近年、「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉を耳にする機会が増えました。

その中でも「産業と技術革新の基盤を作ろう(目標9)」は、持続可能な社会の発展に欠かせない要素です。

しかし、「産業と技術革新の基盤を作る」とは具体的にどういうことなのか、どのような課題があり、私たちは何をすればよいのでしょうか?

本記事では、SDGs初心者向けに「産業と技術革新の基盤を作ろう」について詳しく解説します。

産業と技術革新の基盤を作ろうとは

SDGsの目標9である「産業と技術革新の基盤を作ろう」は、持続可能な経済成長と社会の発展を実現するために、強靭なインフラを整備し、持続可能な産業化を推進し、技術革新を促すことを目的としています。

具体的には、道路や電力、水道、通信ネットワークといった基盤となるインフラを整備し、環境に配慮した産業の発展を支援し、新しい技術や研究開発を促進することが求められています。

これにより、経済の発展だけでなく、社会の安定や雇用の創出にもつながります。

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SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年に国連が採択した国際的な目標で、2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットから成り立っています。

「貧困の撲滅」「気候変動対策」など幅広い分野が含まれています。

SDGsは「誰一人取り残さない(Leave no one behind)」という理念のもと、経済成長、社会の公平性、環境保護をバランスよく発展させることを目指しています。


産業と技術革新の基盤を作ろうを構成するターゲット

目標9には、8つのターゲットが設定されています。

9.1 全ての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靭(レジリエント)なインフラを開発する。
9.2 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030 年までに各国の状況に応じて雇用及び GDP に占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。
9.3 特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸与などの金融サービスやバ リューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。
9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導 入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能 力に応じた取り組みを行う。
9.5 2030 年までにイノベーションを促進させることや 100 万人当たりの研究開発従事者数を大幅に 増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとする全ての国々の産 業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。
9.a アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・ 技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靭(レジリエント)なインフラ開発 を促進する。
9.b 産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国 内における技術開発、研究及びイノベーションを支援する。
9.c 後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020 年までに普遍的かつ 安価なインターネットアクセスを提供できるようにする。

産業と技術革新の基盤を作ろうが生まれた背景

「産業と技術革新の基盤を作ろう」が生まれた背景には、世界が直面する重要な課題があります。

先進国と開発途上国の間には依然として経済格差が大きく、特に後発開発途上国では工業化が進まず、貧困や不平等が深刻です。

また、従来の産業活動は環境破壊や気候変動の原因となっており、持続可能な技術への転換が急務です。

さらに、技術格差も課題で、開発途上国では技術革新の恩恵を受けられていない状況があります。

これらの課題を解決し、経済成長と環境保護を両立させるために、この目標が設定されました。

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産業と技術革新の基盤を作ろうの現状

現在、世界各国でインフラ整備や技術革新が進められています。しかし、国や地域によって発展の度合いには大きな差があります。

インフラ整備の遅れ

特に開発途上国や後発開発途上国では、基本的なインフラ(道路、電力、水道、通信など)が整備されていない地域が多く存在します。

例えば、サハラ以南のアフリカでは、多くの人が安定した電力供給を受けられず、道路網も未整備なため、経済活動が制限されています。

インフラ整備の遅れは、人々の生活の質や経済発展に直接的な影響を与えます。

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工業化の進展不足

後発開発途上国では、工業化が進んでおらず、経済発展が遅れています。

これらの国々は、農業や資源依存型の経済構造から脱却できず、付加価値の高い産業を育成するための基盤が整っていません。

工業化が進まない理由としては、技術力の不足、資金調達の難しさ、市場アクセスの制限などが挙げられます。

例えば、小規模企業や零細企業は、金融サービスへのアクセスが限られており、事業拡大や技術革新が難しい状況です。

このような状況を打破するためには、包摂的で持続可能な工業化を推進し、雇用を創出することが重要です。

技術革新の偏り

先進国では技術革新が急速に進んでいますが、開発途上国ではその恩恵を受けられていない状況があります。

特に情報通信技術(ICT)やクリーンエネルギーの分野では、技術格差が顕著です。

例えば、後発開発途上国では、インターネットへのアクセスが限られており、デジタル経済への参加が困難です。

また、環境に優しい技術の普及も進んでおらず、従来の産業プロセスによる環境負荷が大きいままです。

このような技術格差を解消するためには、先進国からの技術移転や国際協力が不可欠です。

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産業と技術革新の基盤を作ろうの課題

産業と技術革新の基盤を作ろうの課題を解説します。

資金不足

持続可能なインフラ整備や技術革新を進めるためには、莫大な資金が必要です。

しかし、特に開発途上国や後発開発途上国では、資金調達が難しい状況にあります。

これらの国々は、経済基盤が脆弱で、民間投資を呼び込むための環境が整っていません。

また、政府の財政状況も厳しく、公共事業に十分な予算を割くことができません。

さらに、国際的な資金支援も十分ではありません。

先進国や国際機関からの援助はあるものの、必要とされる規模には達していないのが現状です。

このような資金不足を解消するためには、官民連携による投資の促進や、新しい資金調達メカニズムの構築が求められています。

技術移転の障壁

先進国から開発途上国への技術移転が進んでいないことも、大きな課題です。

技術移転には、知的財産権の問題や、技術を受け入れるための人材やインフラの不足が障壁となっています。

例えば、環境に優しい技術やICT(情報通信技術)は、開発途上国にとって非常に有益ですが、これらの技術を導入するためには、専門知識や設備が必要です。

また、先進国企業が持つ技術を開発途上国に提供する際、知的財産権の保護や利益配分に関する合意が難しい場合もあります。

このような障壁を乗り越えるためには、国際的な協力体制の強化や、技術移転を促進するためのルール作りが重要です。

環境負荷の軽減

産業活動による環境負荷を軽減することも、重要な課題です。

従来の産業プロセスは、大量のエネルギー消費や廃棄物の発生を伴い、気候変動や環境破壊の原因となっています。

特に開発途上国では、環境に配慮した技術や設備が普及しておらず、持続可能な産業への転換が進んでいません。

例えば、化石燃料に依存したエネルギーシステムや、非効率な製造プロセスは、温室効果ガスの排出を増加させています。

このような状況を改善するためには、クリーンエネルギーの導入や、資源効率の向上が不可欠です。

また、環境に優しい技術の開発と普及を促進するための政策や国際協力も求められています。

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災害リスクへの対応

気候変動や自然災害のリスクが高まる中、災害に強いインフラの整備が急務です。

特に開発途上国では、インフラが脆弱で、災害が発生した際に大きな被害を受けやすい状況にあります。

例えば、洪水や地震によって道路や橋が損壊すると、経済活動が停滞し、復旧に長い時間と多額の費用がかかります。

このようなリスクを軽減するためには、災害に強いインフラを設計・整備することが重要です。

また、早期警戒システムや防災計画の策定も必要です。

包摂的な工業化の実現

工業化を進める際に、誰も取り残さない「包摂的な」アプローチが求められています。

しかし、現状では、女性や若者、社会的に弱い立場にある人々が、工業化の恩恵を受けられていない場合があります。

例えば、工業化が進む地域では、雇用機会が増える一方で、労働環境が劣悪であったり、賃金が低かったりするケースが少なくありません。

また、技術革新が進むことで、従来の仕事が失われる「技術的失業」も懸念されています。

このような課題を解決するためには、公正な労働環境の整備や、新しいスキルを身につけるための教育・訓練プログラムの提供が重要です。


産業と技術革新の基盤を作ろうに取り組む企業3選

産業と技術革新の基盤を作ろうに取り組む企業を紹介します。

【SDGs目標9】産業と技術革新の基盤を作ろうに取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大企業からベンチャー
開発コンサルに取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大企業からベンチャー

NTCインターナショナル株式会社

NTCインターナショナル株式会社は、70カ国以上で240以上のプロジェクト実績を持つ国際協力コンサルティング会社です。

農業・農村開発、水資源・灌漑開発、平和構築・復興支援など、幅広い分野で途上国の課題解決を支援しています。

特に、アフリカ地域での実績が豊富です。持続可能な開発を目標に、現地の人々と共に働き、地域社会の発展に貢献しています。

技術と信頼を基盤に、人々の暮らしを改善し、より良い未来を築くことを目指しています。

HP:https://www.ntc-i.co.jp/

NTCインターナショナル株式会社の事業内容や創業理由を詳しく見る

株式会社建設技研インターナショナル

建設技研インターナショナル株式会社は、半世紀以上にわたり、世界の人々の暮らしを支えるインフラ整備に貢献してきた国際的な建設コンサルタント会社です。

開発途上国を中心に、水資源管理、道路・交通、環境など、幅広い分野でプロジェクトを展開しています。

技術と信頼を基盤に、持続可能な社会の実現を目指し、世界中のインフラ課題解決に取り組んでいます。

特に、SDGsの達成に向けた貢献にも力を入れており、質の高いコンサルティングサービスを提供することで、人々の生活の向上と社会の発展に貢献しています。

HP:https://www.ctii.co.jp/

株式会社建設技研インターナショナルの事業内容や創業理由を詳しく見る

ビンコーインターナショナル株式会社

ビンコーインターナショナル株式会社は、途上国の医療分野と教育分野における課題解決に特化した国際開発コンサルティング会社です。

JICAなどの国際機関と連携し、医療施設の建設から機材の調達、さらにはプロジェクトの評価まで、一連のコンサルティングサービスを提供しています。

特に、パキスタンの洪水被害に対する母子保健機材の復旧計画など、緊急性の高いプロジェクトにも対応しており、途上国の保健医療体制の強化に貢献しています。

HP:http://binkointernational.la.coocan.jp/

ビンコーインターナショナル株式会社の事業内容や創業理由を詳しく見る

産業と技術革新の基盤を作ろうに対して私たちができること5選

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持続可能な製品を選ぶ

私たちが日常生活で購入する製品やサービスは、産業活動に直接影響を与えます。

環境に優しい製品や、持続可能な方法で生産された商品を選ぶことで、企業に「持続可能性」を重視する姿勢を伝えることができます。

例えば、リサイクル素材を使用した商品や、フェアトレード認証を受けた製品を選ぶことが挙げられます。

また、エネルギー効率の高い家電や、再生可能エネルギーを利用したサービスを利用することも有効です。

消費者としての選択が、企業の生産プロセスや技術革新の方向性を変える力を持っていることを意識しましょう。

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技術革新への理解を深める

技術革新は、持続可能な社会を実現するための鍵です。

私たちが新しい技術やイノベーションに関心を持ち、その重要性を理解することで、社会全体の意識を高めることができます。

例えば、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、再生可能エネルギー技術などについて学び、その可能性や課題について考えてみましょう。

また、地元のイベントやセミナーに参加して、技術革新に関する情報を共有することもおすすめです。

技術への理解が深まれば、政策や企業の取り組みに対する支持や要望をより具体的に伝えることができます。

小規模企業を支援する

小規模企業や零細企業は、地域経済の活性化や雇用創出に重要な役割を果たしています。

特に開発途上国では、これらの企業が持続可能な産業の発展を支える鍵となります。

私たちができることとして、地元の小規模企業や社会的企業を応援することが挙げられます。

例えば、地元の商店で買い物をしたり、クラウドファンディングを通じて新しいビジネスを支援したりすることができます。

また、フェアトレード商品を選ぶことで、開発途上国の小規模生産者を直接支援することも可能です。

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省エネ・リサイクルを実践する

産業活動による環境負荷を軽減するためには、個人レベルでの省エネやリサイクルの実践が重要です。

これらの行動は、資源の効率的な利用と廃棄物の削減に貢献します。

具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

・電気や水の使用量を減らす
・再生可能エネルギーを利用する
・プラスチックごみを減らし、リサイクルを徹底する
・不用品を再利用したり、リサイクルショップを利用したりする

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国際協力に参加する

開発途上国や後発開発途上国に対する支援は、持続可能な産業と技術革新の基盤を作るために不可欠です。

私たちも、国際協力の一環としてさまざまな形で貢献することができます。

例えば、以下のような方法があります。

・国際支援団体への寄付やボランティア活動に参加する
・開発途上国の製品を購入し、現地の経済を支援する
・SNSやブログを通じて、開発途上国が抱える課題や支援の重要性を発信する
・学校や地域で、国際協力やSDGsに関する啓発活動を行う

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まとめ

「産業と技術革新の基盤を作ろう」は、持続可能な未来を築くために欠かせない目標です。

強靭なインフラ整備や技術革新を促進することで、経済成長や社会の発展が可能になります。

課題も多いですが、私たち一人ひとりが意識を持ち、行動を起こすことが大切です。

まずは、身近なところから始めてみませんか?

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