厚生労働省の発表によると、2025年10月末時点で日本国内で働く外国人労働者は257万1,037人となり、過去最多を更新しました。
職場や求人票では、「多様性」「ダイバーシティ」「D&I」「DEI」という言葉が並んでいます。
それぞれの意味の違いがよくわからないまま、読み流してしまった人もいるかもしれません。
多様性という言葉が指す範囲、D&IやDEIとの違い、そして生きものの豊かさを指す生物多様性との違いを、この記事で一つずつ解説します。
労働力人口の減少や外国人労働者の増加など、多様性が重視されるようになった背景の数字も紹介します。
女性の参画状況、無意識のバイアスといった職場の課題、そして多様性に関わる仕事まで順に取り上げます。
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多様性やジェンダーに関する社会課題は、以下のページにまとめています。
多様性(ダイバーシティ)とは
多様性(ダイバーシティ)とは、性別や年齢、国籍、価値観など、人による違いが存在する状態を指す言葉です。
その違いは、見た目でわかるものだけにとどまりません。
表層的な多様性と深層的な多様性
人事や組織開発の分野では、性別や年齢のように外から見てわかりやすい違いを「表層的な多様性」と呼びます。
価値観や働き方のように、外から見えにくい違いは「深層的な多様性」と呼ばれます。
経済産業省は、ダイバーシティ経営を次のように定義しています。
「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」です。
ここでいう「多様な人材」には、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観などの多様性が含まれます。
キャリアや経験、働き方などの多様性も含まれます。
表層と深層のどちらか一方ではなく、両方を含んでいるのが、この言葉の広がりです。
性的指向や性自認も、外からは見えにくい多様性の一つです。
自分の性のあり方に迷いや戸惑いを感じている人については、以下の記事でも取り上げています。
≫クエスチョニングとは?意味やクィアとの違い、当事者との向き合い方を解説
マイノリティとの違い
多様性と近い場面で使われる言葉に「マイノリティ」があります。
マイノリティとは、ある社会の多数を占める人たちとは違う属性を持った個人や、その集団を指す言葉です。
多様性が「人による違いそのもの」を指す言葉であるのに対し、マイノリティは、その違いによって少数派や弱い立場に置かれている人を指す言葉です。
マイノリティとマジョリティの違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
≫マイノリティとは?マジョリティとの違いや使い方、5つの具体例を簡単に解説
生物多様性(biodiversity)との違い
「多様性」という言葉は、生きものの豊かさを指す「生物多様性(biodiversity)」と混同されることがあります。
環境省によると、生物多様性とは、すべての生きものが持つ多様な違いやそれらの関わりを指す言葉です。
遺伝子の多様性、種の多様性、生態系の多様性という3つのレベルで捉えられる概念とされています。
この記事で扱う多様性は、生きもの全体の豊かさではなく、性別や国籍、価値観といった人と人との違いを指す、人間社会における多様性です。
同じ「多様性」という言葉でも、対象が生きものか人かで指す内容が変わるため、文脈に応じて区別する必要があります。
D&I・DEIとの関係と違い
多様性と一緒に語られる言葉に、D&IやDEIがあります。
どちらも多様性とセットで使われますが、指している範囲は多様性より一歩先にあります。
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは
ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは、多様な人材を組織に迎え入れる「ダイバーシティ」の考え方です。
これに、迎え入れた人材がそれぞれの力を発揮できるよう組織として受け入れる「インクルージョン」を組み合わせた考え方でもあります。
多様性を認めるだけでなく、認めた違いを組織の力に変えていく発想が、D&Iの中心にあります。
D&Iの5つの分類や具体的なメリット、企業の取り組み事例については、以下の記事で詳しく解説しています。
≫ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは?5つの分類やメリット、取り組み事例を解説
DEIで加わる「エクイティ」
D&Iに「エクイティ(公平性)」を加えた考え方が、DEIです。
エクイティとは、一人ひとりが置かれた状況の違いに応じて、必要な機会や支援を届け、結果として公平な状態を目指す考え方です。
多様性が「違いがあること」そのものを指すのに対し、D&IやDEIは、その違いをどう受け入れ、どう生かすかという組織側の姿勢を表す言葉です。
4つの言葉の関係は、次のとおりです。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ダイバーシティ(Diversity) | 性別・国籍・価値観など、人による違いがあること |
| インクルージョン(Inclusion) | 違いを持つ人がそれぞれの力を発揮できるよう、組織として受け入れること |
| エクイティ(Equity) | 一人ひとりの状況の違いに応じて、必要な機会や支援を届けること |
| DEI | ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンを組み合わせた考え方 |
多様性が重視される背景
多様性は、単なる理念としてではなく、日本社会が直面する複数の変化と結びついて語られています。
労働力人口の減少
日本の働き手の数は、これから減っていきます。
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の推計では、労働参加が今のまま推移した場合、労働力人口は2040年に6,002万人まで減る見通しです。
2022年の6,902万人から、900万人少ない水準です。
労働参加が進むシナリオでも、2040年の労働力人口は6,791万人にとどまります。
参考:2023年度版労働力需給の推計(速報)(労働政策研究・研修機構)
働き手の数そのものが減っていく中で、これまで働く機会が十分になかった人たちの力をどう生かすかが、企業にとって重要な課題になっています。
少子高齢化の背景については、以下の記事で解説しています。
≫【2026年最新】少子高齢化とは?現状・原因・問題点と若者にできることを解説
多様化する市場とグローバル化
経済産業省は、女性をはじめとする多様な人材の活躍について、企業が少子高齢化の中で人材を確保するために重要だとしています。
多様化する市場ニーズやリスクへの対応力を高め、競争力を強化するうえでも欠かせないとしています。
海外に商品やサービスを届けたり、海外から人材を迎えたりする場面が増えるほど、多様な価値観や商習慣を理解できる組織かどうかが問われます。
イノベーション創出への期待
多様な人材がその特性を生かして生き生きと働ける環境が整うと、自由な発想が生まれ、生産性の向上や競争力の強化につながると経済産業省は説明しています。
異なる背景を持つ人材が意見を出し合うことで、一つの見方では気づきにくい発想が生まれやすくなる、という考え方です。
多様性をめぐる日本の現状
多様性がどこまで広がっているかは、女性の働き方と、日本で働く外国人の数によく表れています。
女性の参画状況
内閣府男女共同参画局の令和8年版男女共同参画白書によると、2025年時点の女性の就業率は75.3%、男性は84.6%でした。
共働き世帯は1,254万世帯で、妻が64歳以下の世帯のうち、専業主婦世帯の358万世帯を大きく上回っています。
厚生労働省の「令和6年度雇用均等基本調査」によると、課長相当職に占める女性の割合は12.3%(令和5年度12.0%)でした。
部長相当職に占める女性の割合は8.7%(令和5年度7.9%)でした。
厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者の賃金は女性が28万5,900円、男性が37万3,400円でした。
男性を100とした場合の男女間賃金格差は、76.6です。
参考:令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況(厚生労働省)
身近なテーマでジェンダー問題をさらに調べたい方には、以下の記事も参考になります。
≫レポートで書きやすい身近なジェンダー問題5選!テーマの選び方と調査・機関を紹介
外国人労働者の増加
厚生労働省の発表では、2025年10月末時点で日本国内の外国人労働者数は257万1,037人となり、前年より26万8,450人、11.7%増加しました。
届出が義務化された2007年以降、過去最多を更新しています。
国籍別ではベトナムが60万5,906人(23.6%)で最も多く、中国43万1,949人(16.8%)、フィリピン26万869人(10.1%)と続きます。
在留資格別では、専門的・技術的分野が86万5,588人で、前年より20.4%増加しました。
受け入れが進む一方で、言葉の壁や労働条件をめぐる外国人労働者の課題も指摘されています。
参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)(厚生労働省)
職場における多様性の課題
多様性を掲げるだけでは、誰もが働きやすい職場になるとは限りません。
ここでは、実務でよく挙がる2つの課題を紹介します。
無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)
アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)とは、何かを見たり聞いたりしたときに、無意識に「こうだ」と思い込むことです。
たとえば、「時短勤務中」と聞いて、その人を女性だと思い込んでしまうような場面です。
参考:アンコンシャス・バイアスに気づこうとすることの大切さ(内閣府男女共同参画局)
採用や評価の場面でも、本人が気づかないまま特定の属性への思い込みが判断に影響することがあります。
心理的安全性
心理的安全性とは、チームの中で、自分の考えや疑問、失敗を安心して発言できる状態のことです。
ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授が、1999年の論文で提唱しました。
多様な人材が意見を出し合うための土台として語られることが多い概念です。
参考:Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams(Amy Edmondson, 1999, Harvard DASH)
多様な背景を持つ人を迎えるだけでなく、その人が安心して発言できる環境を整えることが、次の課題になります。
多様性に取り組む企業の事例
多様性への取り組みは、企業によって力を入れる領域や進め方が異なります。
ここでは、女性リーダーの比率に数値目標を掲げている資生堂の例を紹介します。
資生堂の取り組み
資生堂グループは、2030年までに日本国内のあらゆる階層で女性リーダー比率を50%にする目標を掲げています。
2026年1月時点では、グローバルの女性管理職比率が60.3%、日本国内は43.3%です。
女性リーダー育成塾「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」には、これまでに延べ359名が参加しました。
日本国内では、同性パートナーを異性の配偶者と同様に扱う就業規則を設けています。
2025年には、職場のLGBTQ+への取り組みを評価する「PRIDE指標」で最高評価のゴールドを受賞しました。
障がい者雇用にも力を入れており、株式会社資生堂単体の雇用率は4.80%です(2026年6月時点)。
参考:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(資生堂)
D&Iに取り組む企業をさらに知りたい方は、以下の記事で10社紹介しています。
≫D&Iに取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大手企業からベンチャー
資生堂のように、性別や性的指向を軸に据える企業もあります。
一方で、国籍や文化的背景の違いに力を入れる企業もあり、重点の置き方は会社ごとに異なります。
多様性に関わる仕事
多様性という言葉の背景には、それを職場や社会で形にしようとしている人たちの仕事があります。
ここでは、2つの関わり方を紹介します。
D&I推進・人事の仕事
株式会社SAKURUGの森田裕矢さんは、2019年に新卒で同社に入社し、1年目の終わりから新規事業の立ち上げに携わりました。
2021年10月28日には、採用マッチングプラットフォーム「Sangoport」をリリースしました。
性別や年齢、国籍といった境遇に関係なく、自分に合った仕事を探せるよう支援し、D&Iを推進する仕事に取り組んでいます。
≫【株式会社SAKURUG】D&Iな世の中を目指して~森田 裕矢~
人事や採用の立場から多様性に向き合う仕事は、企業の中だけでなく、こうしたサービスを作る側にも広がっています。
ジェンダー分野で多様性に関わる仕事
ジェンダー分野では、企業のD&I推進のほか、行政での政策づくり、NPOでの相談・支援など、関わり方が分かれます。
現場で当事者の相談を受ける仕事もあれば、制度そのものを変える側に回る仕事もあります。
それぞれの仕事内容やキャリアパスは、以下の記事で解説しています。
≫ジェンダー課題のキャリアとは?D&I推進・政策・NPOなどキャリアの全体像を解説
よくある質問
多様性について、よく寄せられる疑問にお答えします。
Q. 多様性(ダイバーシティ)とは何ですか?
A. 多様性(ダイバーシティ)とは、性別や年齢、国籍、価値観など、人による違いが存在する状態を指す言葉です。経済産業省は、多様な人材を活かし、その能力を最大限発揮できる機会を提供する経営を「ダイバーシティ経営」と定義しています。イノベーションを生み出し、価値創造につなげている点も、この定義に含まれます。多様な人材には、性別や国籍のように外から見えやすい違いだけでなく、価値観や経験、働き方のように外から見えにくい違いも含まれます。
Q. D&IとDEIの違いは何ですか?
A. D&Iとは、多様な人材を組織に迎え入れる「ダイバーシティ」の考え方です。これに、迎え入れた人材がそれぞれの力を発揮できるよう組織として受け入れる「インクルージョン」を組み合わせた考え方でもあります。DEIは、このD&Iに「エクイティ(公平性)」を加えた考え方で、一人ひとりが置かれた状況の違いに応じて、必要な機会や支援を届けることを重視します。ダイバーシティが違いの存在を指すのに対し、インクルージョンとエクイティは、その違いをどう生かし、どう公平に扱うかを表す言葉です。
Q. 生物多様性とダイバーシティ(人材の多様性)はどう違いますか?
A. 生物多様性(biodiversity)とは、環境省によると、すべての生きものが持つ多様な違いやそれらの関わりを指す言葉です。遺伝子・種・生態系という3つのレベルで捉えられる概念とされています。一方、この記事で扱う多様性(ダイバーシティ)は、性別や国籍、価値観など、人と人との違いを指す言葉です。どちらも「多様性」という同じ言葉が使われますが、対象が生きもの全体か、人間社会かという点で異なります。ニュースや資料を読むときは、文脈に応じて使い分ける必要があります。
Q. 多様性が重視されるようになった背景は何ですか?
A. 背景の一つは、労働力人口の減少です。労働政策研究・研修機構の推計では、労働力人口は2022年の6,902万人から、2040年には6,002万人まで減る見通しです。もう一つは、職場や市場の国際化です。厚生労働省によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人で、過去最多を更新しました。加えて、異なる背景を持つ人材の力を生かすことが、イノベーション創出につながるという期待もあります。
まとめ
多様性という言葉は、性別や国籍のように見えやすい違いから、価値観や経験のように見えにくい違いまで、人による違いそのものを指す言葉です。
D&IやDEI、生物多様性との違いを整理しておくと、ニュースや職場で言葉が出てきたときに、何を指しているのかを見失わずに読み解けます。
まずは、自分の職場や身近なコミュニティに、どんな違いを持つ人がいるかを意識してみることから始めてみませんか。
D&Iを推進する仕事に関心が向いたら、ココキャリアに載っている企業を1社ずつのぞいてみると、力の入れ方の違いが見えてきます。
違いを知ることは、自分とは異なる誰かの働き方や生き方を、少しだけ想像しやすくする一歩になります。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
