ADBの日本向けファクトシートによると、2025年12月末時点で、150人の日本人がアジア開発銀行(ADB)の国際職員として働いています。
国際職員全体に占める割合は9.23%です。
1966年の設立から現在の神田眞人総裁まで、11人の総裁はみな日本から選ばれてきました。
「アジアの貧困に、お金と政策の両面から関わりたい」と考えたとき、ADBは日本人にとって身近な国際機関の一つです。
ただ、どんな職種があり、どの入り口から入れるのか、年収はどのくらいなのかは、外からは見えにくいものです。
ここでは、ADB職員の仕事と職種、採用ルート、求められる学歴・経験・語学、給与表、日本人職員の実例、最近の組織の変化を、ADBの公式情報をもとにまとめました。
ADBに入らなくても、開発金融やアジアの開発に関われる道もあわせて紹介します。
※【企業様向け】国際協力への取り組みをPRしませんか?
国際協力に関する企業やキャリアの情報は、以下のページから探せます。
アジア開発銀行(ADB)とは
アジア開発銀行(ADB)とは、アジア・太平洋の途上国に融資や技術協力を行い、貧困の削減と持続的な成長を支える国際開発金融機関です。
ADBによると、1966年12月19日に31の加盟国・地域で業務を始めました。
本部はフィリピンの首都マニラにあり、加盟国・地域は69まで増えています。
そのうち50がアジア・太平洋の域内、19が欧米などの域外の国です。
ADBの年次報告書によると、各国に置く現地事務所は、駐日代表事務所などの代表事務所を除いて、2025年末時点で40か所です。
2025年の支援額は過去最大の約440億ドルで、そのうちADB自身の資金によるものが290億ドルあまりでした(参考:アジア開発銀行)。
ADBが取り組む社会課題
ADBが最大の目標に掲げているのは、アジア・太平洋の貧困問題の解決です。
道路や電力、水道、学校、病院といった生活の基盤づくりのほか、気候変動への対応や民間企業の育成、国どうしの経済協力にも取り組んでいます。
融資の相手の多くは途上国の政府ですが、民間企業への出資や保証も行っています。
浅川雅嗣前総裁のもとでは、2030年までに気候変動対策のために少なくとも1,000億ドルを動員する目標を掲げました(参考:ADB)。
支援の対象となる発展途上国の捉え方を知っておくと、ADBの仕事がイメージしやすくなります。
日本との深いつながり
ADBは、日本との関わりがとりわけ深い国際機関です。
初代の渡辺武氏から、2025年2月24日に就任した11代目の神田眞人氏まで、総裁はすべて日本出身です。
神田総裁は総務会の投票で全会一致の支持を受けて再選され、2026年11月24日から5年間の2期目に入ります(2026年9月1日発表)。
日本は設立時からの加盟国で、2025年末時点の出資比率は15.571%です。
米国も同じ15.571%で、日本と米国が並んで最大の出資国です。
議決権の割合も、両国とも12.747%でした(参考:ADBの年次報告書)。
東京・霞が関の霞が関ビルには、ADBの駐日代表事務所と、研究機関であるアジア開発銀行研究所(ADBI)が置かれています(参考:財務省)。
国連の機関との違い
ADBは国連の機関ではなく、加盟国が出資してつくる国際開発金融機関です。
国連の事務局などとは給与や採用の仕組みが異なるため、主な違いを整理しておきましょう。
| 項目 | 国連の事務局など | アジア開発銀行(ADB) |
|---|---|---|
| 位置づけ | 国連本体と、その下の基金・計画など | 国連システムの外にある国際開発金融機関 |
| 給与 | 国際人事委員会(ICSC)が定める共通の給与表 | ADB独自の給与表(毎年見直し) |
| 若手の採用枠 | 国連YPP(32歳以下・学士以上・職務経験は不問) | ADBのYPP(32歳以下・学士以上・3年以上の職務経験) |
| 外務省のJPO | 派遣の対象 | 派遣の対象外 |
若手向けの「YPP」は名前も年齢の条件も同じですが、ADBのYPPには3年以上の職務経験が求められます。
外務省のJPO派遣制度は、世界銀行やIMFなどの国際金融機関を派遣の対象外としており、派遣先の一覧にADBは含まれていません。
ADB職員の仕事と職種
ADBでは、途上国への融資や政策助言を、経済・金融・工学・法務などの専門性をもつ職員が担っています。
職員は、世界から採用されて各地を異動する国際職員と、勤務地で採用されるローカル職員に分かれます。
国際職員の職位は、若手のYP、専門職のTI1〜TI4、管理職のM1〜M3という区分です。
専門職には、国の経済を分析するエコノミストや、交通・エネルギー・水・教育・保健などの分野で事業をつくる専門官がいます。
途上国の政府と一緒に事業を計画し、融資の条件を決め、実施を見守り、成果を評価するまでが一連の仕事です。
財務やリスク管理、法務、調達、人事、ITといった、銀行を動かすための仕事もあります。
ADBの採用ページでは、2026年7月に、本部の人事専門官(法務、TI1)や、ネパール事務所で民間投資を担う職員、ラオス事務所のプロジェクト・アナリストなどが募集されていました。
このうちネパールとラオスのポストは、職位が「TL」で始まる、現地で採用される職員の募集です。
ADBの仕事は、ODAやNGOの活動とあわせて国際協力の一部を担っています。
ADB職員になるルート
ADBの職員になる入り口は、空席公募、ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)、インターンなどです。
どの入り口でも、ADBの加盟国の国籍と、英語の読み書きと会話の力が求められます。
空席公募
空席公募は、ポストごとに募集される職員の採用です。
募集は採用ページで随時公開され、応募はADBの採用システム「ACES」から行います。
ADBが求める人物は、大学院の学位があることが望ましく、専門分野か途上国の開発事業で十分な経験がある人です。
ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)
ADBのYPPは、若手の国際職員を採用して育てるプログラムです。
応募できるのは、32歳以下で、学士以上の学位と、ADBの仕事に関係する3年以上の職務経験を持つ人です。
職務経験には、インターンの期間も含めてかまいません。
採用されると任期3年の職員としてマニラの本部に配属され、18か月後に別の部署へ異動します。
最初の12か月の試用期間を終えるとYP2に昇格し、配属先のポストに就くとTI1の職員になります。
募集は毎年9月上旬に始まり、2026年は9月1日から30日まででした。
書類選考を通ると、オンライン試験と録画面接があり、その先に進んだ人は12月から2月にかけて面接を受けます。
インターンシップ
ADBのインターンは、修士課程か博士課程に在籍している大学院生が対象です。
学部生は応募できず、インターンの期間中ずっと、ADBの加盟国の大学院に在籍している必要があります。
望ましい条件は、関連する職務経験が2〜3年あることです。
期間は8〜12週間で、多くはマニラの本部で、調査の課題に取り組みます。
インターンには手当が支払われ、航空券代の一部もADBが負担しますが、住居費や交通費、食費は自分で払います。
2026年の募集は3月16日が締め切りで、3月から4月に選考を行い、6月にインターンを始める日程でした。
インターンを修了しても、ADBへの採用が約束されるわけではありません。
日本で開かれる採用イベント
ADBは、日本で採用の説明会を開くこともあります。
2025年6月には、マニラ本部の人事担当者が来日し、東京サマーキャリアフォーラムへの出展や、キャリア・セッション、個別の相談会を東京で行いました(参考:財務省)。
なお、日本政府の資金によるADB-日本奨学金プログラムは、ADBから借り入れをしている途上国の人が大学院で学ぶための制度で、日本人は対象ではありません。
国際機関で働くキャリア全体の入り口は、国際機関で社会課題解決に関わるキャリアの記事で解説しています。
同じ国際開発金融機関である世界銀行の採用ルートや給与は、世界銀行で働くには?の記事で紹介しています。
ADB職員に求められる学歴・経験・語学
ADBの国際職員を目指すなら、学歴・職務経験・語学の3つを準備しておきましょう。
学歴
学歴は、YPPでは学士以上が条件ですが、ADBは大学院の学位があることを望ましいとしています。
YPPでは、応募する仕事に関係する分野の学位と、学業での実績も求められます。
ADBの仕事に近いのは、経済学や開発学、公共政策、金融、工学などの分野です。
海外の大学院への進学を考えるなら、海外大学院に強い正規留学エージェントを使う方法もあります。
職務経験
職務経験は、YPPでも3年以上が必要です。
途上国での事業や、民間企業での財務・分析・事業づくりの経験は、ADBの仕事に生かしやすい経験です。
語学
語学は、英語で仕事ができることが必須です。
インターンの募集でも、優れた英語力が条件になっています。
ADB職員の年収はTI1で11万4,500〜20万400ドル
ADBの給与は、国連とは別の独自の給与表で決まります。
2026年1月1日から適用されている国際職員の給与表では、主な職位の年額は次のとおりです。
| 職位 | 最低額 | 中間点 | 最高額 |
|---|---|---|---|
| TI1 | 11万4,500ドル | 15万7,500ドル | 20万400ドル |
| TI2 | 16万3,700ドル | 19万6,400ドル | 22万9,200ドル |
| TI3 | 19万5,400ドル | 23万4,500ドル | 27万3,600ドル |
| TI4 | 22万3,300ドル | 26万7,900ドル | 31万2,600ドル |
| M1 | 22万9,300ドル | 29万2,400ドル | 35万5,700ドル |
前年の2025年1月1日に適用された給与表では、TI1の最低額は10万6,000ドルでした。
国際職員の給与は米ドル建てで、ローカル職員の給与は主に現地の通貨で支払われます。
給与の水準は同じような仕事の市場と比べて決まり、本人の評価とあわせて毎年見直すしくみです。
税金の扱いは国籍や勤務地によって異なり、加盟国の中には、自国民のADBからの給与に課税する権利を残している国もあります。
ADBによると、年26日の休暇があり、国外から赴任する国際職員には住宅手当や、子ども3人までの教育手当、年1回の帰国旅費も支給されます。
日本人の国際職員は150人で全体の9.23%
ADBで働く日本人の国際職員は、この1年で増えています。
ADBのファクトシートによると、2025年12月末時点の日本人の国際職員は150人でした。
2024年12月末の137人から、1年で13人増えました(参考:アジア開発銀行)。
ADBの年次報告書の国籍別の表では、国際職員はインドの153人が最も多く、日本の150人が続きます。
ADBで働く日本人の一人が、ADB駐日代表事務所の連載で紹介された田村由美子さんです。
田村さんは大学院で開発経済を学び、国際金融情報センターでタイやインドシナ諸国を担当するエコノミストとして働きました。
その間もADBに応募を続け、1998年にタイやミャンマーを担当するエコノミストとして採用されています。
ADBを選んだのは、国際機関では珍しく途上国に本部があり、開発の課題を日常で感じられると考えたからだそうです。
ベトナム事務所に7年勤め、山あいの村で安全な水を確保する小規模なインフラ事業を立ち上げました。
紹介された2022年1月当時の肩書は、東アジア局の首席業務調整専門官です(参考:アジア開発銀行)。
民間や研究機関で専門性を磨き、そこから国際機関に進む道筋は、国際協力を仕事にするとは?の記事でも紹介しています。
設立協定の改定で融資能力は50%拡大へ
ADBを目指すなら、最近の組織の変化も知っておきたいところです。
ADBは、今後10年で1,000億ドルの融資の余力を生み出す資本管理の改革を、2023年に承認済みです。
2025年11月14日には、設立協定にある融資の上限の規定をなくす改定に61の加盟国・地域が賛成し、承認に必要な票が集まりました。
1966年の設立以来、初めての協定の改定で、年間の融資を50%増やし、2034年までに360億ドルを超える水準にする道が開かれました(参考:アジア開発銀行)。
組織も大きくなっています。
年次報告書によると、職員を配置するポストの数は、2024年末の4,197から2025年末には4,519に増えました。
2026年の内部管理費の予算は約10億7,900万ドルで、2025年の予算の約9億9,200万ドルを上回っています。
民間向けの融資を2030年までに年130億ドルへと4倍に増やす目標もあり、ADBは仕事の量を増やす方向にあります。
ADB以外で開発金融やアジアの開発に関わる道
アジアの開発に、お金の流れから関わる方法は、ADBで働くことだけではありません。
金融の力で社会課題に取り組む会社は、ファイナンスに取り組む企業・キャリア情報から探せます。
JICA
JICA(国際協力機構)は、途上国への円借款や技術協力を行う、日本の政府開発援助の実施機関です。
ADBとの連携も深く、JICAが出資してADBが管理する「アジアインフラパートナーシップ信託基金」は、バングラデシュやインド、フィリピンなどの太陽光発電事業に融資しています(参考:アジア開発銀行)。
職員の採用ルートはJICAで働くには?の記事にまとめています。
開発コンサルタント
開発コンサルタントは、ADBやJICAが資金を出す事業の調査や計画、実施の管理を担う仕事です。
ADBが資金を出す事業のコンサルタント業務は、加盟国の会社が受注します。
ADBの日本語版ファクトシートでは、2020〜2024年にADBの事業でコンサルタント契約の額が多かった日本の会社として、次の2社が挙げられています。
株式会社建設技研インターナショナル
株式会社建設技研インターナショナルは、建設技術研究所のグループ会社で、政府開発援助(ODA)を中心に途上国のインフラづくりに関わる開発コンサルタントです。
2020〜2024年にADBの事業で受注したコンサルタント契約は4,325万ドルで、日本の会社で最も多い額でした。
分野は、公共部門の管理と運輸・交通です。
株式会社オリエンタルコンサルタンツ
株式会社オリエンタルコンサルタンツは、道路や都市づくりなどの計画・設計を手がける総合建設コンサルタントです。
2020〜2024年にADBの事業で3,415万ドルのコンサルタント契約を受注し、日本の会社で2番目の額でした。
農業・農村開発や運輸・交通、水と都市のインフラなど、幅広い分野の事業に関わっています。
仕事内容やなり方は、開発コンサルタントとは?の記事で解説しています。
金融機関
金融機関の中にも、ADBと一緒にアジアの開発に資金を出している会社があります。
三井住友信託銀行株式会社
三井住友信託銀行株式会社は、信託や資産運用、融資などを手がける信託銀行です。
ADBと一緒に、アジア・太平洋の気候変動に関わる基金に投資しています。
ADBとともに中国の保健・医療分野の事業にも投資しているほか、途上国の貿易やサプライチェーンを支えるADBの金融プログラムにも参加しています(参考:アジア開発銀行)。
国際協力に取り組むほかの会社を知りたい人は、国際協力に取り組む企業10選も読んでみてください。
ほかの国際機関の役割は、国際機関一覧の記事で紹介しています。
よくある質問
アジア開発銀行で働くことについて、よく寄せられる質問にお答えします。
Q. アジア開発銀行は国連の機関ですか?
A. ADBは国連の機関ではなく、加盟国が出資してつくる国際開発金融機関です。本部はフィリピンのマニラにあり、69の国・地域が加盟しています。職員の給与は、国連の共通制度ではなく、ADB独自の給与表で決まります。若手向けのYPPも国連のYPPとは別の制度で、ADBでは3年以上の職務経験が必要です。外務省のJPO派遣制度も国際金融機関を対象外としており、派遣先にADBは含まれないため、ADBの募集に直接応募することになります。
Q. ADB職員の年収はどのくらいですか?
A. 2026年1月1日から適用されている国際職員の給与表では、専門職のいちばん下の職位であるTI1の年額が11万4,500〜20万400ドルです。給与は米ドル建てで、市場の水準と本人の評価をもとに毎年見直されます。国外から赴任する国際職員には、住宅手当や子どもの教育手当、年1回の帰国旅費も支給され、年26日の休暇もあります。税金の扱いは国籍や勤務地によって異なるため、具体的な条件は募集要項や採用ページで確認しましょう。
Q. 新卒でADBの職員になれますか?
A. 大学を卒業してすぐにADBの国際職員になるのは簡単ではありません。若手向けのYPPでも、学士以上の学位と3年以上の職務経験が求められるためです。学生のうちは、大学院に進んでインターンに挑戦する方法があります。卒業後は企業や開発コンサルタント、JICAなどで経験を積み、32歳以下のうちにYPPに応募するか、専門性を磨いて空席公募に挑戦するのが現実的な道筋です。大学院への進学時期も、早めに計画しておきましょう。
Q. ADBのインターンに給料はありますか?
A. ADBのインターンには、期間中に手当が支払われます。航空券代の一部もADBが負担しますが、住居費や交通費、食費は自分で払う必要があり、出発前に保険にも入らなければなりません。対象は、修士課程か博士課程に在籍している大学院生で、学部生は応募できません。期間は8〜12週間で、多くはマニラの本部で調査の課題に取り組みます。2026年の募集は3月16日が締め切りで、6月にインターンを始める日程でした。修了しても採用が約束されるわけではありません。
まとめ
ADBで働くには、開発や金融に関わる専門性と途上国での実務経験、そして英語で仕事ができる力が求められます。
入り口には、空席公募、YPP、インターンがあり、YPPは32歳以下で3年以上の職務経験が条件です。
まずはADBの採用ページで、関心のある分野の募集要項を読んでみてください。
足りない経験が見えたら、企業や開発コンサルタント、JICAで積んでいくのが近道です。
アジアの途上国で事業を行う企業は、ココキャリアで探すことができます。
ADBは総裁がすべて日本出身で、150人の日本人が国際職員として働く、日本と縁の深い国際機関です。
あなたの「アジアの貧困をなくしたい」という思いも、確かなキャリアにつなげていけます。
関連記事
【企業様向け】国際協力への取り組みをPRしませんか?

この記事の監修者
吉田宏輝
COCOCOLOREARTH代表、社会活動家。
COCOCOLOREARTHでは、社会課題解決を軸にした就職・転職活動を支援するインタビューメディアの代表として、100人以上の社会活動家にインタビュー、記事執筆やイベント登壇などを行う。
