SDGs(持続可能な開発目標)は、地球上の全ての人々にとって、より良い未来を築くための国際的な目標です。
その中でも、「飢餓をゼロに」は最も基本的かつ重要な課題の一つです。
このテーマは、私たちの毎日の食事や生活とも密接に関わっています。
本記事では、「飢餓をゼロに」の基本情報から、私たちにできることまでをわかりやすく解説します。
目次
飢餓をゼロにとは
「飢餓をゼロに」は、SDGsの17の目標のうち第2の目標です。
この目標は、世界中で誰もが十分な量の栄養価の高い食糧を確保できることを目指しています。
特に、子どもの栄養失調や低栄養問題の解消、持続可能な農業の促進が重要な要素として挙げられています。
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SDGsとは
SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年の国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき国際的な目標です。
これらの17の目標は、貧困、健康、教育、環境など、さまざまな分野での課題に取り組むものです。
「飢餓をゼロに」は、特に食糧不足や栄養不良に苦しむ人々を支援するための具体的な指針となっています。
飢餓をゼロにを構成するターゲット
この目標には、8つのターゲットが設定されています。それぞれが、「飢餓をゼロに」を達成するための行動指針を示しています。
2.1 | 2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。 |
2.2 | 5歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。 |
2.3 | 2030年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。 |
2.4 | 2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。 |
2.5 | 2020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。 |
2.a | 開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。 |
2.b | ドーハ開発ラウンドの決議に従い、すべての形態の農産物輸出補助金及び同等の効果を持つすべての輸出措置の並行的撤廃などを通じて、世界の農産物市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する。 |
2.c | 食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする。 |
飢餓をゼロにが生まれた背景
この目標が設定された背景には、2000年のミレニアム開発目標(MDGs)での取り組みがあります。
MDGsでは、飢餓人口を半減させることを目指し、一定の成果が得られましたが、特に発展途上国では未だ多くの人々が飢餓状態にあります。
これを受け、より包括的かつ具体的な目標として「飢餓をゼロに」が設定されました。
飢餓をゼロにの現状
2023年時点で、約7億人が十分な食糧を確保できていないとされています。
以下のような要因が現状の課題として挙げられます。
地域格差
サハラ以南のアフリカや南アジアでは、慢性的な食糧不足が深刻化しています。
政治的不安定や気候変動がその要因となっています。
特に紛争地域では、農地やインフラの破壊が飢餓を助長しています。
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農業生産の課題
気候変動による干ばつや洪水は、農業生産量を大きく減少させています。
これにより、収穫量が不安定になり、農村部での生活も困難になっています。
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経済格差
食糧は十分に生産されていますが、分配の不均衡により多くの人が飢餓状態に陥っています。
特に都市部では、価格が高騰して貧困層が食糧を入手できない状況が見られます。
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新型コロナウイルス感染症の影響
パンデミックにより、供給チェーンが混乱し、食糧の流通が制限されました。
その結果、特に貧困層が影響を受け、飢餓問題が悪化しました。
戦争や紛争
紛争地域では、農地の破壊や物流の停止により、食糧不足が深刻化しています。
避難民の増加もまた、食糧需要を高める一因となっています。
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飢餓をゼロにの課題
「飢餓をゼロに」を達成するためには、以下のような課題が存在します。
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食糧分配の改善
世界全体では、飢餓を解消するのに十分な食糧が生産されていますが、その分配が公平に行われていないことが大きな課題です。
特に、インフラが未発達な地域や紛争地域では、食糧の輸送や流通がスムーズに行われず、十分な支援が届かないことがあります。
加えて、価格の高騰や流通過程での損失も、貧困層が食糧を手に入れるのを困難にしています。
これらの問題に対処するには、物流インフラの整備や支援物資の効率的な分配システムが必要です。
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農業技術の革新
気候変動の影響で、農業生産が不安定になっています。
干ばつ、洪水、気温上昇といった気候変動が農地を荒廃させ、生産量を低下させています。
また、小規模農家が最新の技術や設備を活用できないことも、持続可能な農業の発展を妨げています。
これに対抗するには、耐干ばつ性や高収穫性を持つ作物の開発、効率的な灌漑技術、農業ロボットやAIの導入といった革新的な農業技術を普及させることが重要です。
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政策と支援の強化
飢餓解消には、各国政府と国際社会の政策的な取り組みが不可欠です。
発展途上国では、農業への投資や食糧安全保障を優先課題として掲げる政策が必要です。
また、紛争や政治的不安定が続く国では、これらの状況を改善するための平和構築や人道的支援が求められます。
加えて、国際的な連携や資金援助を通じて、途上国が持続可能な農業を実現できる環境を整えることも重要です。
食品廃棄の削減
FAO(国連食糧農業機関)によると、全世界で生産される食糧の約30%が廃棄されています。
この食品廃棄は、流通過程や消費段階のいずれでも発生します。
特に、開発途上国では輸送中の保存技術の不足が、先進国では消費者による過剰購入や食べ残しが問題です。
食品廃棄の削減は、飢餓問題解決だけでなく、環境負荷の軽減にもつながるため、重要な課題です。
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教育と啓発
飢餓問題への理解を深め、行動を促すためには、教育と啓発活動が欠かせません。
特に、次世代を担う若者に対して飢餓問題の現状やその解決策について教えることは、将来的な社会変革につながります。
また、一般市民への啓発活動を通じて、個人や企業が飢餓問題に対して関心を持ち、具体的な行動を起こすきっかけを作ることも重要です。
飢餓をゼロにに取り組む企業3選
飢餓をゼロにに取り組む企業を紹介します。
≫【SDGs目標2】飢餓をゼロにに取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大企業からベンチャー
≫フードロスに取り組む企業10選!就職・転職におすすめのベンチャーを中心に紹介
株式会社グリーンエース
株式会社グリーンエースは、生産地で廃棄される規格外農産物を活用し、農産物加工品を製造・販売する企業です。
同社は、地域農業の活性化とフードロス削減を目指し、栄養価や香りを損なわずに野菜を粉末化する独自技術を活用しています。
また、一般消費者向け商品開発だけでなく、企業と連携したアップサイクル事業も展開し、持続可能な社会の実現を目指しています。
HP:https://greenase.jp/
株式会社フードロスバンク
株式会社フードロスバンクは、フードロス問題解決に向けた取り組みを推進しています。
日本国内では、年間約600万トンの食品ロスが発生し、食糧が廃棄されています。その一方で、世界では約8億人が飢餓に苦しんでいる状況です。
株式会社フードロスバンクは「多様性を尊重し」「循環性があり」「持続可能である事」を理念に、食品ロス削減を通じて、社会課題や環境問題の解決を図っています。
HP:https://www.foodlossbank.com/
株式会社レット
株式会社レットは、訳あり食品を購入できるアプリ「Let(レット)」を運営し、食品ロス削減に貢献しています。
また、放牧畜産の環境負荷や世界的なタンパク質不足に対応するため、代替プロテインや培養肉などのイノベーティブフードの開発にも注力。
農家と協力し、スマート農園の運営も試験的に行い、最先端技術を活用した未来の農業モデルの確立を目指しています。
「テクノロジーで食の未来をつくる」をビジョンに掲げ、フードテック企業として成長しているのです。
HP:https://corp.let.jp/
飢餓をゼロにに対して私たちができること5選
飢餓をゼロにに対して私たちができることを紹介します。
フードバンクへの寄付
フードバンクは、食品を必要とする人々に届けるための橋渡しをする団体です。
家庭で消費されない缶詰や乾燥食品を寄付することで、廃棄される予定だった食品が有効活用されます。
特に災害時やホリデーシーズンには、フードバンクの需要が高まるため、積極的な支援が求められます。
また、多くの地域でフードバンクの寄付は手軽に行える仕組みが整っているため、地域の活動状況を確認して参加してみましょう。
食品ロスを減らす
家庭での食品ロス削減は、飢餓をゼロにする取り組みの第一歩です。
例えば、冷蔵庫の中身を計画的に使い切る、賞味期限が近い食品を優先して消費する、食べ残しを減らすなどの行動が挙げられます。
他には、企業や店舗が廃棄する食品を削減する取り組みに賛同し、サポートすることも重要です。
フェアトレード製品を選ぶ
フェアトレード製品は、生産者に公正な価格を保証する仕組みで作られた商品です。
これにより、発展途上国の農家や労働者が安定した収入を得られ、生活の向上と持続可能な農業の促進につながります。
例えば、コーヒーやチョコレート、紅茶など、日常的に使用する製品の中からフェアトレード認証のものを選ぶことで、気軽に支援ができます。
≫レインフォレストアライアンスとは?意味や他の認証との違いをわかりやすく解説
ボランティア活動に参加する
地域のフードバンクや食糧支援団体でのボランティア活動は、直接的な支援の形として非常に有効です。
例えば、食品の仕分け作業や配布作業を手伝うことで、食糧を必要としている人々に迅速に届けることができます。
また、国際的な飢餓支援団体では、現地での農業支援や教育活動に参加するプログラムもあります。
ボランティア活動を通じて、飢餓問題の現状を直接体感し、解決への意欲を高めることができます。
情報を広める
飢餓問題についての情報を広めることは、周囲の意識を変える大きな力となります。
SNSを活用して、飢餓問題に関する記事やデータをシェアする、キャンペーンを紹介するなど、自分のできる範囲で情報発信を行いましょう。
また、学校や職場で飢餓について話し合う場を設けるのも有効です。特に若い世代への教育は、将来的な社会変化を促す重要なステップです。
≫フードファディズムとは?事例や3つの問題点、解決策について解説!
まとめ
「飢餓をゼロに」は、私たち全員が取り組むべき重要な目標です。
一人ひとりの小さな行動が、世界全体の大きな変化につながります。
本記事をきっかけに、身近なところから始めてみませんか?
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。