2026年11月1日、アマゾン奥地の先住民の集落で子どもの異変が相次いでいるという報道が、Yahoo!ニュース トピックスに掲載されました。
原因として指摘されているのは、違法な金の採掘で使われる水銀です。
コメント欄では「金を買う側にも責任がある」という声と「問題は現地の取り締まりだ」という声に割れました。
汚染がどこまで広がっているのかは、ブラジルの研究機関や国際機関の調査で数字として示されています。
この記事では、アマゾンの水銀汚染の実態と背景を一次データで整理し、この課題に仕事で関わる道を紹介します。
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「アマゾンの水銀汚染」とは
アマゾンの水銀汚染とは、金の採掘で使われた水銀が川に流れ込み、魚を通じて流域の住民の体に取り込まれている問題です。
2026年11月1日の朝日新聞の報道で、ブラジル北部パラ州の先住民の集落の様子が伝えられました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 報道日 | 2026年11月1日(朝日新聞) |
| 取材地 | ブラジル北部パラ州、タパジョス川中流域の先住民の集落 |
| 流域に暮らす民族 | ムンドゥルクなど |
| 汚染の原因 | 違法な小規模金採掘で使われる水銀 |
| 最新の調査 | ムンドゥルクの妊婦195人の97%が安全とされる水準を超過(2026年6月の速報) |
参考:ムンドゥルクの集落の取材(朝日新聞、Yahoo!ニュース経由)
小規模な金の採掘では、砂や泥に水銀を混ぜて金だけを取り込んだ合金を作ります。
この合金を熱すると水銀が蒸発し、金が残ります。
蒸発した水銀や、作業で漏れた水銀が大気や川に広がります。
川に入った水銀は微生物の働きで毒性の強いメチル水銀に変わり、魚の体にたまっていきます。
川の魚を主な食料にしている先住民の人々は、毎日の食事から水銀を取り込むことになります。
コメント欄の反応は「買う側の責任」と「現地の規制」に割れた
報道を受けて、ニュースのコメント欄で意見が分かれました。
一つは、金を消費する側や国際社会の責任を問う声です。
「水俣病を経験した日本こそ支援すべきだ」「知らないままでいること自体が問題を長引かせる」という指摘が出ました。
もう一つは、問題の本質は現地の規制と技術にあるという見方です。
「金はリサイクルが盛んで、消費者の買い物と直結させるのは無理がある」という声がありました。
水銀を使わない採掘法はあるものの、初期費用の高さや監視の弱さが普及を妨げているという意見も出ています。
どちらの見方にも、数字で裏づけられる部分と、数字だけでは言い切れない部分があります。
鉱物の採掘が現地の人権や環境に与える影響は、別の記事で整理しています。
≫紛争鉱物とは?背景や問題点、私たちにできることをわかりやすく解説
なぜアマゾンの子どもに水銀の影響が出ているのか
子どもに影響が出やすいのは、水銀が胎児や幼い子どもの脳の発達に特に強く作用するためです。
その背景には、世界最大の水銀の排出源である小規模金採掘の広がりがあります。
小規模金採掘は世界最大の水銀の排出源
個人や小さな集団が簡単な道具で金を掘る小規模金採掘は、80か国以上で行われています。
働く人は1,000万〜2,000万人で、世界の金の約20%を生産しています。
人の活動による水銀の大気への排出のうち、約3分の1を小規模金採掘が占めています。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 行われている国 | 80か国以上 |
| 採掘者の数 | 1,000万〜2,000万人 |
| 世界の金生産に占める割合 | 約20% |
| 人為的な水銀の大気排出に占める割合 | 約3分の1(最大の排出源) |
参考:planetGOLD第2フェーズの発表(地球環境ファシリティ)
ブラジルの採掘地は11年で約2倍に広がった
ブラジルの小規模採掘地の面積は、2010年の9万9000haから2021年の19万6000haへ広がりました。

11年で約2倍です。
採掘地の91.6%はアマゾンにあり、83%が金の採掘です。
先住民の土地にある採掘地は2021年に約2万haとなり、2010年から632%増えました。
| 項目 | 数字(2021年) |
|---|---|
| ブラジルの採掘地の面積 | 19万6000ha(2010年は9万9000ha) |
| アマゾンにある割合 | 91.6% |
| 金の採掘が占める割合 | 83% |
| 先住民の土地にある採掘地 | 約2万ha(2010年比632%増) |
| うちカヤポの土地 | 11,542ha |
| うちムンドゥルクの土地 | 4,743ha |
| うちヤノマミの土地 | 1,556ha |
参考:ブラジルの採掘地の91.6%はアマゾンに(MapBiomas)
採掘地を広げるために森が切り開かれ、土の中にあった水銀も川へ流れ出します。
アマゾンで進む森林破壊の原因と影響は、別の記事で紹介しています。
先住民の体から安全とされる水準を超える水銀が見つかっている
ブラジルの公的な研究機関であるオズワルド・クルス財団(Fiocruz)は、先住民の水銀汚染を継続して調べています。

2026年6月の速報では、タパジョス川流域に暮らすムンドゥルクの妊婦195人の97%が、安全とされる水準を超えていました。
ブラジル通信は、この水準をWHOが定めた安全な上限(毛髪1gあたり2µg)と伝えています。
生まれた赤ちゃんの約90%からも水銀が見つかりました。
| 調査 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| ムンドゥルクの妊婦(2026年6月速報) | 195人 | 97%が毛髪1gあたり2µgを超過。平均9.1µg、最高39.9µg |
| ムンドゥルクの新生児(同) | 調査中に生まれた赤ちゃん | 約90%が汚染。平均5.8µg、最高30.8µg |
| ヤノマミ(2022年10月採取) | 9集落の毛髪287検体 | 84%が2µgを超過、10.8%が6µgを超過 |
参考:ヤノマミの9集落の水銀汚染(Fiotec/Fiocruz)
ヤノマミの調査では、水銀の値が高い人ほど、認知機能の障害や神経の障害が多く見られました。
採掘地に近い集落ほど、水銀の値が高い傾向も出ています。
WHOは、自給自足で魚をとって暮らす一部の集団で、子ども1,000人あたり1.5〜17人に認知への影響が見られたとしています。
貧困や治安の問題も含めたブラジルの社会課題は、別の記事でまとめています。
≫ブラジルの社会問題は何がある?貧困問題や高い犯罪率、環境問題などを解説
水俣条約は2013年に熊本で採択された
水銀を国際的に規制する条約には、水俣病の名前が付けられています。
2013年10月に熊本の外交会議で採択された「水銀に関する水俣条約」は、2017年8月に発効しました。
2026年11月2日時点で、締約国は154です。
条約は、小規模金採掘が相当量あると判断した締約国に、水銀の使用を減らすための国家行動計画を出すよう求めています。
事務局の一覧に載っている国家行動計画は37か国分で、ブラジルの計画は載っていません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 採択 | 2013年10月(熊本) |
| 発効 | 2017年8月 |
| 締約国 | 154(2026年11月2日時点) |
| 日本 | 2016年2月に受諾 |
| ブラジル | 2017年8月に批准 |
| 小規模金採掘の国家行動計画 | 37か国が提出(ブラジルは一覧になし) |
参考:Parties and Signatories(水俣条約事務局)
参考:National Action Plans(水俣条約事務局)
日本は、小規模金採掘に使う目的での水銀の輸出を全面的に禁止しています。
国内でも2015年6月に水銀汚染防止法が成立し、水銀を使った製品の製造などを規制しています。
水俣病をはじめとする日本の公害の歴史と、今の状況は別の記事で整理しています。
≫典型7公害とは?7つの種類や最新の公害状況、対策をわかりやすく解説
金を買う側とのつながりはどこまで言えるのか
金の需要の内訳を見ると、汚染の原因を個人の宝飾品だけに求めるのは難しい一方、金の出どころを選ぶ仕組みもあります。
2025年の世界の金の需要は5,002.3トンで、最も多いのは投資の2,175.3トンでした。
宝飾品は1,638.0トンで、前年から19%減っています。
| 用途 | 2025年の需要 | 前年比 |
|---|---|---|
| 投資(地金・金貨・ETFなど) | 2,175.3トン | 84%増 |
| 宝飾品 | 1,638.0トン | 19%減 |
| 中央銀行など | 863.3トン | 21%減 |
| 電子部品などの技術用途 | 322.8トン | 1%減 |
| 合計 | 5,002.3トン | 1%増 |
参考:Gold Demand Trends Full Year 2025(ワールド・ゴールド・カウンシル)
供給側では、鉱山から新しく掘り出された金が3,671.6トン、リサイクルされた金が1,404.3トンでした。
供給のうち約28%はリサイクルの金で、「金はリサイクルが盛ん」という指摘は数字の上でも当たっています。
ただし残りの約7割は新しく掘られた金で、その一部を小規模金採掘が担っています。
個人の買い物と現地の汚染を一対一で結びつけることはできません。
一方で、採掘の方法を条件に金を認証する仕組みがあります。
国際認証「フェアマインド」は、有害な化学物質を責任をもって使い、段階的に減らすことを条件に小規模採掘の金を認証しています。
認証された金には1kgあたり4,000ドルの上乗せ価格が付き、採掘地の社会や経済の発展に使われます。
有害な化学物質を使わず、自然の回復にも取り組んだ金は「エコロジカルゴールド」として、1kgあたり6,000ドルの上乗せになります。
参考:The Fairmined Standard(Alliance for Responsible Mining)
認証された金を使うブランドは、別の記事で紹介しています。
≫エシカルジュエリーとは?その背景やおすすめのブランドを紹介!
違法採掘が大きく減った地域もある
取り締まりによって、違法採掘の面積が大きく減った地域もあります。
ブラジル政府は2023年1月、ヤノマミの土地での健康被害を受けて緊急事態への対応と違法採掘の取り締まりを大統領令で定めました。
その後の作戦で、ヤノマミの土地の違法採掘の面積は、2026年2月までに98.9%減ったと政府の現地拠点が報告しています。
参考:ヤノマミの土地からの違法採掘者の退去の進展(ブラジル政府通信)
水銀を使わない採掘を広げる国際プログラム「planetGOLD」も、28か国で活動しています。
国連環境計画(UNEP)が主導し、採掘者に水銀の使用を減らす技術や、正規の採掘に移るための支援を届けています。
国連環境計画で働く方法は、別の記事で詳しく紹介しています。
≫UNEP(国連環境計画)で働くには?職員の職種・採用ルート・必要なスキルをキャリア視点で解説
水銀汚染の問題に仕事で関わる4つの道
水銀汚染の問題に関わる仕事は、国際機関、国際協力、企業、NGOの4つに分けられます。
国際機関の職員
国連環境計画は、水俣条約の事務局や、水銀を使わない採掘を広げるplanetGOLDを担っています。
WHOは、水銀が健康に与える影響の調査や、各国の保健政策の支援を行っています。
入口は、環境や公衆衛生の修士号と実務経験で、若手は外務省のJPO派遣制度から入るルートがあります。
≫WHOで働くには?職員の職種・採用ルート・必要なスキルをキャリア視点で解説
JICAなどの国際協力
途上国の政府と一緒に、環境の監視の仕組みづくりや、住民の健康調査を支える仕事です。
入口は、JICAの職員採用のほか、JICA海外協力隊や開発コンサルタントの専門家として関わる方法です。
≫JICAで働くには?職種・採用ルート・必要なスキルをキャリア視点で解説
環境コンサルタント
水や土の汚染を調べ、対策を企業や行政に提案する仕事です。
政府の開発援助の案件で、途上国の水銀汚染の調査に携わることもあります。
入口は、環境工学や化学を学んだうえでの就職で、環境計量士などの資格が活きます。
≫環境コンサルタントとは?仕事内容・なるには・必要な資格と年収をキャリア視点で解説
環境NGOの職員
現地の住民や先住民の団体と連携し、汚染の記録や政策提言を行う仕事です。
責任ある採掘を認証する団体や、森林保護の団体が活動しています。
入口は、インターンやボランティアから職員になるルートが多く、語学力と現場経験が評価されます。
≫環境NGO職員になるには?新卒・転職・インターンからの入り方と主な団体を紹介
まとめ
アマゾンの先住民の子どもに起きている異変の背景には、違法な金採掘で使われる水銀があります。
ムンドゥルクの妊婦の97%から安全とされる水準を超える水銀が見つかり、赤ちゃんにも汚染が及んでいます。
ブラジルの採掘地は11年で約2倍に広がり、先住民の土地の採掘地は632%増えました。
一方で、取り締まりで違法採掘の面積が98.9%減った地域や、水銀を使わない採掘を広げる国際的な取り組みもあります。
国際機関、国際協力、環境コンサルタント、環境NGOなど、この課題に関わる仕事の入口は複数あります。
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よくある質問
アマゾンの水銀汚染について、よく検索されている疑問にお答えします。
Q. アマゾンの先住民の子どもに何が起きているのですか?
A. ブラジルのアマゾンでは、違法な金採掘で使われた水銀が川の魚にたまり、魚を食べる先住民の体に取り込まれています。2026年6月の速報では、タパジョス川流域に暮らすムンドゥルクの妊婦195人の97%が、安全とされる毛髪1gあたり2µgを超えていました。生まれた赤ちゃんの約90%からも水銀が見つかっています。水銀は胎児や幼い子どもの脳の発達に強く作用するため、子どもへの影響が心配されています。ヤノマミの調査でも、水銀の値が高い人ほど認知機能の障害が多く見られました。
Q. なぜ金の採掘で水銀が使われるのですか?
A. 水銀は金とよく混ざる性質があり、砂や泥から金だけを取り出すのに使われてきました。金と水銀の合金を熱すると水銀が蒸発し、金だけが残ります。道具が簡単で費用も安いため、個人や小さな集団が行う小規模金採掘で広く使われています。小規模金採掘は80か国以上で行われ、人の活動による水銀の大気排出の約3分の1を占める最大の排出源です。水銀を減らす方法もあり、国際プログラムのplanetGOLDが28か国で技術の普及を支援しています。
Q. 水銀に関する水俣条約とは何ですか?
A. 水俣病の経験を教訓に、水銀の採掘から使用、廃棄までを国際的に規制する条約です。2013年に熊本で採択され、2017年8月に発効しました。2026年11月2日時点で締約国は154です。小規模金採掘が相当量ある国には、水銀の使用を減らすための国家行動計画を出す義務があり、37か国が提出しています。日本は2016年に受諾し、小規模金採掘に使う目的での水銀の輸出を全面的に禁止しています。ブラジルは2017年に批准しましたが、事務局の一覧にブラジルの計画はありません。
Q. 水銀汚染の問題に関わる仕事にはどんなものがありますか?
A. 国際機関では、国連環境計画が水俣条約の事務局や水銀を使わない採掘の支援を担い、WHOが健康影響の調査を行っています。JICAなどの国際協力では、途上国の環境の監視や住民の健康調査を支えます。環境コンサルタントは水や土の汚染を調べて対策を提案し、開発援助の案件に関わることもあります。環境NGOでは、現地の団体と連携した汚染の記録や政策提言が主な仕事です。どの道でも、語学力と現場での経験が評価されます。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
