2026年11月7日、東京大学の仁平典宏教授が発表した調査結果が注目されました。

首都圏の公立中学校に通う生徒のうち、外国人の増加を「社会にとって良いことが多いと思わない」と答えた割合が4割を超え、2022年の2割超からほぼ倍になったという内容です。

SNSでは「ネットの影響で偏見が広がっている」という声と、「実際に地域で困っている人の実感だ」という声に分かれました。

どちらの見方にも背景があります。

在留外国人の数は3年間で100万人以上増え、学校では日本語支援が必要な児童生徒が過去最多になりました。

この記事では、入管庁と文部科学省の統計で3年間に何が起きたかを確かめ、多文化共生に仕事で関わる道を紹介します。

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「中学生4割が外国人増に否定的」とは

多文化共生とは、国籍や文化の異なる人々が互いの違いを認め合いながら同じ地域で暮らすことです。

2026年11月7日、共同通信が東京大学の仁平典宏教授(社会学)の分析結果を報じました。

項目内容
調査対象首都圏の公立中学校10校の生徒約2,000人
開始年2012年(継続調査)
今回の分析対象2018-2019年、2022年、2025年
設問外国人の増加は「社会にとって良いことが多いと思わない」
2022年の回答2割超
2025年の回答4割超(倍近くに増加)

仁平教授は「単なる保守化という捉え方はできない」と指摘しています。

過去の調査では「ルールを破る人を厳しく罰すべきだ」と考える生徒ほど外国人増加に肯定的でしたが、2025年はこの関係が逆転し、ルール重視派が否定的に変わりました。

一方で、寛容さなどの「リベラル的志向」を示す生徒は9割を超えています。

参考:中学生4割が外国人増に否定的、22年比ほぼ倍──ネットの影響か(共同通信)

この調査は首都圏10校・約2,000人の結果であり、全国の中学生の意識を示すものではありません。

≫人権問題とは?日本と世界の人権問題を一覧で解説


SNSの反応は「ネットの影響」と「地域の実感」に分かれた

この調査結果に対して、SNSやコメント欄では2つの方向の反応がありました。

1つ目は「ネット上のヘイト言説が子どもに影響している」という見方です。

仁平教授自身も「外国人は悪さをしているという言説がインターネット上で急に増えた」とし、「ウェブの影響を強く反映している可能性」を指摘しています。

2つ目は「外国人が増えた地域で実際に起きている摩擦を子どもが感じている」という見方です。

ごみ出しや騒音のルール、日本語が通じないことへの戸惑いなど、生活上の課題を挙げる声がありました。

どちらの見方が正しいかを、この調査だけで断定することはできません。

ただし、子どもの意識が3年で大きく変わった背景には、統計で確かめられる事実があります。

なぜ3年で2割から4割に変わったのか

意識が変わった2022年から2025年の3年間に、在留外国人の数と学校現場は大きく変わりました。

在留外国人は3年で105万人増えた

出入国在留管理庁によると、日本に住む外国人の数は次のように推移しています。

時点在留外国人数
2022年末約307.5万人
2025年末約412.5万人(初の400万人超)
2026年6月末約428.1万人(過去最多)

2022年末から2025年末の3年間で約105万人増え、増加率は約34%にのぼります。

2025年末の在留外国人数は前年比9.5%増で、4年連続の過去最多でした。

国籍別では中国が約93万人、ベトナムが約68万人、韓国が約41万人と続きます。

在留資格別では永住者が約95万人、技術・人文知識・国際業務が約48万人、留学が約46万人でした。

在留外国人数の推移。2022年末の約307.5万人から2025年末の約412.5万人まで3年で約105万人増加し、2026年6月末には約428.1万人で過去最多

参考:令和7年末現在における在留外国人数について(出入国在留管理庁)

日本で働く外国人が増えている背景には、人手不足と在留資格の拡大があります。

≫外国人労働者問題とは?日本の現状や問題点、原因をわかりやすく解説

学校では日本語支援が追いつかない

文部科学省が2026年5月に公表した調査によると、公立学校で日本語指導が必要な児童生徒は84,759人で、過去最多を更新しました。

項目数値
日本語指導が必要な児童生徒数(2025年度)84,759人(過去最多)
前回調査(2023年度)からの増加15,636人増(22.6%増)
うち外国籍の児童生徒73,313人(27.0%増)
在籍する学校数12,668校(全公立学校の39.4%)
100人以上が在籍する学校28校
日本語指導を受けていない児童生徒9,699人(11.4%)

文部科学省の資料によると、2016年度調査の43,947人から9年間で約2倍に増えています。

日本語指導の支援者は8,706人(前回調査は7,837人)、母語支援員は7,301人(同6,266人)です。

日本語指導が必要な児童生徒は84,759人で過去最多。前回比22.6%増、外国籍73,313人、在籍校は全公立学校の39.4%にあたる12,668校

参考:「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」令和7年度調査結果(文部科学省)

全公立学校の約4割に日本語支援が必要な生徒がいるということは、多くの中学生にとって外国にルーツを持つ同級生の存在が身近になっていることを意味します。


ルール重視と寛容さが同居している

今回の調査で注目されるのは、「外国人増加に否定的」な生徒が増えた一方で、「リベラル的志向」を示す生徒が9割を超えている点です。

排外的な考えと寛容な考えが、同じ世代の中で同居しています。

仁平教授は、この変化を「ルール重視」の価値観が排外的な志向と結びついたものと分析しています。

以前は「ルールを守る社会は外国人も受け入れる」という方向だったのが、「ルールを守らない外国人は受け入れられない」という方向に変わったということです。

OECD(経済協力開発機構)がPISA 2025の結果とともに公表した分析では、移民背景を持つ生徒の割合が大きい国ほど教育成果が悪いという関係は見られませんでした。

参考:PISA 2025 Results Volume I: Student school life and beyond(OECD)

≫移民問題とは?SDGsとの関係や現状、日本の政策を解説

多文化共生の取り組みは広がっている

否定的な意識が増えた一方で、多文化共生の仕組みづくりは進んでいます。

総務省は2006年に「地域における多文化共生推進プラン」を策定し、2020年に改訂しました。

自治体の窓口での多言語対応、外国人住民向けの防災訓練、やさしい日本語の普及などが各地で進められています。

2026年6月末時点で在留外国人が約428万人いる中で、永住者は約95万人と最多です。

一時的な滞在ではなく、地域に根を下ろして暮らす外国人が増えています。

学校現場では、文部科学省が「外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議」の報告を踏まえて、日本語指導の担当教員を加配する制度や、母語支援員の配置を拡大しています。

≫日本の難民問題とは?現状や受け入れない理由、私たちにできること


多文化共生に仕事で関わる4つの道

外国人との共生は、制度と現場の両面で人手が必要な分野です。

自治体の多文化共生推進担当として関わる

市区町村の国際交流課や多文化共生推進室で、外国人住民の相談対応、防災訓練の企画、やさしい日本語の研修などを担います。

総務省が自治体に配置を促している「地域国際化推進アドバイザー」もこの領域です。

日本語教師として教育現場から関わる

2024年4月から「登録日本語教員」の国家資格制度が始まりました。

公立学校での日本語指導、地域の日本語教室、技能実習生への教育など、働く場所は広がっています。

日本語指導が必要な児童生徒が84,759人いる現状は、教員の需要が高いことを示しています。

外国人支援NPOで直接支援に関わる

生活相談、医療通訳、子どもの学習支援、在留資格の手続き支援などを行うNPOが各地にあります。

多文化共生に取り組む企業と協働するケースも増えています。

≫多文化共生に取り組む企業10選!就職・転職におすすめの大手企業からベンチャー

出入国在留管理庁・JICAで政策の側から関わる

入管庁は在留資格の審査や支援施策の企画を担い、JICA(国際協力機構)は送出国と受入国の双方で人材育成を行っています。

2025年末の在留外国人が412万人を超えた中で、制度設計の仕事は今後も拡大する見込みです。

まとめ

首都圏の中学生を対象にした調査で、外国人の増加に否定的な回答が3年で2割から4割に増えました。

この3年間に在留外国人は105万人増え、学校で日本語支援が必要な児童生徒は過去最多の84,759人に達しています。

数字の変化を並べると、意識の変化には在留外国人の急増とネット上の言説という2つの背景が見えます。

ただし、この調査は首都圏10校・約2,000人を対象としたものであり、全国の傾向と同じかどうかはわかりません。

多文化共生は「外国人を受け入れるかどうか」ではなく、「すでに一緒に暮らしている428万人とどう暮らすか」の問題です。

その仕組みを作る仕事は、自治体・教育・NPO・国の機関で広がっています。

社会課題に関わるキャリアを探している方は、ココキャリアでも情報を見られます。


よくある質問

この調査や多文化共生について寄せられる疑問に、記事中のデータをもとに答えます。

Q. 中学生の4割が外国人増に否定的というのは全国の調査ですか?

A. いいえ、全国調査ではありません。東京大学の仁平典宏教授(社会学)が首都圏の公立中学校10校の生徒約2,000人を対象に行った継続調査の結果です。2012年から続く調査で、2025年分の分析によると外国人の増加は「社会にとって良いことが多いと思わない」と答えた割合が4割を超え、2022年の2割超から倍近くに増えました。サンプルが首都圏10校に限られるため、全国の中学生の意識を示すものではない点に注意が必要です。

Q. 在留外国人は最近どれくらい増えていますか?

A. 出入国在留管理庁によると、2022年末の約307.5万人から2025年末には約412.5万人になり、3年間で約105万人(約34%)増えました。2025年末は前年比35.6万人増の9.5%増で、4年連続の過去最多です。初めて400万人を超えた年でもあります。2026年6月末には約428.1万人に達し、さらに過去最多を更新しています。国籍別では中国が約93万人、ベトナムが約68万人、韓国が約41万人の順です。

Q. 学校で日本語支援が必要な子どもは何人いますか?

A. 文部科学省の2025年度調査(2026年5月公表)によると、公立学校で日本語指導が必要な児童生徒は84,759人で過去最多です。前回の2023年度調査から15,636人増の22.6%増で、2016年度調査の43,947人からは9年間で約2倍です。うち外国籍の児童生徒は73,313人で27.0%増えました。在籍する学校は全公立学校の39.4%にあたる12,668校にのぼり、日本語指導を受けていない児童生徒も9,699人(11.4%)います。

Q. 多文化共生に関わる仕事にはどんなものがありますか?

A. 主に4つの方向があります。自治体の国際交流課や多文化共生推進室で外国人住民の相談対応や制度づくりに携わる道、2024年4月に国家資格制度が始まった登録日本語教員として学校や地域で日本語教育に関わる道、外国人支援NPOで生活相談や子どもの学習支援を行う道、出入国在留管理庁やJICA(国際協力機構)で政策立案や国際人材育成に取り組む道です。在留外国人が400万人を超えた現在、どの分野も人手が必要な状態です。

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