私たちが毎日当たり前のように使っている水やトイレ。

しかし、世界には安全な水を手に入れられない人々や、適切な衛生環境が整っていない地域が多く存在します。

これは単なる生活の問題ではなく、健康や経済、教育などさまざまな分野に影響を与える深刻な課題です。

本記事では、「安全な水とトイレを世界中に」の基本情報から、その現状や課題、そして私たちにできることについて解説します。

安全な水とトイレを世界中にとは

「安全な水とトイレを世界中に」は、SDGs(持続可能な開発目標)の6番目の目標として掲げられています。

これは、すべての人が安全で安定した水源を確保し、適切な衛生環境を持てるようにすることを目的としています。

水は生命の維持に不可欠であり、清潔なトイレ環境は感染症の拡大を防ぐ重要な要素です。

この目標は、単なる水の供給だけでなく、水の持続可能な管理や、衛生的なトイレの普及、廃水の適切な処理など、幅広い課題を含んでいます。

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SDGsとは?

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年に国連で採択された国際的な目標で、2030年までに達成することを目指しています。

全部で17の目標があり、「貧困をなくそう」「ジェンダー平等を実現しよう」「気候変動に具体的な対策を」など、幅広い社会課題を網羅しています。

これらの目標は、互いに関連しており、一つの目標を達成することで他の目標への貢献にもつながります。

特に「安全な水とトイレを世界中に」は、健康、教育、経済成長といった他の目標にも深く関係する重要なテーマです。


安全な水とトイレを世界中にを構成するターゲット

安全な水とトイレを世界中にを構成するターゲットについて紹介します。

6.1 2030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。
6.2 2030年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性および女子、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を向ける。
6.3 2030年までに、汚染の減少、有害な化学物質や物質の投棄削減と最小限の排出、未処理の下水の割合半減、およびリサイクルと安全な再利用を世界全体で大幅に増加させることにより、水質を改善する。
6.4 2030年までに、全セクターにおいて水の利用効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取および供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。
6.5 2030年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合的な水資源管理を実施する。
6.6 2020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼などの水に関連する生態系の保護・回復を行う。
6.a 2030年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、廃水処理、リサイクル・再利用技術など、開発途上国における水と衛生分野での活動や計画を対象とした国際協力とキャパシティ・ビルディング支援を拡大する。
6.b 水と衛生に関わる分野の管理向上への地域コミュニティの参加を支援・強化する。

安全な水とトイレを世界中にが生まれた背景

水や衛生環境の問題は、古くから多くの国や地域で課題となってきました。

人口増加や都市化の進行、気候変動などが原因で、水資源の枯渇や汚染が進んでいます。

特に発展途上国では、安全な水やトイレが整備されておらず、病気や死亡率の増加につながっています。

国際社会はこの問題に対処するため、さまざまな取り組みを進めてきましたが、いまだ多くの人々が不十分な水や衛生環境に苦しんでいます。

安全な水とトイレを世界中にの現状

安全な水とトイレを世界中にの現状について解説します。

世界人口の約26%(20億人)が安全な飲料水を利用できていない

WHOとUNICEFの報告によると、2023年時点で約20億人が安全な飲料水を確保できていません。

特にサハラ以南のアフリカや南アジアでは、多くの人々が未処理の河川水や井戸水を使用しており、深刻な健康リスクに直面しています。

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約34億人が適切なトイレを利用できていない

世界人口の30%以上が適切なトイレを持たず、屋外排泄を余儀なくされている地域もあります。

これにより、水源が汚染されるだけでなく、コレラや赤痢などの感染症の拡大が懸念されています。

参考:衛生的な環境 (トイレ) | 水と衛生 | ユニセフの主な活動分野 | 日本ユニセフ協会

水不足の深刻化

気候変動や人口増加により、世界中で水資源が枯渇しつつあります。

世界気象機関によると、2050年までに50億人以上が水不足の影響を受ける可能性があるとされています。

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水質汚染の拡大

工業廃水、農薬、生活排水などによる水質汚染が深刻な問題となっています。

特に、適切な廃水処理施設を持たない国や地域では、汚染水の流入が続き、飲料水の安全性が脅かされています。

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健康への影響

汚染された水を飲むことで、年間約140万人が死亡しています。

特に乳幼児の死亡率が高く、安全な水と適切な衛生環境の確保が急務となっています。

安全な水とトイレを世界中にの課題

安全な水とトイレを世界中にの課題について解説します。

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水資源の公平な分配

世界の水資源は地域によって不均一に分布しています。

特に、アフリカや南アジアの多くの国々では、人口が密集する地域に水が集中している一方で、周辺地域では水が不足しています。

このため、経済的な活動や生活の質が大きく影響を受けています。

水へのアクセスが困難な状況は、教育、健康、経済活動に悪影響を及ぼし、貧困の連鎖を引き起こす要因にもなります。

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インフラの整備不足

多くの発展途上国では、給水や下水道のインフラが未整備のままであり、これは公衆衛生に重大なリスクをもたらします。

安全な水を供給するためのパイプラインや浄水施設が不足しているため、住民はしばしば汚染された水を使用せざるを得ません。

このような状況は、腸管感染症や水媒介疾患の蔓延を招く要因となります。

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資金不足

水や衛生環境の整備には多額の投資が必要ですが、途上国の多くはその資金を確保することが困難です。

政府予算が限られている場合や、優先順位が他の分野に偏っている場合、必要な資金が確保できず、結果としてインフラ整備が後回しにされることがあります。

国際的な支援や投資が求められる中、適切な資金供給が行われるかどうかが重要なポイントとなります。

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気候変動の影響

気候変動により、干ばつや洪水などの極端な気象が頻発しています。

これにより、既存の水供給システムに負担がかかり、安定した水供給が難しくなっています。

特に、農業や生活用水の供給に影響を与えるため、食糧安全保障や経済活動にも悪影響を及ぼします。

適応策を講じることが必要ですが、資源や技術が限られている地域ではその実施が難しい状況です。

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教育と意識改革

衛生習慣の普及や適切な水の管理に関する教育が不足しているため、住民はしばしば不適切な方法で水を利用し、衛生状態が悪化します。

教育プログラムや啓発活動を通じて、正しい衛生習慣や水の使用方法を教えることが、長期的な解決に向けた重要なステップです。

政治的・制度的課題

政府の水管理政策や規制が不十分な場合、持続可能な解決策の実施が難しくなります。

腐敗や無関心が水資源管理に悪影響を及ぼすことも多く、適切なガバナンスが確保されていないと、せっかくの資源が無駄にされることになります。

透明性のある制度づくりや市民参加の促進が求められています。


安全な水とトイレを世界中にに取り組む企業3選

安全な水とトイレを世界中にに取り組む企業を紹介します。

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ENELL株式会社

ENELL株式会社は、「空気から水を作る」という画期的な技術を持つ、日本のベンチャー企業です。

世界ではおよそ4人に1人が「安全に管理された飲み水」を使用できないと言われています。人が生きていくために使用できる水資源は、とても限られたものです。

世界的な水不足問題が深刻化する中、同社は独自の技術を用いて、空気中の湿気を凝縮し、安全な飲み水を生成する装置を開発しています。

HP:https://enell.jp/

ENELL株式会社の事業内容や創業理由を詳しく見る

株式会社日水コン

株式会社日水コンは、日本の上下水道分野におけるリーディングカンパニーです。1959年の設立以来、長年にわたり、水に関するインフラ整備や環境保全に貢献してきました。

その活動は、単なる営利事業にとどまらず、社会全体への貢献を目的とした広範な社会貢献活動にも及びます。

下水汚泥由来の肥料で育てた農作物「じゅんかん育ち」の流通・販売に関する支援や広報活動を担うなど、資源循環型社会の実現に取り組んでいます。

HP:https://www.nissuicon.co.jp/

株式会社日水コンの事業内容や創業理由を詳しく見る

株式会社ちとせ研究所

株式会社ちとせ研究所は、バイオテクノロジーの可能性を追求し、持続可能な社会の実現を目指す、ちとせグループの中核企業です。幅広い生物の育種・培養技術を基に、これらの技術を産業利用に結びつけています。

海外にも拠点を有し、グローバルな視点で事業を展開。

「生き物たちの力と共に千年先までもっと豊かに」というビジョンを掲げ、生物のもつ潜在能力を最大限に引き出し、新たな価値の創造に取り組んでいます。

HP:https://chitose-bio.com/jp/

株式会社ちとせ研究所の事業内容や創業理由を詳しく見る


安全な水とトイレを世界中にに対して私たちができること5選

安全な水とトイレを世界中にに対して私たちができることを紹介します。

SDGsとは 生まれた背景と私たちができること

水の節約

水資源は限られているため、私たちが日常生活の中で水を無駄にしないように心がけることが重要です。

例えば、シャワーの時間を短縮することが挙げられます。

長時間のシャワーを避け、必要な時間だけにすることで水の使用量を減らすことができます。

また、洗濯機や食洗機は満杯の状態で使用することで、無駄な水を流すことを防げます。

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教育を受ける

水と衛生に関する知識を深め、自分自身だけでなく周囲の人々にもその重要性を伝えることが大切です。

地域で行われる水資源管理や衛生教育のワークショップに参加し、専門家から直接学ぶことができます。

また、学校のイベントや授業で水や衛生の重要性についてのプレゼンテーションを行ったり、クイズ形式の活動を通じて友達に知識を広めることも効果的です。

寄付やボランティア活動

水や衛生環境の改善に取り組む団体やプロジェクトを支援することは、直接的な貢献につながります。

たとえば、認知度の高いNGOや地元のボランティア団体に寄付を行うことで、彼らの活動を支えることができます。

また、近隣の河川や公園の清掃活動に参加することで、地域の水質向上に貢献することもできます。

意識を高める

水と衛生の重要性について周囲の人々に知らせ、共感を呼ぶことも大切です。

自分のSNSアカウントを通じて、水と衛生の重要性についての情報や個人の取り組みをシェアすることで、フォロワーに関心を持たせることができます。

また、地域のコミュニティイベントで、水や衛生に関する講演や展示を行うことで、他の人々に直接的にアピールすることも効果的です。

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政策に参加する

地域の水管理や衛生政策に関心を持ち、積極的に参加することで、より良い社会を築く手助けができます。

例えば、水管理や衛生に関連する政策について議論される会議に参加し、自分の意見を表明することが重要です。

また、水資源の保護や衛生改善を目指す運動に参加し、署名や支援を行うことで、政策決定者に影響を与えることもできます。

まとめ

「安全な水とトイレを世界中に」という目標は、私たちの健康や生活の質に直結する重要なテーマです。

SDGsの一環として、この課題に取り組むことは、持続可能な未来を築くために欠かせません。

私たち一人ひとりができることは多くあります。

水と衛生の重要性を理解し、行動することで、より良い世界の実現に向けて一歩踏み出しましょう。

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