気候変動、化学物質、生き物、ごみ。

日本の環境問題を幅広く研究しているのが、茨城県つくば市に本部を置く国立環境研究所です。

2026年4月1日時点で、役員と職員が318人、契約職員が616人の総勢934人が働いています(参考:環境省 国立研究開発法人審議会資料)。

「環境の研究を仕事にしたい。でも、研究所にはどうすれば入れるのかわからない」。

博士号は必要なのか、研究者以外の仕事はあるのか、気になることは多いですよね。

ここでは、国立環境研究所の仕事と、研究系職員・研究系契約職員・事務系職員などの採用区分を紹介します。

求められる学位や任期、給与も、2026年に出された募集要項と公表資料をもとにまとめました。

国立環境研究所以外で、環境の研究職に就く道も取り上げます。

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国立環境研究所とは

国立環境研究所とは、環境省が所管する国立研究開発法人で、環境問題を総合的に研究する国の研究機関です。

1974年に「国立公害研究所」として発足し、1990年に今の名前に変わりました。

2001年に独立行政法人となり、2015年からは国立研究開発法人として運営されています。

本部はつくば市にあり、福島県三春町の福島地域協働研究拠点や、滋賀県の琵琶湖分室でも研究を行っています。

2025年度の運営費交付金は約184億円で、自己収入は約51億円でした(参考:環境省 国立研究開発法人審議会資料)。

注意したいのは、職員の身分です。

国立環境研究所は2006年4月に、役職員が国家公務員の身分を持たない法人に移りました(参考:環境省 報道発表資料(2006年2月9日))。

そのため、職員になるのに国家公務員試験は必要なく、研究所が独自に公募や採用試験を行っています。

国の行政機関や公的機関で働くキャリアの全体像は、政府機関で社会課題解決に関わるキャリアの記事で紹介しています。

研究分野

研究は、テーマごとに分かれた「領域」や「センター」で進められています。

地球システム領域

地球システム領域は、人工衛星「いぶき」を使った温室効果ガスの観測など、地球規模の環境問題を研究する部門です。

気候変動の原因となる温室効果ガスの量を宇宙から測り、世界の対策に役立つデータをつくっています。

日本の温室効果ガスの排出量と吸収量をまとめ、毎年国連に提出する「温室効果ガスインベントリ」づくりの支援もこの領域の仕事です。

インベントリは、パリ協定のもとでも国際的な審査を受ける、日本の排出量の基礎データです。

資源循環・環境リスク・生物多様性などの領域

このほか、廃棄物のリサイクルや処分を扱う資源循環領域、化学物質が人や生き物に与える影響を調べる環境リスク・健康領域があります。

大気汚染や水質汚濁を扱う地域環境保全領域、外来生物や絶滅危惧種の保全に取り組む生物多様性領域も、研究の柱です。

社会システム領域では、環境と経済が両立する社会への転換に向けた研究を、行政とも協力して進めています(参考:国立環境研究所 事務系職員採用案内)。

子どもの健康と環境の関係を全国で追いかける「エコチル調査」も、国立環境研究所が中心となって進める大きな事業です。

気候変動適応センター

気候変動適応センターは、2018年12月1日、気候変動適応法の施行に合わせて国立環境研究所の中に設けられました(参考:国立環境研究所 気候変動適応センター)。

温室効果ガスを減らす「緩和」に対して、暑さや大雨など、すでに起きている変化に備える取り組みを「適応」と呼びます。

センターは、気候変動の影響や適応の情報を集めて分析し、情報サイト「A-PLAT」で発信しています。

自治体や、自治体が設ける地域気候変動適応センターに技術的な助言をするのも、センターの仕事です。

研究に加えて、地域の行政を支える役割が大きいのが、このセンターの特徴です。


採用区分と応募要件

国立環境研究所の採用ページでは、研究系職員、事務系職員、研究系契約職員、高度技能専門員、アシスタントスタッフの5つの区分で募集が出されています(参考:国立環境研究所 採用情報)。

2026年に出された募集要項をもとに、主な区分を表にまとめました。

区分 主な仕事 主な応募要件(2026年の公募の例) 任期
テニュアトラック型任期付研究員 研究 博士、または修士以上の学位と研究業績 2027年4月着任なら最長2032年3月末まで。業績が優秀ならパーマネント研究員に
特別研究員・准特別研究員 研究プロジェクトの研究 特別研究員は博士、准特別研究員は修士 年度ごとの更新。更新の上限あり
リサーチアシスタント 研究の補助 公募ごとに定める 公募ごとに定める
事務系職員 企画・総務・研究支援 リクナビ・マイナビの募集要項で確認(文系・理系出身者はほぼ半々) 定めなし
高度技能専門員 専門的な技術業務 修士修了、または大卒後5年以上の実務経験など 年度ごとの更新。更新の上限あり
アシスタントスタッフ 事務や研究の補助 パソコンでの資料作成など 年度ごとの更新。更新の上限あり

契約職員616人の内訳は、高度技能専門員が246人、アシスタントスタッフが233人、特別研究員が84人、リサーチアシスタントが23人などです。

特別研究員やリサーチアシスタントなど、研究に携わる契約職員は合わせて137人でした(2026年4月1日時点)。

研究や政策の分野で社会課題に関わる働き方は、研究・政策のキャリアの記事でも紹介しています。

研究系職員

研究系職員は、任期の定めのない研究員をめざして採用される研究者です。

2026年10月時点で出ていた研究系職員の公募3件は、いずれも「テニュアトラック型任期付研究員」の募集でした。

テーマは、循環経済を確立するための資源循環の研究、持続可能な社会に向けて研究成果の社会実装をめざす研究、福島での廃棄物処理システムの開発です。

テニュアトラックとは、任期のあいだに研究の成果を出せば、任期の定めのない職に移れる仕組みです。

資源循環領域の公募では、2027年4月に着任した場合の任期は最長で2032年3月末まででした(参考:国立環境研究所 公募R09-K-01)。

その期間中の業績が優秀であれば、任期の終了とともに「パーマネント研究員」に採用する予定とされています。

任期の定めのない常勤の研究職員169人の2025年度の平均年間給与は約1,058万円で、平均年齢は49.4歳でした(時間外手当を除く。参考:国立環境研究所 役職員の報酬・給与等(2025年度))。

研究系契約職員

研究系契約職員は、決まった研究プロジェクトを担うために雇われる研究者です。

2026年10月時点では、10件の募集が出ていました。

テーマは、PFASなど化学物質の動きの予測、衛星による温室効果ガスの観測、野生動物の管理に関する社会科学の研究などです。

2026年3月以降に出された公募では、特別研究員の基本給は年俸565万2,000円からで、雇用期間は年度末までです(参考:国立環境研究所 公募R08-R-031)。

研究所の事業計画や勤務の実績によっては、年度ごとに更新されることがあります。

事務系職員

事務系職員は、研究所の運営と研究者の活動を支える、任期の定めのない職員です。

事務系職員の募集は、国立環境研究所の採用ページからリクナビやマイナビの掲載ページに案内されています。

研究所が事務職員の独自採用を本格的に始めたのは2009年度で、事務職員には20代から30代が多くいます(参考:国立環境研究所 事務系職員採用案内)。

2025年度の事務・技術職員59人の平均年間給与は約757万円で、平均年齢は39.1歳でした(時間外手当を除く。参考:国立環境研究所 役職員の報酬・給与等(2025年度))。

高度技能専門員・アシスタントスタッフ

高度技能専門員は、研究に必要な専門的な技術や知識を生かして働く契約職員です。

たとえば、温室効果ガスインベントリをまとめる業務の募集では、理系の大学院修士課程を修了しているか、大学を卒業して5年以上の実務経験があることが条件でした(参考:国立環境研究所 公募R08-E-048)。

環境分野の実務経験がある場合は、文系の学部卒でも応募できるとされています。

アシスタントスタッフは、事務や研究の補助を担う契約職員で、2027年度に向けた事務補助業務の募集では20人程度を採用する予定でした(参考:国立環境研究所 公募R09-A-201)。

研究員に求められる学歴・経験

国立環境研究所の研究員をめざすなら、大学院で研究の経験を積むことが前提になります。

求められる学位や経験は、区分によって異なります。

博士号は必要か

2026年10月時点で出ていた研究系職員の公募3件のうち、2件は博士の学位を求めていました。

2026年9月の資源循環領域の公募は、採用時点で博士以上の学位を持つこと(取得見込みを含む)、または同等の業績や能力があることを条件にしていました。

あわせて、国際誌に載った複数の筆頭論文など、目立った研究業績も求められています。

一方、社会システム領域の公募は、修士以上の学位で応募できました(参考:国立環境研究所 公募R09-K-02)。

この公募では、法学や政治学、行動経済学といった社会科学も、対象となる専門分野に挙がっています。

研究系契約職員では、特別研究員は博士、准特別研究員は修士の学位を条件とする公募がありました(参考:国立環境研究所 公募R08-R-026)。

社会人から大学院に進む道

いったん社会に出てから大学院で学び直し、研究の道に進む人もいます。

働きながらの進学や、仕事を辞めて学び直す選択には、費用やキャリアの悩みがつきものです。

経験者の声は、社会人大学院とキャリアの悩みの記事にまとめています。

応募に必要なもの

研究系職員の応募では、履歴書のほか、研究業績の一覧、主な論文、研究の抱負などを出します。

資源循環領域の公募では、研究所の職員以外の人を1人以上含む2人からの推薦状も必要でした。

この公募では、研究に必要な日本語の力として、日本語能力試験のN2レベル相当以上も条件になっています。

学生のうちから、学会での発表や論文の執筆に取り組み、研究者とのつながりをつくっておくことが大切です。


国立環境研究所で働く人のキャリア

国立環境研究所に関わる働き方は、研究者として入る道だけではありません。

3つのパターンに分けて紹介します。

研究者として入る

研究者として入る道は、大学院で専門性を磨き、特別研究員やテニュアトラック型任期付研究員の公募に応募する働き方です。

募集は研究テーマごとに出されるため、自分の研究分野と合う公募を見つけることが入り口になります。

公募は随時出されるので、採用ページを定期的に確認しておきましょう。

研究を支える事務・行政の仕事

研究を支える仕事は、予算や人事、広報、研究プロジェクトの調整を通じて、環境研究を前に進める働き方です。

国立環境研究所の事務職員は、企画部や総務部などで研究所の運営を担うほか、研究の領域に配属されて研究者を支えることもあります。

事務職員の文系出身者と理系出身者の比率は、ほぼ半々です。

2〜3年ごとに部署が変わり、福島地域協働研究拠点への異動や、環境省などへの出向の可能性もあります。

研究を支える仕事は、研究所の外にもあります。

COCOCOLOR EARTHがインタビューした佐藤慎一さんは、新卒で受けた国家公務員試験に落ち、日立製作所に入社しました。

学生時代にClimate Youth Japanの活動でCOP16に参加し、環境省の職員と話す機会が多くありました。

自分も環境省で働きたいと考え、会社で働きながら試験の勉強を続けて合格し、転職します。

環境省では、横浜で開かれたIPCC総会の準備や、環境省が資金を出した環境研究に取り組む研究者のフォローアップなどを担当しました。

その後は地方事務所で多くの現場を回り、取材当時の2022年には、民間企業で補助金の業務に携わっていました。

研究を行政の側から支えた経験は、Circular In-finity佐藤慎一さんのインタビューで読めます。

研究を学んで民間へ

研究を学んで民間へ進む道は、大学院で身につけた研究の視点を、企業の事業に生かす働き方です。

2025年に取材したフジクリーン株式会社の江濵誠さんは、専門学校で土木と測量を学び、海洋土木の建設会社で約3年働きました。

防波堤などをつくるなかで、人工物が生き物のすみかを奪っているのではないかと感じ、大学と大学院で海洋環境を学び直します。

大学院時代には太平洋の研究航海に参加し、人間にとって「きれいな海」が生き物にとってはきびしい環境にもなると気づいたそうです。

2016年に浄化槽メーカーのフジクリーン工業(現フジクリーン株式会社)に入社し、営業を5年経験しました。

取材当時は、経営企画部で中長期の経営計画づくりを担当していました。

研究航海での気づきから浄化槽の仕事にたどりつくまでは、フジクリーン株式会社 江濵誠さんのインタビューで紹介しています。

2022年に取材した斉藤優也さんは、自然保護の分野で研究職をめざして大学院に進みました。

しかし学ぶほどに、「経済活動をないがしろにしては、自然や生態系が守れない」と考えるようになります。

大学院に通いながら農業系のベンチャー企業で働き、取材当時は食品ロスの削減に取り組む合同会社クアッガの代表を務めていました。

研究ではなく経済の側から環境を守る道を選んだ経緯は、合同会社クアッガ斉藤優也さんのインタビューで読めます。

国立環境研究所以外で環境の研究職に就く道

環境を研究する仕事は、国立環境研究所の外にもあります。

働く場所ごとに、4つのパターンを紹介します。

地方環境研究所

地方環境研究所は、都道府県や政令指定都市などが設けている環境の研究機関で、「地環研」とも呼ばれます。

国立環境研究所の「環境展望台」では、全国67の都道府県市にある地方環境研究所が紹介されています(参考:国立環境研究所 環境展望台)。

大気や水の測定、化学物質の調査など、地域の環境を見守る仕事が中心です。

各地の地方環境研究所は「全国環境研協議会」をつくり、国立環境研究所との共同研究も行っています。

埼玉県環境科学国際センターや長野県環境保全研究所のように、地域気候変動適応センターの役割を担う研究所もあります(参考:A-PLAT「地域気候変動適応センター一覧」)。

多くは自治体の機関なので、入り口は各自治体の採用試験です。

大阪府立環境農林水産総合研究所のように地方独立行政法人が運営する研究所もあり、その場合は法人ごとの採用情報を確認します。

大学・研究機関

大学や大学共同利用機関も、環境研究の担い手です。

たとえば京都気候変動適応センターは総合地球環境学研究所が、茨城県地域気候変動適応センターは茨城大学が拠点になっています(参考:A-PLAT「地域気候変動適応センター一覧」)。

大学で研究職をめざす場合も、博士号を取ったあとに任期付きのポストで経験を積み、常勤の職に応募する道があります。

企業の研究・技術職

企業の研究・技術職は、自社の製品やサービスを通じて環境の課題を解決する働き方です。

再生可能エネルギーや省エネ技術、温室効果ガスの見える化など、気候変動に取り組む企業では、研究や技術の知識が生かせます。

業界や職種の全体像は、環境問題に携わる仕事の記事で紹介しています。

行政や国際機関、NGO

研究の成果を政策や現場に生かす仕事を選ぶ道もあります。

国立公園の現場で自然を守りたい人には、自然保護官(レンジャー)という選択肢があります。

環境省や国際機関、環境NGOなど、組織の種類ごとの特徴は、環境分野で働ける組織一覧の記事にまとめています。


よくある質問

国立環境研究所で働くことについて、よく寄せられる質問にお答えします。

Q. 国立環境研究所の給与はどのくらいですか?

A. 国立環境研究所が公表した2025年度の資料では、任期の定めのない常勤の研究職員169人の平均年間給与は約1,058万円で、平均年齢は49.4歳でした。事務・技術職員59人は平均39.1歳で約757万円です。いずれも時間外手当を含みません。契約職員の特別研究員は、2026年3月以降の公募で基本給が年俸565万2,000円からとされています。年齢や職位で差が大きいため、応募する際は募集要項の給与欄もあわせて確認しましょう。

Q. 博士号がなくても研究員になれますか?

A. 区分によります。2026年に公募されたテニュアトラック型任期付研究員では、資源循環領域が博士以上の学位を、社会システム領域が修士以上の学位を求めていました。どちらも同等の能力があると認められれば応募できる書き方ですが、論文などの研究業績も問われます。研究系契約職員では、特別研究員は博士、准特別研究員は修士を条件とする公募がありました。准特別研究員として研究の経験を積みながら、博士をめざす道も考えられます。

Q. 任期付研究員から常勤の研究員になれますか?

A. テニュアトラック型任期付研究員は、常勤への移行を前提にした仕組みです。2026年9月に出された公募では、2027年4月に着任した場合の任期は最長で2032年3月末までで、期間中の業績が優秀であれば、任期の終了とともに任期の定めのないパーマネント研究員に採用する予定とされていました。一方、特別研究員などの契約職員は年度ごとの更新で、更新できる期間にも上限があります。応募前に区分ごとの任期を確かめておきましょう。

Q. 文系でも国立環境研究所で働けますか?

A. 働けます。事務系職員の採用案内では、事務職員の文系出身者と理系出身者の比率はほぼ半々とされています。仕事は、研究所の企画、人事や会計、広報、研究プロジェクトの予算管理など幅広く、2〜3年ごとに部署が変わります。研究職でも、社会システム領域の2026年の公募では、法学や政治学、行動経済学などの社会科学が対象の専門分野に挙がっていました。環境と社会の関係を研究したい文系の人にも、活躍できる道があります。

まとめ

国立環境研究所で働く道は、研究者として公募に応募するほか、事務系職員や高度技能専門員として研究を支える道もあります。

研究系職員の公募では博士の学位と研究業績を求めるものが多く、テニュアトラックを経て常勤の研究員になる流れです。

まずは採用ページで、いま出ている公募の研究テーマと応募要件を読んでみてください。

学生なら、関心のある研究室の論文を読んだり、一般公開のイベントで研究者の話を聞いたりするのもおすすめです。

環境問題に取り組む企業は、ココキャリアで探すことができます。

環境の研究に関わる方法は、研究所の中にも外にもたくさんあります。

あなたの得意なことを生かせる場所を見つけて、環境を守る仕事に一歩ずつ近づいていきましょう。

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