億5,000万人です。

毎年1,200万人の少女が児童婚をしています。

地域18歳未満で結婚した女性の割合
西・中央アフリカ33%
東・南アフリカ29%
南アジア26%
中南米・カリブ海21%
世界平均19%

過去10年で世界平均は23%から19%に下がりました。

世界の児童婚の地域別割合を示す横棒グラフ。西・中央アフリカ33%、東・南アフリカ29%、南アジア26%、中南米21%、世界平均19%

南アジアでは39%から26%に低下し、3分の1減っています。

参考:Child marriage(UNICEF DATA)

≫ジェンダーとは?10種類のジェンダー問題を例を用いてわかりやすく解説!

日本ではどうか

日本では2022年4月の民法改正で、婚姻できる年齢が男女とも18歳に統一されました。

改正前は女性が16歳、男性が18歳でした。

この改正で、未成年者の婚姻に対する親の同意規定も廃止されています。

法律上は18歳未満の結婚はできなくなりましたが、UNICEFの分類では日本は「児童婚がほぼない国」に位置づけられています。

法律が整っている社会と、紛争で法律が機能しなくなった社会では、同じ「結婚」でも意味がまったく違います。

≫子どもの貧困とは?日本の現状や原因、私たちにできることを解説


世界の児童婚は減り続けている

厳しい数字が並びましたが、世界全体で見ると児童婚は減っています。

南アジアでは過去10年で、少女が児童婚するリスクが39%から26%に下がりました。

Girls Not Bridesによると、インドだけでも過去10年で児童婚率がほぼ半減しました。

この改善には女子教育の普及、法律の整備、コミュニティへの啓発が寄与しています。

ガザの紛争前のパレスチナでも、同じ動きが起きていました。

2009年の26%から2022年の11%への低下は、教育と制度が機能していた時期の成果です。

紛争が終われば、この進歩を取り戻す土台はあります。

参考:Despite significant progress, we need to go 20 times faster to end child marriage by 2030(Girls Not Brides)

児童婚の問題に仕事で関わる4つの道

児童婚や紛争下の子どもの権利に関わる仕事には、主に4つの入口があります。

国際機関で制度と統計の側から関わる

UNICEFやUNFPA、UNRWAなどの国連機関では、児童婚のデータ収集、政策提言、現地での保護活動を行っています。

JPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)制度を使えば、修士号と実務経験2年程度で国連の正規ポストに就ける道があります。

≫ユニセフで働くには?職員の職種・採用ルート・必要なスキルをキャリア視点で解説

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NGO・NPOで現場から関わる

Plan InternationalやGirls Not Bridesのような国際NGOは、児童婚の防止プログラムを各国で運営しています。

プログラムオフィサーやフィールドコーディネーターとして、教育支援や啓発活動を直接担います。

日本国内にもNGOの日本事務所があり、広報や資金調達の職種から入ることもできます。

≫NPOの給料・年収はどのくらい?実態や仕組み、上げる方法を解説

ジェンダー分野の専門家として関わる

開発コンサルタント会社でジェンダー案件を担当する道があります。

JICAのジェンダー主流化事業や、世界銀行のジェンダー戦略に関わるプロジェクトに参画し、政策立案やモニタリングを行います。

≫ジェンダー課題のキャリアとは?D&I推進・政策・NPOなどキャリアの全体像を解説

国内で子どもの権利を守る仕事に就く

こども家庭庁や児童相談所、子どもの権利に取り組むNPOなど、日本国内にも入口があります。

児童福祉司やスクールソーシャルワーカーなど、子どもの安全を直接守る職種は、福祉系の資格から入れます。

≫児童福祉に取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大手企業からベンチャー

≫こども家庭庁とは?役割や取り組み、関わる仕事をわかりやすく解説


まとめ

ガザでは紛争が始まってから、児童婚の報告件数が123%増えました。

紛争前のパレスチナでは児童婚率が2009年の26%から2022年の11%に減っていましたが、経済の崩壊、学校の閉鎖、治安の悪化がこの進歩を逆転させました。

UNICEFによると、紛争が1年続くごとに児童婚廃絶の進捗は4年分後退します。

世界では毎年1,200万人の少女が児童婚をしていますが、過去10年で割合は23%から19%に下がっており、南アジアでは3分の1減りました。

日本では2022年に婚姻適齢が男女とも18歳に統一されています。

この課題に関わる仕事には、国際機関、NGO・NPO、ジェンダー分野の専門家、国内の子どもの権利擁護の4つの道があります。

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よくある質問

ガザの児童婚について、よく見かける疑問にお答えします。

Q. ガザで児童婚が増えているのはなぜですか?

A. 2023年10月以降の紛争で経済が崩壊し、家族が生き延びるための手段として娘の婚姻を選ぶケースが急増したためです。UNFPAの2024年の調査では、18歳前の結婚への圧力が高まっていると報告されています。背景には飢餓、避難の長期化、学校の閉鎖、収入の喪失があります。紛争前のパレスチナでは児童婚率が2009年の26%から2022年の11%に減っており、紛争がこの進歩を逆転させた形です。2026年上半期の報告件数は前年同期比で123%増えました。

Q. 児童婚は世界でどのくらい起きていますか?

A. UNICEFの推計では、18歳未満で結婚した女性・少女は世界で6億5,000万人にのぼり、毎年1,200万人の少女が新たに児童婚をしています。地域別では西・中央アフリカが33%で最も高く、東・南アフリカ29%、南アジア26%、中南米21%と続きます。世界平均は過去10年で23%から19%に下がりました。南アジアでは39%から26%に低下し、3分の1減っています。一方で児童婚率が最も高い10か国のうち9か国は紛争や政情不安を抱える脆弱国家です。

Q. 日本に児童婚はありますか?

A. 2022年4月の民法改正で婚姻できる年齢が男女とも18歳に統一され、法律上は18歳未満の結婚はできなくなりました。改正前は女性が16歳、男性が18歳で、成年年齢の18歳引き下げと同時に施行されています。未成年者の婚姻に対する親の同意規定も廃止されました。UNICEFの分類では日本は「児童婚がほぼない国」に位置づけられていますが、世界では毎年1,200万人の少女が児童婚をしており、法律が機能しなくなった紛争下ではその数字が急増しています。

Q. 児童婚の問題に仕事で関わるにはどうすればよいですか?

A. 主に4つの道があります。UNICEFやUNFPAなどの国際機関で政策提言やデータ収集に関わる道、Plan Internationalなどの国際NGOで現地の児童婚防止プログラムを運営する道、開発コンサルタント会社でJICAや世界銀行のジェンダー案件を担当する道、そしてこども家庭庁や児童相談所など日本国内で子どもの権利を守る道です。国際機関にはJPO制度を使えば修士号と実務経験2年程度で正規ポストに就ける道があります。


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