IOMの「世界移住報告2026」によると、2024年半ばの時点で、生まれた国の外で暮らす国際移民は世界に約3億400万人いました。
これは世界の人口の3.7%にあたります。
その移住の分野を専門に扱う国際機関がIOM(国際移住機関)で、2026年1月時点では45人の日本人が国際職員として働いています。
「移民や外国人の課題に関わる仕事がしたい。IOMで働くにはどうすればいいんだろう」。
そう考えて調べ始めると、難民を守るUNHCRとの違いや、どの入り口から応募できるのかがわかりにくいですよね。
ここでは、IOMの役割と駐日事務所の活動、職員の仕事、採用ルート、求められる学歴・経験・語学、日本人職員の例を、IOMの公式情報をもとに紹介します。
2025年以降の資金減少による人員削減の状況と、IOMに入らなくても日本で移民・外国人の課題に関われる道もあわせて紹介します。
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IOM(国際移住機関)とは
IOM(国際移住機関)とは、人の移動、つまり移住の分野を専門に扱う政府間機関です。
1951年に設立され、本部はスイスのジュネーブにあります。
2016年に開かれた「難民と移民に関する国連サミット」の際に国連の関連機関となり、日本の事務所は自らを「国連IOM」と呼んでいます(参考:国連IOM駐日事務所)。
IOMの2025年の年次報告によると加盟国は175か国で、日本は1993年に加盟しました。
IOMが取り組む社会課題
IOMが支える対象は、仕事や留学で国境を越える移民だけではありません。
紛争や災害で家を追われた国内避難民、人身取引の被害者、受け入れ国へ向かう難民など、移動する人が広く含まれます。
世界移住報告2026によると、2024年に起きた国内避難は約6,580万件で、そのうち約4,580万件は災害によるものでした。
IOMは、避難した人への緊急支援から、各国政府の移住政策づくりへの助言まで、幅広い形で移住の課題に取り組んでいます。
移民の受け入れが世界や日本でどう議論されているかは、移民問題とはの記事で解説しています。
IOM駐日事務所の活動
日本には、1981年に開設されたIOM駐日事務所があります。
日本でのIOMの活動は、1980年代のインドシナ難民の受け入れ支援から始まりました(参考:国連IOM駐日事務所)。
いまの主な活動は、次の3つです。
人身取引の被害者の帰国支援
人身取引の被害者の帰国支援は、日本政府の「人身取引対策行動計画」の一環として、2005年5月から続いている取り組みです。
日本で保護された被害者が希望すれば、出身国への安全な帰国と、職業訓練や起業など帰国後の社会復帰を支えます。
人身取引を含む日本と世界の人権課題は、人権問題とはの記事で一覧にしています。
自主帰国の支援
自主帰国の支援は、帰国の意思があっても経済的な理由などで帰国できずにいる人を支える取り組みです。
2013年から法務省の要請を受けて、帰国の手続きや、帰国後の生計の立て直しを支えています。
第三国定住の難民の受け入れ支援
第三国定住の難民の受け入れ支援は、日本が2010年から受け入れている、タイやマレーシアに滞在する難民の来日を支える取り組みです。
IOMは、健康診断や生活ガイダンス、初級の語学研修、航空券の手配など、来日までの準備と移送を担っています。
IOMとUNHCRの違い
「難民や移民の支援がしたい」と考えたとき、IOMと並んで名前が挙がるのがUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)です。
大まかに言えば、難民を守るのがUNHCR、難民を含む移住全般を扱うのがIOMです。
| IOM(国際移住機関) | UNHCR(国連難民高等弁務官事務所) | |
|---|---|---|
| 主な対象 | 移民、国内避難民、人身取引の被害者、難民など移動する人全般 | 難民、庇護希望者、国内避難民、無国籍者 |
| 成り立ち | 1951年に政府間機関として設立、2016年に国連の関連機関に | 1950年に国連総会で規程を採択、1951年に活動開始 |
| 主な仕事 | 移住政策への助言、帰国・定住の支援、緊急時の避難民支援 | 難民の法的な保護、緊急支援、帰還や第三国定住などの解決 |
| 日本の事務所 | 1981年開設 | 1979年開設 |
IOMも難民を支えますが、日本では第三国定住の難民の移送や、人身取引の被害者の帰国など、移動そのものを支える仕事が中心です。
どちらを目指すか迷ったときは、難民の法的な保護に関わりたいならUNHCR、移民の帰国や定住、労働移住などに関わりたいならIOMを目安にするとよいでしょう。
日本で難民として保護を求める人の現状は、日本の難民問題の記事で解説しています。
IOM職員の仕事と職種
IOMの仕事は、移動する人を直接支える現場の仕事と、各国政府と一緒に仕組みをつくる仕事に分かれます。
職員には、世界中から採用される国際職員と、事務所のある国で採用される現地職員がいます。
現場で移動する人を支える仕事
紛争や災害の現場では、避難民キャンプの運営、シェルターや生活物資の配布、避難した人の数や移動の流れを調べるデータの収集などを担います。
移住する人の健康診断や、受け入れ国へ向かう難民の移動の手配も、IOMならではの仕事です。
移住の仕組みをつくる仕事
各国政府に対しては、国境の管理、労働移住の制度づくり、人身取引の防止などについて技術的な支援を行います。
本部や地域事務所には、資金調達、財務、人事、IT、広報、法務など、組織を動かす仕事もあります。
国際機関で社会課題に関わる仕事の全体像は、国際機関で社会課題解決に関わるキャリアの記事で紹介しています。
IOM職員になるルート
IOMで働くための主な入り口は、空席公募、JPO、インターン、国連ボランティアです。
それぞれ、対象となる人と条件が異なります。
空席公募
空席公募は、空いたポストごとに職員を募集する方法で、募集はIOMの採用サイトに掲載されます。
ポストごとに、求められる専門分野、学歴、経験年数が決まっています。
IOM駐日事務所は、国際職員の採用に関する個別の質問には答えていないため、応募の条件は募集要項で確かめましょう(参考:国連IOM駐日事務所)。
JPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)
JPOは、各国政府が費用を負担して、自国の若手を国際機関に送り出す制度です。
IOMのJPOは多くが28〜35歳で、P2という若手の専門職として2年間働きます。
日本はJPOの費用を負担している国の一つで、IOMは1995年から日本人の若手をアソシエート・エキスパート(JPO)として受け入れてきました。
日本の外務省のJPOは、35歳以下で修士号と2年以上の職歴をもつ人が対象です(参考:外務省国際機関人事センター)。
任期後に自動で正規職員になれるわけではありませんが、IOMによると、JPOの多くは任期を終えたあともIOMで働き続けています。
インターンシップ
IOMのインターンシップは、19〜36歳で、学部の最終学年か大学院に在籍している人、または卒業から1年以内にインターンを始められる人が応募できます。
期間は2〜6か月で、最長9か月です。
インターンの多くには、住まいや生活費の一部を補う月々の手当が支給されます。
ただし、大学の制度や奨学金で派遣される場合などは、手当の対象外になることがあります。
IOM駐日事務所でもインターンを募集することがあり、募集があるときは事務所のウェブサイトに掲載されます。
国連ボランティア
IOMは、採用ページで国連ボランティアも入り口の一つに挙げています。
職員としての採用ではありませんが、IOMの仕事に関わり、組織の中を知るきっかけになります。
国際機関・JICA・NGO・民間企業・起業という入り口の比べ方は、国際協力を仕事にするとは?の記事にまとめています。
国連機関の職員の区分や給与の仕組み、YPPとJPOの違いは、国連職員になるには?の記事で解説しています。
IOM職員に求められる学歴・経験・語学
IOMの国際専門職を目指すなら、学歴・職務経験・語学の3つを準備しておきましょう。
学歴
学歴は、日本の外務省のJPOでは修士号が条件になります。
開発学、国際関係、法律、公衆衛生などに加えて、移住学を学べる大学院もあります。
COCOCOLOR EARTHがインタビューした石井麻鈴さんは、イギリスのサセックス大学の大学院で「移住と開発」を専攻しました。
「なぜ人は移動するのか」「移住後、移住先のコミュニティで発生する課題」といったテーマで、各国から集まったクラスメートと議論を重ねたそうです。
石井さんは大学院に進む前、ベンチャー企業で外国人の就労を支援する事業を担当していました。
取材当時は、公益財団法人パスウェイズ・ジャパンのプロジェクトオフィサーとして、日本に逃れてきた若者に高等教育の機会を届ける仕事をしていました。
石井さんは国際協力の業界について、「社会人経験と修士号があってやっとキャリアのスタートラインに立てます」と話しています。
JPOでも修士号と職歴が求められるIOMを目指す人にも、そのまま当てはまる言葉です。
働きながら大学院に進むまでの道のりは、パスウェイズ・ジャパン石井麻鈴さんのインタビューで読めます。
職務経験
職務経験は、応募するポストの分野に関連していることが大切です。
途上国の現場での経験に加えて、物流、データ分析、保健、法律などの専門的な経験も、IOMの仕事につながります。
どの順番で経験を積むかは、国際協力キャリアロードマップが参考になります。
語学
語学は、IOMの公用語である英語・フランス語・スペイン語のうち、少なくとも1つを実務で使える力が必要です。
国連の公用語は6つですが、IOMの公用語は3つという点が特徴です。
フランス語圏のアフリカや中南米の事務所では、英語以外の公用語ができると仕事の幅が広がります。
IOMで働く日本人の国際職員は45人
IOM駐日事務所によると、2026年1月時点で45人の日本人が国際職員として働いています(参考:国連IOM駐日事務所)。
国連関係機関の全体では、2024年末時点で979人の日本人が専門職以上の職員として働いていました(参考:外務省国際機関人事センター)。
駐日事務所は、世界各地で働く日本人職員の体験を「フィールドレポート」として紹介しています。
2023年6月のレポートで紹介された船川夏子さんは、通信会社などの民間企業でキャリアを始め、フランスの大学で移民と開発に関する修士号を取得しました。
その後、フランス語を生かしてセネガルの日系商社とJICAセネガル事務所で働き、JPOに合格しています。
2017年にJPOとして赴任したモロッコ事務所でプログラム・コーディネーターを6年務め、2023年2月にタイ事務所へ移りました。
レポートの時点では、タイで働くミャンマーなどからの移住労働者がディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に就けるよう、データの収集や職業訓練に関わっています。
民間企業とJICAで積んだ経験と語学力を生かして、IOMに入った例です。
JICAで働く道は、JICAで働くには?の記事にまとめています。
IOMの職員は2025年の1年で約3割減少
IOMを目指すなら、最近の資金と人員の変化も知っておく必要があります。
2025年1月20日、米国のトランプ大統領は、対外援助の新たな支出を90日間止めて見直す大統領令に署名しました。
その後、IOMは2025年3月18日に、その年の拠出の見込みが30%減ることを受けて、組織の見直しを発表しました。
米国が資金を出す事業が世界で大きく減ったことも理由に挙げています。
ジュネーブ本部の職員を約20%、人数にして250人以上減らし、事業の縮小や終了で世界の6,000人を超える職員に影響が出るという内容です。
IOMの2025年の年次報告によると、2025年末の職員数は1万5,814人で、2024年末から約30.5%減りました。
2025年の収入の合計も、前年より24%少ない28.4億ドルでした。
ポストが減ると空席公募の数も少なくなり、競争は厳しくなります。
IOMだけを目標にせず、移民や外国人の課題に関わる別の職場で経験を積みながら機会を待つという考え方も必要になります。
IOM以外で移民・外国人の課題に関わる道
移民や外国人の課題に関わる方法は、IOMで働くことだけではありません。
日本に暮らす外国人は2025年末時点で412万5,395人となり、初めて400万人を超えました(参考:出入国在留管理庁)。
出入国在留管理庁・自治体
出入国在留管理庁は、外国人の入国や在留の審査に加えて、外国人が暮らしやすい社会をつくる「共生」の施策も担う国の機関です。
一方で、在留資格のない人の長期収容をめぐる問題もあり、その現状は入管問題とはの記事で解説しています。
自治体では、外国人住民の相談窓口や日本語教室の運営など、多文化共生の施策に関わる仕事があります。
国や自治体で社会課題に関わる働き方は、政府機関で社会課題解決に関わるキャリアの記事で紹介しています。
NGO・NPO
日本には、難民や外国人労働者、人身取引の被害者を支えるNGO・NPOがあります。
石井麻鈴さんのように、日本語の学習や進学、就職を支える団体で働き、現場の経験を積む道もあります。
外国人労働者が日本で直面している課題は、外国人労働者問題とはの記事で解説しています。
NPOで働く人のキャリアの入り口は、NPOで社会課題解決に関わるキャリアの記事にまとめています。
企業
日本企業の中にも、外国人の仕事や暮らしの課題に、事業として取り組む会社があります。
Guidable株式会社
Guidable株式会社は、日本に暮らす外国人の仕事探しと、企業の外国人採用を支える会社です。
「国籍を理由に不便を感じる場面をなくしたい」という考えのもと、在留外国人向けの求人サイト「Guidable Jobs」や、外国人向けのメディアを運営しています。
登録者は約50万人で、229の国と地域にわたります。
2026年7月には、アジア各国で日本語教育と人材紹介を手がける株式会社ONODERA USER RUNのグループに加わりました(参考:Guidable株式会社)。
ボーダレスハウス株式会社
ボーダレスハウス株式会社は、日本人と外国人が一緒に暮らす国際交流シェアハウスを運営する会社です。
「外国人には家を貸したくない」という不動産の慣習で、外国人が部屋を借りにくい問題に向き合うため、2008年に事業を始めました。
ボーダレスハウスは入居者の半数をその国の人にする決まりで、日本・韓国・台湾でシェアハウスを運営しています。
多文化共生に取り組むほかの会社は、多文化共生に取り組む企業10選で紹介しています。
難民の保護を担うUNHCRについてはUNHCRで働くには?の記事で、ほかの国際機関の役割は国際機関一覧の記事で紹介しています。
よくある質問
IOMで働くことについて、よく寄せられる質問にお答えします。
Q. IOMとUNHCRは何が違いますか?
A. UNHCRは、難民や庇護希望者、無国籍者などを国際的に保護する国連機関です。一方のIOMは、移民、国内避難民、人身取引の被害者、難民など、移動する人全般を対象に、移住の分野を専門に扱う機関です。難民の法的な保護を中心に働きたいならUNHCR、移住全般に関わりたいならIOMが目安になります。IOMは1951年に政府間機関として設立され、2016年に国連の関連機関になりました。日本では、IOMが第三国定住の難民の健康診断や語学研修、来日までの移送を担っており、難民の支援にも関わっています。
Q. IOMのインターンに給料はありますか?
A. IOMのインターンの多くには、住まいや生活費の一部を補う月々の手当が支給されます。ただし、大学の制度や奨学金で派遣される場合などは、手当の対象外になることがあります。応募できるのは19〜36歳で、学部の最終学年か大学院に在籍している人、または卒業から1年以内にインターンを始められる人です。期間は2〜6か月で、最長9か月です。英語・フランス語・スペイン語のいずれかを実務で使える力も求められ、IOM駐日事務所で募集が出ることもあります。
Q. 新卒でIOMの職員になれますか?
A. 大学を卒業してすぐIOMの国際専門職になるのは、簡単ではありません。若手向けのJPOでも、日本の外務省の制度では修士号と2年以上の職歴が求められるためです。学生のうちは、学部の最終学年から応募できるインターンに挑戦できます。卒業後は企業やJICA、NGO、自治体などで移民や外国人に関わる経験を積み、大学院で専門性を身につけてから、JPOや空席公募に挑戦するのが現実的な道筋です。大学院の専攻も早めに考えておきましょう。
Q. IOMで働く日本人は何人いますか?
A. IOM駐日事務所によると、2026年1月時点で45人の日本人が国際職員として働いています。国連関係機関の全体では、2024年末時点で979人の日本人が専門職以上の職員でした。IOMは1995年から日本のJPOを受け入れており、JPOとして入り、モロッコやタイの事務所で働いてきた日本人職員もいます。駐日事務所の「フィールドレポート」では、日本人職員がどんな経歴を経てIOMに入ったのかを読むことができます。
まとめ
IOMで働くには、移住に関わる専門性と実務経験、そして英語・フランス語・スペイン語のいずれかを使いこなす語学力が求められます。
入り口は、空席公募、JPO、インターン、国連ボランティアで、日本人の若手にとってはJPOが代表的なルートです。
2025年以降は職員が大きく減っているため、まずはIOMの採用サイトで関心のある分野の募集要項を読み、必要な経験を確かめてみてください。
そのうえで、出入国在留管理庁や自治体、NGO、外国人を支える企業など、日本の中で経験を積みながら機会を待つのも一つの方法です。
移民や外国人の課題に取り組む企業は、ココキャリアで探すことができます。
国際協力に関わる企業やキャリアの情報は、国際協力に取り組む企業・キャリア情報のページにもまとめています。
日本に暮らす外国人は400万人を超え、移住の課題はもう遠い国の話ではありません。
身近な現場で一歩ずつ経験を重ねて、移動する人の暮らしを支える仕事に近づいていきましょう。
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この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
