「マイノリティへの配慮。」

このような言葉を、ニュースなどで聞いた人も多いのではないでしょうか。

マイノリティは社会の中で少数を占め、立場の弱い者やその集まりと非常に広く定義されます。

従来の出身、民族、信仰、文化的なマイノリティに加えて、最近では性的マイノリティという言葉もよく聞きますよね。

では、多様化するマイノリティについてどのように向き合えばいいでしょうか。

この記事では、マイノリティについて実例を交えながらお伝えします。

後半では、アメリカでマイノリティとして生活している筆者の実体験もお話ししますので、一緒にこの問題について考えていきましょう。

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マイノリティとは?

マイノリティ(少数者)とは、ある社会を占める人たちとは違う属性を持った個人やその集団を指します。

英語で「少ない」という意味のminorという形容詞から生まれました。

現代では少数派という意味を越え、少数派であることで差別など被害を受けている人たちという意味で使われることが多いです。

また、現代社会は常に多様化しているので、「マイノリティ」に分類されるものも非常に多くなっています。

マイノリティとマジョリティの違い

マイノリティとマジョリティは反対の言葉で、マジョリティは「多数派」という意味を持ちます。

例えば日本においては、日本人がマジョリティで、外国から来た人たちがマイノリティです。

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数が少ない=マイノリティ?

一般的には、数が多い方がマジョリティと言えます。

しかし、例外もあり、それは数が少ない社会集団の方が権力を持つ場合です。

例えば、アパルトヘイトが行われていた頃、南アフリカの全人口に占める割合は2割程度でしたが、白人が権力を握っていました。

このように数的には少数であっても、力を持っている方がマジョリティとなります。

アパルトヘイトに関する詳細はこちら:国際連合広報センター「人類への犯罪」


出身地や民族、文化に基づくマイノリティの例

出身地や民族、文化に基づくマイノリティの例を紹介します。

  • 外国人、移民、難民
  • 宗教
  • 被差別集落

外国人、移民、難民

主に外国人や移民・難民の方がマイノリティとなります。

日本にも移民の人たちが増えてきましたが、まだ日本人の人口に比べればマイノリティです。

また、彼らは外国人差別を受けたり、権利を制限されたりしています。

例えば、外国人であることを理由にサービスの提供を拒否されるなどです。

ただし、これには言葉の面などから賛否両論があります。

例えば、一部のマナーの悪い外国人に対して言語の壁から注意できず、結果として周囲のお客さんに迷惑がかかるという主張があります。

一方で、国際人権規約などの観点から入店拒否が違法と認定されたケースもあります。

また、日本のアイヌ民族や琉球民族、アメリカのネイティブアメリカンといった少数民族もマイノリティとなります。

少数民族の人たちも結婚や就職で差別されることが多いです。

​​参考:法務省|外国人の人権を尊重しましょう

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宗教

1つの国や地域で主流ではない宗教を信仰している人たちは、宗教的マイノリティとなります。

例えば、日本におけるイスラム教徒や、イスラム教国における仏教徒やキリスト教徒です。

ミャンマーにおけるロヒンギャ問題など、世界のさまざまな場所で宗教に起因する争いや迫害が起こっています。

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被差別集落

被差別部落出身の人たちがマイノリティとなり、差別されることがあります。

被差別集落とは、日本の歴史的な過程で、身分差別を受けてきた人たちが多く住む地域です。

そのような集落は、経済社会的に低い水準に置かれることを強いられてきたため、結婚や就職などで差別を受けるケースがみられます。

参考:法務省「部落差別(同和問題)を解消しましょう」

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社会的弱者がマイノリティになる事例

社会的弱者がマイノリティになる事例を紹介します。

  • 障がい・病気
  • 被災者・避難者
  • 子ども・老人

障がい・病気

障がいを持っていたり、病気を患っていたりする人が健常者と比べてマイノリティになるケースです。

このような人たちは、雇用の機会を失ってしまったり、職につけても非常に安い賃金で働かざるを得なかったりします。

また、近年バリアフリーの施設も増えていますが、マイノリティであるが故に配慮が行き届かないケースもあります。

さらには、新型コロナウイルス感染症の影響で多くの人がマスクをつけています。

しかし、病気などの理由でマスクができない人に対して暴言を吐くなどといった差別も近年見られるようになりました。

参考文献
法務省「障害を理由とする偏見や差別をなくしましょう」 
法務省「ハンセン病患者・元患者やその家族に対する偏見や差別をなくそう」 
コロナ禍における障害のある方への配慮について 

被災者・避難者

災害などで避難を強いられた人たちが、避難先の地域でマイノリティになる事例です。

特に東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故で避難を強いられた人たちが風評被害から差別の対象になるなどの被害もあります。

参考:法務省「震災等の災害に起因する偏見や差別をなくしましょう」

子ども・老人

子どもや老人がマイノリティになるケースは、数というよりも力の要因が強いかもしれません。

例えば、労働世代の大人が高齢者を差別するエイジズムや子どもを違法に働かせる児童労働などが挙げられます。

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性的マイノリティについて

マイノリティと聞くと、LGBTをはじめとした性的なマイノリティを思い出す人も多いのではないでしょうか。

LGBTはレズビアン(同性を愛する女性)、ゲイ(同性を愛する男性)、バイセクシュアル(男女双方を愛することができる人)、トランスジェンダー(出生時の性別と異なる性自認を持つ人)を指します。

LGBTにとらわれず、侮蔑語から派生し、LGBTには含まれない性的嗜好であるクィアや、他者に対する性的な関心が少ないことを示すアセクシュアルも存在します。

LGBTQ+の人たちは、侮蔑的な言葉を投げられたり、職業上で不当な扱いを受けることがあります。

また、公的サービスにおいても同性のパートナーを「夫婦」と同等に扱うことは難しいことが現状です。

例えば、医療でパートナーの安否や容態の説明を受けられないなどの問題が発生しています。

性的マイノリティについての記事はこちら。

参考:LGBTの現状と課題

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マイノリティについて現状と今後の課題

マイノリティについて現状と今後の課題を解説します。

マイノリティの理解は進んでいる?

欧米諸国を中心に、マイノリティの権利や生命を尊重する動きが出てきています。

例えば、カナダでは2005年の時点で、同性カップルの権利を認める法律が制定されています。

アメリカ、イギリス、台湾でも法制化が進んでいたり、裁判所が同性カップルの権利を認める判決を出しています。

また、#BlackLivesMatterや#MeTooなどインターネットを通じてマイノリティの権利を主張するケースも多くあります。

日本でもマイノリティも住みやすい社会にしようとする取り組みが進んでいるようです。

例えば、地方行政レベルではありますが、同性のカップルの権利を認める自治体も増えてきました。

また、地域社会や職場においても、性的マイノリティの人権侵犯の認知件数は減少しています。

その一方で、いまだにマイノリティであることによって不公平な扱いを受ける人もいます。

筆者が実際にアメリカに住んでみて思ったこと

さて、私は現在、アメリカの北東部、マサチューセッツ州の大学に通っています。

そこで、こちらの様子を少しお伝えできればと思います。

結論を言うと、少なくとも私が住んでいる地域では、マイノリティにオープンだと感じることが多いです。

例えば、大学ではアイデンティティを元にして、差別してはいけないことがルールとして定められています。

そして、そのことを啓発するポスターが至る所に貼ってあります。

また、これは私が非常に驚いたのですが、ほぼ全ての授業の自己紹介では名前などの他に”Pronoun”、つまり自分が使ってほしい「代名詞」を聞かれました。

例えば、身体上の性別は男性でも、性的自認は女性である場合は、”he”ではなくて”she”を使ってほしいという意思表示ができます。

ちなみに男女という性別にとらわれない人や、pronounがわからない場合は”they”を使うことが多いです。

マイノリティへの理解が新たな問題を生み出している?

このように世界ではマイノリティの権利を尊重する取り組みが増えていますが、それに伴い、生きづらさを抱える人がいるのも事実なようです。

例えば、「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉があります。

ここでは、マイノリティの声もきちんと聞こうというメッセージが含まれています。

しかし、マジョリティの中で力の弱い人たちの声が蔑ろにされているという反発が生まれているのも事実です。

その実例として、2016年にアメリカで行われた調査があります。

この調査には、アメリカ社会は黒人・白人のどちらに有利かという質問が含まれていました。

この質問に、民主党の支持者の82%が「白人のほうが有利だ」と回答した一方、共和党支持者の80%が「白人よりも黒人の方が得をしている」と答えました。

マイノリティの意見を尊重することも重要ですが、それによって不公平を感じる人がいることも忘れてはいけないでしょう。

参考:「白人」対「白人」ーイデオロギー的分極化の一側面ー | SPFアメリカ現状モニター | 日米関係インサイト 


マイノリティ思考とは

多くの人が、「周りがやっているから」という理由で意思決定をした経験があるでしょう。

この思考をマジョリティ思考といいます。

マイノリティ思考とは、この逆で自分の思考の軸に基づいて、周りとは関係なく意思決定をする思考を指します。

例えば、学生の多くが大学を卒業してすぐに就活をすると思いますが、自分の興味を突き詰めるためにバックパッカーとして旅に出る、などです。

このようにマジョリティに流されることなく、自分の好きなことや得意なことを追いかけてみることで人生の選択肢が広がるのかもしれません。

まとめ

今回の記事でお伝えしたように「マイノリティ」といっても、多くの種類があります。
従来では移民や少数民族を指す言葉でしたが、現在では性的マイノリティーや障害を持つ人々まで指す言葉となっています。

また、このようなネガティブな意味だけでなく、マイノリティ思考のように「多数派に流されない人」という前向きな意味も持ち始めました。

このようなマイノリティの人々を応援し、共生できる社会を作るために人と自分は違うということを改めて認識することが必要ではないでしょうか。


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