あなたは体型や顔など、外見で人のことを判断してしまったことがありますか?

外見で人を評価したり判断したりすることは、ルッキズムと言い社会的に問題視されています。

15~24歳の若者に行ったプラン・ユースグループのアンケートでは、8割以上の人が容姿・外見に対する悩みを持っているという結果が出ています。

ルッキズムはみなさんが普段の生活の中で、様々なかたちで関与している社会問題です。

本記事ではルッキズムの意味や事例、私たちが問題解決のためにできることについて取り上げます。

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ルッキズムとは?

ルッキズムとは、外見や身体的な特徴で人を評価したり、判断したりすることを指します。

日本語では「外見至上主義」と訳されます。

ルッキズムという言葉は、1970年代にアメリカを中心として始まった、肥満差別の廃絶を訴える「ファット・アクセプタンス運動」で生まれたとされています。

現在は体型以外にも、容姿、年齢、人種など見た目全般に関しての差別を指す言葉として使われています。


なぜルッキズムは、社会問題として注目されている?

ルッキズムはなぜ、社会問題として注目されているのでしょうか?

主な理由を3つ紹介します。

SNSや広告など、身近なものが原因となっている

理由の1つ目は、ルッキズムを引き起こしている原因がSNSや広告であることです。

これらは、日本人の9割以上が所有しているスマホを通して目にします。

そのため、多くの人が身近に感じる問題です。

また近年では未成年のスマホ所有率も増えており、ネットリテラシーが低い世代にも影響が出ています。

メンタル不調や身体的不調を患う人が増えている

外見を過剰に気にしてしまうことで健康に悪影響が出てしまうケースも増えています。代表例が過度なダイエットです。

厚生労働省の調査によると、肥満度(BMI)が18.5未満の「やせ(低体重)」20歳代女性では21.7%、30歳代では13.4%、40歳代では10.6%となっており、特に若い人のやせ型傾向が顕著です。

この原因の1つととして「やせているほうがいい」というルッキズムの考え方が世の中に浸透していることが挙げられています。

また過度なダイエットは、拒食症、過食症といった摂食障害を引き起こす危険性もあります。

国立国際医療研究センターの調査によると、国内で摂食障害に関わる患者数は22万人にも及び、深刻な健康被害になるケースもあります。

参考:厚生労働省 若い女性の「やせ」や無理なダイエットが引き起こす栄養問題
   国立国際医療研究センター 摂食障害について

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差別を助長している

ルッキズムの考え方は差別を助長しており、さまざまな社会問題と密接につながっています。

例えば、就活の際に外見が評価基準になっていることなどが挙げられます。

とある調査によると「就活で顔採用があると感じたことがありますか?」という質問に対して、「ある」と答えた人は33%にものぼります。

このような事例は、人を見た目で判断する差別につながります。

また、「自分は美しくなければならない」という外見に対するプレッシャーやコンプレックスとなることも大きな問題です。

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日本におけるルッキズムの現状は?

では日本におけるルッキズムの現状は、どのようなものなのでしょうか。

日本では、特に若い女性がルッキズムに関して強い問題意識を持っているというデータがあります。

女性を対象にした電通総研の調査によると、「日本では外見の美しさが重要視されすぎている」かどうかを問う質問に対して、「そう思う」または「ややそう思う」と答えた人の割合は72.0%となりました。

性・年代別で見ると、18~29歳女性が特に多く81.9%でした。

また、ルッキズムの問題は容姿へのコンプレックスにつながっています。

ユニリーバが発表したある調査によると、日本の10代女性のうち93%が、容姿に「自信がない」と答えていて、これは調査した14カ国の中でもっとも高い数値でした。

このように日本においてルッキズムは、非常に根深い問題ということができます。

参考:ユニリーバ 少女たちの美と自己肯定感に関する世界調査(2017年)
   電通総研 ジェンダーに関する意識調査(2022年)

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やりすぎ?ルッキズムが問題となった事例

ここでは日本国内でルッキズムが問題となった事例を、いくつか取り上げます。

ミスコン

ミスコンは参加者を外見で評価する要素が強く、ルッキズムを助長するとして問題視されています。

近年では学生側や学校側の問題提起から、コンテスト自体を廃止する大学が増えてきました。

上智大学が男女の区別を失くした新たなコンテストを設置したり、コンテストに顔を出さずに出場する参加者が現れるなど、新しい形でのコンテスト開催も広がっています。

テレビ番組

テレビ番組では、お笑いで女性芸能人の容姿をいじったり、差別とも取れる発言をしたりしたりすることがたびたび問題となっています。

老若男女問わず多くの視聴者がいるテレビ番組は、ルッキズムの助長につながっているとの指摘もあります。

ルッキズムを助長させる広告

SNS広告や電車広告では、容姿にコンプレックスを抱かせるような広告で商品購入を促す手法が存在しています。

以前、整形外科が高校生の容姿コンプレックスを抱かせるような広告を出して炎上したケースもありました。

特にメディアリテラシーが高くない若年層に向けてこのような広告を出す企業もあり、非常に悪質な手段であると問題視されています。

ルッキズムをやめたい人が今からできること

ルッキズムは多くの方にとって身近な問題で、ルッキズムによって苦しんでいる人も多くいます。

ここではルッキズムにとらわれるのをやめたいと思っている方に向けて、自分らしく生きるためにできることをいくつか紹介します。

ありのままの自分を受け入れる

自分の外見にコンプレックスを感じないためには、ありのままの自分を受け入れることが大切です。

ありのままの自分を受け入れることは簡単ではありませんが、できることはあります。

自己受容を高める手法はさまざまな研究があります。

具体例を挙げると、自分の良いところやできたことを日記に書くことがおすすめです。

日記を書くことには感情浄化作用があり、精神的な安定につながります。今日1日のよかったことを3つ書き出す「スリー・グッド・シングス」という手法は、続けることでポジティブに物事を考えられるようになり、結果としてネガティブなことも軽減するという効果があります。

幸福度が上がって、抑うつ効果を高めるとの研究結果もあります。

参考:経済産業研究所 「良いことを毎日3つ書くと幸せになれるか?(2013年 関沢 吉武)」

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過度にスマートフォンを使用しない

ルッキズムの原因ともなっているスマ―トフォン(以下、スマホ)の利用を減らすことは、ルッキズムにとらわれずに生きるためにできることの1つです。

NHKの調査によると、20代が1日にスマホを利用する時間は3時間26分に及びます。

スマホを利用している間、私たちは無意識にさまざまな広告を目にします。

その中でルッキズムに関わる広告に触れることも多くあるでしょう。

またSNSを過剰に見ることで、他人と比較してコンプレックスが生まれてしまうこともあります。

まずは1日10分だけスマホを見る時間を減らすなど、小さな目標を立てて実践してみましょう。

参考:NHK 2021年スマホ利用時間 調査


ルッキズムをなくし、住みやすい社会をつくるには

著名なアメリカの心理学者のメラビアンは、人間はコミュニケーションにおいて、相手のことを55%、視覚情報で判断すると提唱しています。

つまり、人はそもそも視覚で判断する生き物なのです。

これを踏まえるとルッキズムは決して簡単に解決できる問題ではないとともいえます。

しかし、現代社会において、ルッキズムによって苦しんでいる人が多くいます。

今わたしたちができることは何かを考えて、小さな行動を積み重ねていくことが大切です。

またルッキズムという問題を考える上で、常に自分が加害者にも被害者にもなる可能性があることを自覚することも大切です。

自覚をすることによって自分が当事者になることを防げる可能性があります。

本記事を通してルッキズムについて理解を深め、何か1つできることを始めてみましょう。

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