「bahaya masuk」

 どのような意味でしょうか?(英語ではありませんよ!)

 これは、インドネシア語で「入るな、危険」という意味です。

もしこれが、観光地の中に立っていたら「何かの説明書きだろう」と思うでしょう。

 これが、「識字能力がない怖さ」です。

 この記事では、識字率とは何を指すのか、また、識字が出来ないことでどのような問題が起こるのか、識字問題を抱える国の具体的な様子を含めながらお伝えします。

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識字率とは

識字率とは、ある特定の地域で、文字の理解や読み書きができる人の割合のことを指します。

識字率は、教育レベルや社会の発展度を示す重要な指標の一つとされており、識字率の高さは教育水準や経済発展を反映していると考えられます。

実際に、どのように算出されているのか、また国内外における識字率についてみていきましょう。

識字率の定義

識字率の定義を解説します。

UNESCOは、「総成人人口(15歳以上)に対する推定成人識字者の割合を百分率で表したもの」としてます。

例えば、15歳以上の人が10人おり、そのうち8人が識字者であれば、識字率は80% になります。

 *識字者:日常生活で用いられる簡単で短い文章を理解し、読み書きができる人。

日本の識字率

日本の識字率はほぼ100%であり、ほとんどの人が読み書きできます。

しかし、100%ではない背景には、戦時中・戦後に子ども時代を過ごした人の中に読み書きの教育をうけられなかった人達がいるからです。

日本社会では「識字ができて当たり前」とみなされる傾向にあるので、識字の問題を抱える人がいると認識することが必要です。

世界の識字率

UNICEFが発表した「世界子供白書2023」によれば、若者(15~24歳)の識字率は世界平均で男子が93%、女子が91%です。

思っていた以上に高いと感じたかもしれません。

しかし、人数で見てみると、読み書きのできない子どもが、未だ100万人もいるのです。

特に、途上国での識字率が低く、2010年~2016年で最も低かったニジェール共和国では、15%でした。

国別だけでなく、ジェンダーでも識字率にギャップが生まれています。

2018年の統計では、読み書き能力を持たない成人のうち、63%が女性だと言われています。 

参考:UNESCO Fact Sheet No.45


識字率が低い5つの原因

識字率が低い原因はいったい何でしょうか?

識字率の低さには、様々な背景があります。

事例も交えながら解説します

学べる場所がない

農村部や貧困地域の場合、学校が通える範囲にない場合があります。

例えば、アフリカの子どもの場合、4人に1人が、最も近い学校からでも、2キロ以上離れているそうです。

14キロもの道のりを通う場合もありますが、毎日通うことは難しいのが現状です。

 それらの地域に学校が少ないのは、

①政府の教育費予算が、貧困地域への学校建設に使われない

②給与の低さゆえ、働きたいと思う先生がいない

という理由が挙げられます。

紛争による影響

紛争が起きると、学校が破壊されたり、避難を求められたりするからです。

紛争後に戻っても、学校は壊され通う場所がありません。

避難所は、教育を受けられる体制では無いことが多いです。

 また、紛争で少年兵になった子どもは、基礎的な知識を習得するのが困難です。

紛争中、兵として活動すると軍事訓練ばかりを受けることになります。

そのため、読み書き教育を受けるべき期間を逃し、それ以降に学べる機会がなくなるからです。

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貧しい家庭環境

家計を助けるため、学校に行くよりも外で働くことが優先されるからです。

親は子どもに働くことを求めるため、子ども自身が学校にいく必要性も感じづらいです。

また、学費が払えなかったり、学校に通う費用や教科書を買えないといった事情もあります。

2021年6月、UNICEFとILOの調査によると、児童労働をしている子どもは1億6千万人に達します。

これは、4年前に比べて840万人増加しており、新型コロナウイルス感染症の影響から、より増加すると考えられます。

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教育資金の不足

富裕層の子どもたちへの教育に多くのお金が割り当てられ、貧困層の子どもたちへの教育資金が不十分です。

例えば、*アフリカ10か国では、富裕層に対して貧困層の4倍もの教育資金が割り当てられています。

そのため貧困層の子どもには、劣悪な環境で勉強しなければならない、先生の質が低いということが起きています。

また、「読み書きが最も定着する」と言われる就学前教育にかける資金もなく、識字率を上げることが困難です。

 *アフリカ10カ国:ギニア、中央アフリカ共和国、セネガル、カメルーン、ベナン、ニジェール、ルワンダ、ガーナ、トーゴ、チュニジア

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「女の子は学校に行く必要がない」という認識の存在

「勉強は家事をするのに役立たないから、女子は学校に通っても意味がない」という考え方が存在するからです。

伝統的にこのような考えがある場合、読み書きの能力は不要だとみなされます。

結果的に、女の子は学校に通わなくて良いという判断をされてしまうのです。 

特にアフリカでは、この考え方が根強く残っています。

サハラ以南のアフリカでは、約6割の女の子が高等教育を受けられていません。

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識字率の低さにより起こりうる問題

識字ができないことは、どのような課題を生み出すのでしょうか?

将来の選択肢が狭まる

読み書きができなければ、得られる職業が限られます。

どんな職業でも、マニュアルを読む、メールを書く等、仕事を進める上で、文字の読み書きが必要です。

読み書きが出来ない場合、指示された通りに動く仕事がほとんどになり、単調な仕事になり易いです。

また、契約の説明を理解できず、危険な仕事をすることにも繋がります。

それらの仕事の多くは、特別なスキルが不要なため、給与も低いことが多々あります。

公共サービスを十分に受けられない

公共サービスに関する情報が、十分に読み取れないからです。

例えば、子どもの予防接種に関する情報を得られず、受けられなかった場合、健康被害が出るかもしれません。

また、サービスに関する資料が読めない、個人情報などを書類に書けないことで、公共サービスを受けられないケースもあります。

暮らしの危機に対応できない

「地雷」や「危険」などの注意書きが読めず、危険なエリアに立ち入り、命の危険にさらされる可能性があります。

薬などの説明書きが読めないことは、健康被害に繋がります。

実際、読み書きに課題を抱える女性によると「病院に行きたいのに、バスの表示が読めず行けない」「家に薬があっても正しい薬のビンが分からない」といった問題に直面しているのです。


識字率向上に向けた取り組み

識字率向上に向けた取り組みを紹介します。

世界寺子屋運動

日本ユネスコ協会連盟が行う、日々の生活で必要な基礎教育を提供する活動です。

大人も含めて「学びたい」と希望する人たちに、その国の先生が日々の生活に必要な保健・衛生のことなどを教えています。

ネパールやアフガニスタンといった開発途上国で行われ、学校の役割だけではなく、地域のコミュニティ形成のためのにも重要な役割です。

参考:世界寺子屋運動 – 公益社団法人日本ユネスコ協会連盟

みんなの学校プロジェクト

学校の学習環境改善のために、JICAが2004年から始めた学校運営プロジェクトです。

自律的学校運営(SBM)を支援する取り組みで、地域の人々と行政が協力しながら行っています。

具体的な活動は、教育の質を上げることや、子どもたちの生活面サポートです。

2021年現在では、アフリカの8カ国、5万3000校の小中学校に拡大しています。

参考:進化する「みんなの学校」プロジェクト:アフリカ8ヵ国5万3000校に拡大、学校給食や手洗い啓発にも発展

 識字率向上に取り組む企業

 識字率向上に取り組む企業を3社紹介します。

株式会社グッドラック・コーポレーション

教育を受けられない人に「学ぶ」機会を提供するため、国際NGO団体との協力により、開発途上国に図書館(愛称:『GOOD LUCK library』)を設置するプロジェクトです。

結婚式を挙げたカップル1組あたり3ドルを寄付の資金に当てています。

書籍に関しても、お客様や社内から集めたものを寄付し、会社全体で取り組んでいます。

大日本印刷株式会社

公益社団法人シャンティ国際ボランティア会が主催する「絵本を届ける運動」に参加しています。

日本の絵本を現地の言葉で訳した翻訳本を、開発途上国の学校や難民キャンプに提供する活動です。

これまで、ビルマ語やカレン語、クメール語などに翻訳されました。

2017年までに、1万5千冊以上の絵本が子どもたちに送られています。

【株式会社大川印刷】地域に密着した環境印刷の会社で働く意義~小峰千波~

 大塚倉庫株式会社

NPO法人ルーム・トゥ・リードが進める、途上国における識字率の向上と女子教育の取り組みに参加しています。

途上国における図書館の寄贈や識字教育プログラムの提供を通じた支援が中心です。

実際に、社員の方々が現地に足を運んで支援するなど、会社全体で取り組んでいます。

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 識字率の問題に対して、あなたにできること

識字率の問題を知った今、どのような行動ができるでしょうか?

継続的な寄付

寄付によって、教育費不足で学校に行けない子どもたちや、より良い学習環境で学ぶ支援をすることができます。

国や個人が自立できることが最終目標なので、継続した協力が必要です。

具体的には、日本ユニセフ協会やNPO法人のサイトを通じて行うことができます。

日本ユニセフ協会
NPO法人 e-Education

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ボランティア

教育援助の資金を集めるために、日本で募金活動をすることが有効です。

募金活動は、問題の認知を広めるためにも効果的であると言えます。

また、現地で行う場合、先生の不足している地域で「教える」ボランティアをすることも、貢献できる形の1つです。

まとめ

日本に住む私たちにとって、識字率問題は身近に感じづらいものです。

しかし、世界には読み書きができないことで、生活に困難を抱えている人がいます。

この記事で述べたような教育格差に問題を感じ、行動された方の一人が渡辺大樹さんです。

現在は、NGOエクマットラを立ち上げ、ストリートチルドレン対象に教育機会を提供しています。

大学時代に偶然出会ったタイの子どもとの出会いが原動力となり、現在に繋がっています。

学校設立までの苦労、どのような人生の道のりを歩まれたのか、ぜひ、こちらの記事をご一読ください!

バングラデシュの路上から、社会を動かすロールモデルをつくっていく NGOエクマットラ渡辺大樹さん

識字率問題の根本には、国の体制や文化的背景があります。

日本からの支援にも、様々な形があります。みなさんのできることを、今日から始めてみてください。

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