2040年に国内で約20GW。

これは、経済産業省を事務局とする官民協議会がまとめた「次世代型太陽電池戦略」が掲げる、ペロブスカイト太陽電池の導入目標です。

平地面積あたりの太陽光設備容量は、日本がドイツの2倍を超え、導入量は主要国で最大級です。

参考:次世代型太陽電池戦略(2024年11月)

置く場所がもう足りない。

その行き詰まりを越える技術として、ペロブスカイト太陽電池の名前をニュースで見かけた方もいるはずです。

ただ、「曲がる太陽電池」という紹介だけでは、何がどう新しいのか、いつ手に入るのかまでは分かりません。

この記事では、ペロブスカイト太陽電池の何がどう新しいのかを、公表された年月とあわせて解説します。

仕組みと名前の由来、シリコン太陽電池との違い、日本発といわれる理由、メリットと課題を順に追います。

後半では、国の目標、企業の動き、再生可能エネルギーに関わる仕事も取り上げます。

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ペロブスカイト太陽電池とは

ペロブスカイト太陽電池とは、3種類のイオンがABX3という結晶構造で並ぶ材料を発電層に用いた太陽電池の総称です。

次世代型太陽電池戦略は、代表的な組み合わせとして、Aに有機アンモニウム、Bに鉛、Xにヨウ素を挙げています。

経済産業省は、これを国内研究者が開発した日本発の技術と位置づけています。

「ペロブスカイト」は結晶構造の名前

産業技術総合研究所は、ペロブスカイトを灰チタン石(かいチタンせき)の結晶のことだと説明しています。

そして、その独特の結晶構造が「ペロブスカイト構造」と呼ばれます。

材料ではなく原子の並び方の名前が、そのまま太陽電池の呼び名になっています。

参考:産業技術総合研究所「ペロブスカイト太陽電池とは?」(2025年10月31日更新)

ヨウ素と鉛を発電層に使う

ペロブスカイト太陽電池のフィルム型は、発電層の主要材料にヨウ素と鉛を使います。

シリコン太陽電池の発電層の主要材料はケイ素です。

この材料の違いが、後で触れる日本の強みと、鉛をめぐる課題の両方につながっていきます。

塗って印刷してつくれる

資源エネルギー庁は、ペロブスカイト太陽電池について、材料をフィルムなどに塗布・印刷して作れると説明しています。

製造工程が少なく大量生産ができるため、低コスト化が見込まれています。

参考:資源エネルギー庁「エネこれ」前編(2024年2月9日)

再生可能エネルギー全体の種類や広がりは、以下の記事で整理しています。

≫再生可能エネルギーとは?脱炭素社会を支える新しい働き方を紹介


従来のシリコン太陽電池との違い

作り方が違うと、できあがるものの形と置ける場所も変わります。

資源エネルギー庁によると、いま普及している太陽電池の95%はシリコン系です。

次世代型太陽電池戦略が示した主な違いは、次のとおりです。

項目 シリコン太陽電池 ペロブスカイト太陽電池(フィルム型)
発電層の主要材料 ケイ素 ヨウ素、鉛
製造温度 1,400℃以上 150℃
製造日数 3日以上 1日程度を目指す
光吸収係数 〜10⁴/cm 〜10⁵/cm(日陰・室内等でも発電可能)
施工 地上・屋根・建材一体 壁面・曲面・屋根・建材一体など

参考:次世代型太陽電池戦略p17(2024年11月)

軽くて薄く、曲げられる

資源エネルギー庁は、シリコン系が重くて厚みもあるのに対し、ペロブスカイト太陽電池は小さな結晶の集合体が膜になっていると説明します。

そのため折り曲げやゆがみに強く、軽くつくれます。

産業技術総合研究所は、シリコン太陽電池の約10分の1の軽量化を目指すと記しています。

置ける場所が広がる

軽量でフレキシブルなタイプは、ビルの壁面や耐荷重が小さい工場の屋根にも設置できます。

屋内・小型タイプなら、IoTデバイスなど小型の機器にも貼れます。

クリーンなエネルギーをめぐる世界の目標と現状は、以下の記事で確認できます。

≫【SDGs目標7】エネルギーをみんなに そしてクリーンにとは?現状と私たちにできること

日本発の技術といわれる理由

ペロブスカイト太陽電池は、生まれた場所と主原料の両方が日本と結びついています。

2009年の発表と、その後の効率の伸び

科学技術振興機構は、宮坂力教授が2009年にこの太陽電池を最初に提案したと記しています。

次世代型太陽電池戦略によると、2009年に初めて作製されたときの発電効率は3〜4%でした。

2012年には、固体型が英国と日本の研究者らによって共同開発されます。

安定性が向上したことを皮切りに、研究開発が加速しました。

そして2024年11月現在、発電効率は26.7%まで向上しています。

この26.7%は、NREL(米国国立再生可能エネルギー研究所)の効率チャートに載る研究用セルの最高記録です。

製品として売られるモジュールの効率とは別のものだという点に、注意が必要です。

参考:科学技術振興機構「ペロブスカイト型太陽電池の開発」(2017年度更新)

主原料のヨウ素は日本が世界第2位

資源エネルギー庁は、主な原料であるヨウ素について、日本の生産量が世界シェアの約3割を占め、世界第2位だと説明しています。

第1位はチリで、シェアは約6割です。

国の戦略も、原材料を含む強靱なサプライチェーンの構築に期待を寄せています。

クリーンな技術で社会課題に挑む企業は、以下の記事にまとめています。

≫クリーンテックに取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大手企業からベンチャー


ペロブスカイト太陽電池のメリット

利点は、設置場所、発電できる環境、サプライチェーンの3つに分けられます。

太陽光発電の適地不足に対応できる

日本の太陽光発電は適地の制約と地域との共生上の課題に直面していると、次世代型太陽電池戦略は指摘します。

ペロブスカイト太陽電池は、これまで設置が困難だった場所にも置けるため、再エネの導入拡大と地域共生を両立するものとして期待されています。

環境省の2026年5月20日の資料は、導入支援事業の補助対象のイメージとして、体育館やアーチ屋根、バスシェルターを挙げています。

政府実行計画は、従来型では設置が難しい耐荷重性の低い屋根や建物の壁面にも導入できるとしています。

気候変動への対策が急がれる理由は、以下の記事にまとめました。

≫【2026年最新】気候変動とは?原因・影響・対策をわかりやすく解説

日陰や室内でも発電できる

光吸収係数はシリコンより1桁大きく、日陰や室内でも発電できます。

屋外の強い日射がなくても働く点が、機器に貼る用途につながります。

原材料を国内で確保しやすい

ヨウ素の生産量が世界第2位であることは、経済安全保障の面でも利点があると資源エネルギー庁は説明しています。

ペロブスカイト太陽電池の課題

期待の大きい技術ですが、実用化までの宿題もはっきりしています。

耐久性の低さ

資源エネルギー庁が課題に挙げるのは、寿命が短く耐久性が低いことです。

次世代型太陽電池戦略は、フィルム型について、発電コストの低下に向けて引き続き耐久性の向上に関わる技術開発が必要だとしています。

大面積化と効率の低下

もうひとつの課題が、大面積化の難しさです。

産業技術総合研究所は、研究用の小面積(1平方センチメートル)であればシリコン太陽電池と遜色ない効率になってきたと説明しています。

一方、製品として扱う1平方メートル程度のパネルでは、結晶シリコン太陽電池と比べて変換効率がまだ低いままです。

国の戦略が並べる海外企業の変換効率にも、実測値と目標値、実験効率が混在しています。

国内では、積水化学工業株式会社が2024年2月までに、30センチ幅で耐久性10年相当・発電効率15%の製造に成功しています。

セルの最高記録と、実際に並べられる大きさの製品とでは、数字の意味が違う点に注意が必要です。

鉛の使用と環境・安全性

代表的なペロブスカイト太陽電池は、発電層に鉛を使います。

NEDOは「太陽光発電開発戦略2025」で、ペロブスカイト太陽電池モジュールは鉛を含有しているため、排出後の処理方法の検討が必要だとしています。

リサイクルに関する技術開発の検討は、端緒についたばかりです。

リサイクル技術開発の公募要領では、鉛等の有害物質を定量的に検証する方針も示されました。

長期設置場所と廃棄リサイクル処理で、人体や周囲環境に影響を及ぼさないことを確かめるという内容です。

安全性が否定されているわけでも、確立しているわけでもなく、検証と制度づくりが進んでいる段階です。

参考:NEDO「太陽光発電開発戦略2025」、NEDO公募要領(ペロブスカイト太陽電池リサイクル技術開発)

コストの高さ

短期の段階では、既存のシリコン太陽電池より高価格になると見込まれています。

安くなるのはこれからであり、2026年時点で価格面の優位があるわけではありません。


国の政策と導入目標

政府は目標と支援策を時間軸で示しています。

資源エネルギー庁の2025年9月の資料によると、次世代型太陽電池戦略の内容は、2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画に盛り込まれました。

主な目標は次のとおりです。

項目 内容 補足
発電コスト 2025年に20円/kWh、2030年に14円/kWh グリーンイノベーション基金の目標
自立化水準 2040年に10〜14円/kWh以下 10円は大幅なコスト低減時
生産体制 2030年を待たずにGW級 次世代型太陽電池戦略
国内導入量 2040年に約20GW 大幅な低減時は約40GW〜

技術開発は、NEDOに造成された2兆円のグリーンイノベーション基金で支えられています。

資源エネルギー庁によると、この基金の「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」は、2023年8月の決定で150億円が積み増され、648億円となりました。

環境省の2026年5月20日の資料は、政府実行計画(2025年2月18日閣議決定)でペロブスカイト太陽電池の率先導入が定められたと記しています。

政府部門の導入目標は、2026年夏頃に策定される予定です。

2035年と2040年を目標年とし、2040年に国内で20GW導入するという需要創出の目標から逆算して決めるとされています。

自治体の動きもあります。

東京都は2035年に約1GW、2040年に約2GWの導入目標を公表しました。

参考:資源エネルギー庁(2025年9月)、環境省(2026年5月20日)

気候変動を事業の軸に据える企業は、以下の記事で取り上げました。

≫気候変動に取り組む企業10選!就職・転職におすすめのベンチャーを中心に紹介

企業の取り組み

フィルム型、ガラス型、タンデム型と、3社がそれぞれ異なる形で製品化を進めています。

積水化学工業株式会社

積水化学工業株式会社は、2026年3月27日のニュースリリースで、フィルム型ペロブスカイト太陽電池「SOLAFIL」の事業開始を決定したと発表しています。

製品設計・製造・販売を担うのは、積水ソーラーフィルム株式会社です。

2026年度は現有設備による限定的な生産量にとどまります。

そのうえで、2027年度の100MW規模生産ラインの立ち上げを最優先事項として取り組むとしています。

供給の対象は、環境省の導入支援事業で採択されたさいたま市、滋賀県、西日本高速道路株式会社、福岡県、福岡市と、東京都の先行導入事業です。

いずれも金属屋根に設置する製品を提供するという内容で、設置できる場所は現時点では限られます。

参考:積水化学工業(2026年3月27日)

パナソニック ホールディングス株式会社

パナソニック ホールディングス株式会社は、2026年3月2日のプレスリリースで、ガラス型ペロブスカイト太陽電池の長期実証実験を開始すると発表しました。

場所は、技術部門「西門真新棟」の窓部です。

6mm+6mmの合わせガラス構成で、サイズやグラフィックパターン、透過性の異なる5枚を設置し、意匠性と発電性能を比較します。

同社は2025年11月から、グリーンイノベーション基金の実証事業にも着手しました。

参考:パナソニック ホールディングス(2026年3月2日)

株式会社カネカ

株式会社カネカは、2026年3月18日のニュースリリースで、さいたま市と連携協定を締結したと発表しています。

同市の本庁舎敷地内で、公共施設として国内初となるタンデム型ペロブスカイト太陽電池の屋外実証実験を行う内容です。

期間は2026年3月18日から2027年3月26日までの予定です。

タンデム型は、ヘテロ接合型結晶シリコン太陽電池の上にペロブスカイト太陽電池を積層した構造です。

同社によると、タンデム型の製品販売は2028年度に開始する予定です。

参考:カネカ(2026年3月18日)

再生可能エネルギーに取り組む企業は、以下の記事で幅広く取り上げました。

≫再生可能エネルギーに取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大手企業からベンチャー


再生可能エネルギーに関わる仕事

いま挙げた課題は、そのまま人の手を必要としている場所です。

材料をつくる人、屋根に留める人、置く場所を決める人が、それぞれ別の専門性で関わっています。

材料・デバイス開発

材料・デバイス開発は、発電層の組成や封止の方法を変えながら、効率と耐久性を両立させる仕事です。

化学や材料工学の知識に加え、失敗した条件を丁寧に記録していく根気が活きます。

生産技術・量産プロセス

生産技術・量産プロセスは、実験室でできたものを、幅のあるフィルムやガラスで安定してつくれるようにする仕事です。

積水化学工業が最優先に掲げる100MW規模の生産ライン立ち上げも、この領域にあたります。

施工・設置の技術開発

施工・設置の技術開発は、軽くて曲がる太陽電池を、屋根や壁にどう留めるかを決める仕事です。

次世代型太陽電池戦略は、安全性や施工性を考慮した施工方法の確立と、ガイドライン策定の検討を挙げています。

自治体・公共部門の脱炭素担当

自治体・公共部門の脱炭素担当は、どの建物に導入するかを選び、補助事業を使って計画に落とす仕事です。

環境省の事例集には、耐荷重の制約で従来の太陽電池を置けない施設を選んだ自治体の判断が残されています。

リサイクル・環境安全の技術開発

リサイクル・環境安全の技術開発は、使い終わったモジュールから鉛やヨウ素をどう扱うかを設計する仕事です。

NEDOが端緒についたばかりと書く領域であり、これから担い手が求められます。

再エネ業界の仕事内容と必要なスキルは、以下の記事で詳しく整理しています。

≫再生可能エネルギー業界で働くには?仕事内容・必要スキル・キャリアパスを解説

脱炭素に関わる職種の広がりは、以下の記事が参考になります。

≫グリーンジョブとは?意味・注目される理由・将来性をわかりやすく解説

よくある質問

仕組み、実用化の時期、課題について、よく出てくる3つの疑問です。

Q. ペロブスカイト太陽電池とは何ですか?

A. ペロブスカイト太陽電池とは、3種類のイオンがABX3という結晶構造で並ぶ材料を発電層に用いた太陽電池の総称です。経済産業省の次世代型太陽電池戦略は、代表的な組み合わせとしてAに有機アンモニウム、Bに鉛、Xにヨウ素を挙げ、国内研究者が開発した日本発の技術と位置づけています。ペロブスカイトは灰チタン石の結晶のことで、その結晶構造の名前がそのまま呼び名になっています。材料をフィルムなどに塗布・印刷して作れるため、軽くて曲げられる太陽電池を実現できます。

Q. ペロブスカイト太陽電池はいつ実用化されますか?

A. 一部の製品はすでに事業化の段階に入っています。積水化学工業株式会社は2026年3月27日に、フィルム型「SOLAFIL」の事業開始を決定したと発表しました。同社は2026年度は現有設備による限定的な生産量とし、2027年度の100MW規模生産ラインの立ち上げによる供給量拡大を最優先事項に挙げています。国の次世代型太陽電池戦略は、2030年を待たずにGW級の生産体制を構築し、2040年に国内で約20GWの導入を目指すとしています。

Q. ペロブスカイト太陽電池の課題は何ですか?

A. 資源エネルギー庁は、寿命が短く耐久性が低いこと、大面積化が難しいこと、変換効率の向上を課題に挙げています。研究用セルの最高効率は2024年11月現在で26.7%ですが、製品サイズのモジュールでは同じ数字にはなりません。加えて、発電層に鉛を使うため、排出後の処理方法の検討が必要だとNEDOが記しており、リサイクル技術の開発は端緒についたばかりです。価格も、短期的には既存のシリコン太陽電池より高くなると見込まれています。


まとめ

ペロブスカイト太陽電池とは、ABX3という結晶構造をもつ材料を発電層に使い、塗布や印刷で作れる太陽電池です。

軽くて曲げられるため、耐荷重の低い屋根やビルの壁面という、これまで空いていた場所に発電の役割を与えられます。

一方で、耐久性、大面積化、鉛の扱い、コストという宿題は公的資料にはっきり書かれています。

そのどれもが、仕事として人を待っている領域です。

通勤や通学で通る建物の屋根と壁を見上げて、もし発電できたらどれくらいの面積になるかを数えてみてください。

再生可能エネルギーに関わる会社で働く道を探すなら、ココキャリアに並ぶ再エネ分野の掲載企業を見比べてみるのも一歩になります。

数字がまだ動いている技術だからこそ、これから関わる人が結果を左右します。

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