近年、SDGs(持続可能な開発目標)という言葉を耳にする機会が増えてきました。

しかし、初めてSDGsに関心を持った人にとっては、その内容や具体的な取り組みがわかりにくいと感じることもあるでしょう。

特に、17の目標のうち最後に位置する「パートナーシップで目標を達成しよう」は、他の目標と比べて抽象的で理解しづらいかもしれません。

この記事では、SDGsの基本から「パートナーシップで目標を達成しよう」の重要性、そして私たちができる具体的な行動までをわかりやすく解説します。

パートナーシップで目標を達成しようとは

「パートナーシップで目標を達成しよう」は、SDGsの17番目の目標であり、他の16の目標を実現するための基盤となる重要なコンセプトです。

この目標は、政府、企業、NGO、市民社会、そして個人が協力し合い、持続可能な開発を推進するためのパートナーシップを強化することを目指しています。

単独では解決できない地球規模の課題に対し、多様な主体が連携することで解決策を見出すことが求められています。

SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標です。

貧困、飢餓、健康、教育、気候変動、ジェンダー平等など、17の目標と169のターゲットから構成されています。

これらの目標は、地球上の誰一人として取り残さない(Leave No One Behind)ことを理念として掲げ、2030年までの達成を目指しています。


パートナーシップで目標を達成しようを構成するターゲット

「パートナーシップで目標を達成しよう」には、以下のターゲットが設定されています。

17.1 課税及び徴税能力の向上のため、開発途上国への国際的な支援なども通じて、国内資源の動員を強化する。
17.2 先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含むODAに係るコミットメントを完全に実施する。ODA供与国が、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する。
17.3 複数の財源から、開発途上国のための追加的資金源を動員する。
17.4 必要に応じた負債による資金調達、債務救済及び債務再編の促進を目的とした協調的な政策により、開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、重債務貧困国(HIPC)の対外債務への対応により債務リスクを軽減する。
17.5 後発開発途上国のための投資促進枠組みを導入及び実施する。
17.6 科学技術イノベーション(STI)及びこれらへのアクセスに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を向上させる。また、国連レベルをはじめとする既存のメカニズム間の調整改善や、全世界的な技術促進メカニズムなどを通じて、相互に合意した条件において知識共有を進める。
17.7 開発途上国に対し、譲許的・特恵的条件などの相互に合意した有利な条件の下で、環境に配慮した技術の開発、移転、普及及び拡散を促進する。
17.8 2017年までに、後発開発途上国のための技術バンク及び科学技術イノベーション能力構築メカニズムを完全運用させ、情報通信技術(ICT)をはじめとする実現技術の利用を強化する。
17.9 全ての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、南北協力、南南協力及び三角協力などを通じて、開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する。
17.1 ドーハ・ラウンド(DDA)交渉の受諾を含むWTOの下での普遍的でルールに基づいた、差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する。
17.11 開発途上国による輸出を大幅に増加させ、特に2020年までに世界の輸出に占める後発開発途上国のシェアを倍増させる。
17.12 後発開発途上国からの輸入に対する特恵的な原産地規則が透明で簡略的かつ市場アクセスの円滑化に寄与するものとなるようにすることを含む世界貿易機関(WTO)の決定に矛盾しない形で、全ての後発開発途上国に対し、永続的な無税・無枠の市場アクセスを適時実施する。
17.13 政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を促進する。
17.14 持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する。
17.15 貧困撲滅と持続可能な開発のための政策の確立・実施にあたっては、各国の政策空間及びリーダーシップを尊重する。
17.16 全ての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する。
17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。
17.18 2020年までに、後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる。
17.19 2030年までに、持続可能な開発の進捗状況を測るGDP以外の尺度を開発する既存の取組を更に前進させ、開発途上国における統計に関する能力構築を支援する。

パートナーシップで目標を達成しようが生まれた背景

「パートナーシップで目標を達成しよう」が生まれた背景には、地球規模の課題が複雑化し、単独の国や組織では解決が難しくなっている現状があります。

気候変動、貧困、感染症などは、国境を越えた影響を及ぼすため、国際的な協力が不可欠です。

また、持続可能な開発を実現するためには、経済、社会、環境のバランスを考慮したアプローチが必要であり、多様な主体の参加が求められています。


パートナーシップで目標を達成しようの現状

パートナーシップで目標を達成しようの現状を紹介します。

国際的な資金調達の進展と課題

現在、先進国から開発途上国への政府開発援助(ODA)は増加傾向にありますが、目標であるGNIの0.7%に達している国はごく一部です。

特に後発開発途上国(LDCs)への支援は不十分で、資金不足が深刻です。

また、民間セクターからの投資も増えているものの、持続可能な開発に特化した資金調達はまだ限定的です。

資金の透明性や効率的な活用も課題となっています。

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技術移転とイノベーションの現状

技術移転に関しては、先進国と開発途上国の間で格差が大きいままです。

特に気候変動対策や再生可能エネルギー技術の普及は進んでいますが、開発途上国への技術移転は遅れています。

一方、デジタル技術やAIを活用したイノベーションが進んでおり、一部の国では持続可能な開発に貢献しています。

しかし、技術アクセスの不平等が依然として大きな障壁となっています。

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多様な主体の参加とパートナーシップの広がり

政府、企業、NGO、市民社会などが連携するパートナーシップは増加しており、特に気候変動や貧困削減の分野で成果を上げています。

しかし、参加の不平等や情報格差が残っており、開発途上国や脆弱な立場にある人々の声が反映されにくい状況です。

また、パートナーシップの持続可能性や効果測定が不十分なケースも見られます。

より包括的で透明性の高い協力体制が求められています。

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パートナーシップで目標を達成しようの課題

「パートナーシップで目標を達成しよう」を実現するためには、以下のような課題が存在します。

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資金不足と分配の不平等

持続可能な開発を推進するための資金は依然として不足しており、特に後発開発途上国(LDCs)への支援が不十分です。

また、資金の分配に偏りがあり、特定の地域や分野に集中する傾向があります。

民間セクターからの投資も増えていますが、持続可能な開発に特化した資金調達はまだ限定的です。

資金の透明性や効率的な活用も大きな課題となっています。

技術格差とアクセスの不平等

先進国と開発途上国の間で技術格差が大きく、特に気候変動対策や再生可能エネルギー技術の移転が遅れています。

デジタル技術やAIの活用が進む一方で、開発途上国への技術アクセスが不十分です。

また、技術移転のコストや知的財権の問題も障壁となっています。

技術革新の恩恵をすべての国が平等に享受できるよう、国際的な協力が求められています。

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パートナーシップの持続可能性と効果測定

多様な主体が参加するパートナーシップは増えていますが、その持続可能性が課題です。

一部のプロジェクトは短期間で終了し、長期的な成果に結びついていないケースも見られます。

また、パートナーシップの効果を測定するための指標やデータが不足しており、透明性の向上が求められています。

参加の不平等や情報格差も残っており、より包括的な協力体制の構築が重要です。


パートナーシップで目標を達成しように取り組む企業3選

パートナーシップで目標を達成しように取り組む企業を紹介します。

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株式会社 and Capital

株式会社 and Capitalは、アフリカのアーリーおよびグロースステージのスタートアップ企業に対するインパクト投資を専門とする企業です。

同社は、アフリカ発のスタートアップや日本企業のアフリカ市場進出を支援する直接投資を行うほか、アフリカにおけるインパクトファンドへの出資も行っています。

主な投資テーマとして、ヘルスケア、食料安全保障(栄養・農業分野)、再生可能エネルギー、職業訓練、女性活躍など、持続可能な成長と社会的課題解決に貢献する分野を掲げています。

HP:https://andcapital.jp/

株式会社 and Capitalの事業内容や創業理由を詳しく見る

アンドパブリック株式会社

アンドパブリック株式会社(&PUBLIC)は、社会的インパクトの最大化を目的に活動するガブテックカンパニーです。

代表取締役を桑原憂貴氏と長友まさ美氏が務め、本社を神奈川県中郡二宮町に置いています。

同社は、行政機関や民間企業の社会的課題解決をサポートする新しいアプローチを追求し、社会の仕組みをアップデートすることを目指しています。

HP:https://andpublic.jp/

アンドパブリック株式会社の事業内容や創業理由を詳しく見る

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社は、1998年に設立された独立系のベンチャーキャピタルです。

設立以来、地域経済の発展や新興企業の成長を支援することを目的に、投資活動を通じて日本全体の産業振興に寄与しています。

同社は、地域密着型の投資活動を展開し、地方創生を重要なテーマとしています。

特に、地方の中小企業やスタートアップ企業が直面する資金調達の課題を解決し、地域経済の活性化に貢献することを目指しています。

HP:https://www.fvc.co.jp/

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社の事業内容や創業理由を詳しく見る

パートナーシップで目標を達成しように対して私たちができること5選

「パートナーシップで目標を達成しよう」は、私たち一人ひとりの行動が重要です。

以下に、具体的にできることを5つ紹介します。

SDGsとは 生まれた背景と私たちができること

情報を共有し、意識を高める

まずは、SDGsや「パートナーシップで目標を達成しよう」の重要性について学び、周りの人と情報を共有することが大切です。

SNSやブログを使って発信したり、地域のイベントや勉強会に参加したりすることで、より多くの人にSDGsの意義を伝えることができます。

特に、開発途上国が直面する課題や国際協力の必要性について理解を深め、広めることが重要です。

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持続可能な消費を心がける

私たちの消費行動は、世界の経済や環境に大きな影響を与えます。

地元の商品を選ぶ、フェアトレード製品を購入する、プラスチックの使用を減らすなど、持続可能な消費を心がけることで、開発途上国の経済を支援し、環境負荷を軽減できます。

また、企業がSDGsに取り組んでいるかどうかをチェックし、そうした企業を応援することも効果的です。

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地域活動やボランティアに参加する

地域のNGOや市民団体が主催するイベントやプロジェクトに参加することで、地域レベルでのパートナーシップを強化できます。

例えば、環境保護活動や教育支援プロジェクトに参加したり、国際協力のボランティアに参加したりすることで、直接的に持続可能な開発に貢献できます。

また、地域の課題解決に向けた取り組みに参加することで、グローバルな目標とローカルな行動を結びつけることができます。

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政策への参加と声を届ける

地方自治体や政府が行うSDGs関連の政策に意見を反映させることも重要です。

パブリックコメントや住民投票に参加し、持続可能な開発を推進する政策を支持しましょう。

また、政治家や行政に対して、SDGsの達成に向けた具体的な取り組みを求める声を届けることも効果的です。

市民の声が政策に反映されることで、より効果的なパートナーシップが構築されます。

寄付や投資を通じて支援する

開発途上国や国際的なプロジェクトを支援するための寄付や投資も、私たちにできる重要な行動です。

例えば、国際NGOや国連機関への寄付、マイクロファイナンスを通じた小規模事業の支援、社会的責任投資(SRI)などがあります。

これらの行動は、直接的に資金不足を解消し、持続可能な開発を推進するためのリソースを提供することにつながります。


まとめ

「パートナーシップで目標を達成しよう」は、SDGsの最後の目標でありながら、他の16の目標を実現するための鍵となる重要なコンセプトです。

地球規模の課題を解決するためには、政府、企業、NGO、市民社会、そして個人が協力し合うことが不可欠です。

私たち一人ひとりができることを実践し、持続可能な未来を築いていくことが求められています。

まずは身近なことから始めて、SDGsの達成に向けたパートナーシップに参加してみませんか?

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