『サステナビリティ(持続可能性)を再定義する必要がある』

日本では2018年頃から徐々にサステナビリティの概念が広まってきていますが、オランダ、アメリカなど欧米では上記のように、サステナビリティの考え方だけでは不十分ではないか?という声が高まっています。

今回は経済や社会のモデルを考える上で注目を集める「リジェネレーション」についてご紹介します。

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リジェネレーションとは?

リジェネレーションとは、サステナビリティで掲げられる「地球環境と経済活動の両立した持続可能なモデル」から前進した、意識的に地球や暮らしの環境を再生して、社会をデザインしていく考え方です。

「再生型ビジネス」「再生型経済」と言われることもあります。

リジェネレーション(Regeneration)には、「再生」「新生」「繰り返し生み出す」などの意味合いがあります。

『We Are Regeneration』をキーワードに、国際的に新たな潮流として動きが高まっています。


リジェネレーションが生まれた背景

これまでにも、地球環境に関連して、サステナビリティなど様々な考え方が出来てきました。

リジェネレーションについて考える前に、それらを振り返ってみましょう。

環境問題と経済発展の対立の時代

日本では明治時代から、経済発展の背景で公害問題が深刻化してきました。

戦後の経済成長期の水俣病、新潟水俣病(第二水俣病)、イタイイタイ病、四日市ぜんそくの四大公害が有名です。

ビジネスセクター(経済的価値)とソーシャルセクター(環境・社会的価値)は対立するものと捉えられました。

企業の活動に任せていては問題が悪化してしまうという考えから、法律での様々な規制がなされるようになりました。

地域や環境へマイナスの影響を与えてしまうことも考慮し、メセナ(文化支援活動)やフィランソロピー社会貢献)といった取り組みも行われるようになりました。

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サステナブルを求める時代

サステナビリティ(Sustainability)は、「維持する」「持続する力」という意味合いです。

1980年代に国連で開催された「環境と開発に関する世界委員会(プルントラント委員会)」で、“将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現代世代のニーズを満たすこと”であると説明されました。

つまり、我慢するのではなく今を大事にしながら未来を考えることで問題を解決することです。

今の自分たちにとっても、これから生まれてくる世代にとっても嬉しい在り方を模索していきます。

大量生産・大量消費・大量廃棄から、地球環境と共生する持続可能なモデルの実現のために、国も企業も個人も様々な取り組みを行っています。

企業では、経済価値と環境・社会価値の両立を目指すトリプルボトムラインや、本業として社会課題解決に取り組むCSV(共有価値の創造)・戦略的CSRが掲げられました。

国際的な目標として、SDGs(持続的な開発目標)も掲げられてきました。

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サステナビリティの課題

しかし、人類が発展し様々な経済活動を行ってきた中で、地球に及ぼした負のインパクトは、残念ながら取り返しのつかないほど大きなものになっています。

世界自然保護基金(WWF)の報告書では、1970年以降の50年未満の期間で、野生生物が3分の2以上が減少したと述べられています。

直近の大きな出来事では、2020年にモーリシャス島で発生した重油流出事故により、マングローブ林が油まみれになり、サンゴ礁や海藻などの海洋生物が推定100万頭死滅するなど生態系に影響が及びました。

回復には数十年かかるとも、一部はもう元には戻らないとも言われています。

今の私たちの生活ニーズを満たすうえで必要な活動が、地球に大なり小なり負の影響を及ぼすのです。

将来世代のことも考えるならば、環境への悪影響を減らすこと、「less bad」では不十分な状況に来ています。

20世紀に比べて改善はしてきたものの、理想には届いていないのです。

地球環境を配慮した具体的な取り組みとして、以下のようなものが考えられます。

  • マイボトルを使うことで海に流出するプラスチックを減少させる
  • 衣服をファストファッションからエシカルファッションに変えることで環境負荷を軽減する
  • 自宅での節電や公共交通機関の利用によりCO2の排出を抑制する

これらはとても重要なことですが、マイナス影響を0に近づける行為であり、自然環境に対してプラスを生み出す、復活・回復させる視点もまた必要なのです

「地球1個分の暮らし」を実現するうえでも、人間の活動から、環境やコミュニティを再生するような「more good」にシフトする取り組みがポイントとなります。

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リジェネレーションの具体例

では、どのような取り組みが再生型のモデルなのでしょうか。

リジェネレーションの具体例を見てみましょう。

環境再生型農業

環境再生型農業とは、農業を通じて長期スパンでの土壌の改善を促し、二酸化炭素(CO2)を吸収しながら作物を生産する仕組みを言います。

パタゴニアでは、「リジェネラティブ・オーガニック」という農法を行い、コットンや食材を調達する際に、炭素を地中に戻して健全な土壌を構築しています。

土壌が回復することで、健全な土壌が炭素を捕捉して、CO2の吸収量の増加にも貢献するのです。

その他には、ユニリーバ、ケリング(グッチなどを扱う仏アパレル企業)、ゼネラル・ミルズ(米大手食品企業)などのグローバル企業も取り組んでいます。

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グリーンルーフ

グリーンルーフとは、屋上や屋根の頂上に植物を植えることで緑化する取り組みのことです。

エコルーフとも呼ばれ、以下のようなメリットがあります。

【グリーンルーフのメリット】

  • ビルなどの建物に緑が増え眺めがよくなる
  • 夏場は涼しく、冬場は断熱で省エネに過ごしやすい
  • 雨水を吸収して建物からの排水をスムーズになる

オフィスビル、商業ビル、福祉施設など様々な建物と共存して存在しています。

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バイオミミクリー

バイオミミクリーとは、「生物模倣」という意味の持続可能なデザイン手法です。

人間主体の意識に課題感を持ち、自然の知恵を学ぶことがポイントです。

生物や自然が過去積み重ねてきたメカニズム(変異)を分析しているため、社会課題解決につながるイノベーションを生み出すためのモデルケースとなります。

【バイオミミクリーの例】

  • 鳥の飛行メカニズムに基づいた、効率性の高い航空機の翼/エアコンのファン
  • カタツムリの殻に基づいた、雨が降ると汚れが落ちる外壁タイル
  • 木陰のつくりだす涼しさに基づいた、夏の日差しを遮る日避け

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リジェネレーションを実践するには

さて、私たちに出来ることはあるのでしょうか?

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イメージしやすいところでは、人自然と自分自身のつながりを考え、日々の暮らしの中に自然を取り入れていくことです。

例えば、家庭で出る生ごみをコンポストすることで、植物や土にとってプラスになるたい肥へと変えることなどです。

リデュース・リユース・リサイクル「3R」の他にある。

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「R」として、再生品の使用を心がけることもリジェネレーションの一部です。

また、地球環境に限らず、自分や組織・社会にも再生や変化という視点は大切です。

これまでの常識が変わっていく「ニューノーマル」の時代では、日々の暮らしやビジネス・働き方も以前から変わっていきます。

将来に自然や環境を残していくためにも、個人や組織の在り方を見直していくことはいかがでしょうか。

個人として、健康な体と健康な心や周囲の人々との関係性を見直すこと。

組織として、ティール組織やホラクラシーと言われるような、多様なメンバーが自主的に動いていく形へと変わっていくこと。

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根本にあるのは、社会の捉え方です。

  • 私たちの経済活動の中で、環境への配慮をすべきいう考え方
  • 自然環境や資源の中で、私たちが社会をつくり生きていると考え方

前者の考え方では、従来のエコやサステナビリティといった取り組みなどがゴールとなりえます。

後者であれば、自然を守ることが人間の未来をつくるにもつながるのです。

どのように”社会”を認識するかが、マイナスを抑える「less bad」に加え、プラスを生み出す「more good」のアクションをするきっかけになるのではないでしょうか。

『社会課題を解決したい』と話すあなたの ”社会”って何ですか?

過去にも『ビジネスセクターとソーシャルセクターは対立する』という認識から、『両立できる方法も模索していこう』とパラダイムシフトが起こっています。

これまでの「サステナビリティ」を再定義した

サステナビリティ+リジェネレーション」について考えてみませんか?

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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ライタープロフィール

よこぴー@ソーシャルキャリアをよこよこ
サーキュラーエコノミー、アップサイクルなど色々なキーワードが台頭する中で、「リジェネレーション」ってあまり知られてない気がしたので書いてみました。
関心分野は“社会貢献×投資”
Twitter:よこぴー@ソーシャルキャリアをよこよこ