SDGsの目標地点である2030年にかけて重要性が高まっている「ソーシャルキャピタル」。
目に見えない概念なので、どんなものか想像しづらい方も多いのではないでしょうか。
例を交えながら、できるだけわかりやすく解説します。
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目次
ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは
ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは、ルールや価値の共有ができている「人間関係」や「ネットワーク」を指します。
ソーシャルキャピタルが豊かな環境では、人々が協力関係を容易に築くことができるため、より高い成果を出したり、成果を持続させたりすることが可能です。
厚生労働省によると、ソーシャルキャピタル(social capital/社会関係資本)は、以下のように定義されます。
人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴
出典:厚生労働省資料7 ソーシャル・キャピタル
「資本」といえば、今まで注目されてきたのは以下の2つでした。
1.お金・家・家電・飲食物などの「物的資本」
2.価値あるモノを生産する人としての「人的資本」
昨今では、これらに並ぶ重要な資産として、ソーシャルキャピタルが注目を集めています。
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ソーシャルキャピタルの具体的なイメージ
分かりやすい例として、開発途上国に井戸を作るボランティアを考えてみましょう。
必要な資材(物的資本)と技術者(人的資本)を用意すれば、たしかに井戸は作れます。
ソーシャルキャピタルに乏しい場合
住民や自治体との信頼関係(ソーシャルキャピタル)がなければ、井戸づくり自体を迷惑がられて、追っ払われるかもしれません。
また、地域社会内部の協力関係(ソーシャルキャピタル)がなければ、井戸の奪い合いが起きたり、荒らされたりするかもしれません。
ソーシャルキャピタルが豊かな場合
住民や自治体との信頼関係があれば、井戸の必要性やメリットの話に耳を傾けて、井戸づくりを支援してくれるでしょう。
さらに地域社会が団結していれば、井戸をみんなで共有したり、技術者が去った後も協力して井戸を維持管理したりすることが可能です。
このように、ソーシャルキャピタルが豊かであるほど、より良い成果が期待できるのです。
企業がソーシャルキャピタルに取り組むメリット
ソーシャルキャピタルに取り組むメリットを3つ紹介します。
- ストレスがたまりにくい
- 離職率の低下
- 企業のイメージアップ
ストレスがたまりにくい
ソーシャルキャピタルが豊かな場合、人間関係もよくストレスのたまりにくい職場となります。
実際に、ストレスの3割は人間関係にあるというデータもあります。
ストレスは、さまざまな病の原因でもあるため、より健康に働くことができるでしょう。
離職率の低下
ソーシャルキャピタルは、離職率の低下にもつながります。
人々が協力関係を容易に築くことができるため、より高い成果を出したり、成果を持続させたりするため、退職したいと考える人も減るでしょう。
企業のイメージアップ
ソーシャルキャピタルが豊かな企業は、企業イメージもよくなるでしょう。
社内だけではなく、社外にもソーシャルキャピタルは見えるものです。
取引先や就活生からも企業の評価を得られるでしょう。
ソーシャルキャピタルへの取り組みには、積極的に外部の研修を取り入れることも有効でしょう。
ソーシャルキャピタルの具体例
ソーシャルキャピタルの具体例を解説します。
- 地域社会
- 企業活動・ビジネス
地域社会
地域社会におけるソーシャルキャピタルとは、「地域内外の人々や企業、自治体同士のつながり」を指します。
このような繋¥つながりが強い地域では、市民活動が活性化され、子育て支援や一人暮らし世帯の見守りなど、持続可能なコミュニティの構築が促進されます。
都市に比べて使える資源や手段が限られている地域社会では、ソーシャルキャピタルに基づいた共助が、その地域独自の課題を解決する上で非常に重要なのです。
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企業活動・ビジネス
企業活動やビジネスにおけるソーシャルキャピタルは、「従業員同士の関係性」「顧客や関係企業とのつながり」などを指します。
従業員同士の関係が良好になれば、パフォーマンスの向上や離職率の低下が見込まれます。
また、顧客や関係企業と良好な関係があれば、事業拡大も円滑に進みやすくなります。
ソーシャルキャピタルは、どんな活動にも関わる概念なのです。
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ソーシャルキャピタルを形成する仕事
国際協力・ソーシャルセクター
国際協力やソーシャルセクターでは、多くの活動がソーシャルキャピタルの形成に紐づいています。アフリカと日本を繋ぐ活動という意味では、ナイケルさんこと、内藤獅友さんや、株式会社Darajapan角田弥央さんは代表例で、アフリカと日本にまたがった事業により、つながりが生まれています。
ソーシャルセクターでもNPO法人カタリバなどは世代を超えた若者同士を繋ぐ「ナナメの関係」をもたらすことを強みとしているなど、地域社会や教育にソーシャルキャピタルを増やしていく活動が目立ちます。
COCOCOLOREARTHでは、ソーシャルセクターの方々のインタビュー記事をたくさん掲載しています。
スタートアップ
21世紀における課題が見えてきてから創業されたという点で、スタートアップがビジネスを通してソーシャルキャピタルというテーマに挑戦するチャンスも増えています。
ソーシャルキャピタルの可視化をコンセプトにしているスタートアップです。「人と組織の新しい“つながり“をつくる」ことをビジョンに掲げ、応援したい企業と、それに応えたい人をつなぐコラボレーションSNS「Spready」など複数サービスを運営しています。
株式会社ガイアックス 「Empowering the people to connect ~人と人をつなげる」ことをミッションとして、ソーシャルメディアとシェアリングエコノミー関連の事業を展開しているスタートアップです。
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最後に
ソーシャルキャピタルは、個人や組織が持つ信頼関係やネットワークを意味し、その重要性は多方面にわたって認識されています。
ソーシャルキャピタルが豊かな場合、企業や地域社会はストレスの軽減や離職率の低下、さらには企業のイメージアップなど、さまざまなメリットを享受できます。
また、国際協力やスタートアップなどの分野では、ソーシャルキャピタルの形成が成功の鍵を握ることも多いです。
ソーシャルキャピタルを意識し、その形成に努めることで、より良い社会の実現に貢献できるのです。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。